日本調理科学会誌
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44 巻, 1 号
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総説
報文
  • 森髙 初惠, 佐川 敦子, 船見 孝博, 窪田 健二
    2011 年44 巻1 号 p. 7-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    0.3%塩化ナトリウム(NaCl)添加および無添加の0.8%ナトリウム型ジェランガムのゲル形成に及ぼす降温速度の変化の影響について,貯蔵弾性率を測定して検討した。
    降温速度は貯蔵弾性率が増加し始める温度で変化させた。
    0.3% NaCl添加0.8%ナトリウム型ジェランガムの貯蔵弾性率は,速い降温速度から緩慢な速度に変化させる測定よりも緩慢な降温速度から速い速度に変化させる測定において,より大きくなった。また,降温速度を変化させる前あるいは後の温度帯で降温速度を遅くすると,貯蔵弾性率の値は大きくなった。さらに,緩慢な降温速度から速い速度に変化させる測定において,降温速度を変化させ始める温度を低くすると貯蔵弾性率は大きくなった。
    これらの結果は,貯蔵弾性率の増加前の温度帯での降温速度がゲルの三次元網目構造の形成に著しく大きな影響を持つことを示している。
  • 露久保 美夏, 石井 克枝
    2011 年44 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    サツマイモ飯やサツマイモ粥の調理において,サツマイモに含まれるβ-アミラーゼが米に及ぼす影響を調べるため,サツマイモ粗酵素液を用いて飯と粥を調理し,糖量測定,官能評価を行った。
    粗酵素液を用いて調理した飯と粥では,対照(水炊飯)に比して還元糖量およびマルトース量が顕著に多かったことから,粗酵素液中のβ-アミラーゼが米デンプンに作用し,マルトースにまで分解していることが明らかとなった。また,飯と粥の生成糖量について比較したところ,炊飯液の種類に関わらず,粥の還元糖量およびマルトース量が飯よりも多かった。これには,飯と粥の加熱温度履歴や米に対する加水量の違い等が,酵素活性や米デンプンの酵素作用の受けやすさに影響していることなどが考えられた。また,米デンプンの分解は米粒表層部に加えて内層部でも起きていることが示唆された。官能評価の結果から,粗酵素液炊飯を行った飯と粥は水炊飯と比較して有意に甘味が強いと評価された。
  • 肥後 温子, 和田 淑子
    2011 年44 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    生地の配合割合を変えてガスオーブン(G)加熱法とマイクロ波(Mw)併用加熱法で焼成菓子を作成し,湿度・温度が破断物性に及ぼす影響を調べたところ,生地の水分量が多く糊化度が高い試料ほど破断測定値が大きくなり,脆性破断を示す領域が広くなった。また,糊化度が高い試料やマイクロ波併用焼成試料では延性破断に移行する直前に硬化ピークが認められ,40°Cでピーク値が最大となる現象が認められた。油脂量の多い試料や高温の測定条件では破断測定値が小さくなったが,硬化倍率(Mw+G/G)が高くなることも解った。以上はマイクロ波加熱によって硬化領域が拡大していることを示す結果であり,またマイクロ波加熱による糊化促進効果を示唆する結果といえる。
  • 加賀谷 みえ子, 木村 友子, 内藤 通孝, 菅原 龍幸
    2011 年44 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    機能性を有する黒大豆とその煮汁を有効利用するために,4種類の強飯(試料S:基本,試料A:pH3,試料B:pH5,試料C:pH7)および試料W(無添加強飯)を作成し,炊飯過程における化学的・物理的性状を比較し,好適な調理条件を検討した。
    テクスチャーは,黒大豆の試料A(pH3)は試料S(基本)と比べて有意に硬くなり(p<0.05),強飯は試料C(pH7)が有意に軟化した。強飯の総ポリフェノール量とラジカル捕捉活性は,試料S,A,B,C,は試料Wに比べて有意に高く,2項目間で高い相関(r=0.93)を示した。一般生菌数はSに比べて試料A,Bともに抑制された。炊飯過程における好適な調理条件は,試料B(pH5)の弱酸性の強飯が良好で,試料S(基本)と比較して色が薄くなり,若干酸味を感じたが美味しさの評価では有意差はなく,保存性も優れていた。
  • 柘植 光代, 大越 ひろ
    2011 年44 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    マイクロバブル(MB)起泡の特徴を明らかにするために,豆乳試料を起泡して得た泡沫の起泡力,排液率,動的粘弾性の測定と検鏡観察を行い,バーミックス(ba)起泡と比較検討を行った。
    MB泡沫は起泡力が高く,排液率が低く,安定性が高いことが示された。特に低粘性率の豆乳試料で起泡時間を延長すると,この効果が大きかった。
