本研究では, 要介護高齢者の義歯の清掃状態を示す指標として
Candida菌付着状況の調査を行い, 生活環境や痴呆および就寝時の義歯の装着などが義歯における
Candida菌付着に及ぼす影響について比較検討を行った。
調査対象者は, 特別養護老人ホームの入所者72名および週1回同施設を利用しているデイサービス利用者59名の要介護高齢者131名 (平均年齢81.1±9.0歳) と, 大阪大学歯学部附属病院第2補綴科に来院した日常生活に介護を必要としない有床義歯装着者65名 (平均年齢73.8±9.4歳) の合計196名である。
これらの要介護高齢者の義歯への
Candida菌の付着状況を調査したところ, 以下の結果が得られた。
1. 要介護高齢者の義歯床粘膜面のCandia菌の検出率は,(++) が66.2%,(+) が22.5%であり, 大学病院の患者に比べ有意に高かった。また,
Candida菌の検出率は, 非痴呆群に比べ痴呆群の方が有意に高かった。
2. 要介護高齢者の義歯床下粘膜面の
Candida菌の検出率は, 大学病院の患者や義歯非装着者の口腔粘膜に比べ有意に高かった。
3. 義歯装着者の義歯床粘膜面と口蓋部義歯床下粘膜表面の
Candida菌の検出率との間には, 有意な正の相関関係を認めた。
4. 就寝時に義歯を装着している者の義歯床粘膜面の
Candida菌の検出率は, 装着していない者に比べ有意に高かった。
今回の結果より, 要介護高齢者, 特に痴呆者や就寝時に義歯を装着している者の義歯清掃状態はきわめて不良であり, 高齢者自身や介護者に口腔ケアの重要性を啓発し, 義歯の適切な管理方法を広く普及させる必要性が強く示唆された。
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