豚の性成熟期を明らかにするために, 改良種4種 (M. W., B, L. W., P.) 計528頭と中国種 (C.) 84頭について生殖器系の発育を形態学的, 組織学的, 生理学的に研究調査すると同時に, 射精能力, 初発情 (初排卵), 受胎能力等について観察・調査を行った。
A. 雄豚の性成熟期について: 1) 精巣, 精巣上体, その他副生殖腺の重量発育および比体重値は改良種では4~8ヵ月齢において増大が著しいが, 中国種では2~5ヵ月齢頃から発育が著しく, きわめて早熟である。2) 陰茎の遊離期は, 改良種では生後114~248日, 体重24.0~65.0kg前後であるが, 中国種では生後55~100日, 体重4.6~16.0kgできわめて早い。3) 精巣の組織学的所見において, 精細管口径の発達は改良種では4~6ヵ月齢の間において著しく, 7~8ヵ月齢で約200μmに達するが, 中国種では2~3ヵ月齢の間において発達が著しく, 4ヵ月齢で約200μmに達する。4) 精細管内に初めて精子を認めた日齢は, 改良種では大体生後120日, 体重27~35kg前後であったが, 中国種では生後40日, 体重4.2kgであった。5) 精子を認める精細管数, 精巣成熟度は, 改良種では4~5ヵ月齢から増加し5~6ヵ月齢でほぼ一定するが, 中国種では2ヵ月齢頃から増数が著しく, 3ヵ月齢でほぼ一定する。6) 精巣上体尾部に初めて精子が出現する時期は, 改良種では生後120日過ぎであるが, 中国種では生後約60日できわめて早い。なお精巣上体尾部内の精子数, 精子の活力並びに生存時間および形態等の成熟も中国種は改良種に比べて約2~3ヵ月早い。7) 射精能力の発現時期は, 改良種では151~255日齢, 体重32.0~78.5kgであるが, 中国種では84~133日齢, 体重10.2~19.5kgで, きわめて早い。8) 初回射精の精液量, 精子数は中国種において少ない。
B. 雌豚の性成熟期について: 1) 初発情 (初排卵) の時期は, 改良種では194~328日齢, 体重52.0~120.0kgであったが, 中国種では147~191日齢, 体重17.9~36.5kgであった。2) 中国種の初発情豚の若干例について受胎試験を行った結果, 繁殖能力は正常であり, 産子数, 妊娠期間も正常であった。
以上のことから中国豚 (雄, 雌) の性成熟期は改良種に比べて著しく早いことが明らかである。
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