日本調理科学会誌
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46 巻, 1 号
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総説
報文
  • 遠藤 瑶子, 藤居 東奈, 香西 みどり
    2013 年 46 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     調理過程における根菜類中のNaCl拡散係数およびNaCl濃度の変化について検討した。ダイコン,ニンジン,ジャガイモは2 cm角に成型し, 20,50,70°Cで16,8,6時間0.2 M NaCl水溶液に浸漬し,拡散係数を測定した。測定の結果,拡散係数はダイコン>ニンジン>ジャガイモの順に大きく,水分含量が多いほど拡散係数は大きかった。2 cm角のダイコンを試料として20°Cの0.2~0.8 M NaCl水溶液におけるNaCl拡散係数を測定したところ,この範囲での拡散係数の濃度依存性はほとんどみられなかった。測定した拡散係数を用いて,温度変化,濃度変化を伴う調理条件での各体積要素の平均食塩濃度の変化を予測したところ,予測値と実測値はよく一致した。よって,試料を1mm3の体積要素の集合体とし,差分方程式を用いることで,試料の食塩濃度の分布および全体の平均濃度の予測が可能であることを示した。
  • 大須賀 彰子, 岩崎 裕子, 高橋 智子, 大越 ひろ
    2013 年 46 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,油脂の性状がマッシュポテトの飲み込みやすさに及ぼす影響を力学的特性と官能評価の観点から検討した。試料は性状の異なる3種の油脂,すなわち液状油O,固形脂F(ゲル状油脂),固形脂S(ショートニング),また対照として水をマッシュポテトに添加し,調製した。その結果,固形脂のテクスチャー特性の硬さと降伏応力がマッシュポテト試料に影響していた。水平方向の抵抗力の測定により得られた平均抵抗力はマッシュポテト試料のなめらかさやすべりやすさの指標となり,この測定法の有効性が示唆された。マッシュポテト試料中の副材料を顕微鏡で観察したところ,水と油脂では分散が異なり,力学的特性にも影響することが示された。官能評価では,水添加試料が硬く,なめらかさに欠ける傾向を示した。また,水と液状油Oを添加した試料が固形脂F添加試料に比べ,有意にべたつき感と残留感が少なく,飲み込みやすいと評価された。
  • ―調理法の異なる大根を用いて―
    岩崎 裕子, 大越 ひろ
    2013 年 46 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     大根とゾルを混合した混合系試料を調整し,固形物の硬さの相違が混合系試料の食べやすさへ及ぼす影響を検討するため,力学的特性の測定,官能評価,筋活動測定を行った。
     混合系試料は大根とトロミ調整食品を混合して調製した。大根は,加圧加熱,蒸し加熱,生,と硬さを段階的に変化させた三試料を用い,それぞれMR,MS,MPとした。コントロールとして蒸し大根のみの試料を大根Sとした。
     喫食者にとっては試料全体ではなく,固形物の硬さが重要であることが示された。また,大根Sが混合Rよりも総筋活動量が低く,官能評価において飲み込みやすいと評価され,ゾルと混合することよりも,食品の硬さをある程度軟らかくすることが,きざみ食の食べやすさの改善に有効であることを示した。
  • 遠藤 瑶子, 藤居 東奈, 香西 みどり
    2013 年 46 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     一定時間沸騰継続後余熱利用を行う方法を想定し,水量1~4kgの水温上昇及び下降期の実測値を用いてプログラム計算により試料内部温度,硬さ,食塩濃度の変化をシミュレーションし,試料全体の平均食塩濃度および試料中心部の硬さが適度となる調味時間,軟化時間を予測した。試料はダイコン,ニンジン,ジャガイモ1~3cm角とした。
     計算の結果,調味時間,軟化時間はそれぞれジャガイモ>ニンジン>ダイコン及びダイコン>ニンジン>ジャガイモの順に長く,同一体積の場合にはいずれも表面積が大きいほど短かった。余熱を利用しない場合はダイコン1cm角を除き,いずれも調味時間の方が軟化時間より長かった。余熱を利用する場合,1cm角は水量によらず,2,3cm角は水量が多い場合に軟化時間が調味時間より長くなった。
ノート
  • 三橋 富子, 田島 真理子
    2013 年 46 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     スープストック調製時のアク生成に及ぼす水の硬度の影響を検討した。3種類のミネラルウォーターおよび硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムで調整した様々な硬度の調整ミネラル水を用いてスープストックを調製した。3種のミネラルウォーターでは蒸留水よりも有意に多くのアクを生成したが,水の硬度とアクの生成量は比例していなかった。カルシウムのみ,又はマグネシウムのみで作ったすべての調整ミネラル水のアクは蒸留水よりも有意に多く,また硬度に比例して多くなっていたが,カルシウムのほうがマグネシウムよりもアク生成に強く働いていた。加えて,カルシウムとマグネシウムの混合調整ミネラル水の場合,カルシウムだけの調整ミネラル水よりもアクの生成は抑制されていた。アク中のカルシウム含量はスープストック調製に用いたミネラルウォーター中のカルシウム含量に比例して増加していたが,タンパク質とそれ以外のミネラル類は大きな差はなかった。
     アクの生成は,硬度1,000位までは水の硬度よりもカルシウム含量の関与が大きく,またマグネシウムの比率が増加するとアクの生成は抑制されていた。
  • 鵜飼 光子, 川村 翔栄, 岸田 敬吾, 亀谷 宏美
    2013 年 46 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     緑茶のスーパーオキシドラジカル捕捉活性をESRスピントラップ法により評価した。リボフラビンを溶解したリン酸バッファー溶液に可視光照射し,高純度のスーパーオキシドラジカルを発生させた。スーパーオキシドラジカルとCYPMPOのアダクトのESRスペクトルは非常に安定しており,感度良く観測することができた。ESRスピントラップ法は緑茶のスーパーオキシドラジカル捕捉活性の評価に適すると結論した。
  • 大久 長範, 木村 和彦, 武田 松夫, 辻本 淳一, 千田 洋
    2013 年 46 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
     「あおばの恋」を追肥量の異なる条件で栽培し,各種の小麦子実を収穫し,小麦子実から得られた粉を用いて白石温麺を試作した。茹で麺の破断強度は子実体のタンパク質含有率が8~12%では強くなったが,13%を超えると小さくなる傾向があった。子実体タンパク質含有率が増加するに従いグリアジン画分の比率が増加する傾向があった。タンパク質含有率が13%を超えるとグリアジン画分/グルテニン画分の比が2を超えた。グリアジン/グルテニン比が高くなると,強固なグルテンが形成し難くなると考えられた。今回得られた知見は歯ごたえのある乾麺の生産に利用できる。
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