日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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52 巻, 9 号
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  • 小林 迪夫
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1927-1938
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 安富 正幸, 高橋 孝, 畦倉 薫, 磯本 浩晴, 山中 祐治, 平井 孝, 斉藤 典男, 志田 晴彦
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1939-1950
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 特に感染症発生に関する数量化の試みについて
    閑 啓太郎, 鴻巣 寛, 堀井 淳史, 下出 賀運, 久保 速三, 園山 輝久, 小林 雅夫, 内藤 和世, 山岸 久一, 岡 隆宏, 弘中 ...
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1951-1956
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    自験肝切除138症例を対象とし術後の感染症につき検討を加えた.感染症発生に関与する因子を統計学的に検討した結果, (1)悪性疾患群(p<0.05), (2)広範囲肝切除施行群(p< 0.05), (3)胆道再建付加群(p<0.01), (4)術中多出血症例(p<0.01), (5)長時間の手術症例(p<0.01)において有意に感染症発生率が高かった.さらに有意差はなくも, (6)Microtaze使用症例, (7)術後dead spaceを残す症例において発生が増す傾向を, (8)術前抗生剤投与群において発生が減じる傾向を認めた. (9)肝硬変の併存は発生に影響を及ぼさなかった.症例を感染症発生群と非発生群に分け,上記9つの因子から「林の数量化II類」による多変量解析を行った結果,感染症発生high risk群の設定が可能となった.これらhigh risk群に対しては,常に感染症発生を念頭においた注意深い術後管理が必要であり,さらに発生予防のために術前・術中を通じてのきめ細かな管理が必要と考えられた.
  • 久我 貴之, 竹中 博昭, 藤岡 顕太郎, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1957-1961
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胸部大動脈瘤の診断において,経食道カラードプラー断層法(以下TEE)の有用性は確立されている.解離性を含む胸部大動脈瘤13例を対象とした. 7例が解離性大動脈瘤で6例が真性大動脈瘤であった. TEEによりintimal flapを7例中全例で, entryを7例中6例で, reentryを7例中2例で検出可能であった. TEEは以上の点でCT, MRIおよびDSAなど他の如何なる検査法よりも優れていた.また壁在血栓,石灰化,アテローム潰瘍および大動脈弁閉鎖不全症がTEEで描出され,偽腔内モヤモヤエコー像が7例中6例で検出された. Entry部で流速が測定され,圧較差が計算された.解離性大動脈瘤7例がモヤモヤエコーとentry部での圧較差により分類された.
    TEEは非侵襲的で解離性を含む胸部大動脈瘤の診断と治療方針決定に有用と考える.
  • 小川 勝由, 岡部 郁夫, 野中 倫明, 越永 従道, 萩野 教幸, 岩田 光正, 武 豪, 森田 建
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1962-1966
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当教室において1981年から1990年までの10年間に30例の小児特発性胃軸捻転症を経験した.入院時年齢は新生児7例,乳児22例および年長児1例である.症状は29例(96%)に嘔吐がみられ,嘔吐発症時期は新生児期21例,乳児期7例(生後6カ月未満),学童期1例であり,ほとんどの症例は新生児期,幼若乳児期より嘔吐が出現していた.腹部膨満も12例にみられた.
    合併疾患はgastroesophageal reflux (GER)が23例(76%)と多く認められた.
    治療はまず保存的療法がなされ, 30例中24例が治癒している.しかし,残る6例はGERを合併しており保存的療法によって改善をみずに,手術的療法を行うことで治癒した.
    新生児期,幼若乳児期の特発性胃軸捻転症ではGERの合併が多いと考えられ,この点を留意した診断,治療が必要である.
  • 石井 芳正, 渡辺 文明, 安藤 善郎, 吉田 典行, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1967-1982
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃疾患患者228例(良性11例,再発17例を含む癌217例)を対象に末梢血リンパ球サブセットをsingle color法・two color法にて解析し,各モノクローナル抗体(OKT3, OKT4, Leu3, Leu8, OKT8, Leu2, Leu15, Leu7, Leu11, OKIa1, IL-2R)陽性細胞の相対比率及び絶対数について, stage, H, P, ps, nの各臨床病理学的因子による差異を検討した.またPHA幼若化能・血清IAP値についても同様に検討をした.
    single colorでの相対比の分析ではstageをはじめとする各因子からみた差異は認めなかったが,絶対数で検討すると進行例程低値を示した.
    一方機能的なサブセットとして評価のできるtwo color法では良性群に比べ胃癌においてcytotoxic T cell, helper T cellの比率は若干低値の傾向を示し, suppressor inducer T cell比は若干高値の傾向であったが有意な差ではなかった.
    PHA幼若化能は進行例で低値を示し血清IAP値は逆に高値を示し, PHA幼若化能と血清IAP値の間に負の相関を認めた.
  • 仲井 培雄, 米村 豊, 松本 尚, 津川 浩一郎, 木村 寛伸, 竹川 茂, 鎌田 徹, 大山 繁和, 小坂 健夫, 山口 明夫, 三輪 ...
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1983-1990
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    S1~S3進行胃癌41例を対象に, S1, S2部位を肉眼的に分類し,胃癌の肉眼的,組織学的所見,及び27例の腹腔内洗浄細胞診について比較検討した.漿膜浸潤部位は,苔状,腱状,微細顆粒状,粗顆粒状,塊状,炎症瘢痕状,白色瘢痕状に分類した.苔状と白色瘢痕状は判別に注意を要した. ps陽性率については,微細顆粒状100%,粗顆粒状87.5%,苔状80%の3型は,白色瘢痕状0%より有意に陽性率が高かった.また,これらの型は, S1 12.5%, S2 78.8%の陽性率と比較しても差を認め,深達度の判定に際し有用であった.組織型との関連は少なかった. INFおよび間質はある程度推定することが可能であり,特に,粗顆粒状と比較して有意にINFγの多い微細顆粒状,腱状,苔状,炎症瘢痕状,および, scirrhousの多い微細顆粒状,腱状は,漿膜面での癌の浸潤性を推定する上で有用であった. Borrmann 4型症例,腹腔内洗浄細胞診陽性例は,微細顆粒状,腱状,苔状にのみ認められた.
