江戸期の料理本33冊から酢料理を抽出し,江戸期の酢の使われ方について調査した。江戸時代を通して酢の総出現数は1,371回であり,醤油の出現数をやや上回っていた。江戸時代前期では,酢の出現数は醤油の1.5倍であったことから,酢は醤油が広まる以前は最も多く使われる調味料であったことが推察された。出現回数が最も多かった酢料理は魚のなますで,全酢料理の43.9%を占めていた。合わせ酢の種類が多く,香辛料,食材,または調味料との合わせ酢が122種類確認され,そのうち61種類は香辛料や食材と合わせた酢味噌であった。酢を用いた加熱調理法として最も多く出現していたのが「すいり」であり,主に煮物で行われていた。これには酢を加えてから煮る場合と,煮た後に酢を加える2種類の方法があった。その他の加熱調理法として,少量の酢を加えて加熱する方法や生魚に熱い酢をかける方法も見られた。現代の日本料理ではほとんど行われない,酢の加熱調理への使用は,江戸期では一般的なものであったと考えられた。
本研究では砥石を楕円振動させて包丁を研ぐ方法を提案し,刃先を摩耗させた包丁を用いて研ぎ実験を行った。本提案方法は,砥石が刃先から離れず,また刃先のすべての箇所で研ぎ終わりが峰から刃先の方向になるので,包丁研ぎの基本を満たすものである。比較のため,直線振動させて研ぎ直す方法による研ぎ実験も行った。各振動方法による研ぎ実験後,包丁の切れ味測定を行い切れ味の改善効果を比較した。その結果,両振動研ぎ方法とも包丁の切れ味改善効果が見られ,特に楕円振動研ぎの方が高い改善効果が見られた。また,切れ味を完全に落とした包丁を用いて楕円振動研ぎ実験を行った。その結果,包丁の切れ味が新品と同等の切れ味に改善された。以上のことから提案した楕円振動研ぎ方法は有効であることが示された。
ジャック・ピュイゼの味覚教育の理念を取り入れた給食指導プログラムを開発し,小学校3年生に実践し,その効果をみることを目的とした。児童が五感を一つずつ使い,感じたことを言葉にする感覚のワークシートを作った。児童が言葉をイメージできるようにマンダラートで児童に練習をさせた。そして,給食の感想を自由記述する「味わいカード」に児童は自分の自由意志で給食の感想を6ヶ月続けて書いた。
児童の記述には初めは「おいしい」という言葉だけであったが,児童の記述は色や形,食感,音,においなどの言葉が増えた。初めは児童の給食の残菜率は大きかったが,だんだん少なくなり6ヶ月後にはほとんどなくなった。味覚教育を行ったことで,食べものをよく観察し,感じ,進んで食べものに向き合い,残菜率が減少し,完食率が上昇するなど児童の食行動が変化した。