日本養豚学会誌
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45 巻, 3 号
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原著
  • 村上 斉, 松本 光史, 井上 寛暁, 森下 惟一, 梶 雄次
    2008 年 45 巻 3 号 p. 137-148
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2009/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,色落ち海苔の有効利用の一つとして飼料原料としての利用を考えて,肥育豚への給与が飼養成績,栄養素の利用性,背脂肪厚の発達および豚肉の抗酸化特性に及ぼす影響を検討した。
    試験では,LWD交雑種の肥育豚去勢8頭(2腹,平均体重55kg)を対照と海苔の2区に割り当て,8週間の飼養試験を行った。対照区の豚には,肥育の前期(体重50-80kg)と後期(体重80-110kg)にトウモロコシ・大豆粕主体飼料を調製して不断給与した。一方,海苔区の豚には,対照区の飼料に色落ち海苔2%を添加した飼料を不断給与した。体重と採食量は毎週測定した。肥育前期と後期の最終週にCr2O3を用いたインデックス法により栄養素の消化率を測定した。また,飼養試験の0,2,4,6,8週目に採血と背部P2位置(最終肋骨接合部における正中線より65mmの部位)における超音波画像解析を行い,血漿中脂質過酸化物と背脂肪厚の推移を測定した。さらに,飼養試験終了後,食肉処理場でと畜して,ロース(胸最長筋)を採取し,無酸素条件で凍結保存した後,解凍後0,2,4日間冷蔵保存のロース中脂質過酸化物を測定した。
    その結果,対照区に比べて海苔区では,肥育前期の採食量は有意に低下する(P<0.05)ものの,増体量に差はみられず,飼料効率は向上する傾向を示した(P=0.08)。肥育後期の飼養成績に両区間で有意差はみられなかった。肥育前期において,海苔区では,乾物消化率は有意に上昇したが,肥育後期では,両区間に差はみられなかった。測定したP2部位の背脂肪厚に両区間で有意差はみられなかったが,と畜後の格付けにおいて海苔区では厚脂による格落ちは少なかった。血漿中脂質過酸化物の推移を試験前の値と比較してみると,対照区では有意な変化はみられないが,海苔区では0週目に比べて6および8週目に有意に低下した。解凍後に冷蔵2,4日間保存したロース中脂質過酸化物の値を解凍直後の値と比較してみると,対照区では有意な上昇がみられるが(P<0.05),海苔区では有意な上昇はみられなかった(P=0.06とP=0.09)。
  • 野村 哲郎, 家入 誠二, 山下 純
    2008 年 45 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2009/03/09
    ジャーナル フリー
    豚の閉鎖育種集団の有効な大きさおよび近交度の予測方法を開発する上で考慮すべき要因を明らかにする目的で,実際に造成された系統の血統分析を行った。分析においては,平均近交係数および平均共祖係数を世代ごとに求め,集団の有効な大きさの観測値を平均共祖係数の上昇率から計算した。また,集団の有効な大きさの無選抜下での期待値(NeR)および観測された親世代の家系サイズの分散・共分散に基づく期待値(NeS1)を求め,観測値と比較した。NeRは全世代で観測値を過大に評価した。NeS1の調和平均は,観測値に比較的近い値を与えたが,世代ごとにみると後半世代の集団の有効な大きさを過大に評価する傾向が認められた。以上の結果より,豚の系統造成のように継続して選抜が行われる集団の有効な大きさは,親世代の家系サイズの分散・共分散だけを考慮した方法では,過大に予測されることが明らかになった。選抜が当該世代の家系サイズの分散・共分散だけでなく,祖父母やさらに遡った世代の家系サイズに与える影響を考慮した予測方法を開発する必要があるものと考えられた。
  • 家入 誠二, 野村 哲郎
    2008 年 45 巻 3 号 p. 156-163
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2009/03/09
    ジャーナル フリー
    複数形質に対する指数選抜下での集団の有効な大きさおよび近交度を予測するための理論を開発した。予測モデルにおいては,選抜指数の遺伝率を用いて指数選抜を単一形質に対する選抜で近似する方法を採用した。7世代にわたる指数選抜によって造成された現実の系統に得られた予測理論を適用し,集団の有効な大きさと近交係数の予測値を造成過程で観測された値と比較した。集団の有効な大きさに関する予測値と観測値の間には2,3の世代で相対的に大きな差が認められたが,世代にわたる調和平均で見ると予測値は観測値に近い値を示した。集団の有効な大きさから予測された共祖係数および近交係数は,観測値とよく一致した。これらの結果から,選抜指数を用いた豚の閉鎖群育種の設計に当たって,提示した予測理論が利用できるものと考えられた。
  • 王 雲飛, 鈴木 貢, 福山 欣晃, 佐伯 真魚, 丹羽 美次, 阿部 亮
    2008 年 45 巻 3 号 p. 164-172
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2009/03/09
    ジャーナル フリー
    WLDおよびLD肥育豚34頭を用いて,試験区に食品廃棄物のみを原料として調製された高温発酵乾燥飼料(以下 試験区飼料)を,対照区に市販配合飼料を給与する肥育試験を実施した。試験区飼料の原料としてパン屑および余剰・食べ残しの米飯70%,魚類5%,野菜屑15%,乾燥豆腐粕10%(いずれも原物中)を用いた。乾燥処理は廃棄物処理業者に依頼し,高温発酵乾燥菌を添加して処理機に投入し,品温80℃で5時間維持により乾燥を行った。試験は1群5-6頭の群飼により不断給餌,自由飲水で実施し,毎週1回体重測定と残飼量測定を行った。また,肥育試験に用いた飼料の水分,粗蛋白質,粗脂肪,NFE(可溶無窒素物),総繊維,アミノ酸含量,ミネラル含量を測定し,その変動について検討を行った。その結果,試験飼料は栄養成分においてロット間変動が少なく,安定した品質であることが明らかとなった。
    肥育試験終了後,全供試豚を屠畜解体し,枝肉成績,脂肪酸組成等の調査および豚肉の官能試験を実施した。その結果,試験区飼料は豚の嗜好性が悪く,採食量が低いため,対照区の増体0.87kg/日に対して,試験区ではわずか0.4kg/日であり,試験区は対照区に比べ有意な発育の遅延がみられた。一方,試験区の枝肉は筋肉内脂肪含量が多く,官能試験においても高い評価が得られた。また,試験区飼料は配合飼料より安価であることから,もし,当飼料の嗜好性を改善できれば,100%給与した豚の肥育も可能性があると考えられる。
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