  • 橋本 俊, 清水 保延, 中村 司, 鈴木 達也, 水野 章, 由良 二郎
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1991-1994
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Whitehead法は痔核の根治術として有用な手術の1つと考えられる.しかし,わが国においては近年その術後の厄介な合併症,すなわち肛門狭窄や粘膜脱により一般的には用いられない.われわれはこのWhitehead法における合併症を防止するために低位鎖肛に通常用いられるPott's法を用いて工夫を行った.特に,吻合部の緊張をとるために肛門周囲のanodermをslidinng skin graft状とし,同時に直腸に括約筋輪に固定することを強調する.この方法は9例の痔核患者に用いた.結果肛門部の狭窄や粘膜脱は1年以上の後にも認められなかった.
  • 片岡 厚生, 五十君 裕玄, 志村 秀彦, 岡崎 正敏
    1991 年 52 巻 9 号 p. 1995-2006
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の術前TAE併用肝切除65症例について,術前TAEの功罪並びに予後に影響を及ぼす因子を検討した. Lipiodol-TAE像のCT後により高率(9.2%)に微小娘結節が発見された.これが術前TAEの最大の利点と思われた.また,術前TAEの臨床検査値に及ぼす影響を検討し,アルブミン,コリンエステラーゼ,プロトロンビン時間が著明に低下した.術前TAE併用肝切除例の予後を左右すると思われる関連因子14項目を選び,有意差検定を行ったが,顕微鏡的門脈腫瘍塞栓の有無,手術根治度,術中出血量の3項目のみに有意差を認めた.クラスター分析による多数量解析では顕微鏡的門脈腫瘍塞栓がなく,腫瘍径30mm以下の単発病変および多発病変でも単葉に存在する. 65歳以下の症例は術前TAE併用肝切除で5年生存する可能性が50%以上であった.
  • 吉村 信幸, 石山 秀一, 瀬尾 伸夫, 飯澤 肇, 布施 明, 安達 和仁, 緑川 靖彦, 塚本 長
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2007-2012
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1977年1月より1989年10月までの約12年間に摘脾療法を行った特発性血小板減少性紫斑病(ITP)症例の治療成績について検討し摘脾の有効性,長期予後の判定の時期などを明らかにした.摘脾例14例中男性5例,女性9例で,平均年齢は39歳であった.摘脾後血小板は全例増加し,うち93%は5万/mm3以上になった.最高値は術後2週以内にみられた. 14例中8例(57%)は1カ月をすぎても血小板数が維持されたが, 6例は1カ月以内に減少して3万/mm3以下になり,その後内科的治療が必要であった.術前γ-globulin投与は83%に有効であった.副脾による再発例が1例あり再手術により改善した.以上より, ITPの約60%に対し摘脾は根治的治療となり,その効果は摘脾後約1カ月という比較的早期に判断されると考えられた.しかし,副脾による再発もあるため長期的観察も必要である.
  • 加地 政秀, 臼井 典彦, 木村 英二, 岩本 広二, 西澤 慶二郎, 柴田 利彦, 南村 弘佳, 佐々木 康之, 石川 巧, 木下 博明
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2013-2018
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去15年間に大動脈炎症候群を除く上肢血行障害にて入院加療した36例のうち,鎖骨下動脈閉塞症15例に対して大伏在静脈分節を用い計17回の血行再建術を行い,手術適応並びに術式について検討を加えた.閉塞性動脈硬化症による鎖骨下動脈閉塞ではsubclavian steal syndromeに代表される脳虚血症状を呈するものにその手術適応を限り,手術侵襲の少ない腋窩動脈-腋窩動脈バイパス術を第一選択とし,そのグラフト開存率も良好であった.また外傷による腕神経叢麻痺に合併した鎖骨下動脈閉塞では全例手術適応とし,その閉塞部位により術式の選択を行った.すなわち鎖骨下動脈起始部で閉塞している場合には頸動脈-鎖骨下動脈バイパス術などを,鎖骨下動脈遠位側で閉塞している場合には静脈移植術などを施行し,グラフトは全例開存し良好な結果を得た.
  • 田村 洋一, 古山 正人, 竹尾 貞徳
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2019-2025
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腎機能低下を有する閉塞性動脈硬化症患者の血管造影後の急性腎機能障害を予防する目的で, 5種の補液法(A法:造影当日の1,000mlの輸液に加え,造影3日以上前より500ml/日輸液, B法:造影当日のみ1,000ml輸液, C法: B法に加え造影前後各5日間500ml/日輸液, D法: B法に加え造影後5日間500ml/日輸液, E法: B法に加え,造影剤注入直前にLipo-prostaglandin E1 10μg/body動注)を設定し,その有効性を比較検討した.その結果造影後7日目の入院時に対するクレアチニンクリアランス(Ccr)の変化率〔(Ccr造影後7日目-Ccr入院時)/Ccr入院時〕はA法で3.7±18.0%の悪化, B法で10.9±23.9%の悪化, C法で8.0±11.2%の改善, D法で15.0±16.3%の悪化, E法で4.6±11.4%の改善(Mean±SD)であった.以上より,閉塞性動脈硬化症患者で腎機能低下症例に血管造影を行う際は,造影前後各5日間以上の補液(500ml/日)或いは,造影直前のLipo-PGE1 (10μg/body)の動注が有用であると考えられた.
