日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
54 巻, 9 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
  • 立川 勲, 浜野 恭一
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2195-2203
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 投与する糖質の選択とインスリン投与法
    藤田 哲二, 松本 美和子, 尾高 真, 桜井 健司
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2204-2210
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    消化器外科手術を受けた糖尿病患者34例を対象として,術後1週間6時間おきに血糖を測定した.さらに投与した糖質の種類およびインスリンの投与経路が血糖変動におよぼす影響を検討した.術後1日目に血糖はもっとも激しく変動し,変動値の平均は107.90mg/dlであった.術後2~6日目には血糖の変動は比較的安定し54~72mg/dlの範囲内にあった.しかし術後7日目には96.51mg/dlとやや上昇した.糖質としてグルコースのみを輸液した症例では,グルコース以外の糖質も併用した症例に比べて術後1日目の最高,最低血糖値は有意に高かったが,血糖変動値には差がなかった.インスリンを皮下注射により投与した症例では,術後2~4日目の血糖変動値の平均は62.64mg/dlと,インスリンを点滴内に混注した症例の91.59mg/dlに比べて有意に低かった (p<0.025). これらの結果より,糖尿病患者の術後管理でもっとも大切なことは緊密で正確な血糖測定であろう.
  • 加瀬 肇
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2211-2218
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌患者を対象に,周術期の輸血が術後の免疫能にどう影響するかを,末梢血リンパ球サブセットを計測して観察した.まず非輸血群を検討すると術中よりCD11(+)CD8(+) 細胞比の上昇とCD4(+)2H4(+) 細胞比の低下が生じた. CD4(+)2H4(-) 細胞比も術中より低下し,術後に進行度や術式に応じて長期間低下,遷延した.輸血群は術中のみに輸血した11例のstage I+II亜全摘群で検討した.非輸血群に比べ輸血群ではCD4(+)2H4(-) 細胞比の低下とCD11(+)CD8(+) bright細胞比の上昇を認め,さらに長期間免疫抑制状態が続くことが判明した.これらを改善する目的で自己血輸血を試みたところ (17例), CD11(+)CD8(+) bright細胞比の上昇は抑えられ, CD4(+)2H4(-) 細胞比はむしろ上昇した.したがって,輸血による免疫抑制を自己血輸血では回避できる可能性が示唆された.
  • 小柳 泰久, 木村 幸三郎, 青木 達哉, 伊藤 伸一, 多村 幸之進, 浦田 義孝, 長江 逸郎
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2219-2223
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1968~1988年に東京医科大学外科において手術された肥厚性幽門狭窄症114例を手術時期によって5群に分けて臨床像,術中所見,採取した筋層の計測などについて比較,検討した.生後14日以内に手術されたものをI群, 15~30日をII群, 31~60日をIII群,61~90日をIV群, 91日以上をV群とした.
    術前の状態,術後の経過ともにI群II群(即ち,新生児期手術群)が晩期に手術された群ことにIV群V群に比較して良好であった.従って,本症の術前,術後管理にあたっては手術時期のおそい症例に対して,より綿密な注意が必要である.
  • 青柳 慶史朗, 橋本 謙, 孝富士 喜久生, 児玉 一成, 丸岩 昌文, 大田 準二, 武田 仁良, 掛川 暉夫
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2224-2228
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌における,腫瘍の増殖,進展とEGFとの関連をみるため,胃癌組織94例に対し抗ヒトEGF抗体を用い免疫組織化学的染色をおこなった.
    EGF陽性率を各因子別にみると,深達度別ではps(+), stage別ではstage III, IVで高かった.組織型では分化型と未分化型との間にEGF陽性率の有意な差は認めなかったが, C領域癌に限ってみると未分化型にEGF陽性率が分化型に比し高い傾向をしめした.また, EGF陽性群と陰性群では,陽性群にリンパ節転移が高率に認められた.
    予後についてみると, stage III, IVにおいて, EGF陰性群は陽性群に比し5年生存率は高率であった.
    以上より, EGF陽性胃癌は浸潤増殖能が高く, EGFは胃癌において予後規定因子の1つになる可能性が示唆された.
  • 小河原 忠彦, 関川 敬義, 酒井 敬介, 河野 浩二, 本田 勇二, 鄭 子文, 三木 修, 松本 由朗
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2229-2234
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌原発巣のリンパ管侵襲の程度と,リンパ節転移陽性の範囲の関係を胃癌切除術施行236例で検討した.その結果リンパ管侵襲度が増すに従い,より遠位リンパ節へ転移が進展していた.また同程度のリンパ管侵襲でも,リンパ節転移が高度な症例(高転移群)と,高度でない症例(低転移群)に大別すると,原発巣では両者の組織型に差は認あないが,リンパ節転移巣では高転移群に低分化癌の頻度が高かった.
    一方,胃癌所属リンパ節に転移が成立するとnatural killer cell (NK) 比率が上昇していた.このNK細胞比率の上昇に注目し, NK活性の高さを同時に表す指標としてNK index (%(Leu7-CD16+)×3+%(Leu7+CD16+)×2+%(Leu7+CD16-)×1) を設定し,高転移群13例と低転移群8例の転移陽性1群リンパ節でのNK indexを比較した.低転移群で42.1±24.3と高転移群7.3±5.0に比し上昇していた (p<0.01).
    以上から,胃癌のリンパ節転移はリンパ節に転移した癌細胞が低分化癌ほどより遠位に転移し易く,高分化癌に対してはNK細胞が反応して遠位リンパ節への転移を抑制している可能性が示唆された.
