欧米諸国と比べると,わが国の重症下肢虚血(critical limb ischemia, CLI)患者は糖尿病・維持透析の頻度が高い。糖尿病・維持透析は血管病変の局在・石灰化と関連しており,血管内治療・バイパス術のいずれにおいても治療成績を押し下げるリスク要因となる。また糖尿病合併・維持透析患者では潜在的重症下肢虚血(subclinical CLI)からの移行症例が多い。わが国のCLIの管理戦略を論じる際はこうした特徴に留意する必要がある。
【緒言】手術ハイリスク患者に対するdebranching TEVARの早期成績を分析した。【方法】133例にdebranching TEVARを施行した。【結果】術後30日死亡率は3.0%,type Iエンドリークは26%であった。【結語】Full sternotomyによるtotal debranchingの手術侵襲は高かった。そのため近年はsurgeon-modified fenestration法を導入した。
65歳,女性。前胸部痛を主訴に救急搬送。左冠動脈主幹部(LMT)解離を伴うStanford A型急性大動脈解離を認めた。ショックであったため,LMTの経皮的冠動脈形成術(PTCA)を先行後,上行大動脈置換術,冠動脈バイパス術を施行。第28病日,退院。LMT解離を伴うStanford A型大動脈解離は致命的である。外科的修復術に先行しPTCAを行い,救命し得た1例を報告する。
症例は58歳,男性。既往歴は糖尿病。右浅大腿動脈の急性動脈閉塞に対する保存加療後に右下肢の皮膚潰瘍をきたし当科に紹介された。重症下肢虚血に対し,内視鏡下に採取した大伏在静脈を用いて,右総大腿動脈–後脛骨動脈バイパス術を行った。術後は創感染を認めず,右下肢皮膚潰瘍の治癒を認めた。重症下肢虚血患者において,内視鏡下大伏在静脈採取は術後創関連合併症を回避できる有効な手段であると考える。