  • 阿部 啓一
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2026-2031
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結核治療の発達により結核性疾患は著しく減少したが,頭蓋内結核腫も依然として稀に存在する.当院では1964年に第1例を経験した後, 1982年に第2例を経験した.第1例は43歳時に鬱状態で当院精神科を受診し, 49歳時,意識消失発作で入院加療中,器質性疾患疑いとして脳神経外科に転科した.第2例は49歳時,局所性不随意間代性痙攣発作,シビレ感を訴え入院し,前者は髄膜腫の診断での術後に結核腫と判明,後者は術直前に結核腫と診断された.この2例を報告し文献的考察を加えた.本症の診断は,痙攣発作を主訴とする頭蓋内腫瘍疑診例で少若年者のみでなく結核と関連した比較的高年者でも,結核性疾患の既往歴に,留意する事が重要で, CT, MRIの活用,ステロイド,抗結核剤と全摘出術との組み合わせが最善の治療と考えた.
  • 迫 裕孝, 中根 佳宏, 沖野 功次, 仲 成幸, 若林 正人, 小林 知恵, 小玉 正智, 若田 泰
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2032-2036
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺原発の形質細胞腫を経験したので報告した.症例は76歳,女性で右頸部腫瘤を主訴として来院した.腫瘤は甲状腺右葉下部に存在し, 4.0×3.5cm大で,表面平滑,弾性硬,境界明瞭で,軽度可動制限がみられた.超音波検査で,辺縁不整,内部不均一,境界やや不明瞭な像が得られ,シンチグラムでは99mTcでcold nodule, 201Tlで集積像を示した.細胞診はclass Iであったが,悪性も否定できないため, 1990年10月1日,右葉切除術および旁気管,旁甲状腺リンパ節郭清を施行した.腫瘍は, 3.8×3.5×2.4cm大で,周囲への浸潤もなく摘出容易であった.病理組織検査で,腫瘍はplasma様細胞からなり形質細胞腫と診断され,周囲甲状腺には慢性甲状腺炎像がみられた.免疫組織化学でIgG, λ鎖が陽性であった.骨髄穿刺,全身骨X-P,骨シンチグラムで異常はなく,尿中Bence-Jones蛋白,血中のM蛋白も認めなかった.本邦において報告されている甲状腺原発の形質細胞腫の症例を集計したが自験例を含めわずか12例であった.
  • 佐々木 文章, 浜田 弘巳, 高橋 弘昌, 田口 和典, 蓮實 透, 亀田 博, 秦 温信, 内野 純一
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2037-2041
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近当科で甲状腺癌の精査中に偶然に上皮小体機能亢進症を合併した1例を経験したので報告する. 56歳女性で,前頸部腫瘤を指摘され,甲状腺腫瘍の診断にて当科入院となった.特に自覚症は訴えなかった.甲状腺癌の術前検査中に血清Caが11.2mg/dlと上昇していることに気づいた.血清PTHも高いことより上皮小体機能亢進症と診断した.両側甲状腺癌と右下上皮小体腺腫と診断し手術を行った.手術所見では甲状腺右葉上部と左葉中下部に甲状腺腫瘍が存在していた.右下に上皮小体腫瘍と思われる腫瘍がありこれを含め甲状腺全摘,前頸筋部分切除,両側頸部リンパ節郭清を行った.病理所見は甲状腺乳頭癌と上皮小体腺腫であった.術後速やかに血清Caは低下した.上皮小体機能亢進症の治療中に甲状腺腫瘍の合併に気づくことが良くあるが,甲状腺腫瘍を取り扱う際にも血清Ca値に注意する必要があると思われた.
  • 富山 泉, 呉 吉煥, 杉野 公則, 岩崎 博幸, 吉川 貴己, 鈴木 章, 松本 昭彦, 伊藤 隆明
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2042-2046
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は48歳男性.咳嗽,血痰を主訴として来院し,精査の結果巨大な縦隔腫瘍の気管支内転移と診断した.ただちに放射線治療を開始したが腫瘍の縮小効果はなく,肺転移を多発して2カ月後に死亡した.剖検で甲状腺腫瘍とそれに連続する縦隔腫瘍を認めた.組織学的検索では,甲状腺腫瘍は乳頭癌であるのに対して縦隔腫瘍は大部分未分化癌よりなり,一部に乳頭癌,扁平上皮癌,粘表皮癌が混在していた.縦隔腫瘍の乳頭癌部分はサイログロブリン染色陽性であることから,甲状腺乳頭癌が扁平上皮癌,粘表皮癌,未分化癌へtransformationした症例であると考えられた.
  • 中村 弘樹, 東野 正幸, 大杉 治司, 裴 光男, 前川 憲昭, 上野 哲史, 安田 晴紀, 徳原 太豪, 谷村 慎哉, 福長 洋介, 木 ...
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2047-2052
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道狭窄で発見された甲状腺濾胞癌の一切除例を報告する.症例は嚥下困難を主訴とする72歳女性.食道造影,内視鏡検査で食道狭窄を認め,甲状腺シンチグラフィー,超音波検査では甲状腺癌食道浸潤が疑われた.術中迅速病理検査で,食道狭窄は甲状腺癌リンパ節転移巣の浸潤によるものと判断された.そこで,甲状腺全摘出,喉頭摘出,頸部食道切除,永久気管瘻形成,両側頸部リンパ節郭清を行い,食道は遊離空腸にて再建された.術後の病理組織検査の結果は,甲状腺左葉原発の濾胞癌であった.
    甲状腺癌が浸潤する臓器としては,気管,内頸動静脈が多い.本症例は甲状腺の主病巣は小さく,転移リンパ節が食道に浸潤して発見された.甲状腺癌の分化型腺癌は周囲臓器に浸潤しても,合併切除が行えれば,一般に予後は良好で,本例も術後1年6カ月の現在,再発を認めず経過良好である.
