深部静脈血栓症(DVT)発症後の血栓部位および治療法と経時的な血栓変化の関連を検討した。当院にて2010年10月から2015年3月に下肢静脈エコー検査を施行し,DVTと診断,フォローアップされた198例を対象とした。下腿限局型DVTでは中枢型DVTに比し血栓消失を多く認め,また初回検査から30日以上経過後,血栓が変化する例を認めた。下腿限局型DVTは中枢型DVTに比し長期フォローにて血栓改善する可能性が示唆された。
Thoracic aorta mural thrombus(TAMT)による同時多発塞栓症の1例を経験した。TAMTは近位下行大動脈に多発性にあり,脳梗塞と上腸間膜動脈塞栓症を同時発症していた。緊急開腹手術壊死腸管切除の3週間後,オープンステントグラフト(OS)留置術を行い良好な結果を得た。症例はその後順調に経過し,脳梗塞の大きな後遺障害なく退院した。TAMTの治療指針は未だ確立していないが,文献的考察によると塞栓症再発は30%程度に認められ外科的介入を要する症例も多いが,大動脈弓部周辺のTAMTに対しては,TEVARが有効な治療手段となる。しかし,TEVARには手技による塞栓症の危惧があり,血栓の大きい症例などではOSは治療選択肢の一つとなりうる。
84歳,女性。両側の鎖骨下動脈から上腕動脈に高度狭窄または閉塞を認め,両側椎骨動脈にも閉塞を認めた。Y型人工血管と大伏在静脈によるcomposite graftを用いて上行大動脈から両側上腕動脈へのバイパスを作成した。術後は両側橈骨動脈の拍動触知は良好となり,壊死の進行も止まった。両側上肢虚血の同時発症で両側椎骨動脈が閉塞している症例において上行大動脈から両側上腕動脈へのパイパスは有効と考えた。
症例は82歳女性。71歳で透析導入となった。右vascular access(VA)側の鎖骨下静脈狭窄による右上肢腫脹が出現したためにバルーン拡張術を施行したところ鎖骨下静脈が破裂,閉塞した。右上肢腫脹が悪化したため穿刺困難となり,左鎖骨下静脈よりカテーテルによるVAとなったが,VA不全および鎖骨下静脈閉塞による上肢腫脹のため当院紹介となった。これに対し大伏在静脈を用い右橈側皮静脈–右内頸静脈バイパスを施行した。