皮膚
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38 巻, 4 号
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  • 塩原 哲夫
    1996 年 38 巻 4 号 p. 404-411
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    固定薬疹は他の薬疹とは異なったユニークな特徴をもつがゆえに, T細胞によりもたらされる表皮傷害の疾患モデルとなりうる。例えば原因薬剤摂取のたびに同一部位に皮疹を繰り返す一方で, 新たな部位に新生していく。誘発された直後は不応期となり原因薬剤の摂取にもかかわらず皮疹は誘発されない。そして全く構造の異なった薬剤が同一部位に皮疹を惹起するなどであり, これらの現象を全て矛盾なく説明出来る仮説は未だ提唱されていない。
    我々は固定薬疹病変部表皮から得られたT細胞の解析結果をもとに, 固定薬疹における表皮傷害のメカニズムについての以下のような仮説を提唱する。原因薬剤は真皮に存在する肥満細胞に対し抗原特異的あるいは非特異的脱顆粒を惹起し, TNF-αなどのpreformed cytokineの放出を促すことにより, ケラチノサイトにICAM-1などの細胞接着分子の発現を誘導する。これが固定薬疹の最終的なエフェクター細胞である表皮内T細胞を抗原非特異的に活性化することにより表皮の傷害がもたらされると考えられる。実際に, このようなキラー活性を有する表皮内T細胞は固定薬疹病変部表皮基底細胞間及びその直上に多数常在している。
  • 野田 剛弘, 山田 秀和, 福井 憲, 手塚 正
    1996 年 38 巻 4 号 p. 412-416
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯科治療にて局所麻酔後I型アレルギー・反応が疑われた5症例を報告する。
    症例1: 歯科にて局麻約1時間後, 口腔内・顔面に紅斑多発。
    症例2: 局麻約1時間後, 頭部中心に蕁麻疹様皮疹出現。
    症例3: 局麻約30分後, 動悸・気分不良。
    症例4: 局麻約30分後, 頭部中心に蕁麻疹様皮疹出現。
    症例5: 局麻約10分後, 上半身に隆起性紅斑出現。
    全例皮膚科に入院させ, 皮内テストを施行した。結果は症例1, 2, 3はI型アレルギー反応を示したが, 症例4, 5は陰性であったので心因反応と診断。皮内テストの結果をふまえ局所麻酔薬を選択した上で, 歯科治療を施行。無事治療を終了し得た。
    昨今の医療紛争を考えると, 詳細にわたる問診の上, 生体の反応形式の変化および不測の事態に備え, 皮内テストは実施すべきと思われた。
  • 宮島 進, 松岡 縁, 岡田 奈津子
    1996 年 38 巻 4 号 p. 417-422
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性。昭和60年4月より尋常性乾癬の診断のもとに近医で治療を受け, 平成6年5月頃には皮疹はほぽ消退し, 以後無治療で経過していた。同年12月より慢性肝炎の治療のためにIFN-α600万単位を連日投与したところ, 2週間目より手掌に紅色丘疹, 紅斑が出現し徐々に増大した。その後, 以前の乾癬の皮疹部位に一致して鱗屑を伴う紅斑が再燃。手掌の皮疹を乾癬の再燃疹と診断した。手掌は乾癬の部位としては比較的稀でIFN-αが乾癬再燃の1因子と思われた。
  • 金 梨花, 石川 香代子, 瀬口 得二, 森川 和宏, 山下 裕嗣, 手塚 正
    1996 年 38 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    症例1, 18歳, 女性。10歳頃から両肘窩と頚部に褐色点状色素斑あり。同部は陥凹していた。症例2, 20歳, 女性。19歳頃から頚部の色素斑出現。同部は陥凹していた。両者とも病理組織学的所見と臨床症状から網状肢端色素沈着症と診断した。治療としてパルス色素レ-ザ-を照射した。それぞれ色素斑は消失して陥凹も不明瞭となった。
  • 栃原 宣明, 織田 知明, 石川 香代子, 瀬口 得二, 手塚 正
    1996 年 38 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    体幹に米粒大丘疹が多数散在性に認められたdisseminated epidermolytic acanthoma (DEA) の1例を報告した。50歳, 男性。1989年より右肩甲部から背部にかけて, 米粒大の疣状淡褐色丘疹が数個認められた。HE染色にて著明な角質肥厚と中等度の表皮肥厚を認めた。顆粒層と有棘層上部に細胞内浮腫と顆粒変性を認めた。DEAと診断し, 16個の皮疹をshaveresection法により外科的に切除した。その内の9個にepidermolytic acanthoma (EA) の所見を認めた。現在, 経過観察中であるが, 再発等は認めていない。
  • 山本 聡, 相原 道子, 中嶋 弘
    1996 年 38 巻 4 号 p. 431-433
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Pilar sheath acanthomaの1例を報告した。本症は, 顔面に好発する比較的まれな毛包系腫瘍であるが, 本例は体幹に発生した例であった。われわれが文献的に検索した限りにおいて体幹に発生した本症は, 認められなかった。
  • 山本 聡, 相原 道子, 中嶋 弘
    1996 年 38 巻 4 号 p. 434-436