  • 杉山 和義, 河端 誠, 射場 敏明, 菊地 直心夫, 福永 正氣, 木所 昭夫, 谷 尚志, 八木 義弘, 霜多 広, 石 和久
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2053-2056
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは最近経験した男性の乳腺に原発したmalignant fibrous histiocytomaの1例をもとに若干の文献的考察を行ったので報告する.症例は31歳の男性で, 10年前右乳房腫瘤切除術を施行されていたが,再び右側乳房(D)領域に増大傾向を示す無痛性腫瘤(3×2cm)を認め当科受診した.試験切除した腫瘤は灰白色で辺縁は比較的明瞭であった.組織学的には,紡錘形の腫瘍細胞が典型的にstriform pattern像を呈し,乳腺に原発したmalignant fibrous histiocytomaと診断された.約3週間後単純乳房切除術を施行したがリンパ節廓清は施行しなかった.腫瘍細胞の脂肪組織への浸潤を認めた.術後も補助化学療法は施行していないが,患者は術後1年2カ月を経過した現在も再発転移の徴候はない.
  • 西元寺 秀明, 森下 靖雄, 平 明
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2057-2060
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的稀とされる炎症性腹部大動脈瘤の1手術治験例を経験した.患者は59歳,男性で腹痛を主訴として入院した. CT scan像で軟部組織に包まれた動脈瘤がみられた.手術時動脈瘤の表面は白く光沢があり,空腸,腸間膜に強く癒着していた.人工血管置換を施行した.動脈瘤壁の病理所見は動脈硬化性変化を呈し,中膜,外膜に主にリンパ球,プラズマ細胞からなる炎症性細胞浸潤がみられ,更に外膜の著しい線維性肥厚が特徴的であった.本症は動脈瘤と周囲組織との癒着が著明なため,剥離を最小限にとどめ副損傷の発生防止に努めることが手術手技上大切である.
  • 天野 篤, 外山 雅章, 柳 一夫, 佐藤 健志, 田辺 大明, 尾崎 重之
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2061-2066
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    20歳女性で感冒様症状から起坐呼吸となり心エコーにて左房内腫瘍・心タンポナーデと診断されたため緊急手術を行った.肉眼的に悪性の所見を認めたので腫瘍の全切除と左房3/4・心房中隔1/2・右房1/2の合併切除を施行した.その結果ダクロンシートを用いた肺静脈再建を含む広範な心房再建が必要であった.組織学的には粘液肉腫の診断で,再建に伴う心機能低下や重症な不整脈は認めず術後経過は良好であった.術後2カ月で完全に社会復帰したが, 6カ月目に肺転移を認め化学療法にもかかわらず11カ月目に死亡した.心臓悪性腫瘍は臨床症状が著明になってから治療が開始されるため予後不良であるが,本症の様に全摘出によって一時的には完全に社会復帰可能なまで回復する場合もあるため有用な手術であると考え報告した.
  • 門倉 光隆, 谷尾 昇, 野中 誠, 山本 滋, 加藤 博則, 山田 真, 舟波 誠, 高場 利博, 渡辺 敢仁
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2067-2071
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性. 33年前の労災事故で両側下肢完全麻痺となり,以後臥床生活を送っていたが,呼吸困難発症のため救急受診した際,巨大ブラに合併した気胸と診断された.なお8年前,某医にて自然気胸の診断で約2週間の胸腔ドレナージを受けていた.入院後直ちに胸腔ドレナージを施行したが,一側肺野を占める大きなブラにより縦隔は健常側へ偏位したままであり,呼吸困難はほとんど解消されなかった.さらにこのブラ内ヘドレーンを挿入して縦隔偏位や症状の改善がみられたが患側肺の拡張は得られず, Naclerio-Langer法に準じたブラ切除・縫縮を行った.長期間の臥床により生じた褥創処置の他は問題なく経過し,動脈血液ガス分析所見もPaO252, PaCO2 37mmHg (酸素吸入4L/分)から術後はroom air条件下にてPaO2 60, PaCO2 43mmHgと酸素投与も必要とせず術後40日目に退院となった.
  • 大石 明雄, 鈴木 弘行, 石井 俊一, 高野 祥直, 鈴木 正雄, 森山 厚, 矢内 康一, 遠藤 豪一, 管野 隆三, 薄場 彰, 井上 ...
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2072-2077
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左N3肺癌5例に対し,標準的肺切除後に胸骨正中切開下で縦隔リンパ節郭清を追加した.
    術前化学療法を3例に行い,小細胞癌の1例で81%の縮小率を得た(観察期間1カ月).上葉切除術を3例に肺摘除術を2例に行い, R3βの郭清を4例に, R3γの郭清を1例(病理病期N3γ)に行った.術後合併症として,左反回神経麻痺,頻脈,多尿,嚥下性肺炎後のARDSがあったが,本術式の手術侵襲と関係した合併症は多尿のみであった. ARDSによる術死が1例あった.術後化学療法を2例に,化学療法と放射線療法を2例に行った.生存例は術後6カ月, 12カ月の2例であるが,後者は右鎖骨上リンパ節転移と癌性心膜炎による再発例である. 2例は術後14カ月, 15カ月に死亡した.何れも縦隔リンパ節が初発の再発部位であった.
    以上から,左N3肺癌に対し胸骨正中切開下で縦隔郭清を追加する際は,遠隔転移のみならず局所再発に対するより一層の配慮が必要と思われた.
  • 谷田 信行, 谷木 利勝, 井上 洋行, 善成 雅彦, 戸田 和史, 木下 雅俊, 住友 正幸, 木村 秀, 宇山 正, 原田 邦彦, 門田 ...
