日本調理科学会誌
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49 巻, 2 号
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平成27年度日本調理科学会学会賞受賞記念論文
平成27年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
報文
  • 橋詰(高澤) 奈々世, 小林(粟津原) 理恵, 岩田 惠美子, 土田 幸一, 榎本 俊樹
    2016 年 49 巻 2 号 p. 117-127
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     雑穀の多くは,米や小麦の代替として主食に使われている。雑穀の新たな利用法として金沢の伝統食品じろ飴を参考に雑穀糖化液の試作を行った。用いた雑穀はアワ,キビ,ヒエ,ダッタンソバ,大麦の5種類で,それぞれからBrix約20%の糖化液Aと,これを濃縮したBrix40%の糖化液Bを調製し,基礎特性および官能評価を行って,一次加工品としての糖化液の可能性を検討した。糖化液A,Bの糖組成はマルトース主体であった。糖化液Bでは,マルトースに比べ甘味度が高いグルコースおよびフルクトースが増加していた。また,いずれの糖化液も糖化液Aに対する糖化液BのL*値が小さく,暗い色調に変化していた。さらに加熱による香気成分の減少が確認された。官能評価では色調の薄い糖化液が好まれ,香りの項目では特定の香気成分の検出量が多い糖化液は好まれなかった。各糖化液は色,香りなどに特徴があり,嗜好面でも好みに差があった。それぞれの特徴にあった調理に利用することができれば,糖化液は調理用の一次加工品として利用価値が向上すると期待される。
  • 渡辺 裕子, 小林(粟津原) 理恵, 長尾 慶子
    2016 年 49 巻 2 号 p. 128-137
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     我々はハトムギ粉の基礎特性を知り,小麦粉代替食品としての利用適性を検討した。ハトムギ粉は小麦粉よりも糊化に時間を要した。小麦粉の約1.5倍の加水で同程度の硬さのドウが得られ,バッターは30分のねかし時間により調製しやすい生地になった。30分ねかしたハトムギ粉バッターを焼成したクレープは,小麦粉製品よりも破断しやすい力学特性を示した。官能試験での嗜好評価は低かったが,優れた健康機能性や栄養面の情報提供により評価が向上した。クッキーでは,硬い食感で嗜好評価は低かったが,材料の水の一部をバターに置換することで向上した。ハトムギ粉の抗酸化能は小麦粉よりも有意に高く,クッキー製品でも高い抗酸化能を示した。
  • 宮澤 紀子, 阿部 雅子, 木村 典代, 松岡 寛樹, 田中 進, 森光 康次郎, 中村 宜督, 綾部 園子, 小澤 好夫
    2016 年 49 巻 2 号 p. 138-146
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     野菜を常に摂取すると生活習慣病のリスクを軽減することが知られている。日本では,グルコシノレートを含む多くのアブラナ科野菜が漬物や煮物さらに浅漬けとして消費されている。グルコシノレートは組織が損傷するとミロシナーゼにより独特なフレーバーと発がん抑制作用を有するイソチオシアネートに加水分解される。
     NaClとアスコルビン酸(VC)がミロシナーゼ活性に与える影響について検討した結果,1%NaClと0.1%VC濃度が最もミロシナーゼ活性を賦活した。一方,NaClとVCの共存においては,活性は抑制されたが,その抑制率はVC濃度が増加するに従い減少した。
     さらに,漬物中のイソチオシアネート生成へのNaClの影響を検討するために,1, 2および3%NaCl濃度のカブとハクサイの浅漬けを調製した。GC-MS分析により3-ブテニル,4-ペンテニル,フェネチルイソチオシアネートを検出した。これらは,カブ,ハクサイ共に3%NaCl濃度で最も多く生成し,0.4%VCの添加は,1.4~1.6倍イソチオシアネートの生成を増大させた。官能評価により2%NaCl濃度における浅漬けが好まれた。
  • 上野山 あつこ, 江口 智美, 吉村 美紀
