日本養豚学会誌
Online ISSN : 1881-655X
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58 巻, 2 号
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原著
  • 中島 郁世, 中村 富美男, 千国 幸一
    2021 年 58 巻 2 号 p. 53-64
    発行日: 2021/06/21
    公開日: 2021/10/16
    ジャーナル フリー

    脂肪組織は、結合組織が変化したものである。これまでの研究から,脂肪細胞分化には結合組織の主要な成分であるコラーゲンが必要であることが知られている。本研究では,ブタの脂肪細胞分化においてもコラーゲンが必要であるのかどうかを明らかにするため,ブタ皮下組織由来脂肪前駆細胞株(PSPA細胞)に対するコラーゲン合成阻害剤(EDHB)の影響を検討した。免疫染色の結果、線維芽細胞様のPSPA前駆細胞はI,III,IV,VおよびVI型コラーゲンを産生し,脂肪細胞への分化によりその細胞表面上に前駆細胞にはないコラーゲンネットワークを構築することが観察された。遺伝子発現解析の結果,前駆細胞でも十分量のコラーゲンmRNAが合成されているにもかかわらず細胞表面上に形成されるコラーゲンネットワークは脂肪細胞でのみ認められる現象であることが明らかになった。次に分化培地にEDHB 40μMを添加しPSPA細胞自身のコラーゲン生合成を抑制すると,脂肪細胞の表面上に構築されるべきコラーゲンネットワークが消失しただけでなく細胞内の脂肪蓄積量は1/3にまで減少し,加えて脂肪細胞特異的な遺伝子の発現量の低下が見られたことから,脂肪細胞分化にコラーゲンが必要であることが明らかになった。さらにEDHB添加によるPSPA細胞のコラーゲン自己産生能を抑制した状況下で細胞外からコラーゲンを補填した場合,PSPA細胞の脂肪蓄積量が回復するかを調べた。その結果,I,III,IV,VおよびVI型コラーゲンのうちV型コラーゲンでのみ脂肪蓄積量が63.8%ほど回復し,転写因子PPARγ2やアディポネクチン遺伝子の発現量も増加した。 以上のことから,ブタの脂肪細胞分化には細胞外からのV型コラーゲンのシグナルが重要な役割を担っている可能性が高いことが示唆された。

  • 田中 康男
    2021 年 58 巻 2 号 p. 65-79
    発行日: 2021/06/21
    公開日: 2021/10/16
    ジャーナル フリー

    養豚汚水処理においては,水質汚濁防止法の規制項目である「アンモニア,アンモニウム化合物,亜硝酸化合物及び硝酸化合物」の安定した遵守が重要課題となっている。一方,汚水処理施設の仕様は農場ごとに大きく異なるうえに,季節による性能変動も大きい。このため,各処理施設の稼働特性の把握とそれに基づく管理指針の策定が重要である。そこで,センサで容易にデータ収集可能な運転管理項目(汚水pH,汚水EC,曝気槽水温,曝気槽pHおよび曝気槽の活性汚泥浮遊物質)により硝酸性窒素等の除去性能を予測し管理の参考にすることを目的とし,機械学習による予測モデルの作成を試みた。事例の多い飼養管理形態の二農場(T,S)での3年間にわたる実測データを使用し,各農場の処理水中硝酸性窒素等濃度の決定木モデルを作成した。得られた決定木モデルでは,T農場は曝気槽水温,曝気槽pHおよび活性汚泥浮遊物質濃度が,またS農場は曝気槽pHが硝酸性窒素等の変動に関連の強い因子として抽出された。これらのモデルによる予測値と実測値の間には学習データ,テストデータのどちらの場合も相関が見られたことから,作成した決定木モデルは施設特性の把握に有効であることが示唆された。機械学習で個々の処理施設の特性を把握し,それに基づいた施設管理を実施することが硝酸性窒素等の濃度制御に重要と考えられる。

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