  • 田中 紘輝, 豊平 均, 下川 新二, 石部 良平, 森山 由紀則, 山田 和彦, 西村 明大, 石崎 直樹, 平 明, 有川 和宏
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2235-2240
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Nonocclusive mesenteric ischemia (NOMI) の6症例を臨床的に検討した.種々の基礎疾患及び誘因を有していた. NOMIの診断は, 3例は術中所見,残り3例は上下腸間膜動脈造影,切除標本の血管造影,剖検所見をもとにした.腸管壊死の原因として上下腸間膜動脈領域のvasoconstrictionの関与が強く示唆された.壊死の範囲は全小腸の約半分程度の限局型と,ほぼ全小腸と大腸にも及ぶ広範囲型に大別され各々3例ずつであった.限局型は救命できたが,広範囲型の3例は全例死亡した.広範囲型の場合,壊死腸管の切除では良好な成績は期待出来ない.従って,腸管が壊死に陥らない時期のsalvageが要求される.その為にはハイリスク群を設定し,その中で腹痛の持続する患者には積極的に腸間膜動脈造影を行い,本症の所見が認められたら,選択的血管拡張剤の投与が成績向上につながると思われる.
  • 北條 正久, 小坂 昭夫, 丸尾 啓敏, 綿引 洋一, 大作 昌義
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2241-2244
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸脱に対する手術には古くから数多くの術式があるが,当院外科において完全直腸脱12例に対してテフロンメッシュを用いたRipstein手術(経腹的直腸固定術)を施行した.症例の内訳は,男性4例,女性8例で,年齢は36歳から84歳,平均63.2歳であった.病脳期間は,7日間から60年と一定していなかった.肛門疾患に対する手術既往歴は, 4例に痔核根治手術が施行されていた.合併病変は,若年者の2例に精神障害を認めた.脱出の程度は,鶏卵大から手拳大で, 3例に嵌頓を伴っていた.術後経過は良好であったが2例に再発を認めた.
    当院において,直腸脱に対しRipstein手術を行い良好な結果を得ており,全身状態に問題がなけれぽ, Ripstein手術は積極的に行われるぺき術式と考えられた.
  • 宮本 幸男, 中村 正治, 棚橋 美文, 綿貫 文夫, 大矢 敏裕, 新井 正明, 中神 克尚, 大和田 進, 森下 靖雄
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2245-2248
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌患者の術前末梢血Tリンパ球サブセットを測定し結腸癌と,直腸癌における免疫動態の差異について検討した. Suppressor inducer T細胞は,結腸癌では直腸癌に比べ有意に減少し,結腸癌のstage別検討でもstage III, IVはstage Iに比べ有意に減少していた. Suppressor T細胞は両群間に差は見られなかったが,結腸癌では癌進行とともに増加する傾向があった. Cytotoxic T細胞は両群の間に差はなかった. IAPは結腸癌では直腸癌に比べ高い傾向がみられ,結腸癌のstage別の検討でstage II, III, IVはstage Iに比べ有意に高値を示し,大腸癌の細胞性免疫能バランスは負に傾いていた.
  • 佐藤 裕二, 藤澤 純爾, 澤口 裕二, 藤原 康弘, 川村 秀樹, 広瀬 邦弘, 間宮 規章, 飯田 博
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2249-2254
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    組織学的深達度pm以上の大腸癌77例のパラフィン包埋切片を用いたflow cytomeryによる核DNA量解析を行い,大腸癌の悪性度について検討を加えた.
    DNA diploidy 46例 (60%), DNA aneuploidy 31例 (40%) であった.性,年齢,部位およびly, n, p因子にdiploidy群とaneuploidy群に有意差はみられなかった. v, H因子では有意差はないが,それぞれv(+), H(+)にDNA aneuploidy出現率が高い傾向にあった.さらにV(+)でDNA aneuploidy patternを示すものはv(-)群に比して有意に肝転移率が高く (p<0.01), v(+) でDNA aneuploidy群はDNA diploidy群に比べ,肝転移率が高い傾向にあった (p<0.10). 18ヵ月生存率ではDNA dip-loidy群, DNA aneuploidy群とも84%と同一であった.これに対してDukes分類ではDukes A 100%, B 96%, C 72%とよく比例した.
    大腸癌の悪性度については, DNA解析とともに多方面からの検討が必要と考えられた.
  • 中村 達, 西山 雷祐, 横井 佳博, 芹沢 淳, 今野 弘之, 馬場 正三
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2255-2260
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    進行胆道癌に対して肝切除を伴う膵頭十二指腸切除術 (HPD) が広く行われるようになった.肝膵同時切除を10例に行い,手術侵襲,肝再生,合併症について検討した.肝2区域以上切除6例,肝2区域未満切除4例に分け,対照として拡大肝右葉切除10例,膵頭十二指腸切除10例と比較した.肝2区域以上切除は術中出血量,手術時間,術後合併症が有意に多く,術後T. Bilが他の3群より有意に上昇した. HPD術後の肝再生は対照群とまったく差はみられなかった.第16回日本膵切研究会アンケート報告ではHPD 478例の集計では在院死は肝不全が最も多く,術前T. Bil 3mg/dl以上,60歳以上,肝2区域以上切除例,血行再建を伴う例で有意に在院死が多い.従ってHPD術は術前十分な減黄を行い,一般的な肝切除より有意な手術侵襲が加わることを念頭におき,適応を決定する.血行再建には細心の注意を払い,術後は良好な栄養状態に保つことにより肝不全及び合併症は予防できる.
  • 神垣 隆, 味木 徹夫, 田畑 知巳, 大橋 修, 小野山 裕彦, 山本 正博, 斎藤 洋一
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2261-2266
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵頭部領域癌の肉眼的治癒切除症例57例のうち再発様式が確認された23例を対象に肝転移再発の有無により病理学的進展因子,Stageおよび術後生存期間を比較検討した.膵頭部癌の肝転移再発例ではt3が66.7%, ly2, v2以上がともに100%を占め,腫瘍径の大きな例や高度脈管侵襲例が多かった.下部胆管癌や乳頭部癌では肝転移再発と病理学的進展因子の間に関連を認めなかった.再発症例において低分化腺癌の4例は全例,肝転移再発をきたした.膵頭部癌再発例には進行例が多かった (Stage III 44.4%, Stage IV 33.3%) が,肝転移再発とStageの間には関連を認めなかった.下部胆管癌では肝転移再発例の全例が,乳頭部癌では肝転移再発例の50.0%がStage III以上で,進行した例が多かった.膵頭部領域癌では肝転移再発例は肝転移再発を認めなかった例にくらべ術後生存期間が短く,肝転移は予後を左右する再発様式と考えられた.