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2078-2082
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右横隔膜に多発性の欠損を認め,そのうち3カ所に肝の脱出を伴った先天性横隔膜ヘルニアを経験したので報告する.症例は, 42歳の男性.胸部X線異常陰影精査のため当科紹介され,入院となった.胸部X線写真では,右横隔膜中央に接し,上方に突出するポリープ状腫瘤陰影を認めた. CT, MRI,肝シンチ等にても確定診断できず,試験開胸術を行った.手術所見では,右横隔膜腱中心部に3カ所,壁側胸膜に被われた肝の突出があり,周囲腱中心にも数mm大の欠損を多数認めた.多発性の横隔膜欠損に複数の肝の突出を伴う先天性横隔膜ヘルニアの報告は,調べ得た限りでは,今までに1例のみである.
  • 豊田 暢彦, 倉吉 和夫, 牧野 正人, 村上 篤信, 西村 興亜, 貝原 信明
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2083-2087
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    横隔膜ヘルニアのうち,比較的まれなMorgagni孔ヘルニアの1例を報告するとともに,本邦報告例を集計し臨床的検討を加えた.症例は71歳の女性で,頻回の嘔吐を主訴として来院.胸部X線写真および各種造影検査所見より,胃前庭部および横行結腸を内容としたMorgagni孔ヘルニアと診断し,経腹的にヘルニア根治術を施行した. Morgagni孔ヘルニアの本邦報告例は, 1989年までに自験例を含め253例であった.発症年齢では, 6歳以下と51歳以上に多く,性別では男性よりも女性の方が2倍以上多かった.ヘルニア内容では,大網が最も多く,以下横行結腸,小腸,肝の順であった.本症例のように胃と横行結腸を内容としたものは少なかった.ヘルニア内容が大網の場合CTが質的診断に有用であった.手術法としては,術前にMorgagni孔ヘルニアの確診が得られれば経腹的な根治術が妥当であると思われる.
  • 雷 哲明, 野田 尚一, 鹿野 奉昭, 家永 睿
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2088-2092
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    有茎性に発育する胃カルチノイドはきわめてまれであるが,われわれは有茎性胃カルチノイドを経験したので報告した.症例は75歳の女性であり,胃集団検診で異常を指摘され,胃透視および胃内視鏡検査では胃角上部小弯に4.3×3.3×3.0cmの有茎性ポリーブがあり,他医での生検がグループVであったので,胃癌との診断で胃部分切除,リンパ節廓清を行った.術後病理組織診断では粘膜下層に浸潤するカルチノイドであり,リンパ節転移や遠隔転移はなかった.カルチノイド症状はなく,セロトニン,セクレチン,尿中5-HIAA等はすべて陰性であった.術後1年5カ月現在再発の徴候はなく健在である.胃カルチノイドが有茎性に発育する原因として,ポリーブの重力や蠕動亢進による胃粘膜の牽引,高齢による胃壁の弛緩などが考えられた.
  • 日野 眞子, 織畑 道宏, 士谷 昇二, 前川 武男, 榊原 宣, 和田 了, 桑原 紀之
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2093-2097
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Borrmann 3型胃癌の診断を受けた19歳女性の症例.腹部血管造影において脾静脈および上腸間膜静脈の途絶が認められ切除不能胃癌と診断,中心静脈栄養下にEtoposide, Epirubicin (=Adriamycin), Cisplatinの3剤による化学療法(以下EAP療法)を開始した.開始後2週間目の上部消化管造影検査で腫瘍の著明な縮小を認め(縮小率: 94%),入院時高値を示していた腫瘍マーカーも著明に低下した.切除可能と判断し, EAP療法開始後4週間目に胃全摘術および脾摘術を施行.肉眼的進行程度ははP0H0S2N3(+), Stage IV,病理組織診断は印環細胞癌であった. EAP療法の効果は組織学的効果判定基準でGrade 2と判定.術後,再度EAP療法施行したのち退院となった.
    若年者の切除不能進行胃癌で術前のEAP療法が有効であった1例を経験したので報告する.
  • 早川 哲史, 品川 長夫, 岩井 昭彦, 岡田 祐二, 水野 裕支, 由良 二郎
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2098-2102
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    本邦におけるProgressive Systemic Sclerosis (PSS)と悪性腫瘍との合併例の報告は少ない. PSSに胃癌を合併した症例を経験したので,本邦報告例を集計し,若干の文献的考察を加えた.症例は63歳の女性,両示指の化膿創により受診し,貧血が指摘された.上部消化管造影にて,胃体部より前庭部に及ぶIIc様進行癌と診断された. Raynaud症状を認め,入院後PSSと診断した.食道下部に糜爛,易出血性病変を認めたため,術後食道への逆流を少なくする目的で,小範囲の胃を残し,胃亜全摘術を施行し,空腸間置法にて再建した.胃癌とPSSとの合併は本症例を含め6例の報告例に過ぎないが, 6例中5例が低分化型腺癌であり, Borrmann IV型が多いことは興味深い. PSSでは動脈の狭小化による血行障害や食道下部の病変も存在するため,術後の縫合不全,逆流性食道炎による食道狭窄などの合併症の防止を考慮し,再建術式を検討する必要があると考えられた.
  • 長見 晴彦, 田村 勝洋, 矢野 誠司, 野原 隆彦, 中川 正久, 山本 剛史, 中瀬 明, 三浦 弘資
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2103-2107
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,私達は74歳女性で多発性早期胃癌に合併した胃カルチノイドの1症例を経験した.病理組織学的には幽門部前壁の2.8cm×2cm×1cm大の山田IV型ポリープ状の早期癌(tub 1, depth m),胃角部前後壁に広範に拡がる7cm×4.5cm大のIIc型早期癌(tub 2~tub 1, depth m)の2個の癌巣と幽門部小弯側の粘膜下層を増殖の主たる部とする1.5cm×0.7cm大の小型胃カルチノイドより構成されていた.これまで本邦では胃癌と胃カルチノイドの合併例は自験例も含めて36例報告があるが,多発性胃癌と胃カルチノイド合併例は自験例のみである.最近では多発性胃癌や胃カルチノイドの発生母地として萎縮性胃炎が重要視され,自験例でも周辺胃粘膜に萎縮性変化を認めた.
