動脈硬化や心筋梗塞といった心血管疾患の病態において無菌性炎症の重要性が示されている。われわれは,心血管疾患発症の分子機構に無菌性炎症の惹起経路であるNLRP3インフラマソームが関与することを報告してきた。また最近,NLRP3インフラマソームを制御する新規E3リガーゼを同定した。本稿では,動脈硬化や大動脈瘤形成におけるNLRP3インフラマソームの役割とともに,NLRP3インフラマソームの翻訳後修飾による制御機構について概説する。
腎動脈瘤手術には,囊状の瘤壁を切除後に残存瘤壁を利用し動脈を形成するtailoring techniqueがある。今回,当院でtailoring techniqueを用いた腎動脈瘤手術症例8例を対象とし,術後の早期・遠隔期成績を検討した。術後急性腎障害をきたしたのは1例のみで透析に至った症例はなく,遠隔期(平均観察期間:5.3±3.6年)に腎動脈の狭窄や閉塞,動脈瘤の再発をきたした症例は認められなかった。腎動脈瘤に対する瘤形成術は術後成績が良好であり,有効な術式と考えられた。
症例は77歳男性。慢性透析患者。重度大動脈弁狭窄と可動性プラークを伴う高度頸動脈狭窄を認めたため,同時手術を施行した。頸動脈露出後,開胸し体外循環を確立。灌流圧を約60 mmHgに保ち鼓膜温30°Cまで冷却し,頸動脈を単純遮断し内頸動脈血栓内膜剝離を行い大伏在静脈にてパッチ閉鎖した。その後,復温しながら心停止下に大動脈弁置換術を施行。術後,脳障害を認めず術当日に人工呼吸器離脱し,術後14病日目に退院。