  • 古川 俊治, 久保田 哲朗, 加瀬 卓, 熊井 浩一郎, 吉野 肇一, 石引 久弥, 北島 政樹
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2267-2270
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病と肺結核の既往歴のある58歳の男性で, C領域後壁のBorrmann 2型胃癌, P0H0N0S1, Stage IIのため胃全摘術 (R2), Roux-en-Y再建術が施行された.術後の経口摂取は良好であったが,原因不明の低栄養状態が遷延し,コントロール困難な腹水が出現した.術後18日目より発熱・白血球増多・CRPの上昇が持続したが,腹水・血液・尿・痰の培養において病原菌は認められなかった.術後33日目より左胸水を認め,術後39日目に突然の呼吸困難からショック状態に至り, 40日目に死亡した.病理解剖所見では多量の膿性腹水の貯留を伴う,慢性及び急性の化膿性腹膜炎が認められ,病理学的検索により,カンジダ性肺炎,急性腎盂腎炎,肝・副腎・心筋内微小膿瘍が認められ,全身性カンジダ症と診断された.胃全摘術後に原因不明の炎症所見が遷延する場合,積極的に真菌感染症を疑い,迅速な血清診断法を試みる必要があると考えられた.
  • 平野 達也, 青木 康明, 伊藤 隆康, 岸川 英樹
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2271-2275
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺原発の扁平上皮癌は稀であるが,一般に腺癌や肉腫様病変を伴っていることが多い.純粋型乳腺原発扁平上皮癌は特に稀とされ,その頻度は全乳癌の0.046~0.28%といわれ, 1990年までに本邦で27例の報告を見るのみである.また,術前の穿刺吸引細胞診にて診断された報告は1991年までに9例と少ない.今回われわれは,術前の穿刺吸引細胞診にて診断しえた純粋型乳腺原発扁平上皮癌の1手術例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は, 54歳女性.圧痛を伴う右乳房腫瘤を主訴に当科を受診した,エコーにて嚢胞を伴う腫瘤を認め,嚢胞液の穿刺吸引細胞診にて扁平上皮癌と診断され,平成3年12月2日に定型的乳房切断術を行った.腫瘍は3.5×2.0cmの灰白色調,硬な腫瘤であり,割面には,出血,壊死および嚢胞形成が見られた.組織学的には,純粋型乳腺原発扁平上皮癌であった.
  • 勝田 猛, 斉藤 貴生, 石川 浩一, 安部 寿哉, 筑波 貴与根, 木下 忠彦, 下田 勝広, 宮原 正樹, 桑原 亮彦, 小林 迪夫
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2276-2279
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    外科的に切除した食道顆粒細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は37歳,男性で胃潰瘍の経過観察中,内視鏡検査でEi領域の食道後壁に7×3mm大,白色調で浅い陥凹を伴う立ち上がりのなだらかな隆起性病変を認めた.生検によりgranular cell tumorの診断が得られ,組織学的に悪性所見を認めなかったが,腫瘍の形態,年齢などを考慮し,開胸下に食道喫状切除術を行った.顆粒細胞腫は舌,皮膚,乳房などに好発するが,食道に発生することはまれであり,われわれの検索によると本邦では現在までに84例の報告がみられるにすぎない.本症は一般に良性腫瘍と考えられているが,悪性例の報告もあり,治療方針決定に際し注意が肝要である.
  • 上山 直人, 渡辺 明彦, 澤田 秀智, 山田 行重, 中野 博重, 堤 雅弘, 小西 陽一, 中谷 勝也
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2280-2284
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃RLH (reactive lymphoreticular hyperplasia) は,臨床的に胃悪性リンパ腫との鑑別が困難であり組織学的にその移行に興味が注がれている.
    症例は62歳,女性.上部消化管透視,胃内視鏡検査により,胃角部から胃体中部にかけての後壁から大彎側に及ぶ,不整な潰瘍を伴う粗大顆粒状病変を認めた.生検にて胃RLHと診断したが胃悪性リンパ腫も否定できず手術を施行した.切除胃の病理組織像では広範囲に及ぶRLH病変内の3ヵ所に悪性リンパ腫 (diffuse lymphoma, mixed type) の像を認めた.又免疫組織化学的検討によりRLH部はpolyclonalに,悪性リンパ腫部はmonoclonalに染色された.本症例は,広範囲の胃RLHと部分的な胃悪性リンパ腫からなり,胃RLHから胃悪性リンパ腫への移行が考えられた.
  • 宮入 健, 今井 茂, 渋谷 哲男, 大場 英巳, 内山 喜一郎, 鈴木 章一, 南部 弘太郎, 山本 英希, 須田 浩充, Tasuku ...
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2285-2291
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年Radioimmunoassay法(RIA法)の発達とともに微量のalpha-fetoprotein (以下AFP) が測定可能となり肝細胞癌,胎児性癌以外の悪性腫瘍の中にも血清AFPが高値を示す症例の存在が報告される様になり,多くは胃癌であるがその他の消化器癌としては,胆道癌,膵臓癌,結腸癌,直腸癌などが挙げられる. AFP産生胃癌は,臨床病理学的検討では進行が早く肝転移,リンパ節転移を起こしやすく予後不良であり治療に際して術前及び術中よりの強力な化学療法を加えねばならないと考えている.又血清AFP値を計測する事は診断及び治療効果の指標として有用であり術後は転移を考えCTスキャン,腹部US等の画像診断を混じえた厳重なfollow upの必要があると考える.
  • 藤本 三喜夫, 増田 哲彦, 中井 志朗, 河毛 伸夫, 赤木 真治, 落久保 裕之, 結城 常譜
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2292-2296
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1. 胃癌の骨髄転移により惹起され,急激な経過をたどっいわゆる播種性骨髄癌性の2症例を報告した.
