日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
54 巻, 11 号
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
  • 天野 純, 鈴木 章夫, 砂盛 誠, 坂本 徹
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2711-2715
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年高齢者にも積極的に開心術が施行され,弁膜症と虚血性心疾患の合併例に対する手術が増加している.本研究では,合併手術を施行した24例(男性16,女性8例)の特徴と手術成績を検討した.年齢は, 35~76歳(平均60.4歳)で,弁膜疾患は大動脈弁9例,僧帽弁9例,三尖弁1例,連合弁膜症5例であった.術式は,冠動脈疾患には,左室瘤切除のみの1例を除いて全例にACバイパス術を,弁膜疾患には,弁置換術が16例に,弁形成術が7例に, Bentall変法手術が1例に行われた.内4例 (17%) は緊急手術であった.手術成績は手術死1例 (4.2%), 遠隔死1例を認めたが,退院した症例は社会復帰している.したがって,両心疾患合併例の開心術の特徴は,高齢者で,緊急手術となる場合が多いが,手術成績は単独疾患に劣るものではなく,今後とも積極的に施行されるべきである.
  • 塩野 則次
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2716-2720
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    全血輸血に含まれる白血球による生体臓器への影響を減少させる目的で,乳幼児・小児開心術の人工心肺回路内充填血として白血球除去濃厚赤血球 (LDR) を使用し,その臨床像を検討した.対象は乳幼児・小児開心術症例87例で, LDRを使用した症例37例をLDR群,新鮮血を使用した症例50例をコントロール群とした.術後のGOT, GPTの推移に有意差はなかったが,コントロール群の1例で一過性の肝機能障害を認めた.白血球数は術後LDR群で有意に増加し,コントロール群では同種血白血球による抑制が示唆された.血小板は白血球除去フィルターで除去されLDR群で術後有意に減少した.そのためLDR群で術後1病日における出血量が多かったが,総出血量では有意差はなかった.呼吸管理時間,術後抗生剤の使用日数にも有意差はなかった.白血球除去濃厚赤血球の使用によって白血球による有害副作用予防の可能性が強く示唆され臨床上有用と考えられた.
  • 野口 照義, 石川 隆一, 松本 京一, 三上 春夫, 何 秀泰, 沖本 光典, 岡田 吉弘
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2721-2727
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    10年間に救命救急センターへ搬入された消化管穿孔破裂334例は,その間に緊急入院した14,303例の2.3%であった.部位別では,食道9, 胃十二指腸214, 小腸69, 大腸42例で,それぞれ334例の2.7, 64.1, 20.7, 12.6%に当たる.全体では,非外傷性穿孔破裂例が全体の68.3%で,少腸のみでは逆に外傷性が87%であった.食道穿孔破裂全例に縦隔気腫を認め,腹腔内消化管穿孔破裂の腹腔内遊離ガスの検出率は,全体で79.7%であり,外傷例で57.0%と非外傷例の89.8%に比して有意 (p<0.01) に低い.死亡例を含む術後合併症例は,全体の22.5%で外傷性穿孔破裂が非外傷性それより有意 (p<0.005) にその頻度が高い.部位別では,食道と大腸での術後合併症の発生頻度が他の部位に比して高い.合併症例では,無合併症例に比して発症より外科処置迄の時間が有意 (p<0.01) に長く,手術時の胸水や腹水の細菌培養が全例陽性であった.全体の死亡率は, 4.5%であった.
  • とくに,外科的治療成績向上の問題点
    上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介, 佐藤 貴弘, 瀬川 正孝, 黒阪 慶幸, 鎌田 徹, 草島 義徳
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2728-2734
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去13年10ヵ月に当科でリンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した乳頭部癌症例11例(治癒切除率84.6%)を対象として,外科的治療成績向上の問題点を明らかにすることを目的に臨床病理学的検討をおこなった.肉眼型別にみたリンパ節転移と予後では腫瘤型の2例はリンパ節転移なく, 6年10ヵ月, 13年8ヵ月生存中である.腫瘤潰瘍型の4例は4年11ヵ月を最長に全例生存中であるが, 2例にリンパ節転移を認めた.潰瘍腫瘤型および潰瘍型の5例の5年生存率は60%であり, 2群以上のリンパ節転移も4例に認めた.リンパ節転移状況ではNo. 14に11例中4例, No. 16には3例転移を認め,うちNo. 14b転移陽性の1例は2年3ヵ月生存中であり, No. 14に加えNo. 16転移陽性の1例も6年6ヵ月生存可能であった.以上の成績より,腫瘤潰瘍型,潰瘍腫瘤型潰瘍型ではNo. 14リンパ節を重点としたR2以上のリンパ節郭清が外科的治療成績向上につながるものと考えられた.
  • 山田 和彦, 松元 仁久, 吉嶺 巡, 渡辺 和礼, 村田 隆二, 西村 明大, 石部 良平, 田中 紘輝, 平 明
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2735-2742
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    癒着性腸閉塞症に対する診断治療の指標として超音波による重症度分類を試み,その有用性について検討した.対象は1987年1月から1992年2月までに経験した癒着性腸閉塞症85例に,後に非癒着性腸閉塞症と判明した2例を加えて対象とした,超音波所見と進展を考慮し四段階に重症度分類した.便宜的にGrade I (亜腸閉塞症), Grade II (単純性腸閉塞症), Grade III (腸壊死のない絞扼性腸閉塞症), Grade IV (腸壊死のある絞扼性腸閉塞症)とした.この重症度診断に基づいて治療方針をdecision tree式に決定した.保存的治療は85例中63例 (74%) に奏効し,この期間中に保存的治療のみで腸閉塞症が解除しその後も手術療法を受けることなく経過したものは58例 (68%) であった.手術療法は27例 (32%) におこなわれた.重症度分類を用いた超音波診断の正診率は83/87 (95%) であった.超音波診断上の重症度分類と,これに直結連動する治療方針の決定は癒着性腸閉塞症に対して有用な手段である.
