日本調理科学会誌
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44 巻, 6 号
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総説
報文
  • 三神 彩子, 佐藤 久美, 伊藤 貴英, 村上 和雄, 長尾 慶子
    2011 年44 巻6 号 p. 367-374
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    生活排水,特に台所排水は水質汚濁の大きな要因である。先行研究により,家庭においてエコ・クッキングに取り組むことで,水使用量は約60~80%の削減効果があることが確認されている。本研究ではエコ・クッキングの水質汚濁負荷削減効果について検証することとし,日本料理モデル献立を選択し,家庭で行われている通常の調理法と,エコ・クッキング法とで,水の汚濁度をCOD,全リン,全窒素の測定により比較した。
    その結果,水の使用量86%,COD量82%,全リン量80%,全窒素量85%の削減効果が得られ,下準備,調理,調理器具洗浄,食器洗浄のいずれの調理工程においても削減効果を確認した。中でも,洗い桶を活用し水を汚さない,無洗米を使用しとぎ汁を排出しない,洗う前に汚れを古布で拭き取る,適量の洗剤を使用する取り組みが効果大であった。
    合わせて,西洋料理,中国料理モデル献立において検証実験を行ったところ,献立に関わらず,水使用量および水質汚濁負荷削減効果が確認できた。
  • 田中 智子, 坂本 須美子, 岩月 聡史, 茶山 健二
    2011 年44 巻6 号 p. 375-380
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    セレンは必須微量元素の1つで健康増進作用や疾病予防作用,とりわけガンの発生や転移を抑制することで,注目を集めている元素である。食品中のセレン含有量を水素化物発生原子吸光法を用い測定した。測定条件は,NIST SRM-1568 aの米粉を用い認証値 380±40 ppbに対し,382±17 ppbで妥当性を確認した。
    41種類の豆腐中セレン含有量を測定した結果,国産と中国産大豆を用いた豆腐中セレン含有量は低く,カナダ・アメリカ産大豆を用いた豆腐は高かった。きな粉を測定した結果も,大豆の原産国がアメリカのセレン含有量は高く,国産大豆のきな粉は低くかった。
  • 大谷 貴美子, 新見 愛, 冨田 圭子, 松井 元子, 饗庭 照美, 松村 正希
    2011 年44 巻6 号 p. 381-390
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     ユニットケア型特別養護老人ホームにおけるユニット内調理の効果について,入居者の食行動,栄養状態,精神面に焦点を当て,セントラルキッチンにより食事が提供されていたときと比較し検討を行った。調査対象者は,39名で,その内訳は,男性3名,女性36名,平均年齢は84.4±4.4であった。個々の入居者の変化に関するアンケートは,ユニット内調理が導入される以前より働いている介護職員8名,調理員5名を対象に個別面談方式で実施した。また管理栄養士によるケース記録についても分析を行った。入居者のQOLは高齢者多元観察尺度(MOSE)を一部改編して分析を行った。ユニット内にキッチンを設置することは,日常の食事の準備に入居者が参加することを可能にし,入居者同士,また調理員との会話を増加させた。このことは,入居者の食行動,栄養状態,言葉によるコミュニケーション能力および入居者の意志表示において改善をもたらした。居住ユニット内で入居者同士また調理員とともに調理に参加するという行動は,入居者に良い効果を与え,結果,入居者のQOLを向上させるうえでより良いサービスの提供に繋がった。
  • 永嶋 久美子, 小川 睦美, 島田 淳子
    2011 年44 巻6 号 p. 391-399
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    凍みもちは鎌倉時代に端を発し,特に東北地方を中心に日常食として広く食されてきた伝統的保存食品である。
    伝統的凍みもちの製造における,凍結・乾燥工程中の内部温度は温度履歴より,凍結・融解を繰り返しながら最大氷結晶生成帯で長時間保持されており,極めて狭い温度帯に限定されていることを明らかにした。乾燥後は水分含量,重量,体積,密度の減少が見られた。乾燥後の伝統的凍みもちの内部組織構造を観察したところ,大小さまざまな空隙が生じ,切りもちとは異なる多孔質構造を有していた。水浸漬後では,密度の変化は見られなかったものの,吸水率は非常に高く,内部組織構造が影響を及ぼしていることが明らかになった。さらに,食味特性においては,伝統的凍みもちは焼成後の軟らかさを維持し,軟らかく,崩れやすいもちであり,切りもちとは明らかに異なる食感を有し,この特徴を長時間保持し得ることが明らかになった。
ノート
資料
  • 杉山 寿美, 水尾 和雅, 野村 知未, 原田 良子
    2011 年44 巻6 号 p. 411-416
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,長時間の湿式加熱におけるコラーゲンの構造変化(酸可溶性コラーゲン(ASC),ペプシン可溶化コラーゲン(PSC),不溶性コラーゲン(ISC)量の変化)とそれに伴う脂質量の変動,さらに植物プロテアーゼの影響について明らかとすることを目的とし,豚角煮を試料として実験を行った。
    蒸し加熱後には,ISCは認められず,ASCは有意に増加,PSCは有意に減少した。その後の煮る過程でのPSCの減少は有意ではなかった。生姜搾汁あるいはキウイフルーツ果汁を添加した場合,蒸し加熱後ではコントロールと同程度であったが,続く煮る過程ではPSCは減少し,キウイフルーツ果汁を添加した場合にコントロールよりも有意な減少を示した。この煮る過程におけるPSCの減少は,蒸し加熱前および蒸し加熱初期に植物プロテアーゼがコラーゲンのテロペプタイド部位および熱変性部位に作用した結果であると推察された。いずれの条件でも調理後の脂肪およびコレステロールは減少した。キウイフルーツ果汁を添加した場合は,コントロールよりも有意な脂肪量およびコレステロール量の減少が認められた。
    これらのことから,豚塊肉の調理では,加熱によりコラーゲン繊維は脆弱化するものの,脂肪の多くは保持されること,キウイフルーツ果汁を添加した場合にコラーゲン繊維が脆弱化し,脂肪およびコレステロールの溶出が増加することが示された。
  • 江口 智美, 山崎 理加, 吉村 美紀
    2011 年44 巻6 号 p. 417-426
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    キャッサバデンプン配合麺の調製時にむらし操作を導入した場合の省エネルギー効果と嗜好性の変化を明らかにすることを目的に,物性変化と官能特性,消費電力量を測定した。試料として,キャッサバデンプンを6%配合したキャッサバデンプン配合麺と,小麦粉麺を用いた。
    ゆで時間を10分間から3分間に短縮し,むらし調理を導入することで,消費電力量を32%削減でき,嗜好性が低下することもなかった。特に,キャッサバデンプン配合麺を3分間ゆでた後6分間むらしたものが,もちもち感と麺の真ん中の噛みごたえのよさから最も好まれる傾向にあった。ただし,小麦粉麺との比較から,嗜好性への影響は,キャッサバデンプンの配合よりも,むらし時間の差の方が大きいことが分かった。物性としては,キャッサバデンプン配合麺はむらし時間が長くなるほどやわらかくなるのに対し,小麦粉麺はむらし時間が長くなっても途中から硬さは変わらなくなることが分かった。以上より,キャッサバデンプン配合麺は,むらし調理による省エネルギー効果が期待でき,むらし時間が食感に影響する麺であることが示された。
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