    2. 本症例の診断にはCT・MRI・シンチグラフィーを駆使した骨の精査および腫瘍マーカーの上昇以外に, leukoerythroblastosisの出現,血清LDHおよびALP値の上昇が有用であったが,確定診断には骨髄生検が必須であった.
    3. 今回呈示した症例はいずれも腰痛を主訴として発症しており,胃癌の治療歴の無い場合の診断は,本症の存在を念頭におく以外になく,外来にて漫然と腰痛に対する対症療法を行うことは厳に慎むべきと痛感した.
    4. さらには,若年者胃癌において低分化腺癌あるいは粘液産生癌の場合には,治癒切除あるいは非治癒切除を問わず,骨髄転移について充分な検索と配慮が必要であると考えられた.
  • 佐川 庸, 石川 綮一, 藤原 志郎
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2297-2301
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    CT所見が有用であった胃切除術腸重積症の2例を経験したので,症例の概要に若干の文献的考察を加え報告する.
    症例1は66歳男性で,突然の上腹部痛と吐血を主訴に入院した.発症54時間後に開腹し,壊死腸管を切除後,端々吻合を行った.症例2は48歳男性で,反復する上腹部痛と嘔吐を主訴に入院した.保存的治療にて軽快せず,開腹,用手的整復を行った. 2症例はともに胃切除後20年を経て発症したが,症例1は急性発症を呈し,症例2は慢性的な経過をとっていた.
    今回報告した2症例のように本症には異なる2つのタイプがあり,その診断は必ずしも容易ではないが,特徴あるCT像はその術前診断に極めて有用であった.胃切除後に出現する上腹部痛の診断においては本症を十分に考慮にいれるべきと考える.
  • 勝木 茂美, 深町 信一, 深町 信介, 小林 肇, 坂本 隆, 唐木 芳昭, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2302-2307
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管膜様包裏症は,腹腔内臓器が被膜によって覆われた状態となる比較的稀な疾患であるが,病因や治療法については定説がない.
    症例は頻回の嘔吐を主訴として来院した77歳の女性で,腹部全体を占める巨大腫瘤を触知し,両下肢に浮腫を認めた.画像診断で腸管を圧排する巨大な腹腔内嚢腫と右水腎症を認めた.巨大卵巣嚢腫を疑い開腹したところ,茶褐色の浸出液が噴出した.これを吸引除去(約4,700ml)したところ,腹腔内諸臓器が灰黄白色の糖衣状の厚い被膜で覆われ,後腹膜に圧平されたような状態で,一見腹腔内諸臓器が除去され,この被膜と壁側腹膜とから巨大内腔を形成しているように見えた.被膜は軟であったが,剥離が全く不可能なため,被膜の一部を採取し,腹腔内にネラトンチューブを入れ閉腹した.被膜の組織像はコラーゲン化した結合織であった.被膜形成は,反応性腹水が腹膜で吸収される際,線維素が腸管漿膜面に沈着するためと考えられている.
  • 真庭 謙昌, 小笠 延昭, 笹田 明徳, 岡田 昌義, 藤盛 孝博
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2308-2312
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性.他院で結腸癌と術前診断され右半結腸切除術を受けたが,術後の組織学的検査でCrohn病と診断された.術後1年半頃より下痢・便秘を繰り返し,注腸造影で吻合部にapple core様の狭窄を認められた.生検で癌は否定され,非特異的潰瘍肉芽と回答されたため, Crohn病の再燃が疑われた.精査中にイレウスとなったため狭窄部切除術を行い,切除標本から病理学的に腸結柱と診断された.腸結核は自然治癒傾向が強いという特徴もあり,形態像に経時的なスペクトルがあるため,時にCrohn病やその他の炎症性腸疾患との鑑別が困難な場合がある.経時的な観察をすることが,腸結核の鑑別診断上重要であると思われた.
  • 今井 茂, 大場 英巳, 渋谷 哲男, 内山 喜一郎, 小熊 将之, 宮入 健, 秀嶋 周, 鈴木 章一, 長江 康, 山本 英希, 須田 ...
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2313-2317
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢腫は比較的稀な疾患であり,正確な術前診断を行うことは困難なことが多い.今回,血中CEA値が高値を呈した虫垂粘液嚢胞腺腫の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は74歳,男性で,夜間に下血し倒れ,このとき右下腹部に腫瘤を触知された.胃,大腸内視鏡検査で下血の原因は不明であったが盲腸に粘膜下腫瘍様隆起を認めた.注腸造影では上行結腸の管外性圧排所見がみられ,虫垂は描写されなかった.超音波およびCT検査では右腎に接した嚢胞状腫瘤を認めたが,細胞診では腎癌が疑われた.
    手術ではCEA高値より悪性の可能性が強いため,右半結腸切除術,右腎摘出術およびリンパ節郭清を施行した.組織学的には異形成は強くなく,粘液嚢胞腺腫であった.また,下血の原因は回腸潰瘍であり切除されていた. CEA値は術後順調に低下し,現在は正常値である.本疾患は予後不良な腹膜偽粘液腫に移行することがあるので発見しだい切除すべきであると考えている.
  • 松田 健, 羽尾 邦彦, 恩田 昌彦
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2318-2323
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂腺癌は比較的稀な疾患であり,本邦では200余例が報告されているに過ぎない.今回われわれは原発性虫垂腺癌の1例を紹介し,若干の文献的考察を加え報告する.症例は, 61歳女性,下腹部痛を主訴として入院した.腹部は平坦,軟で特に腫瘤は触知しなかった.腹部超音波検査およびCT検査にて右下腹部に約5cmの腫瘤像を認め,注腸造影X線検査で回盲部は変形していた.回盲部腫瘍の診断で手術を施行したところ,回盲部に虫垂を中心とした炎症性硬結が存在し,回盲部切除術を施行した.虫垂の根部に約3cmの隆起性病変を認め,病理検査の結果,高分化型腺癌の存在が認められDukes'Aの早期癌であった.術後は良好に経過し,術後20日目に退院となった.文献的にも,虫垂腺癌の術前診断は極めて困難であるとされているが,注腸造影検査,超音波検査およびCT検査はその術前診断に有用であると思われる.
