胆道
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28 巻, 4 号
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報告
第49回日本胆道学会学術集会記録
日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 加藤 厚, 清水 宏明, 大塚 将之, 吉富 秀幸, 古川 勝規, 宮崎 勝
    2014 年 28 巻 4 号 p. 618-626
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    PTBD(percutanous transhepatic biliary drainage)は閉塞性黄疸症例に対する減黄処置とともに胆道疾患における診断と治療に有用な手技の一つである.閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージは内視鏡的アプローチが第一選択であるが,内視鏡的ドレナージ不応例や十二指腸乳頭部への到達困難例などでは,PTBDは必須の手技である.術後の難治性胆汁瘻症例や良性胆道狭窄症例など,非拡張胆管であるにもかかわらず病状の改善のためにPTBDが必要な症例がある.難易度の高い手技であるが,施行前にMDCT(Multi-Detector CT)を行い,胆管を含めた脈管走行を把握して慎重に胆道ドレナージを行う.デバイスの進歩,手技の標準化などにより合併症も少なくなってきているものの,いまだに重篤な合併症も起こりうるため,胆管を含めた肝臓の解剖や生理を十分に理解した上で,適切で確実な手技を習得することが重要である.
原著
  • 安達 運, 三浦 幸太郎, 江波戸 直久, 三浦 亮, 相磯 光彦, 山本 貴嗣, 高森 頼雪, 石井 太郎, 田中 篤, 滝川 一
    2014 年 28 巻 4 号 p. 627-632
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    今回自験例を対象として,急性胆嚢炎診療ガイドライン2013(TG13)の妥当性を検討した.対象は当科において急性胆嚢炎と診断し入院加療した65例である.入院時にTG13診断基準:A(局所炎症所見),B(全身炎症所見),C(画像所見)を満たした症例は各60例,62例,59例で,疑診58例(89%),確診53例(82%)となった.入院時疑診の診断基準を満たさなかった症例7例のうち,入院前・後の所見を追加すると,疑診は62例(95%),確診は56例(86%)となり,診断基準を満たさなかったのは3例のみであった.入院時の重症度判定では軽症が50例,中等症が15例であり,中等症例では入院期間が有意に長く(p=0.031),胆嚢ドレナージ施行例数が有意に高頻度であった(P=0.023).以上より,TG13の妥当性は極めて高いことが明らかとなった.
  • 金 俊文, 真口 宏介, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 小山内 学, 矢根 圭, 高木 亮, 松本 和幸, 松森 友昭, 権 勉成, 安保 義 ...
    2014 年 28 巻 4 号 p. 633-640
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    ADMに合併した胆嚢癌の臨床所見,病理学的所見,画像所見を検討した.ADM合併胆嚢癌は11例(切除胆嚢癌の12%)であり,ADM分類ではF型(Fundal type)5,S型(Segmental type)6,癌の肉眼型ではIIa 3,IIb 4,結節浸潤型4であった.F型ADM合併胆嚢癌の4例(80%)はADMの範囲内の粘膜側からの発生と考えられたが,1例はRAS内からの発癌が疑われた.S型ADM合併胆嚢癌は頚部ADMから底部側への広範囲進展例が多く,全例に胆石を伴っていた.術前診断が可能であったのはIIa 2,結節浸潤4の6例(55%)であり,早期癌ではADM直上の隆起性病変,進行癌では不整な壁肥厚を認めた.ADM合併胆嚢癌は,F型ではADMの直上粘膜,S型では頚部または体部のくびれのADMから体底部側が好発部位であり,診断にはADMの存在する胆嚢内腔側の詳細な観察が重要である.また,胆石合併S型ADM胆嚢癌は術前診断困難であることが多く,予防的な胆嚢摘出術が妥当と考える.
