近年のCTの進歩は脈管画像診断にも飛躍的な発展をもたらした。それは,CTが広い範囲を高速かつ薄いスライス厚で撮影が可能となったからである。加えて,心電図同期撮影法,サブトラクション法,超高精細CTといったオプションも脈管疾患の診断制度を高めた。さらに,最新型のCT装置であるphoton-counting CTも空間分解能や物質弁別の面で高い能力を有することから脈管領域への応用にも期待が寄せられている。
われわれは以前より胸部大動脈瘤(TAA)に対するTEVAR後脊髄障害(SCI)は脆弱な壁在血栓による微小塞栓症である可能性を報告してきた。逆に壁在血栓の少ない大動脈解離(AD)に対するTEVARではSCI,塞栓症の発症が少ない傾向にあり,それを裏付ける結果の一つと言える。ADに対するTEVAR時SCI予防には側副血行,圧抜けなど脊髄への血流に留意する必要があると考えられる。
セイヨウトチノキ種子エキスを有効成分とする西洋ハーブ医薬品は,欧州では慢性静脈不全(CVI)患者に広く使用されているが,本邦では医薬品として承認されていない。日本人の軽度CVI患者70名を対象に本エキスを含有するZO-SA0(ベルフェミン)の有効性と安全性を確認する多施設共同非盲検非対照試験を実施した。12週間投与した結果,海外臨床試験と同様に下腿体積の減少と自覚症状の改善が示唆され,安全性に問題は認められなかった。
症例は43歳男性。左下腿間欠性跛行を主訴に前医受診。左下肢動脈狭窄が疑われ,当科紹介受診となった。CTおよびMRIでは左膝窩動脈は多房性の囊胞構造物により圧排され,限局的な狭窄を来していた。膝窩動脈外膜囊腫による左膝窩動脈狭窄と診断した。手術は狭窄部膝窩動脈を切除し,大伏在静脈で置換を行った。病理では囊腫性病変は動脈壁外に存在しており,ガングリオンと診断した。