  • 勝又 健次, 木村 幸三郎, 小柳 泰久, 谷 千秋, 中島 厚, 加藤 孝一郎, 久保内 健生, 寿美 哲夫
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2324-2328
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1990年より1991年までに経験した直腸癌低位前立切除術術後吻合部再発症例9例に対してオリンパス社製ラジアル走査式大腸用超音波内視鏡をアロカ社製リニア式体腔内走査探触子による経直腸的超音波検査を併用し,臨床症状,理学的所見,腫瘍マーカーの測定に加えた他の種々の画像診断と局所再発の診断能について検討した.内視鏡では9症例中1症例が吻合部に易出血性の潰瘍,7症例が吻合部または周囲の粘膜下隆起性病変,圧排狭窄を認め, 1症例は異常所見を認めなかった.生検で組織学的診断が得られたのは4例であった.骨盤CTまたはMRIで,局所再発を診断できたのは8症例で,超音波内視鏡検査では全例病変を描出でき,骨盤CTで病変を指摘できなかったが超音波検査で5mmの低エコー域として描写された1症例を経験した.質診断,骨盤壁への浸潤などの診断は今後課題を残すが,直腸癌低位前方切除術後の症例に対して吻合部再発が疑われた場合に行われる重要な検査の一つであると考えられた.
  • 相川 隆夫, 田崎 修, 桧垣 直純, 池田 公正, 柴田 信博, 篭谷 勝己, 藤本 直樹, 野口 貞夫, 玉井 正光
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2329-2333
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌の遠隔転移は肺,骨,胸膜,肝に多く肝以外の腹腔内臓器への転移とくに大腸転移は,比較的稀な転移部位と思われる.
    われわれは,穿孔性虫垂炎の合併のため不幸な転帰をとった転移性大腸癌の1例を経験したので報告する.症例は58歳女性.1988年12月に左乳癌(病期IIIa)にて拡大乳房切断術をうけた.通院中の1991年11月膨満,便通不良の訴えで近医で注腸透視をうけ,横行結腸とS状結腸の狭窄像を指摘された.本院で精査予定のところ,腹痛,食思不振,全身倦怠で緊急入院したが2日目にショックに陥入り死亡された.病理解剖診断は穿孔性汎腹膜炎(虫垂炎穿孔),乳癌 (invasive lobular carcinoma) の結腸,卵巣,子宮転移であった.
    乳癌の肝以外の腹腔内臓器転移は稀であるが,再発好発臓器に転移がみられない場合にも,慎重な臨床経過の観察と検査によって診断が得られるものと反省させられた.
  • 綿引 洋一, 小原 誠, 小坂 昭夫, 森 一郎
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2334-2338
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.排便時出血を主訴に来院.直腸後壁に径約4cmの隆起性病変を認め,悪性腫瘍が疑われたが,鉗子生検にて悪性像が得られずまた内視鏡所見が急速に変化した事から診断に苦慮した症例である.最終的には腰椎麻酔下に経肛門的部分切除を施行し,悪性リンパ腫と診断した.他部位には病変を認めず,直腸に原発した悪性リンパ腫と診断し,腹会陰式直腸切断術 (R3) を施行した.切除標本では2ヵ所 (35×33mm, 10×8mm) に病変を認めた.病理組織学的には異型性に乏しい中型リンパ球の浸潤を固有筋層まで認めたが,リンパ節転移は認めなかった. Naqviらの分類ではstage I, LSG分類では濾胞性中細胞型(B細胞性)を相当した.術後にCHOP療法を2クール施行し,術後1年4ヵ月現在再発の徴なく外来通院中である.
  • 長浜 実穂, 田伏 克惇, 山本 誠己, 坂口 雅宏, 下間 仲裕, 南 浩二, 椋田 知行, 早川 勇二, 田中 雅子
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2339-2343
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    左胃-腎静脈短絡により発症し,外科的短絡路遮断術により著明な症状の改善をみた猪瀬型肝性脳症の1例を経験したので報告する.
    症例は67歳,女性.意識障害を主訴に来院し,脳梗塞の疑いにて入院となった.入院後の検査では神経学的な異常は認められなかったが,脳波にて三相波を認め,また血中アンモニア値が異常高値を示したため,門脈-大循環短絡と診断され,当科に転科となり手術を施行した.左腎静脈に流入する径約13mmの短絡血管を認めたため,短絡血管離断術を施行し,術後第43病日で退院となった.術後1年6ヵ月を経過した現在も肝性脳症は認められず良好に経過している.
    本症のように重症肝障害を伴わない猪瀬型肝性脳症に対しては,外科的短絡血管離断術を施行することが良策と考える.
  • 田嶋 哲, 三角 幹夫, 佐藤 大亮, 本明 宜彦, 小川 道雄
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2344-2347
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術後の肝リンパ漏は極めてまれで,本邦では8例の報告例があるにすぎない.今回われわれは,胃癌術後に難治性の肝リンパ漏をきたした症例を経験したので報告する.
    症例は, 59歳男性,食欲不振が主訴である.胃癌の診断にて1991年11月21日胃亜全摘術施行.術後腹水が出現し腹水穿刺をくりかえすも改善せず.足背のリンパ管よりのリンパ管造影で漏出なく,腹水は黄色透明で混濁なく細胞はほとんどがリンパ球であることより肝リンパ漏を疑い1992年7月20日開腹術を施行した.肝下面よりリンパ液の漏出を認めたが,リンパ管の結紮不能で同部にイソジン液塗布,抗生物質塗布,最後にフィブリン糊を散布し閉腹した.術後経過良好にて腹水貯留することなく退院した.
