人工臓器
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20 巻, 1 号
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  • 林 純一
    1991 年 20 巻 1 号 p. 1
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 椿原 美治, 伊藤 孝仁, 北村 栄作, 岡田 倫之, 中西 功, 飯田 喜俊, 畑中 美博, 今村 和夫
    1991 年 20 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    PEG grafted cellulose (PC)膜の抗血栓性の機序について、膜付着蛋白の定量、定性及び膜付着血小板の電顕的観察を行い、従来のcellulose (OC)膜と比較し検討した。慢性透析患者を対象にOC、PC膜による30分透析を行った。PC膜ではTATの上昇が阻止された。膜吸着蛋白量も有意に減少し、特にfibrinogen分画などの高分子蛋白の減少が著明であった。十分なヘパリンを含む牛血漿ではOC膜の蛋白吸着が阻止しえることからも、OCによる凝固因子の活性化、これに伴う蛋白吸着が推測される。また、OC膜ではβ-TGが有意に上昇し、血小板は有意に減少するが、PC膜では見られない。4時間透析後の電顕観察では血小板付着はPC膜で著明に減少していた。以上より、PC膜は凝固因子活性化抑制と共に、血小板活性化抑制作用を有し、抗血栓性に寄与しているものと考えられた。
  • ―新開発の自動測定法と用手法の比較検討―
    西山 敏郎, 大段 剛, 上江 洲安之, 大友 正浩, 小林 力, 金森 直明, 秋沢 忠男, 北岡 建樹, 越川 昭三, 杉山 隆之
    1991 年 20 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析(HD)用抗凝固剤である低分子ヘパリン(LMWH)のbed side monitor法として、全血Xa凝固時間(XCT)の簡便、迅速な自動測定法を開発、その臨床的有用性を検討した。LMWHを透析開始時10 aXaU/kg×HD時間ワンショット静注したHD中、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、血中抗Xa活性、XCT(用手法、自動測定法)はいずれも1時間をピークに上昇、以後漸減した。血中抗Xa活性とAPTT、XCT(用手法、自動測定法)はいずれも有意に相関したが、相関係数は後2者でAPTTに比し高値であった。またHD中の変化率、回帰直線の傾きも後2者でAPTTに比し高値を示した。XCTの自動測定法は用手法に比しHD中の変化率、抗Xa活性との回帰直線の傾きとも大きかった。以上よりLMWHのbed side monitor法として、XCTの自動測定法は簡便、迅速であるばかりでなく、APTT、用手法によるXCTより鋭敏な方法と考えられた。
  • 荘野 忠泰, 稲垣 王子, 岩木 良太郎, 中川 清彦, 西庵 良彦, 平岡 敬介, 依藤 良一, 森頴 太郎, 井上 聖士, 藤田 嘉一, ...
    1991 年 20 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    8名の慢性透析患者に対し, 旭メディカル社製PNF-17CX2(CX膜), PAN-17DX(DX膜)およびホスパル社製Filtral-16(F膜)の三種類のPolyacrylonitrile膜からなる透析器を使用する血液透析を施行し, 抗凝固性を中心とした生体適合性について検討を行なった。血液透析施行に関しては, 透析開始後15分目まで全くヘパリンを使用しない透析を施行し, 抗凝固性を評価した。総白血球数, 血小板数およびC3aの透析中の変動には, 膜による差は認めなかった。血小板第4因子の透析開始15分後における動脈側に対する静脈側の上昇は, CX膜で最も強かった。活性化凝固時間の透析開始15分後における動脈側に対する静脈側の短縮は, CX膜で最も強かった。また透析終了時における透析器内残血の程度は, CX膜で最も強かった。以上の結果より, 抗凝固性において新しいDX膜は, 従来のCX膜よりも改善が見られ, F膜と同等の成績が得られた。
  • 江本 豊, 宮崎 高志, 丹羽 利充, 前田 憲志
    1991 年 20 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    キノリン酸はトリプトファンの代謝産物であり正常者では尿中に排泄されるため、慢性腎不全患者では血液中に蓄積されていると考えられる。その薬理作用は骨髄赤血球系幹細胞の増殖(CFU-E)抑制、リンパ球幼若化反応抑制・神経興奮作用などが報告されている。血液透析患者54例から血清を採取し、うち10例は透析前後で採取した。正常者10例からも血清を採取した。血清から有機酸を抽出し、メチル化後ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリーによりキノリン酸を同定、定量した。血液透析患者の透析前血清キノリン酸濃度は1.5±0.9μg/mlであり、正常者の0.10±0.01μg/mlに比較して増加していた。透析後の濃度は、0.25±0.12μg/mlと低下し血液透析により良好に除去された。限外濾過により除蛋白されたキノリン酸濃度は、血清中の濃度とほぼ同じであり、血清中ではほとんどが遊離型で存在していると考えられた。
  • 市川 久志, 川崎 忠行, 山崎 英隆, 百瀬 卓志, 武田 福治, 佐野 元昭, 小出 桂三
    1991 年 20 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    rHuEPO投与により腎性貧血は確実に改善される反面、Ht値上昇による透析効率の低下が懸念される。我々は安定維持透析患者に対しrHuEPO投与前後での溶質除去率について比較検討した。対象はrHuEPO投与により貧血の改善がみられ、且つ血液流量、透析器、透析時間等の透析条件に変更の無い安定維持透析患者8名である。検討期間はrHuEPO投与前3ケ月とrHuEPO投与により連続してHt値30%以上に維持できた3ケ月である。Ht値の上昇は平均9.65±2.45%であった。Ht値改善に伴う除去率の変化はクレアチニン、尿酸で有意な低下が認められたが、尿素窒素、リン及び尿毒症性ピーク2aでは有意の差は認められなかった。また、クレアチニン、尿酸の透析効率の低下により透析条件の変更を余儀なくされた例はなかった。従って、rHuEPO投与によるHt値の上昇を30%にとどめる限り腎性貧血の改善は臨床上問題とはならないと考えられる。
  • 伊藤 克佳, 西堀 英城, 雨宮 均, 奥山 寛, 平良 隆保, 秋沢 忠男, 北岡 建樹, 越川 昭三
    1991 年 20 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Urea index (UI)を一定として透析時間を3.5, 4.0, 4.5hrと変化させた3種の透析(HD)におけるP除去能を比較・検討した。同一UIでは, 血液流量は210±20 (3.5hr), 180±20 (4.0hr), 155±25 (4.5hr)ml/minとなり, 各HD前血清UN, UA, Cr, P濃度, 各溶質除去率に3群度で有意差は認められなかった。HD開始30分後の各溶質クリアランスは, 3.5hr HDでは4.5hr HDに比し有意に増加した。血清P濃度は治療初期に急激に低下し, 以後低値が持続した。透析液中へのP除去量は, 3.5及び4.0hr HD時は経時的に減少したのに対し, 4.5hr HD時では3.0hr目以降ほぼ平衡ないし増加傾向を示し, HD時間延長に伴う血管外から血管内へのP流入の可能性が示唆された。透析時間の短縮に伴い透析中のP除去量はHD前血清P濃度に依存した。以上より, UI一定の条件下では3.5~4.5hrの透析時間内ではP総除去能に有意の変化はなく, 短時間透析におけるP除去能は, HD前血清P濃度に強く依存すると考えられた。
