豚に給与する飼料量の制限が, 豚体の脂肪蓄積に及ぼす影響を明らかにするため, 肥育豚の枝肉の皮下脂肪厚と横断面脂肪面積割合を測定し, 比較検討した。系統間三元交雑豚 (LW・D) の去勢雄豚37頭, 雌豚32頭を用い, 肥育前期 (30~70kg) と肥育後期 (70~105kg) に区分し, さらにそれぞれ不断給餌区, 不断給餌量の92, 83および75%区に区分した。体重が70kgと105kgで屠殺し, 枝肉右半丸を-30℃で凍結保存した。凍結枝肉の各胸椎と腰椎毎に横切断し, 各切断面の全脂肪面積割合を測定した。さらに, 第5, 11, 13胸椎と第6腰椎については脂肪を皮下, 筋間および腹側部脂肪に分けて脂肪面積割合を測定した。切断片は粉砕後化学分析に供した。飼料給与の制限により, 去勢雄豚の肥育前期では皮下脂肪厚のカタ, セ, コシの3部位は影響を受けず, 最後胸椎の正中線から4, 6, 8および10cm脇にずれた部位が有意な影響を受けた。また, 第7から13胸椎部分の脂肪面積割合, 特に皮下脂肪の蓄積量が減少した。肥育後期では, 皮下脂肪厚はいずれの部位も有意な影響を受けなかったが, 第1から10胸椎までと第16胸椎から最後腰椎部分の脂肪面積割合が影響を受け, 前躯から中躯の筋間脂肪の蓄積量が減少した。雌豚では, 肥育前期, 後期ともカタ, 最後胸椎部位の皮下脂肪厚が有意な影響を受け, また, ほとんどの部位で脂肪面積割合が減少した。特に, 肥育前期では筋間と腹側部脂肪が減少し, 肥育後期ではカタの部分では皮下脂肪が, 中躯では筋間脂肪が減少した。
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