  • 鈴木 孝雄, 落合 武徳, 奥山 和明, 永田 松夫, 軍司 祥雄, 中島 一彰, 磯野 可一
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2743-2748
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌肝転移症例における外科治療の意義を胃癌肝転移110例の遠隔成績をもとに検討した. (1) 原発巣切除(原切)の意義. P0, H(+)症例で生存率は有意に原切群が非原切群に比し良好であった.一方, P(+), H(+)症例でも6ヵ月生存率は原切群が良好であったが,400日以上生存例は無い. (2) 肝転移巣切除(肝切)の意義. P0, H(+)で原切施行例で,生存率は肝切群が非肝切群に比し有意に良好であった.H因子別では,H1では有意に肝切群が良好であり,H2でも有意差はないものの肝切群が良好であった. (3) 持続動注療法(動注)の意義. P0, H3, で原切例で肝動注群は非肝動注群より生存率は良好な傾向を示した.以上から,P(+)では,原切にとどめる. P0でH1-2では, R2の郭清を伴う原切+肝切除に肝動注を併用する. H3では,肝切の適応はなく,原切に肝動注を併用する治療を標準とすべきと思われた.
  • 岡田 和也, 中島 公洋, 荒巻 政憲, 岩男 裕二郎, 吉田 隆典, 御手洗 義信, 金 良一, 小林 迪夫
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2749-2753
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腫瘍径5cm以下の肝細胞癌切除68例中,多結節型13例を対象に,多中心性発生の有無や, Stage分類,治癒度分類について検討した.肉眼的進行程度は単発55例でStage I, II, IIIが10例, 24例, 21例であるのに対し,多結節型ではStage II, III, IV-Aが1例, 6例, 6例であった.また治癒度は単発例で絶対的治癒切除 (AC) 6例,相対的治癒切除 (RC) 37例,相対的非治癒切除 (RNC) 12例であるのに対し,多結節型ではRC 3例, RNC 10例であった.一方,多結節型13例中10例が多中心性発生と考えられ,その5生率は54%であった.これに対して単発例の5生率は全体で36%, Stage I, II, IIIで80%, 52%, 15%, AC, RC, RNCで100%, 43%, 22%であった.したがって多結節型肝癌は単発例に比べStageが進行したRNC症例が多いが,多中心性発生の場合には切除により比較的良好な予後が得られており,今後,多中心性発生の可能性を考慮したStage分類や治癒度分類の検討が必要と考えられた.
  • 木戸 潔, 中島 祥介, 金廣 裕道, 久永 倫聖, 福岡 敏幸, 青松 幸雄, 瀧 順一郎, 堀川 雅人, 吉村 淳, 上野 正義, 高 ...
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2754-2759
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    手術時外胆汁瘻を併設した胆道系手術症例18例に対して,術中,術後における胆汁中細菌の検討を行った結果,
    1) 胆汁中細菌は,術中,術後共に高率に検出された.菌種ではEnterococcusが最も多く検出され,全体の内訳ではEnterobacter, E. coli等のグラム陰性桿菌が大半を占めた.
    2) Enterococcus, E. coli, Klebsiella等は術後経過と共に増加傾向を示し,また複数菌感染に関与した.
    3) 胆汁中検出菌は,術前からの胆汁流出障害の有無,胆道系手術術式等と密接な関係を示した.
    4)術後胆管炎発症には,乳頭機能の有無,複数菌感染,嫌気性菌が関与すると思われ,症例に応じた予防対策が必要と考えられた.
  • 佐埜 勇, 内藤 伸三, 生田 肇, 佐古 辰夫, 阪田 和哉, 黒郷 文雄
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2760-2765
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去5年間の当科における70歳以上の高齢者の急性胆嚢炎手術症例の臨床的特徴および治療上の問題点を明らかにするために69歳以下の非高齢者と比較検討した.高齢者では急性胆嚢炎が胆摘手術症例57例中の52.6%(30例)を占めた.総胆管結石がその46.7%にみられ非高齢者の1.8倍であり,術前敗血症は高齢者の4例のみに併発していた.術前併存症は高齢者で有意に多く発症から手術までの期間は高齢者の術前併存症を有する症例で最も長かった.手術時間は両群で有意差はなかったが出血量は高齢者で多い傾向にあり炎症の程度も高齢者の方が強かった.術後合併症の頻度は両群で有意差はなかったが,消化管出血は高齢者にのみみられた.術後入院期間は両群で有意差はなく,死亡例もなかった.今後はさらに高齢者において炎症の消退を早め併存症をコントロールしつつ安全に早期手術に運び,いかに入院期間を短縮させるかが課題と考えられる.
  • 山本 宏, 浅野 武秀, 木下 弘寿, 菊池 俊之, 榎本 和夫, 小林 進, 長島 通, 磯野 可一
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2766-2770
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵頭部癌切除例のうち画像診断法にてfollow upし,再発を確認できた18例において診断法の評価,再発様式,治療,予後について検討を加えた.肝再発診断は超音波検査 (US), computed tomography (CT) ともに良好であったが局所再発診断はCTの方が評価しやすく, positron emission tomography (PET) は局所再発の早期診断に有用と考えられた.肝再発で発見される症例の方が局所再発で発見される症例より術後早期再発が多い傾向がみられた.肝再発に対する治療効果は望めず, 2年以上経過し局所再発で発見されるような症例においては放射線療法の延命効果は期待できると考えられた.初発再発部位が局所のみ再発群は肝再発群に比べ,有意に再発後生存率が良好であった.膵頭部癌術後再発例において肝再発が顕在化した時点では延命は望めず,局所再発のみであれば治療効果が望める症例があることから局所再発を的確に診断することが再発例の予後改善のために重要である.