  • 柴田 均, 千賀 脩, 疋田 仁志, 宮川 信, 梶川 昌二, 恒元 秀夫
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2348-2352
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝臓の腫瘍類似病変の1つであるfocal nodular hyperplasia (FNH) の1例を経験した.症例は43歳女性.主訴は左季肋部痛.腹部エコー, CT, MRIで左葉外側区域に腫瘤を認め,悪性病変も否定できず切除術を施行した.病理組織検査で,腫瘤はFNHと診断された.肝FNHの成因の1つとして女性ホルモン剤が注目されているが,本症例は,10年間月経困難症の治療のため経口避妊薬を服用しており, FNH発生との関連が強く示唆された.
  • 原 均, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 森田 真照, 竹田 幹, 石橋 孝嗣, 豊田 昌夫, 谷村 雅一, 秋元 寛, 仁木 正己, 奥田 準 ...
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2353-2359
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.腹腔鏡下胆嚢摘出術を目的に来院した胆石症例に,肝外胆管膜様狭窄症の1例を経験した.そこで,本邦報告例21例を集計し,自験例をあわせた22例につき以下のことについて検討した.
    1. 診断動機から確定診断の過程
    2. 隔壁の存在部位と結石の有無
    3. 隔壁の成因
    4. 治療
    主訴は腹痛,黄疸が多く,確定診断にはERCが最も良い手段であった.成因は先天説と後天説に分かれているが,現在では,小児発生例があり,無結石例も認め,組織学的に隔壁は胆管壁と同じ構造であり,炎症性細胞浸潤が少ないことより,先天説が優勢である.治療は,狭窄が誘引となり胆管炎をひきおこし,生成したと考えられるビリルビンカルシウム結石を84.6%隔壁より肝側に認めることより,隔壁切除が必要である.
  • 須藤 隆之, 佐々木 功典, 菅井 有, 大森 英俊, 阿部 正, 菅野 千治, 斉藤 和好
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2360-2364
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 76歳男性.既往歴として,髄膜腫の診断で2回の開頭術を受けた.初回手術より7年後に悪心,嘔吐を主訴として,胃集団検診を受診し,異常を指摘され,精査の結果,胃癌と肝細胞癌の術前診断にて胃亜全摘,肝部分切除術を受けた.術後の病理学的検索にて髄膜腫の肝転移の診断を得た. Flow cytometryにより,細胞核DNA量解析を行ったところ,標本採取部位5ヵ所,全部位で, Diploidyを示した. S+G2M期細胞の比率は,平均15.4%と高値であった.
  • 本邦報告例の検討
    山本 隆行, 加藤 俊夫, 竹内 謙二, 西脇 寛, 伊藤 佳之
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2365-2368
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は83歳の女性で,右季肋部痛を主訴に来院した.来院時,腹膜炎症状を呈し,腹部CT検査にて胆嚢周囲と右横隔膜下に腹水の貯留を認めた.穿刺吸引を行い,胆汁性腹水を確認し,胆汁性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.胆嚢底部に不整形の限局性壊死を生じて穿孔を来しており,胆嚢摘出術と腹腔内ドレナージを施行した.摘出標本では,胆石は認めず,胆嚢壁の炎症所見では軽度で,壊死部周囲の壁内血管には多数の血栓を認めた.また胆汁細菌培養は陰性であった.術後は順調に経過した.本症例は胆嚢部分梗塞によるいわゆる特発性胆嚢穿孔の1例と考えられた.
  • 松田 勉, 木下 博明, 広橋 一裕, 久保 正二, 岩佐 隆太郎, 久保田 太輔, 首藤 太一
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2369-2374
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    経皮経肝胆道鏡 (PTCS) 下に癌の進展範囲を診断した後,根治術を施し得た粘液産生性肝内胆管癌を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は57歳女性.主訴は全身倦怠感および胸やけ.入院時,胆道系酵素が軽度上昇し, CEA 7.9ng/ml, CA19-971U/mlと高値を示した.腹部超音波検査及びCT像上総胆管,肝内胆管が拡張し,肝動脈造影では肝左葉の胆管拡張部に一致して不均一な蜂巣状の濃染像を認めた.経皮経肝胆道ドレナージ (PTCD) 施行後PTCSを行い,生検で総肝管より肝内胆管にまで広がる腺癌と診断した.そこで粘液産生性肝内胆管癌の診断のもと2群までのリンパ節郭清と尾状葉および肝外胆管切除を含む拡大肝左葉切除を施した.切除標本では胆管壁が肥厚,拡張し,総肝管左側壁から左肝管, S4起始部及びS2, S3枝末梢部までの胆管粘膜に乳頭状の腫瘍性変化があり,組織学的に高分化型腺癌で,間質や神経周囲への浸潤はみられなかった.
  • 伏田 幸夫, 菅 敏彦, 高田 道明, 秋本 龍一, 佐久間 寛, 倉知 圓
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2375-2379
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,肝門部胆管癌初回手術より1年9ヵ月後に局所再発をきたし再手術を施行,さらにその1年後に腹腔内に孤立性の転移を認め,切除しえた症例を経験したので報告する.
    症例は56歳女性. 1989年12月に上中部胆管,肝左葉切除施行後,化学療法にてfollow upしていたが, CEA高値となり精査にて肝切離面における再発と判明, 1991年9月再手術.その後CEAは下降していたが1992年5月よりCEA再上昇し,しだいに食欲不振,腹痛増強してきたため1992年9月当科入院となった. CTにて左横隔膜下腹側に内部にcysticな部分を有する直径約5cm大の孤立性の腫瘍を認め,注腸では結腸脾弯曲部を圧排していた.エコーガイド下に内部を穿刺細胞診したところclass Vであり,腹腔内再発疑いにて腫瘍切除術を施行した.組織学的にも初回原発巣と合致しており,術後CEAも正常値を示した.
    肝門部胆管癌絶対治癒切除後に脾弯曲部に嚢腫様の孤立性再発をきたした症例を経験したので報告した.