  • 中川 清彦, 稲垣 王子, 岩木 良太郎, 西庵 良彦, 平岡 敬介, 荘野 忠泰, 依藤 良一, 森頴 太郎, 藤田 嘉一
    1991 年 20 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    FUTの透析膜への吸着性をpolyacrylonitrile(PAN)膜, polymethylmethacrylate(PMMA)膜, cuprammonium cellulose(CC)膜透析器を用いて, 同一条件下に水系におけるin vitroでの吸着と, 臨床試験におけるin vivoでの吸着動態を検討した。PAN膜においては, 水系基礎試験, 臨床試験ともに3時間目までFUTは膜に吸着され, 透析器出口側でのFUT濃度は著明に低下した。一方PMMA膜では水系試験では1時間目までFUTの吸着が観察されたが, 臨床試験ではFUTの吸着が認められなかった。CC膜ではいずれの試験においてもFUTの吸着はほとんど認められなかった。FUTはプラスの荷電性を有しており, マイナスの荷電性を有する透析膜に吸着されると考えられた。血液と透析膜接触後の透析膜表面における蛋白層の形成は, 膜素材により異なり, PMMA膜では臨床使用時のFUT吸着が消失したと考えられた。
  • 大坪 義信, 潤田 裕二, 上園 敦子, 永山 尚子, 山下 亙, 原田 隆二, 有馬 暉勝, 斎藤 明
    1991 年 20 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    合成膜には蛋白吸着特性をもつものがあるが、吸着蛋白の種類・量などは明確でない。われわれは、これまでに血液透析に使用したBK-P(PMMA)膜・PAN-DX(PAN)膜に吸着している蛋白の剥離を8M尿素溶液による再灌流を行い報告してきたが、今回さらにBK-P膜は生理食塩水、PAN-DX膜は10% Dimethylsulfoxide(DMSO)溶液を用いて超音波洗浄による蛋白剥離を試みた。吸着蛋白の分析は2次元電気泳動に加えて、セルロースアセテート膜電気泳動・ゲル濾過にて検討した。同時にβ2-Microglobulin(β2-MG)・Lysozyme・Retinol-binding protein(RBP)の除去率・Sieving Coefficient(SC)を求め除去特性を検討した。BK-P膜はβ2-MG、PAN-DX膜はLysozymeに強い吸着性を認めた。吸着蛋白の分析では、2次元電気泳動・セルロースアセテート膜電気泳動・ゲル濾過ともにBK-P膜・PAN-DX膜で明らかに異なったパターンを示した。また溶出条件に超音波洗浄を加えて検討したが溶出蛋白の組成に大きな変化はなかった。
  • 木野 恭子, 新倉 一彦, 秋沢 忠男, 越川 昭三, 岸田 晶夫, 筏 義人
    1991 年 20 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    セルロース膜表面にpolyethylene glycol(PEG)鎖をgraftしたnew modified cellulose membrane(New MC)の血液膜間相互作用に及ぼす効果を臨床的に検討した。hollow fiber 1g当り180, 100, 60μgのPEGをgraftした透析器New MC-1, 2, 3と従来のセルロース膜透析器(OC)を用い, crossover試験を行ったところ, New MCではOCに比し補体活性化, 白血球・血小板減少, 血小板放出因子, G-elastaseの上昇が有意に抑制された。透析後の膜への蛋白吸着はPEGのgraft量に逆相関して減少, 血球付着もLDH量, 走査電顕所見ともNew MCで低下した。最低ヘパリン必要量(MD)はOCで2000±794, New MCで667±207U/HDと減少, OCのMD下で透析中のthrombin-antithrombin III complex(TAT)上昇はNew MCで軽度であった。New MC透析器はPEG鎖の形成する散漫層により血液膜間相互作用が抑制され, 生体適合性に優れ, ヘパリン必要量が少ないなどの臨床的特徴を持つといえる。
  • 川西 秀樹, 新宅 究典, 繁田 直史, 高橋 直子, 土谷 太郎, 筏 義人
    1991 年 20 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸グリコール酸(P-LA-GA)にて生体内吸収性cuffを作製、透析患者の内シャント吻合に使用した。前腕での外シャントの内シャント化術を対象とし16例に行った。16例中2例が1週以内に閉塞したが残りは術直後より内シャントとして使用可能であり平均4.1±2.7カ月の観察期間中十分な血流量を確保できた。血管造影による吻合口狭窄度をみると、術1週では吻合内径は動脈内径の50±11%であったが経時的に拡張し15週には78.4±8.8%となり、また内面の連続性が増大し安定した内シャントとなった。Blood accessにおける吸収性cuffの使用は外シャントの内シャント化術が最もよい適応になると考えられる。流量の得られた症例では、経過とともにcuffが吸収され吻合口の拡張と連続性が増大し、この吻合法の有効性が示された。※(mean±SD)
  • 細矢 範行, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    β2-MGを除去可能なhighly permeable membrane(HP膜)は従来の膜に比べて透水性が高いため、逆濾過が起こると指摘されている。しかし、逆濾過の起こらない透析器の至適設計についてはまだ十分に検討されていない。本研究では、透析器形状を変化させた透析器において逆濾過量を求め、逆濾過の抑制を目的とした透析器の設計について検討した。向流操作で逆濾過の起こりにくい透析器の至適設計を理論的に検討した結果、FB-190UGAおよびPAN-12CX2透析器では中空糸有効長を短かくして5cm、かつハウジング径を大きくして各々7.7, 8.8cmにすることによって逆濾過を完全に抑制できた。並流操作では、膜面積および中空糸長さ(L=25cm)を一定にして糸束率を増加させると、逆濾過量は極小値を持った。中空糸有効長を25cmに設定した場合、FB-190UGAおよびPAN-12CX2透析器において逆濾過量を完全に抑制できる糸束率は各々0.52, 0.62となった。
  • 似鳥 嘉昭, 花井 智司, 榎本 義雄, 金子 守正, 須磨 靖徳
    1991 年 20 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    膜の溶質透過性向上のため大孔径化し, 且つ低圧損化のために内径を250μmと大きくした新しいPAN膜(PAN DX膜)を用い, (1)ダイアライザーの形状(有効長(L)と容器内径(D)の比率), (2)透析液の偏流防止, および(3)透析液側の境膜抵抗に着目し, それらの要因が低分子から中高分子までの溶質のin vitroクリアランスに与える効果を検討した。同一の中空糸(PAN DX)を用い(1)低L/D(5.5)のタイプA, (2)高L/D(6.9)のタイプB, (3)高L/D(6.7)かつ高充填率(68%)で中空糸をスペーサーにより均一分散させたタイプCの3種を試作し比較検討した。その結果タイプAに較ベタイプB, Cで全溶質にわたるクリアランスの向上が認められ, 特にタイプCでは極めて高いクリアランスが得られた。以上より, 従来低効率とされていた太径中空糸でもモジュール設計の適正化により低圧損, 高効率ダイアライザーの実現が可能であることがわかった。