  • 保里 惠一, 成田 洋, 寺西 太, 羽藤 誠記, 伊藤 昭敏, 真下 啓二, 石川 周, 水野 章, 品川 長夫, 由良 二郎
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2771-2775
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性である.心窩部不快感と上腹部痛が出現したため当院を受診,急性膵炎と診断された.経過中,膵嚢胞の形成が認められ第18病日にERCPが施行された.その後,急に増悪し緊急開腹ドレナージ術が施行された.膵嚢胞液よりMRSAが検出され,その後創部,鼻腔からも検出された.嚢胞腔の縮小とMRSA感染の症状が軽快したため,術後62日目に胆嚢摘出術, T-tubeドレナージ術,膵嚢胞・空腸吻合術を施行した.術中の腹水よりMRSAが検出され,術後の便,創部,膵液,胆汁からもMRSAが検出された.肝胆膵疾患においては,術前検査としてERCPが高頻度に施行されるが,鼻咽腔内にMRSAを保菌する例では,かかる検査時にパリアとしての胃をMRSAが容易に通過し,下部消化管や胆道・膵管内への汚染を発生する危険がある.従って, ERCP施行前の鼻咽腔内のMRSA保菌のチェックも,術後MRSA感染予防対策上重要と思われる.
  • 竹村 茂一, 森本 健, 中谷 守一, 木下 博明, 若狭 研一
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2776-2780
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    extra-abdominal desmoidは,腹壁以外の随意筋の筋膜ならびに腱膜から発生し,腹壁desmoid同様筋肉内への局所浸潤性増殖を示す比較的稀な腫瘍性疾患である.肉眼的にも組織学的にも良性にみえるものの,高頻度に局所再発がみとめられる.
    今回われわれは甲状腺の左半切除後の54歳女性の頸部腫瘤に対して周囲組織を含んで摘出術を施した.腫瘤は2.7×2.1×2.0cmで,割面は膠原線維質で光沢をもち,被膜を有するようにみえたが,周囲との間にplane of cleavageを認めなかったことからすると, desmoidを考えるべきであった.病理組織学的には本腫瘍をdesmoidと診断した.周囲組織を含んだ切除をし,術後12ヵ月の現在,再発を認めていない.頸部筋肉内にこのような膠原線維質の腫瘍をみた場合, desmoidを考えて対処することが勧められる.
  • 有村 俊寛, 福田 護, 大塚 恒博, 森久保 雅道, 小森山 広幸, 金杉 和男, 山口 晋, 片山 憲恃, 田所 衛
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2781-2789
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    葉状腫瘍は比較的稀な乳腺腫瘍である.今回病理学的に葉状腫瘍と診断された症例について,臨床的特徴を病理学的診断分類に従って検討した.教室において1974年から1990年までに経験した葉状腫瘍は19例である.この19例を病理学的に再検討しbenign, borderline, malignantの3グループに分類した.その結果benign症例15例, borderline症例2例, malignant症例2例に分類された. benign 7例, borderline 2例が腫瘤径5cm以下であった.一方benign 3例malignant 2例が腫瘤径10cm以上であった.急速発育はbenign 8例, borderline l例, malignant 2例に認めた.術前にmalignantと診断し得たのは画像診断で転移を認めた1例であった.以上より臨床所見において良悪性を鑑別できる特徴的所見がなく,また画像診断においても転移を疑わせる所見以外術前に良悪性の鑑別は困難であった.
  • 冨永 洋平, 黒木 祥司
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2790-2793
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    男性乳癌は,全乳癌の約1%と比較的稀である.われわれは最近進行癌の2症例を経験した.症例1は65歳で,左乳頭を中心とする径7×7×3.5cmの腫瘤を認めた.乳癌と診断し, Brt+Ax+Mj+Mnを行った.術後診断はpapillotubular carcinoma, T4bN1M0Stage IIIbであった.症例2は73歳で,右乳房E領域に4×4cmの弾性硬の腫瘤を認め,皮膚に浸潤していた.乳癌と診断し, Brt+Ax+Mj+Mnを行った.術後診断はscirrhous carcinoma, T4bN1M0Stage IIIbであった.両者ともに術後CAFとtamoxifenを使用し,それぞれ術後3年9ヵ月, 2年の現在健存している.男性乳癌の特徴として病悩期間の長さ,乳輪の近くに発生,胸壁が薄く進行しやすいことが多くの文献で指摘されており,今後啓蒙活動が大切と思われた.
  • 植松 正久, 冨永 純男, 坂野 茂, 頼 文夫, 端野 博康
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2794-2798
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Double-lumen tube使用による術中気管損傷の1例を報告すると共に,本邦報告6例に自験例を加え検討した.
    症例は63歳,男性.食道癌の診断のもと,根治手術が施行された.挿管チューブは37Fr. Broncho-Cath tube®を使用し,右開胸で食道切除をおこなった.その際,気管損傷が認められ,直接縫合にて修復した.高位気管損傷であり,術後は挿管チューブを留置することにより良好な結果を得た.
    本邦報告例は全例良好な結果であったが,海外では死亡例が報告されている.
    Double-lumen tube使用頻度は,増加傾向にあり,その使用にあたっては, tubeの特徴を熟知する必要があると思われた.
  • 桑原 暢宏, 長尾 和治, 松田 正和, 馬場 憲一郎, 西村 令喜, 松岡 由紀夫, 上野 洋一, 山下 裕也, 一口 修, 宮本 大典, ...
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2799-2803
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に後縦隔腫瘍と診断し,手術の結果,第4肋骨から発生した稀な骨巨細胞腫であった1例を経験したので報告した.
