銅,亜鉛の添加量を削減することを目的に,離乳子豚期における飼料中の銅,亜鉛含量と糞中への排泄量の関係(実験I)および同含量が異なる衛生環境の下で飼育された離乳子豚に及ぼす影響(実験II)について調査した。実験Iでは,体重約10kgの去勢豚20頭を4頭ずつ5区に振り分け,銅を0,30,60,90および125ppmと銅の中毒症状を緩和するために亜鉛を50,50,60,90および120ppm添加した飼料(TDN81%,CP18.5%,原材料中に銅5ppm,亜鉛30ppm含有)をそれぞれ不断給餌し,単飼で約4週間飼育した後,最後の4日間に糞を採取した。実験IIでは,SPF(富山県)および通常環境下(大分県)において,体重約10kgの去勢豚,富山県40頭,大分県30頭を各々5区に振り分け,実験Iの飼料を体重30kgまで不断給餌した。その結果,飼料中の銅,亜鉛添加量が増加するにつれて糞中の銅,亜鉛濃度は高くなった。また,離乳子豚の血清中銅濃度は,いずれの環境下においても,飼料への銅,亜鉛添加量の増加とともに上昇した。一方,離乳子豚の発育や飼料効率は子豚が飼育された環境によって異なる結果を示した。通常環境下においては,慣用飼料より少ない,銅,亜鉛添加量各90ppmの水準で発育が最大となったが,SPF環境下では,銅無添加区の1日平均増体重が他の区と比較して低い傾向が見られたものの,それらの測定項目と飼料への銅,亜鉛の添加水準との間に一定の関係は認められなかった。以上の結果から,離乳子豚期において糞中への銅,亜鉛排泄量を低減するためには,それらの飼料への添加量を低減することが有効と考えられた。削減可能な銅,亜鉛の量は,子豚が飼養された衛生環境によって変化するが,SPF環境においては銅の要求量以上に過剰添加しても発育改善等の効果は得られないものと考えられた。
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