  • 奥山 幸成, 佐々木 敬一, 金森 敏幸, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析膜の選択性に寄与する細孔直径分布を窒素ガス吸着法(BET法)および示差走査型熱量測定法(DSC法)を用いて測定した。BET法では透析膜への窒素ガス吸着量と、そのときの平衡圧から吸着等温線を作成し、Inkley法により細孔直径分布を算出した。DSC法では凍結した細孔内自由水の融解過程におけるDSC曲線を記録し、凝固点降下度および細孔内自由水の吸熱量より細孔直径分布を算出した。われわれが採用してきた湿潤透析膜の真空乾燥処理では、透析膜が中空糸軸方向と膜厚方向に収縮し、その割合は膜材質、含水率および膜厚によって変化すると考えられる。どの透析膜においても、凍結乾燥処理した方が真空乾燥処理よりもBET法により得られた細孔容積が大きくなり、凍結乾燥により湿潤状態に近い細孔容積が得られることがわかった。DSC法による透析膜の細孔直径分布の測定は簡便であり、BET法により求められた細孔直径分布と同様の傾向が得られ、その有用性が確かめられた。また、透析膜の細孔容積が大きいほどβ2-microglobulinの溶質透過係数および純水濾過係数が大きく、含水率、曲路率、膜面開孔率などの膜構造因子とともに細孔容積を考慮すれば、β2-microglobulinの除去に適した透析膜の至適設計が可能であると考えられる。
  • 福田 誠, 細矢 範行, 金森 敏幸, 酒井 清孝, 錦戸 條二, 渡邉 哲夫, 伏見 文良
    1991 年 20 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Highly permeable membrane(HP膜)は薄膜で大きな細孔を持つため、従来の透折膜に比べより大きな溶質透過性を示す。HP膜を用いたHP透析器では通常の透析器に比べて、総透過抵抗に占める血液側および透析液側境膜物質移動抵抗の割合が大きい。したがって、境膜物質移動抵抗を減少させることによって透析器の性能をさらに向上させることができる。そこで、中空糸内径および糸束率の異なる透析器を試作し、これらのパラメータと溶質除去能との関係から、透析器の至適形状について検討した。糸束率の増加に伴い透析液側境膜物質移動係数が増加し、それにより総括物質移動係数およびクリアランスも増加した。この傾向は通常の透析器よりも膜の溶質透過抵抗が小さいHP透析器において、より顕著に現れた。また、従来解析に用いられてきたKellerによる無次元相関式より推算した透析液側境膜物質移動係数とその実測値は一致せず、新たに理論式を考察する必要があることが示唆された。
  • 萩原 一仁, 内藤 明, 岡田 勝, 酒井 清孝, 金森 敏幸, 渡辺 哲夫, 今村 和夫, 鶴見 隆, 須磨 靖徳
    1991 年 20 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    無機リンが透析膜を透過する際に受ける電気的影響について検討するため、溶液のイオン強度を変化させて無機リンの溶質透過係数を測定した。NaClやKClを加えてイオン強度を変化させた32P-Na2HPO4水溶液(放射量185GBq/m3、無機リン濃度3.33mEq/l)を中空糸透析膜一本に充填して一定時間透析実験を行い、中空糸内の残存溶質濃度から溶質透過係数を算出した。透析液には試験溶液と同じイオン強度のNaClあるいはKClの水溶液を用いた。再生セルロース膜、PMMA膜、いずれの膜の場合も溶液中のイオン強度が大きいほど、また同じイオン強度では対イオンの移動度が大きいほど、得られた溶質透過係数は大きかった。またT. M. S. 理論に基づいて無機リンの膜透過性を解析した結果、無機リンの膜透過では、膜の荷電状態のみならず、膜構造も考慮しなければならないことが明らかになった。
  • 後藤 健, 松井 則明, 中川 成之輔, 圓尾 樹生, 吉田 政司
    1991 年 20 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新素材PEPA(ポリエステル系ポリマーアロイ膜)の低分子蛋白、特にβ2-MGの除去特性について検討した。in vitro吸着実験ではPEPAのβ2-MGの吸着能はpore sizeを上昇させることにより上昇し、PMMA(BK Type)と同等以上の吸着能が得られた。Myoglobin, lysozymeの吸着能もpore size upによる上昇が観察された。牛血漿を用いた循環実験ではin vitroで得られたほどのpore size upによる吸着能上昇の結果は得られなかったが、各種high performance membraneにおけるβ2-MGの除去特性が明確になった。PMMAでは通常の透析時間4時間で、β2-MGはほとんど吸着により除去され、CTA, PS膜では限外濾過により除去され、PEPAでは開始後2時間は吸着による除去、その後は限外濾過による除去が中心になることが明らかになった。PEPAはβ2-MGの除去に関しては吸着、限外濾過共に有効で、HD、HDFいずれの血液浄化法においてもその特性が十分に発揮できるものと考えられた。
  • 内藤 明, 大村 朋幸, 金森 敏幸, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    溶質透過係数測定法の確立は中空糸透析膜の溶質透過機構を解明する上で不可欠である。我々は溶液の光学的特性を利用することにより、単成分系水溶液中の溶質透過係数測定が可能であることを明らかにした。ところが、不透明懸濁液である血液や半透明溶液である血漿中の溶質濃度の測定には多くの問題点が存在した。そこで、今回、牛血清、牛血漿および牛血液中の溶質透過係数を光ファイバを用いて測定する方法を考案した。尿素、クレアチニン、ビタミンB12等の小中分子は中空糸透析膜を透過するが、蛋白質や赤血球などの光学的測定を阻害する分子、粒子は透過できない。この現象を利用し、中空糸透析膜外側に牛血液、牛血漿などの試験溶液を配し、中空糸膜内側に透過した溶質の濃度を光ファイバを用いて測定した。この時の溶質濃度変化より溶質透過係数を算出した。
    牛血液および牛血漿中で測定したビタミンB12の溶質透過係数は蛋白質や赤血球に影響されず一定であり、水溶液中のそれとほぼ等しかった。溶質透過係数は溶質半径や膜特性に支配されるため、共存する粒子、溶質に影響されなかった。
  • 水口 潤, 水口 正幸, 川島 周
    1991 年 20 巻 1 号 p. 82-84
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来のPAN-CX2を薄膜化し, グラジエント多孔質構造とすることにより改良されたPAN-DXについて性能評価を行なった。対象は安定期透析患者6症例, 透析条件はQB200ml/min, QD500ml/minであり, PAN-17DX(1.7m2)を使用した4時間の血液透析を行ない, 小分子量物質および低分子量蛋白の除去能に関して検討した。小分子量物質のクリアランスは, 尿素窒素172ml/min, クレアチニン145ml/min, 無機燐135ml/minであり, 低分子量蛋白のsieving coefficientはβ2MG0.51, アルブミン0.001とシャープな分画特性を示した。またβ2MGの除去率は55.9%, 透析液中への除去量は143.5mgと良好であった。