総説
  • 相島 慎一, 小田 義直
    2014 年 28 巻 4 号 p. 641-648
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    胆道には平坦または微小乳頭状病変であるBiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)や,乳頭状増殖を主体とするIntraductal papillary neoplasm of the bile duct(IPNB)が生じ,浸潤癌の前段階にある腫瘍性病変と認識されている.これらは前癌状態から非浸潤性の早期癌までを含んでおり,膵癌と同様に,乳頭部,胆嚢を含む大型胆管においても隆起性腫瘍からの発癌,平坦異型上皮からの発癌の二つの経路が考えられる.またIgG4関連疾患を背景とした悪性腫瘍も注目されており,胆道においても症例の解析が必要である.
  • 木暮 宏史, 伊佐山 浩通
    2014 年 28 巻 4 号 p. 649-654
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    胆管大結石に対するESTを付加した内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(EPLBD with EST)の安全性および有用性は確立しつつあるが,ESTを付加することで膵炎や穿孔のリスクが減るというエビデンスは乏しく,近年ESTを付加しないEPLBD(EPLBD without EST)も安全で有用であるという報告も散見される.EPLBDの治療成績はESTと同等であり,早期偶発症の発症率も差がないが,機械式砕石具の使用は減る.EPLBDは大結石や困難結石においてESTに代わる治療法となり得るが,長期予後に関してはさらなる検討が必要である.
症例報告
  • 村上 昌裕, 清水 潤三, 金 鏞国, 長谷川 順一
    2014 年 28 巻 4 号 p. 655-659
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性.大動脈炎症候群で2回開心術を行いワルファリン内服中.右季肋部痛を認め前医で急性胆嚢炎と診断され,当院を受診.血液検査で炎症反応や肝胆道系酵素の上昇があり,単純CTで胆嚢内に複数の結石と血腫の充満を認め,さらに胆嚢穿孔をきたし腹腔内にも血腫が貯留したと考えられた.入院後に出血性ショックとなり集中治療室の管理下,造影CTで明らかな動脈性出血は認めず,腹部症状の増悪も無いため,全身状態が改善した入院後5日目に手術を施行.術中,胆嚢周囲に膿性血腫と胆嚢体部に穿孔部を認め,胆嚢摘出術を行なった.病理組織学的検査で胆嚢粘膜は脱落,潰瘍を形成,出血していたが,悪性所見は認めず,血腫による胆嚢内圧上昇の結果,穿孔に至ったと考えられた.術後経過は良好で,術後15日目に退院となった.抗凝固療法中の出血性胆嚢炎により穿孔をきたした重症急性胆嚢炎の一救命例を経験したので報告する.
  • Osman Mamat, 福村 由紀, 八尾 隆史, 石崎 陽一, 崔 仁煥
    2014 年 28 巻 4 号 p. 660-666
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    膵・胆管合流異常症に伴った胆嚢肝様腺癌を報告する.症例は72歳女性,他疾患で内科通院中,血液検査で異常を指摘,画像検査で胆嚢内腫瘤を認めた.ERCPで膵・胆管合流異常,胆管非拡張型と診断.胆嚢癌肝床浸潤疑いの術前診断で手術施行.切除標本で腫瘍は胆嚢底部に基部を有する結節型/塊状型.病理組織検査では,シート状発育を主体とする肝細胞癌類似の肝様腺癌が認められ,わずかに分化型腺癌を伴っていた.肝転移巣を2か所に認めた.肝様腺癌は稀な腺癌亜型で,胃,肺,膵臓,子宮など様々な臓器での報告がみられるが,胆嚢では英文検索で14例と稀である.報告例は高齢者に多く,腫瘍の肉眼型は結節型~塊状型のものが多い.本症例を含め,9例で術前血清AFP値が検索されているが,内8例で高値を示している.15症例(既報および本例)の胆嚢肝様腺癌のまとめと共に,本症例を報告する.
