日本養豚学会誌
Online ISSN : 1881-655X
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60 巻, 3 号
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原著
  • 河原崎 達雄, 堤 進哉, 稲永 敏明, 松窪 敬介, 津田 健一郎, 塩谷 聡子, 大竹 正剛
    2023 年 60 巻 3 号 p. 99-108
    発行日: 2023/09/21
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

    ゴム製手袋はブタ精子の性状に悪影響を及ぼすことが指摘されているが,現在もなおゴム製手袋がブタの精液採取時に使用されている。ゴム製品は,多くの成分から形成されており,製品によって精子に与える影響が異なる可能性がある。本研究では,現在流通しているゴム製品を含めた使い捨て手袋の材質が精子性状に与える影響について,わが国で養豚用に飼育されている一般品種を用いて検証した。実験1では,生ゴム,ニトリルゴム,加硫促進剤不使用のニトリルゴムおよびポリエチレン製手袋の断片と精液を共培養した。精子の運動性は,生ゴム,ニトリルゴムおよび加硫促進剤不使用のニトリルゴムでは著しく低下した。一方,ポリエチレンは共培養しないコントロールと差がなかった。先体の形態に与える害作用は運動性に比較すると軽度ではあったが,ニトリルゴムおよび加硫促進剤不使用のニトリルゴムでは,培養時間が長くなるにつれて増加した。実験2では,ニトリルゴムを水あるいは石鹸で十分に洗浄し,精液と共培養した。洗浄処理は精子の運動性や先体正常性に対する害作用を一定程度減少させたが,その効果は不十分なものであり,洗浄後も共培養した精子の運動性および先体正常性は共培養しないコントロールに比べて低い値を示した。実験3では,ポリエチレン製手袋4種類と精液を共培養した。1種類のポリエチレン製手袋において,運動性および先体正常性が低下したが,残り3種類はコントロールと差がなかった。これらの結果から,生ゴムおよび加硫促進剤不使用を含めたニトリル製ゴム製手袋は,ブタ精子の性状,特に運動性に対して著しい害作用を示すこと,この害作用は洗浄処理では十分に除去できないこと,ポリエチレン製手袋の多くは安全性が非常に高いことが明らかとなった。したがって,精液の採取や処理を行うときにはゴム製品の使用をやめ,ポリエチレン製品など安全性が高いものを使用することが推奨される。

  • 川村 英輔, 小山 太, 松尾 孝弘, 菱沼 竜男
    2023 年 60 巻 3 号 p. 109-122
    発行日: 2023/09/21
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

    家畜ふん尿処理は温室効果ガスの発生源であり,処理施設の建設段階,運用段階での投入資材に由来する間接的な要因とふん尿中の有機物や窒素の処理過程で排出される直接的な要因から排出されている。 養豚農家のふん尿処理システムは,多くの場合で堆肥化処理と浄化処理の組み合わせであるが,畜舎より搬出されるふん尿の固形分と尿汚水の量や性状に応じた施設構成が検討されている。固液分離機の導入は,浄化処理施設の曝気槽に流入するBOD(生物化学的酸素要求量)負荷を低減できるが堆肥化処理する固形物量が増える等,ふん尿処理での固形分と尿汚水のフローを変化させることから,その有無や位置の違いはふん尿処理に伴う温室効果ガス排出量に影響すると考えられる。本研究では,ふん尿処理システムでの固液分離機の利用および処理方式の違いによる物質フローの変化と温室効果ガス排出量を明らかにするために,肥育豚2,000頭規模の養豚場のふん尿処理システムについてライフサイクルアセスメント手法を用いたシナリオ分析を行った。ふん尿混合方式と汚水脱水方式および汚泥脱水方式の比較から,浄化施設に固液分離機を導入する場合には,汚水と汚泥を同時に固液分離する汚水脱水方式で温室効果ガス排出量が約26%削減されたが,汚泥脱水方式で約17%増加することが明らかとなった。

技術ノート
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