  • 坂下 恵一郎, 筒井 敏彦, 山本 尚哉, 伊藤 晃, 山崎 親雄, 増子 和郎, 渡辺 有三
    1991 年 20 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    3種の改質セルロース膜-ヘモファン(HE)膜, BT膜およびPC膜の生体適合性を臨床的に検討した。白血球は, HD前を100とした場合, 15分でHE52±15, BT70±17, PC72±6, 30分でHE61±10, BT75±9, PC73±7であった。血小板は, HD15~60分で3膜とも10%以内の変動であった。HD15分でのA側C3aの平均値は, HE4573, BT694, PC660ng/mlであり, C3a産生量(V-A)は, HE2795±1052, BT1313±894, PC614±344ng/mlと, HEが最も強い補体活性化作用を示した。顆粒球エラスターゼは, 3膜とも透析中有意に上昇するが, 透析前後比で, BT3.2±0.4, HE2.2±0.3, PC1.5±0.2と3膜間で有意差を認めた。β-TGも透析後に有意な上昇(16~19%)を示したが, 膜間での差異はなかった。また, 15分のAV差も1~3%と小さく, PF-4の成績と併せてみると3膜とも血小板活性化作用は同程度と思われた。
    以上より, 3膜のうちPCが最も生体適合性に優れていると思われた。
  • 南部 正人, 熊野 和雄, 小山 誠, 草刈 修一, 酒井 糾
    1991 年 20 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Recombinant human erythropietin (rHuEPO)は分子量30,000の糖蛋白で現在透析患者の難治性貧血に広く使用されている。今回外因性に投与されたEPOが血液透析中どのように変化するか調べる目的でEPOの各種血液浄化膜に対する吸着能、濾過能をin vitroでの再循環灌流法で検討した。
    灌流実験2時間での減少率はEVAL、PMMA、PAN(F-16)で20-25%と大きく、他の膜では12%以下であった。灌流実験開始後30分、60分でのSCはPS(APS-15)で、0.015、0.032であり、CTAで0.037、0.033、EVALでは0.123、0.104であった。他の膜では濾液に認めなかった。
    PMMA、PANでは吸着能、CTAでは軽度の吸着、濾過能を示した。EVALでは吸着、濾過能を示し、PS(APS-15)では初期に吸着、後に濾過能の増加を示唆した。このようにある種のダイアライザーを用いた血液透析でEPOは若干除去されるのでEPOの投与は透析終了時に行うのが適切と思われる。
  • 吉田 克法, 本宮 善恢
    1991 年 20 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    最近、recombinant-EPOの臨床への導入と共に、維持透析患者においてuremic toxinの造血能抑制作用が再認識されている。今回、我々はCuprophane膜よりEVAL膜に変更した6症例において、膜変更による造血能抑制作用の変化について、mouse胎児肝細胞を用いたcolony forming unit of erythroid (CFU-E)由来colony形成によるbioassay法により検討した。
    維持透析患者の血漿によるcolony形成は健常者の平均69.1個に対し、63.3個と造血能抑制因子の存在が示唆された。Cuprophane膜およびEVAL膜使用時、透析後の血漿は透析前の血漿に比較して、colony形成能において有意の上昇が認められ、造血抑制率も透析前で約20%、透析後で約17%と有意の改善が認められた。しかし、今回の検討ではCuprophane膜よりEVAL膜への膜変更による造血能抑制物質の除去能に関しては明かな差は認められなかった。
  • 竹沢 真吾, 日台 英雄, 酒井 清孝
    1991 年 20 巻 1 号 p. 98-101
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析膜の溶質透過性能の向上にともない、従来拡散で除去不可能と思われていた低分子タンパク質の除去が可能となった。しかし、拡散で除去し得るということは、透析液側に同程度の低分子タンパク質などが存在する場合、同様にそれらが拡散で血液側に移動することを意味している。抗原性を有するタンパク質などが移動した場合は種々の免疫反応を惹起し、新たな透析合併症をきたすことにもなりかねない。そこで、ダイアライザー直前でこれら低分子タンパク質などを除去すべく、一つの試みとしてセラミックパウダーを用いた吸着除去方法を検討した。
    使用したセラミックパウダーは粒径100~200μm、細孔直径1,500Åである。ビーカーバッチによる吸着試験では、リゾチーム・チトクロムC・リボヌクレアーゼA・α-ラクトアルブミンの順に吸着がみられた。これは等電点の順と一致する。つぎに、濃度を1.000ng/mlに調整したリゾチームを用いて内径10mmの自作カラムに詰めたセラミックパウダーへの吸着実験を行ったところ、滞留時間2~11秒で除去率が変わらず、いずれも80%前後であった。すなわち、吸着はきわめて速やかに行われることがわかる。しかし、カラム出口濃度を厳密に0とすることはできず、低分子タンパク質の除去には限界がある。低等電点を有するタンパク質は高等電点タンパク質ほど吸着されないが、細孔径・表面基の操作により幅広い等電点における吸着能の向上が期待できる。
  • 丹羽 利充, 江本 豊, 矢澤 智子, 宮崎 高志, 前田 憲志, 柴田 昌雄, 山田 宣夫, 西本 裕美子, 藤城 敏高
    1991 年 20 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の血清中にはインドキシル硫酸, 3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロピオン酸(CMPF)が蛋白(アルブミン)結合して著明に蓄積している。これらの蛋白結合物質は通常の血液透析法では殆ど除去されないため, 1)ハイパフォーマンスメンブレンダイアライザーを用いたHD, および2)経口吸着剤による除去に関して検討した。
    血清CMPFに関してはハイパフォーマンスメンブレンダイアライザー, あるいは経口吸着剤によっては除去されなかった。
    血清インドキシル硫酸の除去率に関しては従来のダイアライザーを用いたHDよりFB-150U, PE1.25UDなどのハイパフォーマンスダイアライザーを用いたHDの方がやや優れていたが, 十分ではない。補助療法として経口吸着剤AST-120の投与が血清インドキシル硫酸濃度の低下に有効であった。
  • 高井 一郎, 新里 高弘, 小早川 裕之, 藤田 芳郎, 森田 博之, 前田 憲志
    1991 年 20 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は, 末期腎不全患者を間欠的短時間push/pull HDF(P/PHDF)で治療するとともに, これらの患者のP/P HDFとP/P HDFとの間を, 装着型人工腎臓を用いたcontinuous arterio-venoushemo-filtration(CAVH)により治療した。短時間P/P HDF中は, 体重の3%にあたる量の透析液が体内に移行させられ, これは, P/P HDFに引き続くCAVH中に除去された。これにより, P/P HDF中の循環動態は安定し, 非P/P HDF時の体重は, 飲水制限を撤廃したのにもかかわらず, ほぼdryな状態に保たれた。この治療による尿素のKt/Vは, 通常の維持透析によるそれと等しく, この治療期間中の時間平均β2-microglobulin濃度は, 維持血液透析期間中のそれよりも有意に低かった。
