症例は71歳女性。左下肢浮腫,疼痛あり,下肢静脈血栓うたがいにて緊急搬送となった。造影CTにて左膝窩静脈末梢(深部および表在静脈)から下大静脈まで連続した血栓を認めた。緊急にて下大静脈フィルター留置し,持続血栓溶解療法,DOAC強化療法の方針となった。DOAC内服,経静脈的血栓溶解療法を併用し,血栓消失・消退を確認してからフィルター再回収を施行した一例を経験したので治療経過などを含めて報告する。
症例は84歳,女性。22 mm大の総肝動脈瘤に対して親動脈遠位近位塞栓術が施行された。術後翌日激しい腹痛が生じ,造影CTで右胃動脈瘤破裂による腹腔内出血が認められた。緊急血管造影を施行し,左胃動脈経由で右胃動脈瘤近傍に挿入したマイクロカテーテルから25%希釈n-butyl-2-cyanoacrylate 0.4 mLを注入して止血に成功した。右胃動脈瘤の発生と破裂は,脆弱な血管壁への総肝動脈閉塞後の右胃動脈血流増加による血管壁剪断応力の変化が原因であると考えられる。
70歳,女性。高血圧性心不全および高安動脈炎による失神や上肢血管への盗血症状を認めた。心不全治療の点からは降圧が望ましい一方で,降圧により脳血流が低下するため薬物治療では限界であり,血行再建が望ましいと判断した。大動脈石灰化が高度のため下肢動脈をinflowとして通常とは逆行性の血流で両側腋窩動脈へバイパスを行った。術後は失神発作を生じることなく心不全管理も可能となり,リハビリが進みADLも改善した。
94歳,女性。聴力低下,発熱,CRP高値,MPO-ANCA陽性,両側滲出性中耳炎,間質性肺炎の所見より顕微鏡的多発血管炎と診断された。プレドニン内服にて加療を行っていたが,急性心筋梗塞を発症し,死亡した。病理解剖の結果,大動脈炎および冠動脈周囲の広範な炎症を認め,血管炎に合併した急性心筋梗塞と診断した。急性心筋梗塞を発症した超高齢者の血管炎の一剖検例を経験したので報告する。