  • 塩田 摂成, 建部 茂, 水田 誠, 和又 利也, 平岡 裕, 宮野 陽介, 岩井 宣健, 谷 尚
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2380-2384
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    穿刺吸引細胞診により術前診断が可能であった膵管拡張型の膵粘液性嚢胞腺癌の1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性,検診で血清アミラーゼ値の高値を指摘され来院した.腹部超音波検査,腹部CTにより膵頭部に小嚢胞性病変が発見された. ERPでは悪性所見が示されず,経過観察が行われた.嚢胞が6ヵ月間に増大してきたため超音波ガイド下穿刺吸引細胞診が行われた.粘液を背景に乳頭状の癌細胞集塊が散在性に認められた.粘液性嚢胞腺癌と診断され,膵頭十二指腸切除術が施行された.病理組織学的にはpapillary adenocarcinoma mucinous cystic typeと診断された.膵の嚢胞性病変の術前診断は困難であり術式決定のためにも穿刺吸引細胞診の価値は大きいと考えられた.
  • 宮内 隆行, 大塩 猛人, 松村 長生, 石橋 広樹, 江川 善康, 堀家 一哉
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2385-2389
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    先天性臍尿瘻は,比較的稀な疾患である.最近,われわれは尿膜管開存症による先天性臍尿瘻の一乳児例を経験したので報告する.症例は生後7ヵ月男児で,出生後臍帯脱落遅延を認めていた.臍帯脱落後から持続する臍よりの尿漏出があり,当院を受診した.瘻孔造影および膀胱造影より,臍から膀胱に連続する管を確認し,全身麻酔下に膀胱頂部を含めて,瘻管摘出術を施行した.術前の造影検査,手術および病理組織所見より,尿膜管形成不全による先天性臍尿瘻と診断した.術後経過は良好であった.新生児の臍,臍帯に異常を認める時は先天性臍尿瘻の可能性もあることを念頭に置く必要がある.
  • 二村 学, 横尾 直樹, 白子 隆志, 山本 秀和, 久米 真, 米山 哲司, 森 茂, Ichiro KANEKO
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2390-2394
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    放線菌症 (Actinomycosis) はヒトの常在菌である放線菌 (Actinomyces) に起因し, 1) 顔面頸部放線菌症, 2) 胸部放線菌症, 3) 腹部放線菌症,その他に分類されるが, 1) が半数以上を占めるという.泌尿性器系の放線菌症は稀であるが,中でも尿膜管放線菌症は,自験例を含めて10例の報告をみるにすぎない.今回筆者らは,尿膜管遺残に発生した放線菌症の1例を経験したので報告する.
    症例52歳,女性,精肉業.発熱,下腹部有痛性腫瘤を主訴として来院した.血液検査にて著しい炎症反応を認め,画像診断上,尿膜管嚢腫あるいは尿膜管腫瘍を疑い手術を施行した.腫瘤は白線と腹膜の間に存在し,大網,膀胱頂部, S状結腸が強固に癒着しており,これらを合併切除して腫瘤を摘出した.病理組織検査にて肉芽組織中に菌塊 (sulfur granule) を認め,放線菌症と診断した.術後経過は順調であり,第36病日に退院した.術後18ヵ月再発をみていない.
  • 朝日 俊明, 岩城 和義, 加賀城 安, 村上 公則, 山鳥 一郎, 荻野 哲朗
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2395-2397
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれはきわめてまれな子宮留膿腫による子宮穿孔の1例を経験したので報告する.症例は87歳,女性,腹痛を主訴に近医を受診し,虫垂穿孔性腹膜炎を疑われ紹介された.腹部は筋性防御を認め, WBCの上昇も認めたが腹部単純写真ではfree airは認めなかった.開腹したところ子宮底に穿孔部を認め膿が流出していた.子宮留膿腫による子宮穿孔と診断し子宮全摘術を施行した.病理組織学的には悪性所見はなかった.術後経過は良好で第20病日に退院した.
  • 坂田 博美, 水戸 廸郎, 草野 満夫, 斉藤 孝成
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2398-2402
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は20歳女性,心窩部痛を主訴として来院,腹部超音波検査および腹部CTにて大量の腹水と嚢胞状腫瘤を認め,腹腔鏡検査で腹膜偽粘液腫と診断した.術中所見より,右卵巣と大網に粘液産生腫瘤が見られ,組織像では粘液性嚢胞腺腫であった.腫瘤の外科的切除に加えて,左卵巣,虫垂の予防的切除と,術後腹腔内ドレーンより洗浄療法およびアルキル化剤thiotepaによる腹腔内化学療法を施行した.その後13年間経過した現在,再発の兆候を認めていない.一度の外科的切除と,術後の付加治療で,発病後13年間もの長期間生存しえた稀な腹膜偽粘液腫を経験したので報告する.
  • 千野 修, 野登 隆, 安田 聖栄, 池田 正見, 向井 正哉, 幕内 博康, 田島 知郎, 三富 利夫, 杉原 隆, 佐々木 哲二
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2403-2406
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性で,左下腹部腫瘤を主訴として来院した.腫瘤は小児頭大で可動性は認められなかった.腹部CTおよび血管造影にて後腹膜腔の血流豊富な腫瘍であった.悪性腫瘍を疑い手術を施行したが,病理組織学的検索の結果は後腹膜腸腰筋原発の筋肉内血管腫であり,悪性所見は認められなかった.筋肉内血管腫は四肢骨格筋に好発する良性腫瘍であるが,本症例は左腸腰筋に発生し,後腹膜に増大したものであった.
    後腹膜原発筋肉内血管腫は比較的稀ではあるが,血流豊富な腫瘍では本症を考慮するべきであると考えられたので診断法,開腹所見と切除術式の工夫を加えて報告した.
