腹部大動脈瘤に対するEVARでは「10年以上の生命予後が期待される症例はEVARより外科手術を考慮する」がクラスIIbで推奨され,胸部大動脈瘤に対するTEVARでは解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤に対するTEVARがクラスIで推奨され,B型大動脈解離に対するTEVARでは将来拡大が予測されるHigh risk uncomplicated症例はPreemptive TEVARがクラスIIaで推奨されている。
壊死性小型血管炎であるANCA関連血管炎の主たる治療目標は,早期寛解,寛解率上昇,寛解維持(再発軽減)であり,一方,治療に伴う副作用軽減も重要な課題である。最近,CD20抗原陽性B細胞に対する抗体製剤であるリツキシマブや選択的C5a受容体拮抗薬であるアバコパンの有用性が示されてきた。また,副作用の観点から,グルココルチコイド投与量をできるだけ少なくすることも可能となってきている。
血管腫・血管奇形と呼称されてきた疾患群は,現在では,脈管性腫瘍あるいは脈管奇形と呼ばれ,脈管異常と総称される。脈管異常の正確な診断のためには,臨床所見,画像所見,病理所見,遺伝子解析結果などを含む総合的判断が必要である。その中で病理診断は,ISSVA分類に基づいて腫瘍と奇形の分類を行うために欠かせない要素である。本稿では,ISSVA分類に基づいた脈管異常の分類,代表的な病変の病理組織像について概説する。
症例は77歳男性。心タンポナーデにて,緊急心囊ドレナージ施行された。造影CT検査で遠位弓部大動脈にentryを認める急性大動脈解離Stanford B型の偽腔破裂を診断された。緊急胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)施行し,初期救命したが,術後,対麻痺を発症した。CT検査上第12胸椎レベルのAdamkiewicz動脈は開存していた。心タンポナーデの原因が急性B型大動脈解離であるという報告は稀で,緊急対応を要するため,文献的考察を加えて報告する。
症例は76歳,女性。冠動脈造影で有意狭窄を認め,経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行。その際,左冠動脈主幹部(LMT)遠位をエントリーとする冠動脈–大動脈解離を発症。LMTから左前下行枝(LAD)にかけてステント留置後,造影CTでDeBakey I型急性大動脈解離,心タンポナーデを認め,緊急で上行置換+冠動脈バイパス術を施行。LMTをエントリーとするDeBakey I型急性大動脈解離は稀であり報告する。