  • 谷口 昌弘, 伊藤 良, 打田 和宏, 阿部 富彌
    1991 年 20 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    パーソナルコンピュータのソフトウエアによりNCSの動作をシミュレーションし、コンピュータ上でNCSの稼働状況を把握でき、また、操作できるシステムを開発した。多人数用透析液供給装置NCS-200は従来のものを基本に通信機能を持つROMに変更し、多人数用透析液供給装置NCS-200とパーソナルコンピュータはシリアルインターフェイスRS-232Cに準拠した光ファイバーケーブルにより接続した。プログラムの操作はキィーボードまたはマウスによって行う。NCS管理制御システムプログラム構成は、NCS管理、リポート、メンテナスよりなっている。
    このシステムにより透析液供給装置の稼働状況の把握ならびに透析液濃度の管理が容易になった。
  • 近江 武, 武藤 千秋, 西堀 文男, 雨宮 秀博, 酒井 良忠
    1991 年 20 巻 1 号 p. 116-119
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは、慢性腎不全患者5例に対し、PMMA系HPM(Bk-1.6m2、BK-2.1m2)によるβ2-MGの血漿クリアランス(以下CL)を15分、30分、60分、120分、240分と経時的に測定し、若干の考察を加えた。全症例のβ2-MGCLは15分:63.1±9.8ml/min、30分:56.5±9.5ml/min、60分:45.1±6.8ml/min、120分:34.5±6.6ml/min、240分:32.4±6.3ml/minであった(n=5~12)。また、透析液側β2-MGCLは120分:2.7±0.8ml/min、240分:8.8±2.2ml/minであった(n=5)。β2-MGの血漿CLの経時的変化は120分以前に比べて120分以後では少なかった。120分までは膜によるβ2-MGの吸着の寄与が大きいが120分以後では膜による吸着量は減少するものの、透過量が多くなるために血漿CLの変化が少なくなったと考えられる。このことは透析液側β2-MGCL値からも確認された。また、β2-MG血漿CLと血漿濃度から計算し、細胞外液での物質収支解析の結果、β2-MGを経時的に除去しているにもかかかわらず、透析中に細胞外液内に持続的にβ2-MGが流入することが推定された。
  • 森頴 太郎, 平岡 敬介, 依藤 良一, 中川 清彦, 西庵 良彦, 荘野 忠泰, 稲垣 王子, 井上 聖士, 藤田 嘉一, 申 曽珠
    1991 年 20 巻 1 号 p. 120-123
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は, 素材の異なる5種の透析膜を用いて, in vitroで昇圧ホルモンであるAVP, endothelinの膜への吸着特性をβ2-microglobulin(β2-MG)の吸着特性と比較検討した。実験に使用した透析膜は, cuprophan(SP1. OH), PMMA(BK1. OU), polysulfone(F50), EVAL(201-1000), PAN(Filtral)の6種である。牛血清を用いた定速, 循環濾過実験において, AVPはPMMA, PANで強い吸着が認められ, また, polysulfone, EVAL膜では弱い吸着が認められた。Cuprophan膜ではAVPの吸着は認められなかった。PMMA膜へのβ2-MGの吸着はPAN膜より強かったが, AVPの吸着はPMMA膜よりPAN膜で強い傾向を示した。Endothelinは, どの膜においても吸着が認められなかった。これらの結果より, 透析膜へのホルモンの吸着はそのホルモンの性質および膜の性状に左右されると考えられた。
  • 顔 邦男, 久野 克也, 家永 徹也, 沢村 敏郎, 岡田 昌義, 中村 和夫, 山本 哲郎
    1991 年 20 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1987年7月から1990年8月の間に神戸大学医学部附属病院母子センターNICUと愛仁会高槻病院NICUに於て、急性腎不全を合併した新生児の6例にcontinuous hemofiltration (HF)を施行した。polysulfon膜製、膜面積0.02m2、限外 過率16.0ml/hr/mmHgの中空糸型hemofilterを用い、回路の総充填量は20mlとなった。平均施行時間は55.7時間(8~144)で、平均除水量は4.3ml/kg/hr(1.0~77)であった。HF施行前とHF開始後24時間で比較するとBUNは53.0±31.4mg/dlから47.2±26mg/dlへ、クレアチニンは3.2±1.7mg/dlから2.8±1.3mg/dlへ(p<0.05)減少し、Kは5.2±2.6mEq/lから4.9±1.7mEq/lへ改善した。体重は1984±1437gから1944±1446gへ減少した(p<0.1)。HF施行中血行動態は安定していた。腹膜透析例との比較では、HF例に、クレアチニン、体重の有意な減少が認められ、血行動態もHF例のほうがより安定していた。HFは新生児腎不全例の管理にあたり安全かつ有効な方法であると考えられた。
  • 藤田 芳郎, 中根 一憲, 新里 高弘, 高井 一郎, 小早川 裕之, 森田 博之, 前田 憲志
    1991 年 20 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析中に突然発生する低血圧の機序を解析するため, 低血圧発生前, 発生中, 治療後にわたる循環血液量及び循環動態パラメーター, 血漿カテコールアミン濃度及び皮膚からの水分蒸発率の変動を調べた。その結果, 低血圧発生時には循環血液の分布の変化によって右房への静脈還流量は減少し, 心拍出量は減少することが示された。さらにこの静脈還流量の減少は, 交感神経系が未知の因子による血管壁緊張の低下を代償し得なくなったために生じるものであり, かつこの交感神経系の破綻の責任部位はafferent pathwayではないことが示された。
  • 堀内 孝, 太田 裕治, 多田 洋子, 土肥 健純, 東 仲宣, 松金 隆夫, 桜井 裕之, 水村 宏之, 鈴木 満
    1991 年 20 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腹膜透析中の3名の患者から得られたX線CT断層情報を用い、腹腔内透析液量の計測を行った。演算アルゴリズムはサーフェスモデルとボクセルモデルで、注入または排液量との比較を行い本方法の妥当性、有効性を評価した。
    サーフェスモデルはボクセルモデルに比べ高い精度と、より自然な腹腔内透析液分布を示したが画像情報入力時間を含めた全演算処理時間がボクセルモデルの15倍の長さを要した。臨床結果から示された測定誤差がサーフェスモデルで16%以内、またボクセルモデルで35%以内であり、単純な図形や透析液バッグによる本システムの測定精度(5%以内)に比べ十分とは言えず、撮影時期の選択、撮影時間の短縮、周辺臓器・組織との輪郭抽出などに改良が必要とされた。
  • 高畠 弘行, 小出 典男, 佐々木 俊輔, 松島 寛, 武南 達郎, 小野 良策, 坂口 孝作, 船津 和守, 辻 孝夫
    1991 年 20 巻 1 号 p. 139-144
