肺動静脈奇形は,肺動脈と肺静脈の異常な右左短絡であり,慢性低酸素血症により,労作性呼吸困難やチアノーゼなどの症状が生じる。さらに右左短絡のため,静脈血内の血栓や細菌が,肺の毛細血管にトラップされず左心系に流れ,脳梗塞や脳膿瘍という重篤な中枢神経系合併症を引き起こす。現在,塞栓術が一般的な治療法であるが,ときに血流が再発することが知られており,再発は,「塞栓した部分に血流が再開するrecanalization」,「正常肺動脈からの側副血行路によるreperfusion」,「複数のfeeding arteryを有する肺動静脈奇形における未治療feeding arteryの残存」,「気管支動脈などの体循環系からのreperfusion」に分類される。再発した血流は中枢神経系合併症を引き起こす可能性があり,再発が生じないように塞栓術を施行する必要がある。とくに最も頻度の高いrecanalizationを防止するためには,塞栓部分のtight packingが重要である。
心臓大血管手術後の脳梗塞予測は困難である。今回われわれは術前の脳血流定量評価が術後脳梗塞発生予測に有用か検討した。脳血流評価での脳血流予備能が最も不良であることを示すステージIIと判断される部位の有無と術後脳梗塞発生に統計学的相関を認めなかったが,ステージIIに分類される部位が脳表面積の10%以上を占める症例では術後脳梗塞を有意に発症しやすい結果となった。本評価法は術後脳梗塞の予測に有用である可能性がある。
体外衝撃波破砕術(ESWL: extracorporeal shock wave lithotripsy)が仮性動脈瘤の原因となることは稀である。症例は70歳男性。尿管結石にてESWLを受けた既往がある。CTにて腹部大動脈右後方に腫瘤像を認めた。過去と比較すると増大傾向にあったが円形で動脈と接している部分は小さくリンパ節腫脹を疑った。診断のため開腹手術を施行した。腫瘤は拍動性であり,動脈を切開すると大動脈壁右側に小孔を認め,仮性動脈瘤と診断した。仮性動脈瘤の原因としてESWLが考えられた。