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    40歳, 男性の左前腕部に生じたsteatucystoma simplexの1例を報告した。本症は, steatocystoma multiplexと病理組織学的には同一であるが, 顔面に好発する単発性の腫瘍であること, 遺伝歴のないことが特徴である。本症の報告例は少ないが, 本症の疾患概念が周知され, 検討されるようになれば決して稀な疾患ではないことが明らかになると思われる。
  • 山本 聡, 相原 道子, 中嶋 弘
    1996 年 38 巻 4 号 p. 437-439
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    24歳, 男性の左内眼角下部に生じたtrichofolliculomaの1例を報告した。本例は病理組織学的に同一局面内に典型的なtrichofolliculomaが2個隣接して存在する比較的稀な症例であった。
  • 南 宏典, 佐藤 健二, 乾 重樹, 前田 知子, 田口 博康
    1996 年 38 巻 4 号 p. 440-447
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    12歳以上のアトピー性皮膚炎患者でステロイド外用剤を中止したいと希望した28例と, すでにステロイド外用剤を中止してそれ以外の外用剤を用いているが皮疹が軽快しない4例を対象とし, ステロイド外用剤離脱後も紅斑が持続する場合は全外用剤を中止し, 内服, 入浴指導, ガーゼ保護など種々の治療を加えた。ステロイド外用剤を中止すると皮疹は増悪し, 平均7日後に最悪となるが, その後軽快した。さらに全外用剤を中止すると再び増悪して平均5日後に最悪となるが, 以後軽快に向かい平均6週間後に皮疹の面積は中止前の2割程度となった。またこのときの皮膚症状は古典的成人アトピー性皮膚炎に特徴的な乾燥性のものである。外用剤中止と外用以外の種々の治療を行った結果ほぼ全例が外用剤なしですごせるようになったことから, 現在問題とされているいわゆる成人型アトピー性皮膚炎の病変にはステロイドおよびその他の外用剤の影響が含まれていると推測された。
  • 須貝 哲郎
    1996 年 38 巻 4 号 p. 448-456
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    株式会社千趣会の頭皮用製剤3種およびその生薬成分8種の計11試料について, 乱切20分間パッチテスト, 乱切48時間パッチテストおよび光パッチテストを正常成人女性志願者30名に施行し, さらに2週間後に同じ対象と試料による診断パッチテストを行い, 接触感作性も検討した。全試料にアレルギー反応を認めず, またUVA照射による有意の反応を見なかった。皮膚刺激性は乱切予知パッチテストでの皮膚刺激指数が10.0~5.0, 単純パッチテストでのそれは1.7以下で, 湿疹皮膚および小児高齢者に対しては許容品, 正常皮膚に対しては安全品と判定した。接触蕁麻疹指数は6.7~8.3で, 許容品と判定したが, 1例 (3.3%) に接触蕁麻疹反応を全3製品に認めた。
  • 0.01%製剤の正常皮膚および角層剥離皮膚パッチテスト
    露木 重明, 伊藤 正俊, 鈴木 真理, 矢島 忠孝, 矢島 洋一
    1996 年 38 巻 4 号 p. 457-463
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    皮膚潰瘍治療薬0.01%KCB-1 (塩基性線維芽細胞成長因子: bFGF含有外用液剤) のヒト皮膚安全性試験を, 健康成人男子志願者20名の左右上腕屈側を対象として, 正常皮膚および角層剥離皮膚パッチテストにより同時に行った。0.01%KCB-1溶液と, 対照としてKCB-1基剤溶液, 生理食塩水, ユーパスタコーワ® (精製白糖70%及びポビドンヨード3%含有軟膏剤) の計4薬剤を用いて, 48時間判定 (除去1時間後), 72時間判定 (除去24時間後) を実施した.
    0.01%KCB-1溶液で+?反応を示した例は正常皮膚に5例, 角層剥離皮膚に2例のみで, 皮膚刺激性, 安全性に問題となるような反応は認められなかった.
    また, 正常皮膚では薬剤間の皮膚刺激性に有意差は認められなかったが, 角層剥離皮膚の48時間判定で, ユーパスタコーワ®は0.01%KCB-1 (基準群) に比して,+?反応が有意に多く発現していた (P=0.0301, Dunnett型).
    0.01%KCB-1溶液の皮膚刺激性は生理食塩水と同程度で, ユーパスタコーワ®より有意に弱いか, または同程度と考えられ, 本剤は皮膚刺激性の低い薬剤と判断された.
  • アトピー性皮膚炎及び老人性乾皮症にみられる乾皮症の予防について
    崔 昌益, 朴 玉蘭, 手塚 正
    1996 年 38 巻 4 号 p. 464-468
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎, 老人性乾皮症などの症例の皮膚乾燥症状の予防を目的に開発された「A・Nケアクリーム」の有用性と安全性を検討した。対象はアトピー性皮膚炎患者9例, 老人性乾皮症患者5例ならびに正常対照としての健康成人8例であった。上記製品を1日2回, 下腿前面に単純塗擦させ, これを1週間継続使用させた後, 下腿前面皮膚角層表面水分量を外用前後で測定することで有用性を検討した。全例において臨床症状が正常化し, 角層表面水分量は統計学的に有意な上昇を示し健康正常人に近い値を示した。また, 全例において副作用は認められなかった。「A・Nケアクリーム」はアトピー性皮膚炎, 老人性乾皮症などの乾燥症状の予防に安全で, 有用な外用剤と結論された.
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