  • 伊藤 博道, 淀縄 聡
    2014 年 28 巻 4 号 p. 667-672
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.右季肋部痛と嘔気を訴えて来院した.腹部超音波・CT検査で出血性胆嚢炎が疑われた.強い希望で保存的治療を開始したが,翌日症状が増悪し,黄疸も発症した為緊急手術を施行した.手術所見では胆嚢が頸部で穿孔し,胆嚢内の血腫が肝十二指腸間膜内に穿破した為巨大な血腫を形成し,総胆管は血腫に圧排されていた.胆嚢摘出にて止血を得たが,胆道造影では胆管内に血腫や結石は描出されず,血腫による外圧性の閉塞性黄疸が疑われた.病理所見では穿孔部周囲に全層性の壊死・粘膜下出血をみとめ,出血性胆嚢炎穿孔と診断された.動脈壁の異常や悪性所見はなかった.出血性胆嚢炎穿孔による血腫が原因となった外圧性の閉塞性黄疸は過去に報告例はなく極めて稀である.
  • 杉山 眞一, 土居 浩一, 高森 啓史
    2014 年 28 巻 4 号 p. 673-676
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    肝十二指腸間膜内の門脈,胆管,肝動脈の全構造が変位し,かつ右側肝円索を有する非常に稀な解剖学的変異を有する胆石胆嚢炎症例を経験したので,その手術手技上の工夫と若干の文献的考察を加え報告する.症例は63歳,女性.腹部造影CT上,肝十二指腸間膜内の門脈,胆管,肝動脈の全てが十二指腸腹側を走行し,その中で門脈が最も腹側に位置していた.その背側を総胆管が,さらに背側を固有肝動脈が走行していた.胆嚢床は肝内側区域に位置していた.手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.肝円索を牽引挙上することで視野を確保し,肝円索の左側と臍左側にポートを挿入し,牽引方向を自在にすることで,安全に手術を遂行できた.門脈,総胆管および肝動脈それぞれが十二指腸腹側を通る異常については発生過程からも説明できるが,それぞれが同時に起こることは考えにくく,その機序についての考察は今後の課題である.
  • 海藤 章郎, 高橋 進一郎, 加藤 祐一郎, 小嶋 基寛, 小西 大
    2014 年 28 巻 4 号 p. 677-683
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.右季肋部痛・食思不振を主訴に前医を受診,胆嚢癌疑いにて当院紹介となった.腫瘍は超音波上は胆嚢体頸部の胆嚢内腔に突出する不整形充実性等エコー腫瘤で,CT上は遷延性の造影効果を有し,MRIではT1/T2ともに等信号であった.また,胆嚢底部に被包化膿瘍を伴う壁肥厚像を認めた.この壁肥厚像は前医受診時から2週間の経過で経時的に縮小傾向を認め黄色肉芽腫性胆嚢炎の併存が疑われた.胆嚢床切除術・リンパ節郭清を施行し切除標本上胆嚢頸部に乳白色調の結節膨脹型の腫瘤,胆嚢底部に黄褐色状の壊死領域を認めた.病理診断は,胆嚢頸部の充実腺癌と胆嚢底部の黄色肉芽腫であった.黄色肉芽腫と胆嚢癌の画像診断による鑑別はしばしば困難であるが,本症例では画像所見の経時的変化にて診断し得た.胆嚢充実腺癌は稀な組織型であり,黄色肉芽腫性胆嚢炎との併存例の報告はされておらず本症例は示唆に富む症例と考えられた.
  • 千田 貴志, 川本 潤, 宮崎 勝
    2014 年 28 巻 4 号 p. 684-689
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で左季肋部痛を主訴に受診し,腹部CT検査にて胆嚢内に最大径14 mmの多発ポリープを認めた.この時肝臓,胆嚢を含む全臓器が正位とは左右対称に位置しており,完全内臓逆位を伴う胆嚢ポリープの診断となった.早期の胆嚢癌を否定できないため,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術者は患者の右側に立ち,トロッカーの挿入部位も全て通常と左右対称となるように配置し,double-hand法を用いて合併症なく手術を完遂した.手術時間は1時間34分,出血は少量であった.術後臍下部創に感染を認めたが,排膿後軽快し術後13日目に退院した.完全内臓逆位症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の報告は少なくトロッカー挿入位置や手術手技は確立されていない.本症例はdouble-hand法にて施行したが,特にCalot三角部では左手で剥離操作を行う場面も多く,左手での鉗子操作に習熟する事が重要であると思われた.
