症例は53歳男性。腹痛を主訴に来院した。腹部造影CT検査の結果,上腸間膜動脈解離の診断で保存的加療の方針となった。第9病日に施行した腹部超音波検査でエントリーの閉塞と,リエントリーからの逆行性血流による空腸領域の灌流が確認された。孤立性内臓動脈解離は比較的稀な疾患であるが,近年報告数は増加傾向にある。腹部超音波検査は同疾患の診断および血流動態の観察に有用であった。
62歳の男性,腹膜透析依存状態となった後に腹部大動脈瘤と診断されendovascular aneurysm repair(EVAR)を施行したものの,難治性type IIエンドリークのため血管内治療を3回行った。しかし持続的な動脈瘤径の拡大を認めEVARの3年後に開腹手術の適応となった。開腹時には癒着は認めず,腰動脈および正中仙骨動脈の結紮術を施行した。腹膜透析患者であっても導入後の期間が浅く,感染の既往がなければ,安全に開腹手術を行うことは可能であった。
非破裂の腹部大動脈瘤(AAA)は無症状で経過することが多いが,今回われわれは術前に消化器症状を呈した稀な症例を経験した。症例は70歳,男性。腹部膨満感と嘔吐を主訴に当院を受診,CTで最大短径70 mmのAAA, および,十二指腸水平脚の圧排所見,胃および十二指腸の著明な拡張を認めた。絶食および補液で保存的加療後に人工血管置換術を施行した。腹部大動脈瘤による十二指腸狭窄の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
症例は77歳,男性。右大腿部に激痛を認め近医整形外科受診。腰椎ヘルニアと診断されたが,その後大腿部が腫脹してきたため当院へ紹介となった。造影CTで最大短径35 mmの壁在血栓を伴う右大腿深動脈瘤と周囲の大腿筋壊死を認めた。壁在血栓飛散による大腿筋壊死と考え準緊急手術の方針とした。手術では総大腿動脈から浅大腿動脈・大腿深動脈の範囲を人工血管で置換した。術後経過は良好であり,下肢虚血などの合併症は認めなかった。