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肝細胞spheroid(spheroid)をバイオリアクターとするハイブリッド型人工肝の作成を目的とし, そのプロトタイプを試作した。spheroidの癒合に基づく中心部壊死を避けるため, spheroidをアルギン酸カルシウムゲルに包埋した。2.5%アルギン酸ナトリウムが至適ゲル濃度と考えられ, これに包埋したspheroidは静置培養では4週間にわたって生存し, ゲルに包埋しないspheroidと同程度のアルブミン分泌を認めた。さらに, ゲル包埋spheroidを特定のチャンバー内に保持できる循環培養系を用いてゲル包埋spheroidのバイオリアクターとしての有効性を検討した。培養期間中のゲル内細胞形態, 及びアルブミン分泌で検討する限りでは, ゲル包埋spheroidの静置培養と同様の形態及び高い分化機能が確認された。この循環培養系では従来の静置培養系に比し高密度培養が可能であり, spheroidをバイオリアクターとするハイブリッド型人工肝のプロトタイプとしても期待がもてると考えられた。
  • 佐藤 泰生, 落谷 孝広, 松原 謙一
    1991 年 20 巻 1 号 p. 145-149
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポリ-N-パラービニルベンジル-D-ラクトンアミド(PVLA)をコートしたポリウレタン多孔質体(PVLA-RPU)を用いてラット初代肝細胞の三次元化長期間培養を試みた。ラット肝細胞を、PVLA-RPU中で3日間培養した後、電顕観察した結果、導入肝細胞は多孔質ウレタン内部でmulticellular sph-eroidを形成しPVLA-RPU表面に生着していた。さらに、肝細胞間には毛細胆管様構造が確認された。また種々の肝特異的機能も良好に発現しており、特にアルブミン合成・分泌能はin vitroにおける培養で40日間以上も維持されていた。PVLA-RPU内部に生着させた肝細胞を、腹腔内に移植することにより、四塩化炭素により劇症肝炎を誘発したラットの延命を図ることができた。腹腔中に移植した肝細胞は、2ヶ月間その機能を維持していた。以上の結果より、PVLA-RPUを用いた肝細胞の三次元培養システムは、人工肝臓のモジュールとして有用であることが示唆された。
  • 戸辺 成四郎, 武井 由香, 久々宮 岳志, 小林 明, 小林 一清, 赤池 敏宏
    1991 年 20 巻 1 号 p. 150-155
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    アシアロ糖タンパク質モデルの人工マトリックス材料として設計されたPVLA上での培養肝細胞は、EGFやインスリンなどの細胞成長因子の存在により、長期生存性と高機能発現性を有する基質接着型の多層集合体を形成する。この多層集合体の形成は、EGFやインスリンの添加濃度に依存し、更に両ホルモンの共存下においては相加的効果を示した。多層集合体を形成した培養肝細胞は、コラーゲンやフィブロネクチン上での伸展細胞に比べ増殖活性が極めて低く、アルブミンおよび胆汁酸合成分泌能、更にミトコンドリア内酵素活性などが良好に維持された状態で長期生存性を示した。また、種々の組織学的検討により多層集合体は細胞間マトリックスを有した構造を示し、細胞間マトリックスの存在が確認された。多層集合体の形成が、アスコルビン酸の存在下でより増強することや、コラーゲンの特異的合成阻止剤であるcis-OH-prolineとRGD配列を有するGRGDSPペプチドの添加により抑制されたことから、PVLA上での多層集合体の形成と安定化には、培養中に自己産出されるコラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス成分が重要なはたらきをしているものと考えられる。
  • 松江 弘一, 高橋 学, 濱田 朋倫, 長谷 泰司, 中島 保明, 内野 純一, 熊谷 文昭, 圓谷 敏彦, 橋村 悦朗, 駒井 喬
    1991 年 20 巻 1 号 p. 156-161
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    初代培養ブタ肝細胞を用いた積層型人工肝臓を試作し、灌流培養条件下での機能出現について検討した。5×10×0.04cmのガラス板40枚に肝細胞(約3×107個, 3.5~4g)を培養し、モジュールに組み込む。Leivobitz-15培地に各種ホルモンを添加し、空気相下70~90ml/minの灌流速度で24時間培養した後、5日間にわたって機能を測定した。尿素合成能は4.5μ9/hr/Moduleと安定した値を示し、糖新生能は13.1μg/hr/Moduleまで低下したが、5日目には22.0μg/hr/Moduleに回復した。アンモニア代謝能は4.1mg/Module/2hrまで減少した。DNA量は一定の値を示した。形態学的には、細胞質内に空胞化、脂肪滴を認めたが、剥離脱落は少なく、良好な形態を示した。これらより単層平面培養と同様に灌流培養においても培養ブタ肝細胞は、ハイブリッド型人工肝のBioreactorとして有用と思われた。さらに免疫学的検討が必要であるが、その積層型人工肝モジュール使用による肝補助の可能性が示唆された。
  • 柳 健一, 大島 宣雄
    1991 年 20 巻 1 号 p. 162-166
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Polyvinyl Formal(PVF)樹脂多孔質体(カネボウ化成(株)製)の肝細胞の高密度培養への応用の可能性を検討した。コラーゲンコートした, 平均孔径130μmと250μmのPVF樹脂を用いて静置培養(S群)および灌流培養(P群)を行った。対照としてコラーゲンコートディッシュを用いる単層培養(M群)を行った。基質内肝細胞密度は, P群において最大で5.0×106cells/cm3-PVFとなり, M群と比較して10倍以上の高密度培養が可能になった。M群, P群とも24時間の培養後には培地中に多数の高分子量物質が認められ,肝細胞の合成能の高さが示唆された。肝細胞のアンモニア代謝, 尿素合成能は, S群においては基材内の肝細胞濃度が上昇するに従って悪化した。一方, P群においては高密度の条件下においてもM群と同等の値を維持し, PVF樹脂を用いて肝細胞の高密度培養が可能であることが示された。
  • 葛西 眞一, 平井 修二, 稲垣 光裕, 大江 成博, 沢 雅之, 柿坂 明俊, 山本 哲, 水戸 廸郎
    1991 年 20 巻 1 号 p. 167-172
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    hybrid artificial liverに使用する、アルギン酸Ca包括固定化肝細胞の、高機能化を意図して、基本培地や各種の添加剤の意義について検討した。コラゲナーゼ酵素消化法で分散したラット肝細胞を、2%アルギン酸Naと混和し0.1モルCaCl2に滴下してゲルビーズとした。基本培地としては、ハンクス液、MEM、Williams Eの三種を用い添加剤として、h-EGF、Fibronectin、DBcAMP、Proline、Glutamine等を用いた。dish culture法で、負荷アンモニアの除去能、グルコースやアルブミンの産生能、TAT活性などを検討したところ、各種添加剤の効果は単層培養系の形態学的観察において若干認められたが、代謝機能の点からは明らかではなく、基本培地に大きく規制される事が判明し、WE、MEM、HANKSの順で良好な機能が認められた。
  • ―肝移植適応例における長期肝補助も含めて―
    面川 進, 浅沼 義博, 小山 研二, 櫻田 徹, 阿部 忠昭, 宮形 滋