    症例は35歳,女性.胸部X線写真で異常陰影を指摘され当院紹介受診.胸部X線写真で右上肺野~後縦隔に径12.0cm大の腫瘤陰影を認め,胸部CT, MRI等にて後縦隔腫瘍と診断し,平成3年10月,手術を施行した.腫瘤は縦隔とは関係なく,胸壁及び肺との癒着が強かった為,肺由来の腫瘍を疑い,腫瘤と共に右肺上葉切除,第4肋骨部分切除を行った.病理組織学的診断は第4肋骨から発生した骨巨細胞腫であった.
  • 有泉 憲史, 井上 宏司, 岩崎 正之, 小川 純一, 正津 晃, 鬼島 宏
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2804-2806
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性で,健診で胸部異常陰影を指摘された.入院時胸部X線写真では,右側胸部第4肋骨に一致して, 5×1.5cm大の腫瘤陰影を認めたが,その他の全身検索では異常所見を認めなかった.免疫グロプリン分画は正常で, M蛋白は存在せず, Bence-Jones蛋白は陰性であった.肋骨原発の腫瘍と診断し,右第4肋骨と共に腫瘍を切除した.病理組織学的には形質細胞腫であった. 46Gyの術後放射線療法を受け退院したが,術後1年4ヵ月の現在,健在である.
  • 加藤 元久, 佐藤 哲也, 松尾 篤, 佐治 重豊, 山田 幸治, 折居 忠夫, 下川 邦泰
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2807-2811
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病を合併し右側胸壁に発生した巨大悪性神経鞘腫が胸腔内に発育し呼吸困難を来たした症例を経験したので報告する.症例は8歳男児で, 1992年1月12日,熱発,咳嗽にて某医を受診し,右側胸壁から胸腔内に連続した腫瘍と診断された.切開生検で悪性神経鞘腫と診断され,腫瘍の増大による呼吸困難のため当科入院となった.右側胸壁に13.5×5cm大の弾性硬,境界明瞭な皮下腫瘤を認め,胸部X線・CTにて,右側胸壁より発生した腫瘍が右胸腔内を占拠していた. 3月10日右後側方開胸にて手術を施行し,第4, 5肋骨を合併切除し腫瘍を亜全摘した.術後,再膨張性肺水腫を発症したが,器械的人工呼吸にて改善し,術前見られた呼吸困難は消失した.しかし,その後の化学療法,放射線療法にもかかわらず腫瘍の再増殖を来し, 1992年11月12日腫瘍の圧迫による呼吸循環不全のため死亡した。
  • 田辺 貞雄, 木山 宏, 佐野 英基, 長澤 城幸, 大島 永久, 中原 秀樹, 山田 崇之
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2812-2816
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    外傷性横隔膜ヘルニアは急性期例の多臓器損傷合併と,遅発例の臓器の閉塞・絞扼などが問題となる.鈍傷による病期の異なる3例の左横隔膜ヘルニアを経験した.症例1は受傷後2ヵ月,胃の絞扼例で,透視下に経鼻胃管を挿入し消化管減圧により軽快させ,経胸的に脱出していた胃,大網を還納し,横隔膜を修復した.症例2は受傷約12時間後の急性期例で胃,大網,結腸,脾臓の脱出,脾破裂.腸間膜血腫・両側血気胸を合併し,胸腹部合併損傷の懸念のため,左開胸開腹にて到達し,脾摘と横隔膜修復を行った.多発性肋骨骨折により胸郭動揺を呈したため,術後約1週間の人工呼吸管理を要した.症例3は58歳女性,受傷後3年の慢性期例で,左開胸にて横隔膜を修復した. 3例とも横隔膜損傷部は腱中心前後の筋線維方向の裂傷で修復には開胸だけでも充分な視野が得られた.
  • 小笠原 敬三, 瓜生原 健嗣, 花木 宏治, 木本 秀治, 河本 和幸, 川口 義弥, 阿曽沼 克弘, 吉田 泰夫, 伊藤 雅, 記井 英治 ...
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2817-2821
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    気管支原性嚢胞は,発生学的に原始前腸から由来する先天性嚢胞であるが,食道壁内に発生することは稀である.今回,われわれは腹部食道壁内に発生した気管支原性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は60歳,男性で,主訴は嚥下障害であった.食道胃透視で食道胃接合部にsmoothな狭窄像あり,超音波検査, CT検査, MRIにて腹部食道前方に腫瘤を指摘された.上腹部正中切開にて開腹し,腹部食道右側より突出している腫瘤を摘出した.表面平滑で灰白色を呈し,大きさは5.5×5.0×4.0cmで63gであった.割面にて嚢胞壁は薄いが硬く弾力性を有し,褐色のやや粘稠な液を含んでいた.組織学的所見として嚢胞内面は線毛円柱上皮で被覆されており,嚢胞壁には軟骨,弾力繊維,混合腺を認め,気管支原性嚢胞と診断された.軟骨を認めた傍食道型気管支原性嚢胞は,本邦の文献上では自験例を含めて15例のみである.
  • 伊与部 尊和, 川村 泰一, 嶋 裕一, 澤崎 邦廣, 巴陵 宣彦, 藤田 秀春, 岡田 英吉
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2822-2826
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後縦隔に発生した先天性食道嚢腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告した.症例は42歳,女性.胸部X線写真上異常陰影を指摘され精査のため来院した.自覚症状はなく理学的にも異常を認めなかった.食道造影では下部食道の圧排所見を認めた.腫瘤は造影CTではenhancementを認めず, MRI検査では, T1強調画像およびT2強調画像でともにhigh intensityに描出された.以上から後縦隔嚢腫の診断で手術が施行された.腫瘤は2×2×1.8cmの単房性嚢腫で気管および気管支との交通は認めなかったが,一部は食道壁と連続性に移行していた.組織学的には嚢胞壁は線毛円柱上皮で被われていたが, 2層の平滑筋層を有し,また気管軟骨の迷入を認めなかったことより,先天性食道嚢腫と診断された.
