日本調理科学会誌
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56 巻, 6 号
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総説
報文
  • 池田 昌代, 秋山 聡子, 鈴野 弘子
    原稿種別: 報文
    2023 年 56 巻 6 号 p. 246-255
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル 認証あり

     ヒトツブ小麦粉を用いて食パンを調製し,その性状と嗜好性を検討した。対照は,普通小麦粉,スペルト小麦粉とした。ヒトツブ小麦粉を用いた焼成パンは赤褐色で,普通小麦粉,スペルト小麦粉と比較し膨化性が低く,老化速度はゆるやかであった。分析型官能評価では,普通小麦パンと比較して,硬く,小麦の香りが強いと評価された。嗜好型官能評価では,内相の色,小麦の香り,パンの硬さ,しっとり感において,普通小麦パンと同様に好ましいと評価されたが,外皮の色,弾力性,総合評価では有意に低かった。ヒトツブ小麦を用いた食パンの嗜好性を向上させるためには,物性の改善が必要であるが,栄養的な付加価値を有するパンとして期待ができるものと考える。

ノート
  • 駒込 乃莉子, 小泉 昌子, 峯木 眞知子
    原稿種別: ノート
    2023 年 56 巻 6 号 p. 256-262
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル 認証あり

     日本人の嗜好に合うエスプーマ米粥を調製するため,クリームを使用せず米ゲルを使用し,メレンゲ粉末の添加量を変化させて米粥を調製した。その品質と嗜好性を検討した。その結果,以下のことが結論付けられた。

     1)メレンゲ粉末は、米ゲルのエスプーマ食を調製するために効果的であった。2)密度は,0.35 g/cm3であった。3)泡からの離水量はいずれの試料も調製後60分間認められず安定していた。4)テクスチャー特性はメレンゲ粉末添加量の増加で,かたさと付着性が増加した。調製直後試料は,えん下困難者用食品の許可基準Ⅲに該当した。5)組織構造はメレンゲ粉末添加量の増加により,泡の形状は小さく丸くなり,安定性は高いと推察した。6)分析型官能評価ではメレンゲ粉末3%と6%添加試料は,「米の香り」,「米の味」の強さは,どちらでもないと判定された。嗜好型官能評価でも,メレンゲ粉末3%と6%添加試料の好みはどちらでもないと評価された。

  • 大橋 かすみ, 山田 夏代, 高木 明奈, 山澤 正勝
    原稿種別: ノート
    2023 年 56 巻 6 号 p. 263-269
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,大量調理施設における卵調理加工食品の緑変化によって引き起こされる品質低下抑制のため,還元糖類添加による効果について調査した。

     還元糖類添加により卵調理加工食品の硫化水素生成抑制を達成できたが,緑変化抑制と同時にメイラード反応による褐変が認められた。硫化水素生成抑制効果と褐変について,還元糖間での比較を行った結果,五炭糖>六炭糖>二糖類の順であった。還元糖を添加した場合,五炭糖は硫化水素の生成を完全に抑制できたが,著しい褐変が生じ,品質上問題であった。六炭糖では硫化水素の生成を対照の半分程度に抑制でき,六炭糖間では褐変の程度が低いことからフルクトースよりグルコースの方が適していると考えられた。

     またグルコースの添加濃度は,緑変化の抑制の程度,硫化水素の生成量,褐変の程度から判断すると,全卵溶液に対し,0.2 Mが最適であった。

資料
  • 山下 晋平, 髙木 祐花
    原稿種別: 資料
    2023 年 56 巻 6 号 p. 270-278
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル 認証あり

     本研究では山口県の鯨食文化の伝承を目的とした絵本を開発した。保育士に評価してもらうことで絵本の有用性を検討した。絵本の題材にした「南蛮煮」の保育士の認知度は12.5%と低かった。絵本の項目別評価では「南蛮煮のレシピ」が4.5点と最も高い評価が得られた一方で,「文字の配置」「物語の流れ」「絵と内容の一致性」の項目では3.8点であった。また,読み聞かせ対象年齢については年中が46.4%と最も高く,次いで,年少の30.4%であったことから,郷土料理を題材とした絵本の作成は,早い年齢から郷土料理を知る機会を増やすことができる方法と推察された。実際に読み聞かせた後,「面白かった」と答えた幼児が91.9%であった。読み聞かせ時の幼児の反応で,「くじらってたべられるの?」「食べてみたーい!!」といった記述が見られた。

  • ―家庭でも可能な定量化の試み―
    森下 萌々子, 中嶋 悟
    原稿種別: 資料
    2023 年 56 巻 6 号 p. 279-283
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル 認証あり

     モッツアレラチーズスライス試料がとろけるまでの時間を,オーブン内110-180℃での加熱において測定した。この時間を1次反応の半減期とみなして,1次反応速度定数kに換算し,その自然対数ln kを絶対温度の逆数に対してアーレニウス・プロットすると,直線的関係が得られた。その近似直線の傾きから活性化エネルギーEaは14.9(kJ/mol),切片から頻度因子Aは0.314(/s)と得られた。チーズのとろける過程は,脂質の融解とタンパク質の構造変化などの複合的な現象であるにも関わらず,このような単純な結果が得られた事から,チーズのとろける過程を支配しているのは,水素結合を中心とした分子間相互作用の温度依存性だと考えられる。モッツアレラチーズのとろけるまでの時間スケールの定量的な目安が得られ,調理過程において有用であると期待される。

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