最近の外科的栄養法の進歩により術後の栄養法も種々の方法が用いられているが,その適応となると,基準となる各種栄養法の効果の比較がなされていないため,不明の面が多い.著者は主として胃切除後の58症例に下記の如く各種栄養法を施行し,術後6日間の窒素出納試験と間接的熱消費量測定を中心に比較検討した.
I群(対照群):従来当教室で施行されて来た低カロリー輸液と経口投与基準に従った症例10例でN.B.は-9.75gN/日であった.
II群(中心静脈栄養群):アミノ酸2g/kg全投与カロリー40Cal/kgを目標に投与し, N.B.はほぼ0となった(n=8).
III群(末梢静脈栄養群):脂肪乳剤を主たる熱源とし,アミノ酸1g/kg全投与カロリー36Cal/kgを投与した8例で, N.B.は-3.34gN/日となった.
IV群(経管栄養群): (a)流動食としてサスタジェン®を用い, 1,000Cal/日を目標に投与した8例で, N.B.は-7.73gN/日となった.
(b) サスタジェンを2,000Cal/日を目標に投与した8例で, N.B.は-3.04gN/日となった.
(c) Elemental Dietであるフレキシカル®を用い, 1,000Cal/日を目標に投与した8例で, N.B.は-4.10gN/日となった.
V群(組合せ): III群の末梢静脈栄養にIV群(a)によるサスタジェンのチューブ栄養を組合せた8例でN.B.は-1.84gN/日となった.
術後の栄養法の選択には蛋白組織喪失量,手技,手数,術後合併症の予防,その回復力の保持,すみやかな社会復帰,正常食生活への復帰など多くの面を考慮する必要がある.中等度侵襲の腹部手術ではV群のような脂肪を加味した末梢静脈栄養に経管栄養を,更に実地では無理をしない経口摂取を加えた栄養法が効果的であると言えよう.
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