  • 大牟田 繁文, 成木 良瑛子, 徳久 順也, 新後閑 弘章, 斎藤 智明, 大原関 利章, 渡邉 学, 前谷 容
    2014 年 28 巻 4 号 p. 690-695
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    症例は40歳代,女性.2型糖尿病で入院の際のスクリーニングの腹部USで胆嚢全体に大小不同の隔壁構造を伴った病変を認めた.腹部造影CTでは胆嚢壁と比較して各時相での隔壁の造影効果は強かった.EUSでは腹部USと同様の所見であった.以上から多隔壁胆嚢と診断し,癌合併例の報告もあることから腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後の病理組織学的所見では肉眼的に認められた隔壁の大部分は,筋層との連続性を有する平滑筋繊維朿や膠原繊維の挙上が認められ,これらに混在してRokitansky-Achoff洞の密な集族と筋層の肥厚,繊維増生が認められたことから多隔壁胆嚢に胆嚢腺筋腫症様病変を合併しているものと考えられた.このようなケースの報告例は今までになく,所見術前の画像所見において胆嚢腺筋症に特徴的な所見は認められなくても,このような症例が存在するため文献的考察も加えて報告する.
  • 虻江 誠, 鈴木 雅貴, 塚本 啓祐, 青木 優, 久保 正二
    2014 年 28 巻 4 号 p. 696-702
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    印刷会社勤務での有機溶剤曝露歴を有する肝内胆管癌の一例を経験した.症例は37歳男性で,20年間の勤務歴を有していた.肝機能障害を主訴に前医を受診し,肝内胆管癌の診断となり当院へ紹介された.S5,S3,S8に多発する腫瘤と肝門部および傍大動脈リンパ節転移を伴っており,化学療法を施行した.印刷労働者にみられた胆管癌については,前癌病変が広範囲にみられる等,通常の肝内胆管癌とは異なる特徴を有している可能性があり,その特徴を明らかにしていくことは,その社会的背景からも非常に重要である.今回,病因,特徴,治療法について文献的考察を加え検討したので報告する.
胆道専門医講座⑧胆道癌の外科治療―最新の治療成績―
第3回 胆嚢癌
  • 久保木 知, 大塚 将之, 清水 宏明, 加藤 厚, 吉富 秀幸, 宮崎 勝
    2014 年 28 巻 4 号 p. 703-710
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌では,根治的外科切除のみが唯一の治癒を期待できる治療法だが,進行胆嚢癌の予後は極めて不良である.その解剖学的特徴から,胆嚢癌は壁深達度・胆嚢周囲進展度(T因子)により予後が大きく異なり,外科的治療もそれに合わせた対応が必要となる.しかし,各進行度に合わせた至適術式の明確なエビデンスは乏しく,未だコンセンサスが得られていない.特にT2胆嚢癌は適切な外科治療により予後の向上が期待できるが,その至適肝切除範囲,リンパ節郭清範囲,肝外胆管切除の必要性など未だ議論も多い.当施設では胆嚢癌の進展経路・リンパ節転移の頻度・周術期合併症の頻度などを考慮し,肝中央下区域切除+肝外胆管切除+所属リンパ節郭清の施行が有用だと考えている.各症例での進行度に合った過不足ない術式選択が重要だが,術式選択に関する信頼性の高い報告が少ないため,各ステージにあった至適術式を明確にするための更なる試験が望まれる.
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