本試験は肥育豚への歩行運動の負荷が一般生理反応および枝肉性状に及ぼす影響を知る目的で行った。供試豚は肥育後期 (150日齢, 平均体重72.2±1.9kg) の三元交雑種 (LWD種) 去勢4頭, 雌2頭の計6頭を用いた。試験区分として, 対照区 (自由運動区) と運動区 (歩行運動を負荷する区) の2区を設け, それぞれの区に平均体重, 性別が等しくなるように3頭ずつ配分した。飼料は対照区, 運動区ともに同量給与した。飲水は自由とした。試験期間は40日間とし, 対照区の豚は豚房内で自由に過ごさせ, 運動区の豚は1日1回豚舎内に設けた1周60mのコースを所定の速度で25周 (1,500m) 歩行させた。生理反応の測定項目として心拍数, 呼吸数, 直腸温度および体表面温度を測定した。測定は試験開始時から10日間隔で190日齢まで5回行い, 対照区では安静時, 運動区では運動前の安静時と運動後とした。体尺は生理反応測定日に行い, 枝肉性状の項目である枝肉重量, 屠体幅, 屠体長, 背脂肪厚については試験終了後24時間絶食し, 屠殺して測定した。心拍数以外の生理反応は歩行運動の負荷により高くなる傾向を示したが, 心拍数は歩行運動期間が長くなるにつれて, 低くなる傾向を示した。試験の開始時と終了時の体尺成績から求められる各部位の伸長において, 体長は対照区に比べ運動区が有意 (P<0.05) に小さかった。他の部位では有意差はなかったが, 胸深, 胸囲, 胸幅, 後幅は運動区が小さく, 管囲, 体高, 前幅は運動区が大きかった。枝肉重量, 屠体幅, 屠体長, 背脂肪厚に有意差はなかったが, 背脂肪厚は運動区で薄くなる傾向にあった。
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