Stanford B型大動脈解離に対する薬物療法には血圧・心拍数コントロール,鎮痛などが含まれ,その目的は解離の進展阻止と大動脈破裂の予防である。初期には調節性に優れる静注カルシウム拮抗剤や,β遮断薬の静注が有用である。急性期にはこれらの薬を早期に内服や貼付薬に移行させ安定を図る。慢性期にはむしろ低血圧や徐脈に注意する必要がある。大動脈壁ストレス軽減に最も有効な薬剤はβ遮断薬であり十分量の使用が望まれる。
熊本地震発生2カ月間に当院で診療した静脈血栓塞栓症(VTE)患者は43例で,深部静脈血栓症(DVT)単独32例,肺血栓塞栓症(PTE)11例(9例DVT併発)だった。原則抗凝固療法開始し,第一選択は直接経口抗凝固薬(DOAC)とした。34例にDOAC,4例にワルファリンを使用した。地震発生4カ月間VTE再発例はなく,出血イベントはなかった。災害後VTEにDOACを中心とした治療は有用と考える。
大伏在静脈–大腿静脈接合部(SFJ)が20 mm以下の大伏在静脈に対する波長980 nmレーザーによる血管内焼灼術(EVLA)215肢を対象とし,SFJが10~20 mmのL群(77肢)と10 mm未満のS群(138肢)の手術成績を比較検討した。レーザー出力,LEEDはL群が高値であった。術後EHITの発生率,術後の再疎通率,再手術率に差はなく,SFJが15 mmを超えた6例においても,術後に全例10 mm未満に縮小した。SFJ拡大例に対しても,EVLAの成績は良好であり,やや高出力で焼灼することで,かならずしも高位結紮を併用することなくEVLAが可能と考えられた。
症例は65歳女性の高安病患者。主訴は右下腹部の拍動性腫瘤。精査の結果,26年前に閉塞した外腸骨動脈–腋窩動脈バイパスグラフト吻合部に生じた動脈瘤と診断。カバーステントによる血管内治療施行後,軽快した。高安動脈炎は,罹患年齢が低く生命予後も良好であることから,長期の観察が必要となる。また,吻合部動脈瘤の発生は経過とともに増加するため,閉塞したバイパスであっても吻合部を中心とした定期的な観察が必要である。