  • 岡本 廣挙, 渡会 伸治, 江口 和哉, 山崎 安信, 菊池 光伸, 那珂 瑞和, 松本 由朗
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2827-2831
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.右頸部腫瘤を主訴に来院CTにて嚢胞状腫瘤を認め吸引細胞診でClass V (扁平上皮癌)であった.頸部リンパ節転移を疑い原発巣の精査を行ったが,食道,肺,喉頭,咽頭,口腔等に異常を認めなかった.鰓性癌の診断で根治的頸部郭清術を施行し,病理組織学検査は扁平上皮癌で周囲リンパ節に転移を認めなかった.術後食道内視鏡にてびらんを認めた.生検結果はGroup Vで扁平上皮癌であった.早期食道癌の診断で胸部食道切除術を施行し,病理組織学的には低分化扁平上皮癌で, mm, ly0, v0, n(0) であった.以上より食道癌からの転移は考えにくく,鰓性癌の合併を疑わせた.その後経過観察中,右扁桃腫瘍を認め生検にて扁平上皮癌の診断を得た.鰓性癌を疑わせた右頸部腫瘤は,扁桃扁平上皮癌の頸部リンパ節転移によると考えられた.鰓性癌の疑いで原発巣の検索中に発見し得た食道と扁桃の重複癌を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 吉田 栄一, 藤澤 憲司, 山田 隆年, 因藤 春秋, 黒河 達雄, 梅田 政吉, 真鍋 俊治, 沖野 毅
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2832-2835
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性で腹痛を主訴に来院,諸検査では特に異常を認めず,腹痛も消失し退院した.約2週間後には,腹部の有痛性腫瘤を主訴に再度来院.腹部CT検査で,腹直筋の腫脹とその中央から腹腔内に連続するhigh densityの線状陰影を認め,腹痛発症前に魚介類摂取の既往もあり,魚骨穿通による腹壁腫瘤と診断した.手術にて胃壁を穿通し腹直筋にまで達している魚骨を発見した.
    誤飲魚骨による消化管穿孔・穿通症例の報告は,本邦でも多数報告されているが,胃穿通症例はきわめて稀である.その術前診断も非常に困難とされている.今回われわれは,術前診断に,腹部CT検査が有用であった症例を経験したので報告する.
  • 久保 宣博, 内田 雄三, 松本 克彦, 野口 剛, 平岡 善憲, 村上 信一
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2836-2841
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    噴門側胃切除術後,幽門側残胃の幽門形成部に一致して癌が発生した症例を経験した.症例は69歳男性.昭和61年3月3日に噴門部癌に対して噴門側胃切除術(迷走神経切離,幽門形成,空腸間置)を施行した.切除標本は組織学的に低分化型腺癌 (pm, INF-γ, ly1, v0, ow(-), aw(-)) であり,リンパ節転移は認めなかった.術後4年9ヵ月後に,内視鏡検査にて残胃の幽門形成部に一致してBorrmann 2型腫瘤を認め,生検にて腺管腺癌と診断された.手術は,間置空腸の一部を含めた残胃全摘並びにリンパ節郭清を行った.切除標本では,幽門形成部に一致して限局潰瘍型の乳頭状腺癌 (pap, se, INF-β, ly3, v1) を認めた.本症例においては,術中の管内播種や同時性多発癌巣の可能性も完全には否定できないが術後十二指腸液の幽門側残胃内への逆流による化学的刺激や,幽門形成術そのものによる物理的刺激による幽門形成部の発癌が示唆され興味のもたれるところである.
  • 岡野 正裕, 松田 孝之, 萩原 良治, 内野 純一, 佐藤 雄民, 加賀谷 秀夫
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2842-2845
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性で,胃集検にて胃上部の粘膜異常を指摘され,検査目的で当科に入院した.胃X線・内視鏡検査で,胃上部大彎に隆起性病変を認めた.精査にて,肝左葉・脾を圧排し,左横隔膜から腎門部にかけて出血・壊死と思われる内部不均一な腫瘍が認められ,ドレナージを施行した.生検にて平滑筋肉腫が疑われ,化学療法を施行したが縮小は見られず,胃全摘術を施行した.腫瘍は胃上部を巻き込む様に存在し,24.0×18.0×18.0cmの大きさで脾臓に接するまで浸潤しており,割面は比較的硬く白色で,壊死をあまり伴わない均一のものであった.光顕で,紡錘細胞が一側に流れる様に配列されており,Actin染色は陰性で, S-100蛋白が陽性を示したことから,胃神経肉腫と診断した.以上,極めてまれな胃神経肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 熊埜御堂 彰子, 安部 良二, 田代 光太郎, 上尾 裕昭, 秋吉 毅, 内田 一郎
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2846-2849
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近,十二指腸平滑筋腫より動脈性出血による大量の吐血を来した1例を経験したので報告する.症例は53歳,女性.平成4年5月22日,全身倦怠感,嘔気が出現し,翌朝吐血を来したため近医に入院,緊急内視鏡検査にて十二指腸下行脚の粘膜下腫瘍からの出血を認め,内視鏡的エタノール局注により一旦は止血したが, 2日後に再吐血を来し,当科に緊急入院となった.入院時の緊急内視鏡検査で十二指腸下行脚の粘膜下腫瘍から動脈性の大量出血を認めたため,緊急開腹手術を施行し管外性に発育した腫瘍を切除して止血した.腫瘍の大きさは3.0×2.6×2.0cm,分葉状で被膜に覆われており,病理組織学的には平滑筋腫であった.平滑筋腫は出血しやすいとされているが,経内視鏡的エタノール局注止血を行った後には自験例のように壊死部より動脈性の出血を来す可能性があることを念頭に置いて早期の診断と処置が重要であると考えられた.
