一般にアメリカの消費者は栄養や健康問題への関心は高いが,実際に望ましい食品選択が行われていないという報告がある。そこで本研究では栄養素を示すことにより,大学内カフェテリア利用者のメニュー選択にどれだけ変化があるかをEngel-Kollat-Backwellの方法に基づき調査し,論理的回帰分析を行い,その効果を検討した。日替りランチメニューを対象に各々,カロリー,総脂肪量を数値で表現するとともに,脂肪,炭水化物,タンパク質のエネルギー比率をグラフで表示した。表示期間は3 週間とした。カフェテリア利用者に健康管理状況, 栄養問題意識度, 栄養知識度, その日のメニュー選択状況について栄養表示前と表示中に分けて調査し,栄養表示利用者の特徴,高脂肪食品選択者の特徴についての分析を行った。その結果,表示に気付いた人は,カフェテリアを大変良く利用する人か,またはその日初めて利用した人で,実際に表示を参考にメニューを決めた人は栄養問題に深く関心のある人であった。
また高脂肪食品選択者の特徴は,消費者の2段階意志決定理論に基づいて分析を行った。すなわち(1)日替りメニューを選ぶかどうか,(2)日替りメニューのうち何を選ぶかの2段階から検討した。その結果,日替りメニューを選ぶ率は栄養表示に気付いた者ほど高く,日替りメニューのうち高脂肪食品を選ぶ率は栄養表示に気付かなかった者ほど高かった。したがって,栄養表示に気付かなかった者が多かったものの,カフェテリア利用者のメニュー選択に栄養表示により高脂肪食品選択を避ける効果があったことが明らかとなり,栄養表示の必要性が示唆された。
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