    1991 年 20 巻 1 号 p. 173-178
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血漿交換(PE)を主体とした血液浄化療法を施行した術後肝不全例は15例で、急性型は13例でこれらに2~22回、計98回の血液浄化療法を施行した。長期間PEを施行した2例は慢性型で、50歳男性は外傷性肝破裂に対する肝切除後の胆道狭窄による胆汁性肝硬変症例で4年間に116回のPEを施行したが食道静脈瘤破裂で死亡した。26歳男性は胃癌手術後、広汎小腸壊死を来し、門脈血の欠如、長期完全静脈栄養などによる肝機能障害と意識障害が出現し、1年間にわたり間欠的にPEを施行した。急性型13例中生存例は4例(3%)で、術前慢性肝疾患非合併の5例では3例(60%)救命できた。生存例では他臓器不全が少なく、PE前血清ビリルビン値が15mg/dl以下、アンモニア値が200μg/dl以下でPE導入により両指標とも早期に低下し、BCAA/AAAの改善、などの特徴が死亡例と比較して認められた。長期PE例では合併症もなくPEは黄疸、意識、一般状態の改善に有効で、肝移植適応例の慢性術後肝不全例ではPEによる延命効果が認められた。
  • 山崎 義光, 上田 信行, 久保 田稔, 関谷 正志, 河盛 隆造, 鎌田 武信, 片倉 健男
    1991 年 20 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体内における血栓形成がセンサ出力低下を惹起する過程を再現すべく, in vitroでの実験系にて血栓形成の各過程のセンサ活性に及ぼす変化を検索した。センサを濃厚血小板浮遊液中にdipし, 血小板凝集を惹起したときセンサ出力に変化を認めず, さらに, フィブリン析出にてもセンサ出力に変化を認めなかった。センサを線維芽細胞が増殖する人工皮膚中に埋入後, センサ出力は著しく低下, 凝集細胞剥離にてセンサ出力の回復を認めた。
    生体留置時のセンサ活性の長期維持には, 細胞成分の凝集抑制特性をセンサ膜に付加する必要性を認めた。
  • ―差スペクトル法によるブドウ糖スペクトル分離・定量化の試み―
    梶原 研一郎, 福島 英生, 榊田 典治, 橋口 恭博, 七里 元亮
    1991 年 20 巻 1 号 p. 183-187
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工膵島における血糖、組織糖濃度センサーとして、我々はFTIR-ATR法を導入したが、糖以外の干渉成分の存在、および糖信号と雑音間の低S/N比のため、定量の精度が劣化した。今回ガンマ・グロブリンがアルブミン・赤血球と共に主要吸光成分であることを確かめ、これら3種の成分の時間変動が無視できるほど小さいことより、差スペクトル法適用の妥当性を検証した。更に低ブドウ糖濃度での、基線の揺らぎ効果による精度の劣化を除くために新しい定量法を導入、全糖濃度域で高い精度をもつ検量線を得た。また、75g経口ブドウ糖負荷試験時の口唇粘膜スペクトルを測定し、負荷前との差スペクトルが、ブドウ糖スペクトルと全く同じスペクトル形をもち、さらに波数1033cm-1の頂点吸光強度はブドウ糖濃度に依存して変化することを検証した。
  • 大倉 國利, 伊藤 勝基, 高木 弘, 池田 章一郎, 伊藤 要, 近藤 達平
    1991 年 20 巻 1 号 p. 188-192
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工膵臓用のグルコースセンサーとして砲弾型皮下測定型センサーとTiO2型酸素電極系を基礎とする針状グルコースセンサーを開発してきた。しかし、長期間の体内での作動にまだ問題がある。今回は、その原因について検討した。両センサーともにグルコース透過制限膜に問題があり、この改良が、長期間体内で作動しうるセンサーの開発の鍵を握っていることがわかった。
  • ―血漿ブドウ糖濃度と皮下組織ブドウ糖濃度の相違に関する検討―
    榊田 典治, 福島 英生, 梶原 研一郎, 橋口 恭博, 七里 元亮
    1991 年 20 巻 1 号 p. 193-198
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今日、ブドウ糖センサで計測した組織ブドウ糖濃度が血漿ブドウ糖値に比し、低値を示すことが問題となっている。この原因を解明すべく、酸素分圧に影響されないフェロセン付加ブドウ糖センサを開発し、正確な組織ブドウ糖濃度を計測しうるか否か、in vitro、in vivoで検討した。1) in vitroでフェロセンを付加しない標準ブドウ糖センサは、25mmHg以下の酸素分圧で酸素依存性を示したが、フェロセン付加ブドウ糖センサは酸素分圧に無関係にブドウ糖濃度に直線応答を認めた。2) in vivoで標準ブドウ糖センサで計測した組織ブドウ糖濃度は、生理的組織酸素濃度においても血漿ブドウ糖濃度値と相関するも、一致しなかった。一方、フェロセン付加ブドウ糖センサ応用時は、種々の血糖負荷で両者に一致をみた。以上より、低酸素分圧である皮下組織内での正確なブドウ糖計測には、酸素分圧に無関係なフェロセン付加ブドウ糖センサ応用で解決しうることが示唆された。
  • 井上 一知, 林博 之, 前谷 俊三, 田畑 泰彦, 筏 義人
    1991 年 20 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    膵ラ島を高分子半透膜に封入することにより、レシピエントの免疫から隔離された状態で移植するbio-artificial pancreasには、免疫抑制剤を必要とせず異種移植も可能である等、数多くの利点がある。今回、メッシュ補強ポリビニルアルコールチューブ(MRPT)を用い、その中へS-Dラットの膵より分離したラ島を封入してハイブリッド人工膵を作製後、糖尿病ラット(wister系)への腹腔内移植を施行したところ、人工膵を作製しないでそのままラ島を移植した場合に比較し、有意の血糖値の低下を認め、かつ1例において97日間にわたる血糖値の低下が観察された。
    In vitroにおけるMRPTの分子透過性に関する検討では、インスリンやグルコースは自由に透過させるが、拒絶反応の担い手であるグロブリンGは全く透過させないことが判明した。
    MRPTを用いたbio-artificial pancreasは、今後の検討を積み重ねることにより、糖尿病に対する有効な治療法になり得る可能性が示唆される。
  • 清水 浩, 小林 和生, 岩田 博夫, 雨宮 浩, 阿久津 哲造
    1991 年 20 巻 1 号 p. 203-208
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ハイブリッド型人工膵臓では、ラ島は血管系から切り放されさらに半透膜で被われている。このためハイブリッド型人工膵臓の血糖値変化に応答したインスリン分泌は、当然自然の膵臓からのインスリン分泌とは異なるであろう。本研究では、ハイブリッド人工膵臓の形状、半透膜の膜厚や膜中の高分子濃度等がインスリン分泌に与える影響を、実験と理論の両面から検討を加えた。よく実験値を再現できる数式モデルを組み立てることができた。数式モデルによる解析より、インスリン分泌の動特性に与える影響は、ハイブリッド型人工膵臓の形状よりはラ島を包むハイドロゲル膜の膜厚が大きな影響を与えることがわかった。本研究により、ハイブリッド型人工膵臓作製のための、基礎データを得る膜透過試験評価システムまたインスリン分泌の数式モデルを構築でき、これらは今後新規な封入材料を選定したり、新たなシステムを作製する有効な手段になり得ると考えられる。
  • 大河 原久子, 河合 達郎, 寺岡 慧, 太田 和夫
