日本調理科学会誌
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53 巻, 2 号
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2019年度日本調理科学会学会賞受賞記念論文
2019年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
報文
  • 佐藤 瑶子, 佐藤 裕美, 熊谷 美智世, 香西 みどり
    原稿種別: 報文
    2020 年 53 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2020/04/05
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

     煮込み料理の調味における煮汁の粘度の影響を明らかにすることを目的とし,NaClを添加したデンプン糊液中にダイコンを浸漬し,ダイコン中のNaClのみかけの拡散係数(Dapp)を求めた。Dappはデンプンなしに比べてデンプン濃度が3%および5%の場合にバレイショデンプンおよびコーンスターチのいずれもデンプン濃度が高い方が小さく,同濃度ではコーンスターチよりもバレイショデンプンの方が小さかった。デンプン糊液中に浸漬したダイコン内部のNaCl濃度はデンプンなしに比べて表層部の濃度上昇が遅れたことから,浸漬液の粘度が高いことでダイコン表面部へのNaClの付着量が少なくなり,表層部分の濃度上昇が遅れたことがDappの低下に寄与したと考えられた。

  • 石橋 ちなみ, 檀上 沙梨, 長谷川 桃子, 吉田 充史, 杉山 寿美
    原稿種別: 報文
    2020 年 53 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2020/04/05
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,お好み焼きのキャベツの嗜好特性を明らかにすることを目的とし,広島地方で多く食されているお好み焼きのキャベツと,蒸し加熱,茹で加熱したキャベツを試料に用いて,テクスチャーおよび糖量の測定と官能評価を行った。テクスチャー測定の結果,お好み焼きのキャベツの上層は中層,下層よりも有意に最大剪断荷重が小さかった。お好み焼きキャベツの搾汁中糖量は生キャベツよりも多く,中層のキャベツで有意に多かった。官能評価において,上層のキャベツは中層,下層よりも有意に軟らかく,好ましくないテクスチャーと評価されたが,上層,中層,下層を混合したキャベツは上層よりも硬く,中層や下層よりも軟らかいと評価され,中層,下層と同様に好ましいテクスチャーと評価された。以上の結果から,広島地方で多く食されているお好み焼きには1枚中に異なるテクスチャーや搾汁中糖量のキャベツが存在することが確認され,お好み焼きキャベツの嗜好特性に影響していることが明らかとなった。

  • 大石 恭子, 金成 はるな, 大田原 美保, 香西 みどり
    原稿種別: 報文
    2020 年 53 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 2020/04/05
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

     食酢および重曹を用いて酸性(pH 2.9),弱酸性(pH 5.0),中性(pH 7.0),弱アルカリ性(pH 8.4)に調整した炊飯液で飯を調製し,炊飯液のpHが飯の物性や老化に与える影響を調べた。炊飯直後においては,酸性の飯および弱アルカリ性の飯は,弱酸性の飯および中性の飯に比べて粒表層の粘りや付着性が有意に大きく,顕微鏡観察においても,飯粒表層のおねば層が厚いことが確認された。14時間の冷蔵後の飯では,粒全体および粒表層のいずれも,酸性の飯および弱アルカリ性の飯は軟らかくて付着性が大きく,官能評価においても他のpHの飯に比べて老化抑制効果が認められた。一方,弱酸性の飯は,他の試料に比べて冷蔵に伴う老化促進傾向が物性測定,官能評価および圧縮米飯粒の明度測定から示された。酸性および弱アルカリ性の条件での炊飯は飯の老化を抑制し,弱酸性の条件は老化を促進することが示された。

資料
  • 平島 円, 磯部 由香, 堀 光代
    原稿種別: 資料
    2020 年 53 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2020/04/05
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

     大学,短大および専門学校の入学時と卒業時の学生に,調理に対する意識と実践度についてアンケート調査を行い,調理実習の履修の有無で分析した。入学時の対象者は1,611名で,卒業時の対象者は1,361名だった。アンケート調査の結果から,調理実習を履修した学生は,調理実習を履修しなかった学生と比べて在学中を通して調理することが好きで,得意料理を持つ割合の高いことがわかった。また,調理を好きでない学生の調理への意識と実践度を高めるためには,調理実習の履修は効果のあることがわかった。これは,調理する機会が多いことと調理頻度の高いことによると考えられる。したがって,在学中に調理への意識と実践度を高めるためには,調理実習の履修の有無にかかわらず,すべての学生にとって調理機会を増やすことが重要だと考えられる。

  • 白杉(片岡) 直子, 作田 はるみ, 橘 ゆかり, 岸田 恵津, 坂本 薫, 井奥 加奈, 森井 沙衣子, 升井 洋至, 堀内 美和, 中谷 ...
    原稿種別: 資料
    2020 年 53 巻 2 号 p. 114-126
    発行日: 2020/04/05
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

     小学校教員志望学生を対象に,家庭科教科書における鍋による炊飯(鍋炊飯)の加熱過程の表現に対する理解の程度や難易の感じ方を調査した。「火加減の調節」では強火と比べ中火と弱火の調整を難しく感じていた。「加熱時間の調整」では,幅のある加熱時間の表記に難しさを感じていた。学生の大半は教科書に示された「炊飯の状態」の表現を参考に火加減の調節をするとよいと答えたが,最も判断に困ったのも「炊飯の状態」であった。「水が引く」の馴染みのない表現や,「吹きこぼれない程度」のように経験しないと分からない事象,音やにおいに頼った判断に不安を感じていた。ガラス鍋と文化鍋の使用目的や特性,「炊飯の状態」の判断の仕方の違いを区別して示す必要があると考えられた。児童に鍋炊飯を実習指導することは,「学生の鍋炊飯に対する経験不足」,「児童が判断することの難しさ」,「授業運営の難しさ」の3要因が重なり,約90%の学生が難しいと考えていた。

  • 田鹿 光紀子, 望月 美左子, 牧 昌生, 望月 聡
    原稿種別: 資料
    2020 年 53 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2020/04/05
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

     大分県別府市では,温泉を使った調理法として地獄蒸しが有名であり,調理特性等に関する報告が多数なされているが,温泉水そのものを調理に利用した事例は少ない。そこで本研究では,水の代わりに温泉水そのものを調理に使用したときの特徴を明らかにしようとした。カスタードプディング,茶碗蒸し,豆腐は,使用する牛乳または水の一部を別府鉄輪温泉水に置き換えて調理した。うどんは,乾麺の茹で水として別府鉄輪温泉水を使用した。各食品の物性測定を行い,カスタードプディング,茶碗蒸し,うどんは官能評価を行った。その結果,物性測定では,別府鉄輪温泉水を使用したカスタードプディング,茶碗蒸しは硬く,豆腐は軟らかくなった。官能評価では,茶碗蒸し,うどんにおいて塩味が強くおいしいと評価された。別府鉄輪温泉水を使用することで,これらの食品の硬さや味に影響を及ぼすことが示唆された。

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