  • 中城 博見, 宮崎 耕治, 中村 哲也, 湯ノ谷 誠二, 堤 宣翁, 下西 智徳, 久次 武晴
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2850-2853
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍は稀な疾患であり,特に原発性小腸平滑筋肉腫穿孔は極めて稀である.最近われわれは小腸穿孔で発症した肝転移を伴う小腸平滑筋肉腫を経験したので報告する.
    症例は51歳女性. 1992年7月22日急に下腹部に激痛が出現したため某病院を受診したが症状が改善しないため当院救急外来を受診した.腹部全体に筋性防御陽性であった.腹部単純X線撮影で遊離ガス像は認められなかったが,消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.回腸末端より約80cmの小腸に成人手拳大 (10×5cm) の腫瘍を認め,その腫瘍は小腸間膜対側より発生しており一部は壊死に陥り穿孔していた.腫瘤を含めた回腸部分切除術および腹腔内洗浄ドレナージ術を施行した.術後の腹部CTで肝右葉S7領域に径4cmの孤立性腫瘍を認め,摘出標本の病理診断,血管造影,MRIなどの所見から小腸平滑筋肉腫の肝転移と診断し, 9月2日肝右葉切除術を施行した.術後の経過は良好である.
  • 宮坂 祐司, 加藤 紘之, 高橋 利幸, 中島 公博, 道家 充, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 田辺 達三
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2854-2857
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆管空腸吻合術後に発生した胆管空腸吻合部静脈瘤破裂例を経験した.術前検査法としては経皮経肝胆道内視鏡(以下PTCS)が最も有益であり,治療法としては空腸静脈-下大静脈吻合術を施行し治癒した. 13ヵ月後の現在,再出血をみていない.
  • 遠近 裕宣, 平田 恵三, 中尾 丞, 石井 俊世, 栄田 和行, 高原 耕
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2858-2862
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.既往歴,家族歴に特記事項なし.昭和52年9月,右下腹部痛にて内服治療をうける.昭和53年9月,右側腹部膿瘍が発症し,切開排膿にて治癒.以後無症状であったが,平成3年1月26日,同部に膿瘍再発し,当科外来にて切開排膿.さらに平成3年12月,平成4年5月と続けて膿瘍再発し,瘻孔形成したたあ,手術目的で当科入院した.瘻孔造影では後腹膜に膿瘍腔を認め,注腸透視では上行結腸に憩室とポリープを認めたが,虫垂は造影されなかった.平成4年6月26日,右半結腸切除術及び瘻孔切除術を施行した.切除標本では,虫垂は後腹膜に回りこんで膿瘍腔を形成し,皮膚瘻へと交通していた.術後経過は良好であった.
    虫垂炎による自然皮膚瘻は極めて稀であり,若干の文献的考察を付け加えて報告する.
  • 美濃 睦水, 田中 聰, 河本 知二, 久米川 啓, 森 誠治, 三木 洋
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2863-2866
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    結腸癌の脾転移は臨床経過中に発見されることは非常に稀であるが,われわれは原発巣切除とともに摘脾術を施行したS状結腸癌の症例を経験したので報告する.
    患者は69歳の男性で,術前の超音波検査・CT・腹腔動脈造影で脾転移の存在が診断されていた.しかし,手術時に広範なリンパ節転移と限局性の腹膜播種も認め,相対的非治癒切除に終わり,その後,肝転移・腹膜再発が出現し,術後1年5ヵ月で死亡した.
    結腸癌の脾転移は,全身性転移の一部として癌末期に現れることが多く,その予後は不良であるが,脾のみに転移が限局した症例では摘脾を加えることで良好な経過をとることもある.しかし,本症例の如く,リンパ節転移・腹膜播種等を合併し,その上,すでに広範な癌細胞の血行性撒布がなされていることも多く,積極的な補助療法を加える必要があると考える.
  • 青沼 宏, 李 慶文, 溝渕 昇, 鎌野 俊紀, 榊原 宣
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2867-2871
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    水庖性類天庖瘡に併存した下行結腸癌の1例を経験したので本邦報告例を集計し文献的考察を加えた.症例は76歳,男性.主訴は左側腹部痛,皮膚の水庖.入院時現症で左側腹部に圧痛と腫瘤を触知した.また,体表面には掻痒感を伴った大型の緊満性水庖が腹部と大腿部に認められた.血液生化学的検査で好酸球9.5%, CEA 5.6ng/dlと軽度の上昇を認めた.大腸X線・内視鏡検査で下行結腸に2'typeの腫瘍を認め,生検の結果悪性の所見が得られた.さらに,水庖の病理組織学的検査,蛍光抗体直接・間接法で水庖性類天庖瘡と診断し手術を施行した.術後皮疹は消失し術後4ヵ月現在も再発の兆しはない.水庖性類天庖瘡と悪性腫瘍との併存は自験例も含め現在まで56例(58病変)をみるが,なかでも消化器系癌が69.0%と大半を占めていた.併存は高齢者における偶発的なものとする見解が多いが自験例のように腫瘍切除後急速に皮疹が消退する例も散見され,やはり何らかの因果関係があるものと思われた.