    1991 年 20 巻 1 号 p. 209-212
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細胞植え込み型人工臓器として応用の出来る新しい型のDiffusion chamberを開発し、異種移植の可能性の有無についての検討を行った。〔方法〕新しいtypeのDiffusion chamber型bioarti ficial endocrine pancreas (Bio-AEP)とは、人工高分子膜の選択的透過性を利用したSemipermeable membraneを用いて、細胞外マトリックスに包埋した新生児ブタ膵島細胞塊を上下より挾み込んだものを称して言う。本実験では、糖尿病ラットおよびマウスに新生児ブタ膵島細胞塊を封包したBio-AEPを腹腔内に移植し、血糖の降下状態を観察した。〔成績〕Bio-AEPs移植群は全例とも移植後8~10週まで空腹時血糖が100~170mg/dlの域値を上下した。尚この間移植群は如何なる免疫抑制剤も使用しなかった。これらの結果はBio-AEPの異種移植についての可能性を示した。
  • 岩田 博夫, 小林 和生, 清水 浩, 雨宮 浩, 阿久津 哲造
    1991 年 20 巻 1 号 p. 213-216
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ラ島をアガロースマイクロビーズに封入したハイブリッド型人工膵臓を試作し、マウス間の同種移植に適用した。ラ島はC57BL/6(H-2, Kb,Db)マウスから単離し、レシピエントはストレプトゾトシンで糖尿病にしたBALB/c(H-2,Kd,Dd)マウスである。移植された5例で、全例術後一週間以内に血糖値は正常化した。移植後血糖値が再び上昇したマウスはいなかった。現在最長生着期間は350日を越えている。移植後235日目に悪性腫瘍で失ったマウスから、マイクロビーズを回収し、その組織像を観察した。235日日を経過しても腹腔内でアガロースマイクロビーズは安定に存在し、またマイクロビーズ内のラ島細胞は核が明瞭に染色されていた。自然発症糖尿病のNODマウスをレシピェントとして用いた移植実験でもほぼ同様な結果が得られた。以上のように同種ラ島を用いた場合、ヒトのI型糖尿病にも十分適用可能なハイブリッド型人工膵臓を開発し得たと考える。
  • 長沼 信治, 阿岸 鉄三, 三浦 明, 村上 純, 鈴木 利昭, 太田 和夫
    1991 年 20 巻 1 号 p. 217-222
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 血液透析患者における高脂血症の合併率, 透析年数による推移, およびその重症度について明らかにすることと, 慢性腎不全, 高脂血症に伴う動脈硬化性病変の患者にLDL吸着療法を行ないその有効性, 安全性について検討することである。
    当センターで外来維持透析を施行中の慢性腎不全患者163名を対象として, 透析年数により3群に分け, 高脂血症の合併率を求めた。結果として透析年数10年以上の患者には高トリグリセライド血症とともに高コレステロール血症が高頻度にみられた。また一部の患者で透析年数とともにその値が高値に推移していることが示された。この内2名の患者に動脈硬化性病変がみられ, 薬剤治療に抵抗性であったため, Liposorberを用いたLDL吸着療法を行なった。LDL吸着療法の併用により臨床症状および高脂血症の改善がみられ, 重大な副作用はなく安全に施行できた。
  • 三田 勲司, 大坪 修, 鈴木 好夫, 原 茂子, 斎野 猛司, 谷岡 力夫, 池田 博之, 下村 泰志, 秋山 暢夫
    1991 年 20 巻 1 号 p. 223-229
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    臓器不全, 自己免疫疾患透析に対する治療として, 血漿交換による血液浄化法が著効を示すことがある. しかし, 血漿交換はすべての物質の非選択的な除去であり, 血中の有効な成分も同時に除去されるとともに, 血漿の補充に大量の新鮮血漿を必要とし, 肝炎やアレルギーなどの合併症がおこりうる. この難点を克服すべく山崎らのIM-PH, IM-TRをはじめとして, いくつかの吸着剤が開発されてきた. 我々の開発してきた吸着剤PC-2は架橋AgaroseであるSepharoseCL-4Bにhexamethylenediisocyanate(HMDI)により更に架橋構造を賦与したもので(1)beta-2-microglobulin, (2)anti-AchR Ab, (3)抗核抗体, 抗ds-DNA抗体, 免疫複合体, IgG型rheumatoid factorなど, 自己免疫疾患にみられる多様な病因物質に対する吸着能をもっており, しかも生体適合性にすぐれているので臨床応用が可能である(表1).
  • 阿部 元, 谷 徹, 沼 謙司, 遠藤 善裕, 吉岡 豊一, 青木 裕彦, 松田 孝一, 花沢 一芳, 石井 豊, 蔦本 慶裕, 小玉 正智
    1991 年 20 巻 1 号 p. 230-234
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Lipopolysaccharide(LPS)の抗腫瘍作用を利用するために、ポリスチレンビーズにLPS、およびLPSの成分の一部分を化学的に固定化した材料を開発し、in vitroおよびin vivoにてその抗腫瘍効果を検討した。C3H/HeNマウスおよびSDラット脾細胞をLPSまたはLPS構成成分を固定化したビーズと接触刺激させて細胞障害活性を測定した。LPS構成成分を固定化したビーズでは、ほとんど細胞障害活性を認めなかった。C3H/HeNマウスでは、E. coliのLPS固定化ビーズによって最も活性が増強され、SDラットでは、SalmonellaのLPS固定化ビーズによって最も強い活性が誘導された。担癌マウスにE. coli LPS固定化ビーズで刺激された脾細胞を投与すると、腫瘍増殖が抑制された。肺転移ラットにSalmonella LPS固定化ビーズで刺激された脾細胞を投与すると、肺転移が抑制された。また、ラットでのSalmonella LPS固定化ビーズを用いたDirect hemoperfusionも安全に施行することができた。
  • ―IL-2, Ir-1活性の測定―
    宮崎 浩, 村林 俊, 見藤 歩, 森田 泰史, 勇田 敏夫
    1991 年 20 巻 1 号 p. 235-240
    発行日: 1991/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高分子材料と血液が接触することによって起こる免疫系の活性化は、体外循環による治療、生体材料の開発などにおいて重要な研究課題であり、高分子材料の化学的性質と免疫系との相互作用が注目されている。しかし、高分子材料のサイズによりリンパ球の吸着挙動が異なることが知られており、材料のサイズが細胞機能にも影響を及ぼす可能性がある。
    本研究では、材料のサイズと免疫担当細胞との相互作用に着目し、平均径1.5μm~17μmのポリプロピレン製超極細繊維を基質にリンパ球、マクロフアージ(Mφ)を培養し、その活性を調べた。活性は、IL-2, IL-1の産生を指標にした。リンパ球吸着率の高くなる10μm以下の繊維による上清中のIL-2活性は、1.5μmの繊維において最も高い値を得た。MφによるIL-1活性も径の細い繊維で高い値を得た。これは、材料のサイズが免疫担当細胞の機能に影響を与える可能性を示唆する結果であると考えられる。
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