    従って高齢者においては萎縮性胃炎を基盤とした胃癌と胃カルチノイドの合併例は今後増加すると考えられる.
  • 奈良 智之, 川崎 恒雄, 芦川 敏久, 川村 徹, 長瀬 慈村, 上江田 芳明, 菊池 正教
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2108-2114
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大量下血を主訴とした18歳男性のMeckel憩室内潰瘍, 65歳女性の空腸AVM, 44歳女性の空腸血管腫の小腸良性病変を有した3症例を経験し,手術,治癒せしめた.
    この3症例の経験より,原因不明の急性または慢性の消化管出血の原因の一つとして小腸の血管性病変は重要であること,大量下血を伴う小腸疾患に対しては緊急腹部血管造影が有効であること,術中肉眼所見で,出血部位の同定が困難の時は,内腔を洗浄しながらの術中内視鏡が有効かつ不可欠であること,小腸切開ならびに切除を最小限にするためには患者の状態が許すならば,出血が持続している間に手術することが望まれること,術中部位診断ができない時は,確実性を増すために,血管撮影にて同定された部位より,切除範囲を拡大しておいた方が良いことなどを痛感した.これら3症例の診断,治療につき,文献的考察とともに報告する.
  • 藤原 敏典, 郷良 秀典, 野島 真治, 丸本 多, 江里 健輔, 服部 守志
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2115-2119
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    子宮内腸重積は先天性小腸閉鎖症の病因の一つとしてあげられるがapple peel型腸閉鎖を呈することはまれである.われわれは胎生期子宮内腸重積の穿孔によって起こったと思われる胎便性腹膜炎を合併したapple peel型腸閉鎖症例を経験したので報告する.患児は腹部膨満の著しい生後0日目,生下時体重2,345gの女児.腹腔内には強固な癒着があり,小腸はTreitz靱帯から約45cm末梢で盲端となっていた.肛門側腸管端は穿破しており,内腔には重積した腸管と思われる隆起が見られた.肛門側部の腸は約5cmにわたるapple peel状となった腸管を含め回腸末端まで約30cmの長さであった. apple peel部と口側盲端部を切除し一期的腸吻合を施行した.残存小腸は約70cmであったが患児は順調に発育している.
  • 久保 俊彰, 山本 時彦, 前川 善水, 山本 東美雄, 梅山 馨
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2120-2124
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸間膜嚢胞は比較的稀な疾患であるが,今回急性腹症を併発した小腸腸間膜リンパ管腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    患者は18歳男性.主訴は心窩部痛.現病歴は平成元年4月29日夜半突然心窩部痛が出現し,急性腹症の診断にて入院.入院時所見では腹部は板状硬で,著明な節性防御を認めた.入院時検査では白血球増多を,腹部X線像でniveau像を,腹部超音波検査では拡張した腸管と腹水を認めた.以上より絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.術中所見では多量の血性腹水と小腸軸捻転ならびに腸管の壊死を認めたほかTreitz靱帯より1.5m肛門側の腸間膜に手拳大の腫瘤を認め,腫瘤を軸とした小腸軸捻転と診断し,腫瘤を含めた小腸部分切除術を施行した.組織学的には上皮様細胞で被われた拡張した多数の腔を認め,海綿状リンパ管腫と診断した.
  • 成人の1症例報告ならびに成人および小児開腹術後腸重積症の対比
    成田 洋, 船橋 克明, 吉冨 裕久, 山守 暢子, 井口 智雄, 保里 恵一, 羽藤 誠記, 伊藤 昭敏, 由良 二郎
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2125-2131
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃切除術後15年目に発症した空腸胃内重積症の1例を報告し,併せて成人,小児の開腹術後腸重積症の本邦報告例を集計,年齢による病像の差異につき検討した.
    症例は59歳男性,上腹部痛および吐血を主訴に来院.既往歴として15年前に胃潰瘍でBII法による胃切除術を受けている. UGI, GIFの結果,空腸輸出脚の残胃内重積と診断,開腹術を施行した.術中所見では輸出脚が胃内へ逆行性に約30cm嵌入し3筒性の重積を形成していた.絞扼は軽度で用手的整復が可能であった.術後経過は良好である.
    過去40年間の開腹術後腸重積症の本邦報告例は成人266例,小児53例で前者は胃切除術後,後者は後腹膜腫瘍手術後での発生例が多い.両者の相違点としては,小児例は発症時期が術後5日前後と極く早期で徒手整復可能例が大多数を占める.これに対し成人例の発症は10日前後で腸切を要するものが多い等の点が挙げられた.
  • 豊田 仁, 守屋 卓, 百瀬 隆二, 前川 武男, 榊原 宣
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2132-2135
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    2年前に誤飲した義歯による虫垂膿瘍を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は47歳,男性.右下腹部痛を認めたが放置.腰痛,発熱が出現したため当院受診.受診時右腰部叩打痛,右下腹部に圧痛,腹膜刺激症状を認めた.体温38.2℃,白血球数12,500/mm3,尿潜血(-)であった.腹部単純X線写真では,右下腹部に10×8mm大のX線不透過性異物を認めた. Enhanced CTでは,右腸腰筋内に均一なlow density areaと後腹膜腔にhigh density spotを認めた.異物による虫垂膿瘍の診断で緊急手術を施行した.虫垂は炎症性に腫大し,後腹膜,腸腰筋と強く癒着し,腸腰筋内に鶏卵大の膿瘍を形成していた.手術は虫垂切除術,腹腔内,腸腰筋内膿瘍ドレナージ術を施行した.切除虫垂内に2年前に誤飲した義歯が認められた.異物による虫垂炎の術前診断は,問診に注意し,腹部単純X線写真の詳細な読影が重要であると思われた.