  • 鈴木 紀男, 多賀谷 信美, 五十嵐 敦, 田島 充, 金子 光男, 門脇 淳, 小暮 洋暉
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2872-2876
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性有石胆嚢炎における非手術的治療のうち,特にPTGBCSLの有用性について検討した.教室における最近17年間の急性有石胆嚢炎症例は57例で,そのうち37例に待期的に手術的治療が施行された.非手術20例中5例にはPTGBCSLを施行された. PTGBC-SL症例は,高齢者や共存疾患を有している症例で,全例,完全切石に成功し,合併症も重篤なものは見られず,現在まで胆石の再発は認められない. PTGBCSLは低侵襲で完全切石の期待できる手技であり,重篤な合併症は少なく,リスクの高い症例に対して適応がある.しかし, PTGBCSLでは胆嚢が温存されるため,胆石再発の可能性があり,切石後の経過が長くなるほど再発が多くなるという報告もあり,十分な経過観察が必要である.
  • 平野 聡, 伊藤 清高, 加藤 紘之, 田辺 達三, 前田 喜晴, 斉藤 護, 出野 正孝
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2877-2881
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.約3年間,再発性の膵炎・胆管炎にて入退院を繰り返していた.内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) では, Vater乳頭開口部の硬化・狭小化を認め造影不能であったため,経皮経肝胆管造影 (PTC) を施行し,総胆管末端部に嚢状拡張を認め, Choledochoceleと診断した.総胆管・膵管はそれぞれ独立して嚢胞に開口しており,嚢胞壁の切除,胆管および膵管の再建を行った.組織学的に嚢胞壁は胆管上皮よりなっていた.
    今回,自験例を含めた本症の59例を集計したが,形態学的・組織学的多様性を有するため,病因・病態の把握には,今後,更に症例の蓄積と各症例における乳頭部機能などの動態学的検討が必要と考えられた.
  • 藤井 秀樹, 河野 浩二, 関川 敬義, 松本 由朗, 須田 耕一
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2882-2886
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性,進行胃癌に対してリンパ郭清を伴う胃全摘術を施行し,術直後より重症急性膵炎を発症し,膵床ドレナージ,総胆管のT-チューブドレナージを施行した. T-tubeよりの造影で,膵・胆管合流異常が明らかとなった.急性膵炎発症準備状態ともいえる病態に胃全摘の際の膵授動に伴う膵の過分泌状態,十二指腸内圧上昇に伴う胆道内圧,膵管内圧の上昇が加重的に作用し,重症化したものと考えられた.膵・胆管合流異常を伴う症例に胃切除術を施行する際には,重症急性膵炎の発症を常に念頭におくべきであり,手術中の膵臓への愛護的な操作,十二指腸内圧の上昇を防ぐ様に吻合に注意を払い,郭清が広範囲に及ぶ時には膵・胆管合流異常に対して,胆道再建術を付加することも必要と考えられた.
  • 杉浦 勇人, 末永 昌宏, 上原 伸一, 久留宮 隆, 森 紀久朗
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2887-2891
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢破裂は急性腹症の原因の一つであり,特に高齢老では重篤な病態を呈することが多い.今回,高齢者の膵石に起因した慢性膵炎に伴う総胆管圧迫が影響したと思われる胆嚢破裂症例を経験した.
    症例は84歳男性で,上腹部痛の原因検索のため入院中,突然の腹部激痛および腹部膨隆を来し,超音波下腹水穿刺によって胆汁の存在を認めたため緊急手術を施行した.その結果胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎であり,術中胆道造影にて下部胆管狭窄を認めたため,胆嚢摘出術およびTチューブ留置術を施行した.術後の検索にて慢性膵炎による下部胆管狭窄に起因する胆嚢破裂と診断し,再手術にて膵石摘出および総肝管空腸吻合術を施行して良好な結果を得た.
  • 古谷 卓三, 赤尾 伸二, 有吉 秀生
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2892-2896
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    外傷性脾破裂の治療は,最近では可能な限り脾を温存する傾向にある.外傷性脾破裂の保存的,非手術的治療中にいわゆる遅発性脾破裂をきたし,非手術的に治療しえた症例を経験したので,外傷性脾破裂の保存的治療および遅発性脾破裂について若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は交通事故にて腹部を打撲した19歳の男性で, CT, 超音波検査にて脾内血腫および腹腔内出血を認めたため外傷性脾破裂と診断し,非手術的治療を行った.経過は良好であったが,受傷後12日目に歩行を許可したところ再び腹痛を認め,超音波検査にて腹腔内出血と脾被膜の裂創を認めたため遅発性脾破裂と診断し再度非手術的治療を行った.その後の経過は良好で,受傷後40日目に脾嚢腫を残し軽快退院となった.
    遅発性脾破裂に対しても保存的治療は可能であると思われた.
  • 安福 正男, 山本 元, 山本 英博, 高倉 廣喜
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2897-2899
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    停留睾丸に合併した睾丸捻転症の1手術例を経験した.症例は20歳の男性.左鼠径部の腫脹と落痛で発症した.約6時間後に手術を行ったが,睾丸は温存できなかった.睾丸鞘膜は睾丸副睾丸を完全に取り巻き, bell-clapper型の解剖学的異常を呈しており,そのための捻転と考えられた.術後経過は良好で19日目に対側の睾丸固定術を行った.
  • 君川 正昭, 藤川 博康, 中川 芳彦, 寺岡 慧, 太田 和夫
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2900-2905
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    薬剤性膵炎の発生頻度は低いが,引き起こすと考えられている薬剤を見ると,ステロイド,化学療法剤,降圧利尿剤など日常診療において頻用する薬剤が多い.今回われわれは胃切除後フロセミドの投与により急性膵炎,腎機能障害の増悪をきたしたと考えられる慢性腎不全患者の1例を経験したので報告する.症例は71歳の女性で, 1991年2月Borrmann 3型胃癌に対して胃亜全摘術を施行された.術後尿量減少したためフロセミドを投与したところ,血清アミラーゼ,リパーゼが上昇し,血清クレアチニンも上昇した.発熱,上腹部痛,白血球増加などの臨床症状は全く認められなかったが急性膵炎と診断し,保存的治療を行ったが,改善しなかった.フロセミドを中止したところ,速やかに血清アミラーゼ,リパーゼは低下し,血清クレアチニンも低下した.フロセミドは心不全,腎不全などに頻用されている薬剤であるが,使用に際して注意が必要と思われた.