    MB泡沫は高い貯蔵弾性率G′を示して泡沫の起泡力と安定性に寄与し,また損失正接tanδが低いことからMB泡沫の固体的挙動性が確認された。起泡直後の気泡径はMB泡沫がba泡沫より大きく,気泡径のばらつきは小さかった。経時変化においても,MB泡沫は気泡径のばらつきが小さく,気泡径拡大の比率も低かった。MB泡沫の気泡径拡大速度定数は排液率と関連がありba泡沫より低かったので,気泡径拡大速度が遅いこともMB泡沫の安定性の要因の一つと考えられる。
  • 亀谷 宏美, 鵜飼 光子
    2011 年44 巻1 号 p. 49-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    殺菌処理の異なる香辛料をESR計測した。殺菌処理は過熱蒸気殺菌およびガンマ線照射処理である。香辛料のESRスペクトルは鋭い1本線で構成された。g値は約2.00であったことから有機フリーラジカル由来と考えた。1本線の信号強度は,測定時のマイクロ波強度が増すに従って増加し飽和した。いずれの香辛料でも照射試料のESR信号強度が最も大きかった。緩和時間(T1,T2)を算出した。過熱試料と照射試料の緩和時間はほぼ同じであった。脂質を多く含む香辛料の解析には脱脂処理が必要と考えた。香辛料では,過熱処理と照射処理により生成されるラジカル成分が同じであると結論した。
  • 高澤 奈々世, 粟津原 理恵, 大川 祐輔, 原田 和樹, 長尾 慶子
    2011 年44 巻1 号 p. 55-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    ソバは酸化防止効果などの生理作用をもつルチンを多く含むことから,健康食品としての期待が高い。本研究ではソバ食品加工時におけるソバルチンと小麦グルテンの相互作用がソバ蒸しパンに及ぼす影響を解明し,その結果から物理的特性が良好で機能性の高いソバ食品の膨化調理条件を考察した。
    普通およびダッタンソバ粉に活性グルテンを0~10 wt%混合したバッターを調製し,これを15分間蒸した各種ソバ蒸しパンの物性を測定した。蒸しパンのテクスチャー特性のうち,かたさの項目でダッタンソバ試料の値が高くなり,凝集性では値が低くなった。また,蒸しパンの応力-ひずみ曲線の微分解析よりダッタンソバ試料は噛み込んだ時に硬く脆い食感となる傾向を示した。さらに体積の測定を行い,すだちを観察した結果,ダッタンソバ試料は膨化体積が小さく,すだちは不均一できめが粗かった。またソバの機能性の1つとして抗酸化能についても比較し,グルテン添加により各種ソバ蒸しパンの抗酸化能が向上することが明らかとなった。
ノート
  • 杉山 寿美, 三宅 彩矢, 多田 美香, 水尾 和雅, 都留 理恵子
    2011 年44 巻1 号 p. 64-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    加熱過程および保存過程における煮汁に含まれるコラーゲン,グリセリド,塩化ナトリウムの大根への浸透と大根の硬さについて検討した。
    その結果,加熱過程では大根の重量が減少すること,グリセリドおよびコラーゲンは大根内部へほとんど浸透しない一方,塩化ナトリウムは速やかに浸透することが示された。グリセリド,コラーゲン,塩化ナトリウムのいずれも大根表面部と内部の量は有意に異なっていた。また,加熱温度が高く,加熱時間が長い場合は内部よりも表面部が硬いことも示された。
    保存過程では,温蔵,冷蔵保存のいずれでも大根の重量が増加すること,大根表面部と内部の塩化ナトリウム量の濃度差が認められなくなる一方,グリセリドおよびコラーゲン量には差が認められること,大根表面にはコラーゲンが温蔵保存で浸透し,グリセリドが冷蔵保存で表面に付着することが推察された。これらのことから,保存過程が煮物のおいしさに影響することが推察された。
  • 日本調理科学会加熱調理研究委員会 余熱研究グループ
    2011 年44 巻1 号 p. 72-78
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル フリー
    「大量調理衛生管理マニュアル」には,肉類を加熱する場合,75°Cに達してから1分以上の加熱することとなっている。しかし,焼き物などの場合,過加熱で調理成績が低下することがあることから,余熱を利用することの可能性について検討した。オーブン加熱について直径50 mm,厚さ15 mmの円筒形の豚肉試料を用いて実験を行った。庫内温度を270°C以上に設定した場合には,70°Cに達してから1分間加熱すると,余熱により75°C以上を1分以上保持できることが明らかとなった。これらの肉は,75°Cに達してから1分間加熱した試料より,重量減少は有意に小さく,破断応力も小さく,軟らかいことが明らかとなった。肉類をオーブンで加熱する場合75°C 1分を保持するには,設定温度と肉の大きさによっては,余熱を利用することが有効であることが明らかとなった。
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