  • 高橋 孝郎, 田淵 純宏, 橋本 哲, 吉田 彰, 小川 敏幸
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2136-2140
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は稀な疾患であり,その術前診断は困難である.今回,われわれは術前原発性虫垂癌を強く疑った2症例を経験し,うち1例は胆嚢癌との重複症例であったので報告する.
    症例1は49歳女性で主訴は右下腹部痛.同部に腫瘤を触知し,注腸造影で盲腸に陰影欠損を認めた.腹部超音波検査で嚢胞様パターンを示し, CTでは内部低濃度で周囲がよく造影される像をえた.以上を総合して虫垂腫瘍を疑い回盲部切除(R2)を行い病理学的にmucinous cystadenocarcinomaの診断であった.
    症例2は83歳女性.不明熱の精査で胆嚢腫瘍が発見され,その深達度をみるための注腸造影で盲腸に陰影欠損を認め,虫垂腫瘍との重複を疑い,胆嚢摘出,右結腸切除(R2)を行った.病理診断は,胆嚢は高分化腺癌,虫垂はmucinous cystadenocarcinomaであった.
  • 吉田 泰憲, 岡村 健, 安川 浩文, 白日 高歩, 今田 育秀, 川原 英之
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2141-2144
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸の嚢胞様気腫症の1例を経験した.症例は度重なる腹痛を主訴とする51歳の女性で既往歴,家族歴に特記事項を認めなかった.注腸造影にて大腸脾弯曲部に半球状隆起を多数認め,腹部CT及び大腸内視鏡検査にて大腸嚢胞様気腫症と診断した. 2.5気圧, 60分/回の高圧酸素療法を計8回施行した結果,病変は全く消失した.以後4年間再発をみていない.腸管の嚢胞様気腫症は比較的稀な疾患であり,治療方法も様々な方法が報告されているが,今回施行した高圧酸素療法は治療期間が短く確実に良好な結果が得られる点で,優れた治療法と言える.
  • 冨田 冨士夫, 高島 茂樹, 後藤田 治公, 加藤 真史, 斉藤 人志, 櫛引 健, 芦田 義尚, 木南 義男
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2145-2150
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は38歳男性.粘血便を主訴に来院する. 21年間の潰瘍性大腸炎の治療歴を有し,注腸検査および大腸内視鏡検査にて,肛門縁より3cmの下部大腸に周囲との境界が不鮮明で扁平な隆起性病変がみられ,内腔は明らかに狭窄を呈していた.組織診にて直腸癌と診断し直腸切断術を施行した.切除標本の病理組織学的検査ではwell-moderate differetiated adenocarcinoma a1, IFNγ, ly2, v0, n1 (+), stage IIIであった.癌腫の周囲粘膜にはdysplasiaがみられ,さらに癌腫より8cm口側の粘膜下層に大きさ2mmのカルチノイドを認めた.潰瘍性大腸炎の長期経過例に対しては癌腫の合併のみならずカルチノイドをも念頭においた検索が肝要と考えられた.
  • 石田 秀行, 井上 敏直, 西岡 良薫, 丸野 要, 三島 好雄, 佐藤 正夫, 古瀬 光
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2151-2155
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は沖縄県出身の42歳女性,上腹部痛と発熱を主訴に来院.急性胆嚢炎,胆嚢周囲膿瘍の診断にて緊急手術(胆嚢摘出術,膿瘍腔ドレナージ,総胆管切開・T-tubeドレナージ)を施行した.術後T-tubeより採取した胆汁中に多数の糞線虫の虫卵, R型幼虫に加え雌成虫が検出された.術後41日目よりthiabendazoleを投与したところ,胆汁及び糞便から速やかな虫卵・虫体の消失と,術後遷延して存在した壁不整を伴う胆管狭窄の著明な改善を認めた.また,術後の血清学的検索にて,成人T細胞性白血病(ATL)のcarrierであることが判明した.本症例では異所寄生のみられた胆管に狭窄の認められたこと,駆虫効果を胆汁検査により直接観察できたこと, ATLのcarrierであったこと等,臨床的に極めて興味深いと考えられたので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 武藤 功, 音羽 剛
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2156-2160
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    不定愁訴で入院中,発見された漿液性膵嚢胞腺腫の1例を経験した.症例は66歳女性,主訴は両手のしびれ感で消化器症状はなかった.腹部超音波, CT所見で膵体部に腫瘤像を認め, ERP所見で膵管の圧排像がみられ,血管造影では幾分hypervascular patternであった.膵体部嚢胞腺癌と診断し手術を施行した.腫瘤は4×4.5cm,境界明瞭で,割面は漿液様物質を含んだ小嚢胞が多数存在しており,病理組織学的に漿液性膵嚢胞腺腫との診断で,悪性所見はなかった.
  • 上原 伸一, 佐藤 芳邦, 吉峰 修時, 東 俊策, 安保 喜久郎
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2161-2167
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    特異なレントゲン像を呈し術前診断に難渋した巨大な膵嚢胞腺腫を経験したので報告した.患者は75歳女性で腹部腫瘤及び不快感を主訴として来院.腹部単純写真で腫瘤陰影とその中にair-fluid levelを示す異常なガス像を認め, CTではhighとlow densityの混在した嚢胞状腫瘤で内視鏡あるいはU-GISにて消化管との交通は不明であった.膵頭部嚢胞性腫瘍の診断で開腹し膵頭十二指腸切除を施行した.腫瘍は1,035gでその割面は無数の小嚢胞と1個の大きな嚢胞は十二指腸第三部と針頭大の瘻孔を形成しており,術前単純写真の異常ガス像を説明するものと考えた.組織学的に腫瘍はserous cystadenomaと診断された.本腫瘍は比較的稀な腫瘍であるが, CT,エコー,血管造影等により術前診断も可能と思われる.しかしながら本症例のごとく巨大となり腸管に穿破した場合特異な病態を呈することもあり,その診断は必ずしも容易ではないと考えられた.
