細切した牛, 馬, 豚, ヤギおよびヒッジの筋肉を-10℃の冷アセトンで脱脂, 粉末化した試料 (アセトン粉末) から筋漿タンパク質を抽出し, 逆相HPLCを用いて分画を行い, 分面パターンによる肉種の識別の可能性を検討した. その結果, 本実験に用いた方法で筋漿タンパク質を抽出することによって, 分画されたピークの相対保持時間 (RRt) は再現精度が向上し, カラム圧の上昇を遅延させる効果が認められた. ピーク面積は, 同一種においても個体間で比較的変動が大きい傾向が認あられた.
牛, 馬, 豚, ヤギおよびヒツジの筋漿タンパク質のクロマトグラムには, 畜種固有のピークあるいはピークパターンが認あられ, これにより5畜種の識別が可能と考えられた. さらに, 得られたクロマトグラムの相対保持時間に基づいてピークを10区分に分け, 各区分のピーク面積を判別因子として判別分析を行った結果, 牛では92.3%, 馬では94.1%, 豚では100%, ヤギでは88.9%, ヒツジでは100%の正判別率を示す判別式が得られた.
以上の結果から, 筋漿タンパク質のHPLCクロマトグラムにおけるピークパターンおよび相対保持時間により区分けしたピーク面積を判別因子とする判別分析を併用することにより, 本実験で対象とした5畜種をより正確に識別することが可能と考えられた.
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