  • 庄 雅之, 山田 行重, 渡辺 明彦, 金廣 裕道, 中野 博重, 堤 雅弘, 小西 陽一
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2407-2411
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜海綿状血管腫は,稀な疾患である.今回われわれは本邦18例目にあたると考えられる1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.患者は72歳女性.70歳時に胃切除術をうけ,その後外来通院中右上腹部に直径5cm, 表面平滑,弾性硬,可動性不良の腫瘤を指摘され,精査目的にて入院.後腹膜腫瘍の診断の下,摘出術を施行した.摘出標本は,重量155g,大きさ9×7×6.5cm, 表面暗赤色で線維性被膜に被われていた.組織学的には,一層の内皮細胞で被われた拡張血管から成り,海綿状血管腫と診断された.本邦報告の18例(自験例を含む)は,男性9例,女性9例,平均年齢45.1歳であった.術前のCT, US, 血管造影等にて,確定診断し得た例はなく,全例摘出術を施行され,予後は良好である.一般に後腹膜腫瘍は,術前の確定診断が困難であり,たとえ良性腫瘍であっても再発や悪性化を来たし得ることから,治療には積極的摘出術が最善であると考える.
  • 瀬尾 泰雄, 有地 茂生
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2412-2416
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    興味ある後腹膜奇形腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告した.
    症例は35歳の女性, 3歳児検診の際に腹部腫瘤を指摘され,以後,数ヵ所の病院で後腹膜腫瘍と診断,幾度となく手術を勧められるも拒否し続けていた.今回,胆嚢結石による上腹部仙痛を主訴に来院した.後腹膜腫瘍は,腹部単純X線上,一部に骨様像を認め, CTでは右腎前方に位置する多房性嚢胞状腫瘤で,嚢胞内に骨,脂肪など多彩な内容を有し,良性後腹膜奇形腫と診断した.患者は胆嚢摘除を含め後腹膜腫瘍摘出を発見32年後にして決意した.腫瘍は右腎,十二指腸,膵頭部,下大静脈を圧排し,かつ強く癒着していた.摘出標本は15.3×10.8×7.9cm, 570gのencapsulated tumorで,嚢胞内に毛髪,骨を含む皮脂様粥状物,脂肪が充満し,組織学的に三胚葉成分からなる成熟型良性奇形腫であった.術後2年4ヵ月の現在,再発の徴候はない.
  • 成子 元彦, 石川 恵一郎, 大城 孟
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2417-2421
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群の再燃増悪時に右下肢動脈血栓症を合併した症例を経験した.患者は急激な右下肢痛を主訴とする40歳男性で,臨床検査では血中フィブリノーゲンの著増, ATIIIの低下,低アルブミン血症,高コレステロール血症,高度蛋白尿などが認められた.抗凝固線溶療法を行いつつForgartyカテーテルにより血栓摘除術を行ったが,最終的には下腿切断術のやむなきに至った.
    ネフローゼ症候群では特にその再燃時や増悪期に血栓症を発生しやすいことを考慮して,原疾患の治療とともに血栓症に対する診断,治療,予防への配慮が必要と考えられた.
  • 西部 俊哉, 加藤 紘之, 田邊 達三, 村木 専一, 藤森 勝, 関下 芳明, 塩野 恒夫, 黒島 振重郎, 山口 潤
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2422-2425
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    臨床経過及び画像診断から腫瘍性リンパ節腫脹との鑑別診断が困難であった腹部リンパ節結核の1例を経験した.
    症例は31歳の男性で,咳嗽,発熱を主訴に受診した.胸部X線写真にて胸水,腹部超音波検査にて膵頭部付近に腫瘤を認めた.精査により胸水は結核性胸膜炎と診断した.臨床経過から膵頭部付近の腫瘤は腹部リンパ節結核を疑ったが,上部消化管造影,腹部CT,内視鏡的膵管造影,腹部血管造影などの画像診断からは確定診断を得られなかった.また, Isoniazid, Rifanpicin, Streptmycinの抗結核剤では腫瘤の変化・縮小が見られなかったため,腫瘍性リンパ節腫脹の可能性が残され,やむを得ず開腹生検を行った.
    腹部リンパ節腫脹の鑑別診断の難しさを改めて認識した.
  • 辻 義彦, 生田 博, 木下 修, 中間 淳夫, 中村 和夫
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2426-2430
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    昭和63年4月から平成4年3月までの4年間に12例の精神障害者に対する外科的手術を施行した.その内訳は,男性8例,女性4例で,平均年齢56.5歳であった.精神疾患は精神分裂病7例のほか脳血管性痴呆,躁鬱病,パーキンソン病,覚醒剤中毒,アルコール症が各1例で,罹病期間は3ヵ月から35年であった. 12例中,緊急手術は5例 (41.7%), 全身麻酔下の手術は10例 (83.3%) であった.向精神薬は,手術前日まで続行させ,また術後は原則として経口食事摂取とともに向精神薬の投薬も再開した.術後の奇異行動や不穏錯乱状態は計6例 (50%) に認められたが,平均31日の入院にて全例軽快退院した.ただ向精神薬の長期服用によると考えられる術中,術後のカテコラミン抵抗性低血圧が計5例 (41.7%) に認められ,かかる患者を管理するうえで最も留意すべき点であると思われた.
  • 永井 裕司, 山下 隆史, 西野 裕二, 山本 嘉治, 金村 洙行, 曽和 融生
    1993 年 54 巻 9 号 p. 2431-2435
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は14歳,女性.2年前に左卵巣腫瘍(未熟奇形腫)にて両側卵巣ならびに子宮摘出術をうけ,術後化学療法が施行された.今回,腹部CT検査および腹部超音波検査で肝の前上区域に転移が疑われ入院した.腹腔動脈造影では異常所見はみられなかった.しかし, MRIを施行したところ肝外から楔状に肝を圧排する腫瘤であり,横隔膜への播種性転移と診断した.他に大きな転移巣はみられなかったため開腹手術を施行した.腫瘤は右横隔膜に存在し,肝を圧排していたが癒着や浸潤はなかった.他にダグラス窩,直腸前壁および右腎に一致する後腹膜にも小豆大~空豆大の播種性転移がみられたのでこれらも摘出した.組織学的にはいずれも成熟奇形腫であった.一般に横隔膜腫瘍の診断は比較的困難なことが多いが,その診断にMRIが有用であった1例を経験したので報告した.
feedback
Top