日本調理科学会誌
Online ISSN : 2186-5787
Print ISSN : 1341-1535
ISSN-L : 1341-1535
50 巻, 6 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
報文
  • 柏野 由加里, 河野 俊夫, 篠原 亜里紗, 張 夏
    2017 年 50 巻 6 号 p. 222-227
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
     セルロース粉末は,食物繊維を豊富に含んでおり,様々な機能性を有している上にカロリーがほぼない。本研究では,小麦粉の一部をセルロース(Ⅰ型あるいはⅡ型)粉末で置換したときのパンについて品質評価を行った。評価項目は,生地発酵力,ローフ比体積,ローフ高さ,クラムとクラストの色調,クラムの微細構造,クラム硬さである。生地発酵力,ローフ比体積,ローフ高さは,セルロース粉末の配合割合が高いものほど低かった。また,セルロース粉末の配合割合が高いものほど,焼き色が薄くなった。10%および15%配合したときのクラムの硬さは,コントロールと同程度の硬さであったが,20%配合時は有意に硬かった。一方で,クラムの硬化速度においては,セルロース粉末パンとコントロールとの間に有意差は認められなかった。
  • 野口 聡子, 大喜多 祥子, 樋上 純子, 八木 千鶴, 山本 悦子, 米田 泰子, 渡辺 豊子
    2017 年 50 巻 6 号 p. 228-238
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
     米粉スポンジケーキに適した粉合わせの程度について,小麦粉を用いた場合を対照として検討した。米粉生地は小麦粉生地に比べ,粉合わせ操作による生地成分ならびに気泡の均質化が緩慢であり,一方,気泡の消滅も緩慢であった。したがって,米粉生地の粉合わせ回数は小麦粉生地の場合より多く必要であり,粉合わせ回数65回と105回の米粉スポンジケーキの内部の応力は,粉合わせ回数25回の小麦粉スポンジケーキの内部の応力と近似であった。本実験での粉合わせ回数の比較においては,最終的な生地密度を0.38~0.41 g/cm3に調製することが,スポンジケーキの形状,力学的特性,嗜好性の面で小麦粉スポンジケーキと近似しており,適切であるといえた。
ノート
  • 坂野 麻里子, 坂野 史明, 遠藤 泰志, 藤本 健四郎
    2017 年 50 巻 6 号 p. 239-244
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
     フライのモデル系として水噴霧加熱を使用し,低酸素雰囲気下の油脂劣化について検討した。油脂の加水分解の指標である酸価に着目して解析した結果,酸素濃度を2%に下げると水噴霧による水分が存在しても酸価の上昇は抑制されることが判明した。また,遊離脂肪酸やヒドロペルオキシドの添加は,この条件下での酸価上昇を惹起しなかった。以上の結果から,酸価は従来言われてきたような,高温と水分による単純なエステル加水分解の指標ではなく,初期の酸化中間体や活性化した酸素分子が促進的に働いてはじめて上昇するフライ油の酸化的劣化指標の一つであると考えられる。
資料
  • 畦 五月
    2017 年 50 巻 6 号 p. 245-253
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
     岡山県でサワラ(Scomberomorus niphonius)とサヨリ(Hyporhamphus sajori)の食習慣が形成されている。その証拠として両魚は『魚類特別調査』で,岡山県が最も食べる魚となっている。一方で江戸時代の料理書である「献立筌」を紐解くと,献立を作成する際にサワラの代替としてサヨリが充てられている。そこで両魚に着目して江戸時代に遡り代替の理由を調査した。二種は江戸時代の岡山藩の産物として認定され,後楽園の宴席でタイ(Pagrus major)やスズキ(Lateolabrax japonicas)に次ぐ高い格を持った魚として使用されていた。その調理法は,魚種毎にあるいは,使用階級,行事毎に確立されていた。
     現代,両魚は岡山県が最多使用事例数を示し,その調理法はサワラでは焼き物が,サヨリでは刺身が最多であり,この調理法は昭和初期より継承されている。二種は漁獲量が多く,かつ品格を備えている魚であるため高身分階級の行事食へ利用された。つまり二種は各種の要因が複合し関連することにより利用され,その岡山県地方での食習慣を形成してきたと考えられる。
  • ―かんころを中心として―
    安部 春香, 髙橋 弘一, 冨永 美穂子
    2017 年 50 巻 6 号 p. 254-263
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
     甘藷の切干しは長崎県の多くの地域で「かんころ」と呼ばれている。「かんころ」の呼称は長崎県外にも存在するが,製造工程を含め同じものであるかは不明瞭である。そこで本研究では,西日本を中心に長崎県内外における「かんころ」の製造工程および甘藷の切干しの呼称とその分布状況を明らかにすることを目的とした。
     甘藷の切干しの有無やその呼称などに関して西日本の海岸沿いの府県,市町村などの行政庁,教育委員会,計691ヶ所を対象として,甘藷の切干しに関する質問紙調査を郵送法により実施した。長崎県内の2地域ならびに県外8地域において,地域食文化に精通していると考えられる質問紙回答者を中心に「かんころ」の製造工程や呼称などに関するインタビュー調査を行った。
     長崎県内調査においては,「かんころ」の製造工程は同じであったが,調査地域間で使用する器具や「干し棚」の構造に違いが見られた。甘藷の切干しの呼称は「干しいも」が最も多く,西日本全体に広く分布していた。「かんころ」は九州北部から瀬戸内海沿岸地域にかけ帯状に広がっていた。「かんころ」は甘藷の切干しに関連した呼称であったが,その製法は調査地域間で異なっていた。
  • 柴田(石渡) 奈緒美, 廣瀬 純子, 宇田川 瑛里, 中澤 暁輝, 松田 寛子
    2017 年 50 巻 6 号 p. 264-271
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
     調理における時間の短縮・簡略化の代表例として,米飯を冷凍保存し,電子レンジを用いて解凍する冷凍米飯が挙げられるが,アンケート調査により冷凍米飯の品質に不満を有している割合が高いことが報告されている。そこで本研究は炊飯後に米飯を冷ます工程に着目し,冷まし工程終了時と電子レンジ解凍後の含水率,物性値さらには食後の血糖値上昇度の指標となるeGI値を測定した。炊き立ての米飯の測定値を最も良い品質と仮定すると,冷まし工程を施さず,直ちに冷凍することで解凍後の含水率,かたさの全てにおいて炊き立ての数値と有意差がないことが分かった。また,冷まし工程を施す場合は冷まし工程時にラップで包装することで,炊き立ての品質に近い冷凍米飯を調製できることが示唆された。また,4種類の試料のeGI値は全て炊き立てと有意差がなかった。したがって,冷まし工程の有無に伴う米飯を摂取した際,食後の血糖値の上昇に影響を与えないことが示唆された。
講座
教材研究
クッキングルーム
トピックス&オピニオン
feedback
Top