    2016 年 49 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     大豆タンパク質(SPI)と米粉(RF)の混合系を用いて,混合比率を変化させたときの,大豆タンパク質と米粉澱粉の糊化に及ぼす影響について,圧縮測定,示差走査熱量測定(DSC),共焦点レーザー走査顕微鏡観察から検討した。混合ゲルの総濃度は16.7 w/w%とし,混合比率はSPI:RF=0:10~10:0とした。
     混合ゲルの比率SPI:RF=0:10~4:6までは大豆タンパク質の割合が増加するほど初期弾性率,圧縮応力,圧縮エネルギーは低下した。一方,SPI:RF=7:3よりも大豆タンパク質の割合が増加すると各値は大きく増加した。初期弾性率の混合比率のグラフは下に凸の曲線を示した。DSC測定では大豆タンパク質の添加により米粉の糊化に伴う吸熱ピークは高温側にややシフトし,エンタルピーは小さくなった。SPIにより米粉の力学的・熱的測定から米粉の糊化が抑制されていることが推察された。共焦点レーザー走査顕微鏡観察から,混合系のゲルでは大豆タンパク質と米粉は相分離を起こすことを確認した。
  • 三成 由美, 楊 萍, 木村 秀樹, 嶋川 成浩, 黒田 恵理子, 徳井 教孝
    2016 年 49 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     九州の鶏の年間処理重量は約90万tで,鶏がらは約17%を占めているが,食材として使用は少なく,未利用食品になっている。鶏がらは有効利用するために,チキンスープに着目し,加熱方法はガス加熱,電磁誘導加熱(IH加熱)を用いて同一熱量で調製し,チキンスープの食味と呈味成分について検討した。方法は鶏がら1 kg,水2 L,食塩3 gを用い,加熱時間は90分とした。アミノ酸,核酸の分析は全自動アミノ酸分析機と高速液体クロマトグラフィーを用いた。嗜好調査は20代女性15名をパネルとし,チキンスープを5点評点法で評価し,解析はノンパラメトリックのウィルコクソンの符号順位和検定を用いた。その結果チキンスープの遊離アミノ酸の含有量はアスパラギン酸がIH加熱に比べ,ガス加熱が有意に高い数値を示したが,総アミノ酸含有量は,ガス加熱とIH加熱では有意差は認められなかった。嗜好型官能評価の項目では透明度のみ,ガス加熱が有意に高い結果を得た。機器測定においても,透明度は同じような結果だった。98℃における水の対流速度は,IH加熱に比べ,ガス加熱が有意に高いため,透明度に差が認められたと考えられる。
ノート
  • 大久 長範, Nguyen Ha Phuong, 毛利 哲
    2016 年 49 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     稲庭うどんのモデルとして,耐塩性酵母Hyphopichia burtonii M2を加えた乾麺を作った。耐塩性酵母を練り込んだ乾麺には亀裂が認められ,亀裂は麺の内部から表面に達していた。試作麺を茹でると食塩は一次反応に従い溶出した。食塩溶出速度(λ)は対照(λ=-0.169%/min)に比較して耐塩性酵母添加麺でより速やかになった(λ=-0.230%/min)。耐塩性酵母が発酵し麺に亀裂を作ることにより茹で過程における食塩溶出を促進すると考えられた。
  • 圓口 智子, 湯川 夏子, 中西 洋子
    2016 年 49 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,乾燥米麹から調製した自家製塩麹のカゼイン分解活性の特性を明らかにすることである。本研究により以下のことが明らかになった。
     1) 塩麹のカゼイン分解活性は24℃,7日間の発酵・熟成で84%に低下したが,以後冷蔵庫保存2ケ月間,同レベルの活性を維持した。一方,塩麹の糖度は7日間の発酵・熟成で10%から20%に増加し,以後微増した。塩濃度は調製・保存の全期間を通じて約11%であった。
     2) 活性測定に用いた塩麹10倍希釈液によるカゼインの分解は,少なくとも6時間は反応時間に比例して進行した。SDS-PAGEでも,カゼインタンパク質の分解を確認した。
     3) 塩麹原液のカゼイン分解活性は,50℃,30分間放置では変化が認められなかったが,さらに高温に放置することにより活性の低下が認められた。
     4) 塩麹のカゼイン分解活性は,生姜の約3倍,キウイフルーツの約1/8であった。
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