  • 岸本 秀雄, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 小川 弘俊, 中村 従之, 織田 誠, 都築 尚生
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2168-2172
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    非常に稀な膵の粘液表皮癌の1切除例を報告した.症例は48歳,女性.心窩部痛,背部痛を主訴に当院へ入院した.腹部超音波検査,腹部CT,腹腔動脈造影にて,膵体部に3cm大の境界比較的明瞭なvascularityに乏しい腫瘤を認めた. ERCPにて主膵管の体部での限局性の狭窄を認めた.膵体部癌の疑いにて手術(膵全摘,門脈合併切除)を施行した.病理組織学的検索にて,粘液表皮癌の診断を得た.膵の粘液表皮癌は非常に稀で,本邦で2例の報告例をみるに過ぎない.本例における病巣は肉眼的には限局しているにもかかわらず,尾側への膵実質内進展並びに血行性転移(肝転移)を認め,予後は不良と思われる.本例の組織像の特徴は扁平上皮細胞と粘液産生細胞の二方向への分化を示している点であり,膵癌の組織発生を考える上で示唆に富む所見である.
  • 中山 均, 川嶋 寛昭, 上田 耕臣, 稲生 誠樹, 青木 洋三, 谷村 弘
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2173-2178
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    13歳,女児に発生した遊走脾茎捻転の1例を経験した.
    腹痛・下痢・嘔吐を主訴に来院し,腹部エコー, CTで左下腹部に充実性腫瘤がみられ,血液検査では,軽度の貧血と炎症所見を示すとともに, CA125が465U/mlと上昇していた.卵巣腫瘍茎捻転の術前診断で手術を施行した.腫瘤は大網とS状結腸膜に線維素性に癒着した遊走脾で,脾固定靱帯は見られず,茎は360°時計方向に捻転していた.脾実質は出血性梗塞に陥っていると思われたので脾摘術を行った.摘出脾は大きさ19×10×5.5cm,重さ500gであった.術後経過は良好で第13病日に退院した.
    本邦で報告されている遊走脾は自験例を含め64例で茎捻転を合併し外科的治療を要したのはこの内の38例59%であった.
  • 重永 啓子, 本多 弓〓, 岸川 博隆, 田中 宏紀, 林 正修, 服部 浩次
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2179-2182
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Hippel-Lindau病の1家系に生じた褐色細胞腫の兄妹例を報告する.兄は両側副腎を含む多発性腫瘍で,ノルエピネフリン優位の血中カテコールアミンの上昇に伴う臨床症状で発症し可逆的腎動脈狭窄症を合併した.一方妹は,左副腎原発で周囲臓器に浸潤しカテコールアミンの上昇を伴わない悪性非機能性腫瘍で,門脈本幹の腫瘍塞栓による門脈圧亢進症から食道・胃静脈瘤を合併し吐血をきたして発症, 1年4カ月の経過を経て死亡した.
    Hippel-Lindau病の家系員には定期的なスクリーニングを行い合併疾患の早期発見に努めるべきであるが,妹の例はスクリーニングが不十分で腫瘍の発見が遅れた反省すべき症例であった.
  • 倉林 英夫, 岡部 郁夫, 松田 光郎, 萩野 教幸, 岩田 光正, 森田 建
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2183-2187
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    新生児卵巣嚢胞は以前は早期手術がなされてきた.しかし,最近では周産期の超音波検査より,無症状あるいは小さな嚢胞の発見例が増加してきており,また,嚢胞の自然消退のあることが知られ,本嚢胞の治療方針について必ずしも一致した見解がえられているとは言い難い.私共は出生診断された2例を含む新生児卵巣嚢胞5例を経験した.このうち4例は自然経過を観察し, 2例は生後1週以内に嚢胞の縮小を認め, 1カ月以内に消退したが,他の2例は縮小傾向を認めず生後20日, 40日に嚢胞摘除を行った(開腹時に茎捻転合併).残る1例は生後28日に診断された大きな嚢胞で手術を行った(嚢胞内容は血性).これらの経験から,出生前あるいは出生早期で,合併症のない嚢胞経4cm以下の症例では自然経過を観察し, 1~2週間で縮小傾向を認めない場合,また, 4cm以上の大きな場合は嚢胞の穿刺吸引を行い,茎捻転を防ぎながら経過観察を行いたいと考えている.
  • 片村 宏, 杉山 貢, 土屋 周二
    1991 年 52 巻 9 号 p. 2188-2192
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左腹壁に発生した滑膜肉腫の1例を経験した.患者は20歳の男性で, 2年前より徐々に増大する腹壁腫瘤のために来院した.明らかな腫瘍マーカーの上昇はなかった.胸部X線写真上異常はなく,腹部単純X線写真上小腸の右側への圧排はあるが通過障害はなかった.超音波およびCT検査では腫瘤は腹腔内に突出しており,嚢胞構造を呈し壁には石灰化を認めた.腹部血管造影検査では明らかな支配血管は同定されなかった.増大傾向が強く,腹腔内臓器を圧排し,悪性腫瘍も否定できず摘出術を施行した.病理学的には上皮様構造と紡錘形の細胞が増生した線維肉腫様構造からなる二相性構造を示し,滑膜肉腫と診断した. flow cytometryではいずれもdiploidyであった.腹壁の滑膜肉腫は本邦で2例目,海外でも17例が報告されているのみである.既報告例を集計し,文献的考察を加えた.
  • 1991 年 52 巻 9 号 p. 2193-2207
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 52 巻 9 号 p. 2208-2222
    発行日: 1991/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
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