日本栄養・食糧学会誌
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55 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 望月 てる代, 上田 愛子, 岸田 典子, 石永 正隆
    2002 年 55 巻 5 号 p. 269-273
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    広島県内に居住する6歳から12歳の小学生100名の1日に摂取した飲食物中のフラボノイド量の実測値を, HPLC法により調べた。フラボノイドの1日摂取量は平均70.6±106.2mgであった。そのうちイソフラボン摂取量は19.1±33.8mgで, 全体の約27%を占めていた。フラボノイドとしては, ヘスペレチンの摂取量が最も多く, 次いでゲニステイン, ケルセチンであり, 柑橘類と大豆および大豆製品のフラボノイド摂取量に対する寄与の高いことが示唆された。肥満群と非肥満群では, 男女ともに肥満群でフラボノイド摂取量が多かったが, 両群の間に有意差はみられなかった。肥満群, 非肥満群ともに, 男子よりも女子の方にフラボノイド摂取量が多く, 女子の方が野菜・果実等の摂取量の多いことが推察された。
  • 小林 民代, 水道 裕久, 竹内 明, 牧野 武利, 田中 敏郎, 長岡 利
    2002 年 55 巻 5 号 p. 275-280
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ブロッコリーの凍結乾燥粉末 (BR), その水抽出粉末 (BE) および大豆タンパク質の脂質代謝に及ぼす影響について, 5週齢の Wistar 系雄性ラットを用いて高コレステロール食を10日間摂取させて検討した。5%BR群では血清総コレステロール (TC) レベルおよび低密度および超低密度リポタンパク-コレステロール (LDL+VLDL-C) レベルが基本飼料のみのコントロール群と比較して有意に低値を示した。その上昇抑制効果は5%ISPに匹敵するものであった。また, 2.5%BE群のTCおよびLDL+VLDL-Cレベルはコントロール群と比較して有意に低く, その上昇抑制効果は5%BR群に匹敵するものであった。以上の結果より, ブロッコリーには高コレステロール食摂取によるラットの血清コレステロールレベルの上昇を抑制する作用のあることが認められた。また, その主要な活性成分は水溶性画分中にあることが示唆された。
  • 石井 智美, 小長谷 有紀
    2002 年 55 巻 5 号 p. 281-285
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    馬乳酒 (kumiss) は, モンゴル国の遊牧民の間で長い間大切にされてきた飲みもので, 乳酸菌と酵母によってウマの生乳を発酵させてつくられる伝統的な飲料である。遊牧民の成人男子においては夏季に毎日3Lの馬乳酒が飲まれていた。食生活において馬乳酒が, エネルギー摂取量に示す割合を調べた。調査世帯では, 成人男子における1日のエネルギー摂取量のうち, 約50%を馬乳酒によって摂っていることが明らかになった。さらに調査の結果, 1999年の旱魃, 2000年, 2001年の雪害によって, 多くの家畜が死んだ。このことで夏季に新鮮な乳製品が摂れなくなっていた。馬乳酒は遊牧民のエネルギー摂取に大きな役割を持っている。伝統的な発酵乳製品が摂取できなくなることによって, 食生活が変化すると, 遊牧民の食形態と健康に大きな影響をもたらすものと考える。
  • 抗腫瘍作用と血管新生抑制作用
    松原 主典, 小松 俊一朗, 加藤 範久
    2002 年 55 巻 5 号 p. 287-290
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ビタミンB6を大量に投与するとがんの増殖や転移が抑制されると考えられていた。しかしながら最近, 実際の食生活に近い適量のビタミンB6を食餌に加えると大腸腫瘍の発現が抑制されることがマウスを使った実験によって明らかになった。その作用は, 大腸の細胞増殖や酸化ストレス, 一酸化窒素 (NO) 産生の抑制によるものであることが示唆された。さらに, ビタミンB6には, がんの成長や転移に重要な役割を果たす血管新生を抑制する作用があることも明らかになった。これらの結果は, ビタミンB6が大腸がん予防に有効な栄養素であることを示唆するものとして注目される。
  • 平田 昌弘
    2002 年 55 巻 5 号 p. 291-293
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    家畜の乳利用を発見することにより一つの生業形態である牧畜が成立し, ユーラシア大陸全体に広まっていった。本稿では, ユーラシア大陸の乾燥地帯における乳文化圏を乳加工体系の視座から類型分類することを試みる。約50の民族の乳加工体系の事例研究の結果, 次の仮説が導きだせる。それは, 搾乳・乳利用は西南アジアに起原する。そして, 乳加工が未だ乳を酸乳にする, それを乾燥保存させるという段階で周辺に伝播してゆく。その後, 乳加工体系は大きく二つの地域, つまり, 北緯約40°, 年間平均気温約15℃を境に, 北方域と南方域とでは別々に乳加工体系が発達する。北方域の乳文化圏では, クリーム分離, 凝固剤として酸乳を用い, 乳酒つくりが発達する。一方, 南方域の乳文化圏では, 酸乳のチャーニングによる乳脂肪分の抽出, 凝固剤としてレンネットを用いる乳加工が発達したことが示唆される。以上が, ユーラシア大陸の乳加工体系を類型分類し, 類推され得る乳文化圏二元論である。
  • 池田 清和
    2002 年 55 巻 5 号 p. 295-297
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    蕎麦は, タデ科に属する食用作物であり, 世界各地で広く利用されている伝統食品である。本稿では,〈伝統食品としての蕎麦とその良さを探る〉と題して, 蕎麦の食品科学的特性を考察した。
  • 小西 洋太郎
    2002 年 55 巻 5 号 p. 299-302
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    アメリカ原産のアマランスとキノアは, 高タンパク質, 高ミネラルの新食材として注目されている。本稿ではこれらの栄養価と生理機能について概説し, さらに食物アレルギー患者のための食材への利用と展望について述べる。
  • 辻 英明
    2002 年 55 巻 5 号 p. 303-305
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    植物性食品におけるアレルゲンの数は多く, そのアレルゲンは複雑である。ラテックスにおけるアレルゲンを研究する過程で, これらめ植物性アレルゲンの多くは生体防御タンパク質に関連し, その一種である14種類の感染特異的なタンパク質のうち, 6種類のタンパク質群がアレルゲンと関係していることが提唱されている。また, 多くのアレルゲンはプロテアーゼ/α-アミラーゼインヒビターなどの生理活性タンパク質群にも分類される。最近, アスパラギン結合型糖鎖がその糖鎖を有するアレルゲンにおいて共通エピトープとなることが指摘されている。
  • 瀬口 正晴
    2002 年 55 巻 5 号 p. 307-309
    発行日: 2002/10/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    小麦はユーラシア大陸のど真ん中で生まれ, 長い年月とともに世界中に広がった。人々は小麦の持つユニークな性質, まり水を加えると, 延びたり, 縮んだり, そして焼くと美味しいパン, 麺になることを知った。最近の我々の研究は, 内麦の酢酸ガス処理が製パン性の改良効果のあることを示した。また生活習慣病を防ぐための新しいパンとしてトリテケール (ライ小麦), カルカデ, 舞茸などのブレンドの可能性を示した。
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