豚精液の希釈液として Polyzanon, 希釈保存液として BTS, Kiev, 保存液として Zolresco, Modena, および Butschwiler の計6種類を用い, 15, 10, および5℃の保存温度における豚精子の生存性および精液混入細菌の影響を検討し, 次の成績を得た。
1. 精液由来腸内細菌 (
E. coli,
Serratia sp,
Klebsiella sp
Enterobacter sp,
Citorbacter sp) の大部分がペニシリンG (PCG) とストレプトマイシン (SM) に対して抵抗性を示した。アミノ配糖体抗生物質 (AMK, DKB, GM) とポリミキシンB (PM-B) に対しては, 高い感受性を示した。
2. 抗生物質を含まない6種類の希釈精液に腸内細菌 (
E. coli)を10
5/m
l添加し, 15℃で保存したところ, 3日後には精子活力 (卅) は平均0~30%, 先体正常率は平均15~24%と精子生存性の急速な低下が認められた。
3. 6種類の希釈保存液をい, これら希釈精液にGM100~150μg/m
lおよびPM-B100~150単位/m
lを添加し, 15, 10, および5℃で7日間保存した精液の性状は,
Modena, Butschwiler, および
Zolresco が他に比べて優れており, 精子活力は平均75~80%,
pHは平均6.6~7.0であった。
希釈液として
Polyzanon を用いて保存した精液の性状は最も悪く, 精子活力は平均49~52%であった。
希釈保存液としてBTSおよび Kiev を用いたものの精液性状は, これらの中間の成績で, 精子活力は平均67~69%であった。なお, いずれの希釈保存精液からも細菌はほとんど検出されなかった。
4. 保存液 Modena および Butschwiler を用い, 15および10℃で10~21日間保存した精液の性状は10~16日間安定しており, 精子活力は平均67~78%であった。
5. Modena 保存液を用い, 10℃で7日間, および14日間保存した精液の人工授精による分娩率は100%, および57.1%で, 産子数は平均10.2頭, 12.8頭であった。
6. Modena 保存液を用い, 10℃で7日間および14日間, 5℃で7日間保存した精液による体外受精率の平均は, それぞれ79.5%, 68.1%, 33.7%であった。
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