加熱に長時間を要する煮豆が日常的に家庭調理へと受け入れられるための方策として,多量に煮豆を調製した後冷凍保存を行い,必要に応じて解凍することで利用しやすくなる可能性があると考えた。本研究では黒大豆を蒸留水および調味液に浸漬後煮熟調製した黒豆を用い,冷凍保存が煮熟大豆の軟化に及ぼす影響を物性測定,官能評価および子葉組織の観察から検討した。
その結果,黒豆の破断強度は未冷凍の場合,調味液煮豆が水煮豆よりも大きかった。水煮豆・調味液煮豆のいずれにおいても冷凍保存により,破断強度が低下し,破断曲線から数値化したz値もわずかに高くなる傾向がみられた。光学顕微鏡およびSEM観察において2週間冷凍保存すると,水煮豆・調味液煮豆共に細胞間に間隙がみられ,細胞壁の分離が認められた。冷凍保存に伴う軟化現象は,細胞組織の状態の変化により生じることが推察された。官能評価の結果,水煮豆.調味液煮豆共に冷凍2週間後には有意に軟らかく,ねっとり感が強くなった。黒豆の冷凍保存は,家庭における調理の簡便化につながると考えられる。
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