  • 上田 和光, 河村 正敏, 福島 元彦, 村上 雅彦, 町田 彰男, 横山 登, 渡辺 佳哉, 斎藤 肇
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2906-2910
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.下血を伴う腹痛を主訴として来院.既往に海外渡航歴はなく,同性愛好者であった.来院後2日間で急激に状態が悪化し汎発性腹膜炎の診断のもと緊急手術を施行した.開腹所見は,盲腸穿孔を合併した全大腸型アメーバ赤痢であり,全大腸切除術,回腸瘻造設術を施行した.術後発熱が続き第13病日に腹腔内遺残膿瘍にて再手術(ドレナージ術)となるも救命しえた.再手術後は経過良好であり,現在元気に外来通院中である.全大腸型アメーバ赤痢症の死亡率は非常に高率であり,また診断は必ずしも容易ではなく,抗アメーバ剤の投与時期が遅れることが更に予後を悪くしているものと思われる.本症例は結果的には救命しえたが,その術式は緊急手術としては侵襲が大きく,反省するとともに早期診断の重要性を痛感した.
  • 佐藤 康幸, 舟橋 啓臣, 今井 常夫, 田中 勇治, 飛永 純一, 村瀬 弘, 安藤 広幸, 宮崎 貢一, 和田 応樹, 松山 孝子, 高 ...
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2911-2915
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性. 1979年大動脈分岐部の直径10cmの腫瘍切除施行.腫瘍は肉眼的に完全に切除でき,臨床的にも病理学的にも悪性所見のない褐色細胞腫で術後早期より全身状態は安定し,カテコラミン値も正常化した.しかし1989年30歳時にカテコラミンの上昇がみられ各種画像診断にて右恥骨坐骨部転移と診断し,同部切除術施行.症状は一時軽快したが1990年4月より第8, 9胸椎転移による下半身麻痺が出現した.ダカルバジンを中心とした化学療法や転移巣部分切除を含む脊椎後方固定術,骨移植術を施行後,積極的な理学療法を併用したところ歩行可能となり日常生活がほぼ支障なくなった.
    根治性のない悪性褐色細胞腫症例に対してもカテコラミン過剰による症状だけでなく,転移した部位によって2次的に生じてくる種々の症状への積極的な集学的治療を行うことがquality of lifeの改善だけでなく,より高次元の治療を行う上で重要と考えられた.
  • 馬場 恵, 荒井 義孝, 多賀 聡, 原 英, 奥田 誠, 有森 正樹
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2916-2920
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性.骨盤内腫瘤を主訴に当科紹介受診.骨盤内を満たす石灰化を伴う腫瘤が認められ,人工肛門造設術を施行.病理組織学的に悪性線維性組織球腫の診断を得た.経過は良好に退院.術後約2年で腫瘍浸潤による腸閉塞および尿管の閉塞を来し再入院.下腹部から骨盤内にかけて多中心性の硬い腫瘤で占められていたため,可及的に腫瘤を切除,右尿管カテーテルを挿入,人工肛門再造設術を施行.一時症状は軽快し経口摂取も可能となったが尿路感染をくりかえし術後1年3ヵ月で死亡.剖検では下腹部から骨盤内は巨大な腫瘤で占められ,両腎は高度の萎縮を来していた.遠隔転移は認められなかった.
    悪性線維性組織球腫は軟部組織腫瘍の一型で四肢に発生することが多く後腹膜および腹腔における報告例は比較的少ない.今回われわれは骨盤内に発生し比較的長い経過を辿った巨大な悪性線維性組織球腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 高橋 利通, 笠岡 千孝, 小林 俊介, 国崎 主税, 山内 毅, 金村 栄秀, 栗林 宣雄
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2921-2923
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小骨盤腔に発生した悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma: MFH) の1例を経験したので報告する.症例は37歳の女性.主訴は左替部腫瘤. 1992年7月,左腎部腫瘤に気づき,他院を受診した.坐骨直腸窩腫瘍と診断され, 8月13日,腰椎麻酔下に経肛門的ドレナージ術を施行され,内容は血液であった.当科に紹介受診した.骨盤部CT,血管造影を行い,腫瘍は左坐骨直腸窩を中心に発生し,小骨盤腔から替部の皮下まで存在していた.10月29日,腹会陰式摘除術を行った.切除標本は15×8×6cm, 重さ264g, 充実性,分葉状で被膜が認められた.病理組織所見ではMFHであった.術後経過は良好で術後3週間で退院した.術後4ヵ月の現在,健在である.
    MFHは,一般に成績は不良で局所再発や肺転移をきたしやすい腫瘍である.したがって厳重な経過観察が必要である.
  • 横山 浩孝, 竹尾 貞徳, 田村 洋一, 前川 宗一郎, 古山 正人, 朔 元則
    1993 年 54 巻 11 号 p. 2924-2928
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ARDS (Adult Respiratory Distress Syndrome) の予後は著しく不良であり,術後呼吸管理,治療が進歩した今日でもその救命率は50%以下といわれている.今回われわれは, 63歳男性の食道・胃重複癌術後2日目に発症したARDSに対しPEEPを中心とした人工呼吸管理,及びProstaglandin E1 (20ng/kg/min) 投与,敗血症に対する早期治療を施行し,救命することができた.その際PGE1投与が有効な治療法であると思われたので報告する.
feedback
Top