日本養豚学会誌
Online ISSN : 1881-655X
Print ISSN : 0913-882X
ISSN-L : 0913-882X
49 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 佐藤 正寛
    2012 年 49 巻 4 号 p. 143-149
    発行日: 2012/12/26
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル フリー
    モンテ·カルロ法によるシミュレーションにより,豚の系統造成において近親交配の回避が選抜反応および近交度に及ぼす影響について検討した。基礎集団における繁殖集団の大きさは,雄 10頭雌 30頭または雄 10頭雌 50頭の 2通りとした。雄 1頭に交配する雌の頭数を一定とし,各腹から雄 1 頭,雌 2頭を育成し,選抜候補とした。選抜は,①無作為選抜,②表現型値による選抜,③育種価の BLUP による選抜とした。選抜された個体は,①無作為交配,②全きょうだいを避けた交配,③全きょうだいと半きょうだいを避けた交配,④全きょうだい,半きょうだいおよびいとこ同士を避けた交配の 4通りとした。選抜形質の遺伝率は,0.2 または 0.5の 2通りを想定した。無限遺伝子座モデルを用いて,世代重複のない 10世代(G1∼G10)の継代記録を,各条件下で 1000 反復発生させた。集団のサイズの大きいほうが選抜反応は大きくなるものの,交配方法による選抜反応の違いはみられなかった。一方,選抜世代数の短い G5までの選抜でも,全·半きょうだいを回避した交配は無作為交配に比べ,遺伝率が 0.2 のときで約 3%,遺伝率が 0.5 のときでも 2.4%平均近交係数を抑制できることが明らかとなった。したがって,豚の系統造成において近親同士の交配を回避することは,近交度を抑制するうえで有効であると結論づけた。また,系統造成における交配計画の構築には,いとこ同士の交配は考慮する必要のないことが明らかとなった。
  • 入江 誠一, 尾嶋 孝一, 大江 美香, 室谷 進, 千国 幸一, 中島 郁世
    2012 年 49 巻 4 号 p. 150-159
    発行日: 2012/12/26
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル フリー
    ブタ脂肪細胞の分化·増殖メカニズムを解明する試験の一環として,ブタ皮下脂肪前駆細胞株(PSPA)を用いてオクタン酸の濃度及びその添加時期が脂肪細胞分化に与える影響について検討を行った。オレイン酸を含む分化誘導培地にオクタン酸を 1μM∼5mM に調製して PSPA を刺激したところ,オクタン酸濃度が 1mM 以上になると細胞増殖の抑制及びトリグリセリド(TG)の増加が認められ,オレイン酸存在下においてもオクタン酸がブタの脂肪細胞分化に重要な因子であることが確認された。脂肪細胞分化を決定する主要な転写因子であるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR) γ2 及びCCAAT エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)αの mRNA の発現について比較した結果,両遺伝子共にオクタン酸無添加(対照区)と 3mM 区とで同様の発現量を示し,オクタン酸は転写因子の発現量に影響しないことが推察された。一方,分化マーカーである脂肪細胞特異的脂肪酸結合タンパク質,アディポネクチン及びペリリピン 1の mRNA 発現量は対照区に比べ 3mM 区において高く,増殖マーカーである増殖細胞核抗原 mRNA の発現が低いことから,細胞数と TG 量の測定結果と一致した。更に,分化誘導期間 10日間のうちオクタン酸を添加する時期を前期(0∼4日),中期(4∼8日),後期(6∼10日)及び全期(0∼10日)に分けてその効果を比較したところ,全期区が前期,中期,後期区に対して細胞数を低下及び TG 量を増加させることから,オクタン酸を常時添加するのが効果的であると推察された。また全期区に比べて短期処理区の細胞数が多く TG 量が少ないという結果から,細胞はオクタン酸が無くなると細胞増殖を再開すると共に TG 合成能が低下すると推察された。オレイン酸存在下において,1mM 以上の濃度のオクタン酸を添加し続けることにより PSPA の脂肪蓄積量を効果的に増大させることが判明した。
研究短報
技術ノート
feedback
Top