イカ肉および表皮の物性変化と主要構成成分であるタンパク質との関わりを検討することを目的として,アオリイカ,スルメイカ,ヤリイカを4℃ で0,1,2,5日間貯蔵し,生および加熱した胴肉および表皮1,2層について,物性,コラーゲン量DSCの測定を行い,種類および貯蔵条件の異なるイカの熱的挙動を調べた。
いずれのイカ胴肉も,加熱により生肉より硬く,弾力が強くなった。貯蔵により,いずれの胴肉も加熱,生ともに引張強度が低下した。ヤリイカのコラーゲン総量は他に比べて少ないが,生,加熱ともに貯蔵に伴う変化は見られなかった。DSCはいずれの胴肉においても,アクチンのピークが貯蔵に伴い低温側に移動した。したがって,生,加熱胴肉の貯蔵に伴うテクスチャーの軟化には,筋原線維の構造変化の関与が考えられる。
一方,イカ表皮は,いずれのイカも加熱により生より引張強度が低下した。貯蔵に伴いスルメイカとヤリイカの引っ張り強度は生,加熱ともに低下し,特にスルメの変化が顕著であった。表皮のコラーゲン総量はヤリイカで若干少なかった。スルメイカとヤリイカの20℃ および70℃ 可溶性コラーゲン量は,貯蔵に伴い増加した。DSCパターンはスルメイカが他と異なっていた。生および加熱イカ表皮の貯蔵に伴うテクスチャーの脆弱化には,可溶化にみられるようなコラーゲンの構造変化が関与しているものと考えられる。
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