日本調理科学会誌
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44 巻, 2 号
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平成22年度日本調理科学会学会賞受賞記念論文
平成22年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
報文
  • 菊田 千景, 村田 智美, 八畠 愛, 岩城 啓子, 川西(朝岡) 正子, 杉本 温美
    2011 年44 巻2 号 p. 114-121
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    原料となるジャガイモデンプンと3種類の分級デンプンを用いて衛生ボーロを焼成し,ジャガイモデンプンの粒径が衛生ボーロの性状に及ぼす影響を検討した。
    官能評価の評点法における総合評価ならびに順位法の評価は,原料デンプン>大粒子デンプン>小粒子デンプン>微粒子デンプンの順となった。原料デンプンが最も好まれたのは,デンプンが糊化しやすくて糊化度が高いために衛生ボーロの清涼感や口溶けが良くなったためで,これは原料デンプンの75%を占める大粒子デンプンの影響が強いと考えられる。さらに残りの25%を占める小粒子デンプンおよび微粒子デンプンの存在が,衛生ボーロの構造を不均一にし,破断時の壊れやすさや食感の軽さ,口ざわりのよさをもたらしたと考えられる。
  • 山田 潤, 徳永 智子, 梨本 亜希, 稲森 美奈子, 松田 秀喜
    2011 年44 巻2 号 p. 122-127
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,鰹だし添加による乳酸に対する酸味抑制,酢酸に対する酸臭抑制効果について検討を行った。乳酸・酢酸各サンプルに鰹だしを添加し,官能評価を行い,酸味は味覚センサーで,酸臭はGC-MSを用いて評価した。
    また酸味抑制効果に対してだしが持つ緩衝作用の影響を考察するため,酸解離定数pKaを測定,算出した。
    その結果,酸味は官能評価から,鰹だしの添加量に伴って抑制されることが確認でき,味覚センサーの結果もこれを支持した。酸臭についても,酸味と同様,官能評価結果から鰹だしの添加濃度に順じて抑制されることが確認でき,GC-MSの結果もこれを支持した。pKa値と酸味の官能評価結果の間には,相関は認められなかったが,味覚センサー結果とは相関性があることを確認した。実際の調理品でも検証を行い,鰹だしの添加による酸臭抑制効果を確認した。
    以上のことから,鰹だしには酸味・酸臭の抑制効果があり,これは緩衝作用も要因のひとつであることが推測された。
  • 小松 あき子, 原田 和樹, 遠藤 伸之, 永塚 規衣, 長尾 慶子
    2011 年44 巻2 号 p. 128-136
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    本学調理科学研究室で調製した“塩漬”“味噌漬”“すんき漬”と市販漬物数種の品質ならびに機能性を検討した。漬物の品質は色差測定,pH測定,塩分濃度測定ならびに破断強度測定により評価し,機能性には抗酸化力の指標として「化学発光法」,「ORAC法」および「HORAC法」により評価した。
    その結果,各野菜漬物の重量,色差および破断歪率は経時的に変化し, pHは塩漬ではpH4~6,味噌漬ではpH5.2付近を示した。また,塩漬野菜の漬け液,“味噌漬”“すんき漬”は高い抗酸化力を示し,特に発酵漬物である“すんき漬”は高いペルオキシラジカルおよびヒドロキシルラジカル消去活性を有していることが明らかとなった。市販漬物においても発酵漬物である“すぐき漬”や“高菜漬”は高い抗酸化力を示した。
  • 桒田 寛子, 寺本 あい, 治部 祐里, 田淵 真愉美, 渕上 倫子
    2011 年44 巻2 号 p. 137-144
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    玄米をおいしく炊く条件を探る目的で,玄米を七分つき米,精白米に搗精し,テクスチャーと組織構造を比較した。玄米の20°C,30°Cでの吸水速度は搗精した米と比べ遅かった。しかし,60°Cに2時間浸漬すると,七分つき米,精白米と同じ吸水率となった。炊飯後の玄米飯の水分含量は搗精した米飯と比べ少なく,サイズは小さかった。クライオ走査電子顕微鏡観察すると,米の搗精度が高くなるに従って,果皮,種皮,糊粉層が除かれていた。米を水に浸漬すると,玄米より搗精米のほうが,デンプン貯蔵細胞中のアミロプラストがより大きく膨らんでいた。米の搗精度が高くなるほど,小孔(水の痕跡)が増加した。これはデンプンの糊化が十分であったことを示唆している。玄米の官能評価は搗精米より悪かった。
  • 木村 留美, 杉山 寿美, 石永 正隆
    2011 年44 巻2 号 p. 145-152
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    日本の伝統的な食べ方である「口中調味」の実施が,白飯とおかずを組み合わせた時の白飯やおかずのおいしさへの関与を明らかにすることを目的とした。
    口中調味を実施している者は74.8%,実施していない者は25.2%であった。夕食におけるご飯類の摂取頻度,おかずの品数と量に実施群と非実施群で差は認められなかったが,白飯の量は実施群が多かった。
    和風,洋風,中国風料理のいずれでもおかずの嗜好性と白飯と組み合わせた時のおいしさは関係しなかったが,「おいしく食べるために白飯が必要なおかず」と「白飯をおいしく感じるおかず」の間には正の相関が認められた。実施群が非実施群よりも「白飯をおいしく感じるおかず」としたおかずの多くは,油やバターを用いた,あるいは,脂を含んだおかずであった。さらに,魚の塩焼き,煮魚,刺身のように和食献立の主菜となる魚料理や,肉じゃが,きんぴらごぼうのように白飯と組み合わせることが多いと考えられるおかずでも「白飯をおいしく感じるおかず」とした者の割合に差が認められた。
  • 赤石(喜多) 記子, 五月女 まりえ, 小林 愛美, 山下 美恵, 長尾 慶子
    2011 年44 巻2 号 p. 153-162
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    スペルト小麦粉にレーズン,麹,ヨーグルトより得た発酵液を添加したドウ及びパンを作り,物性面,機能面,嗜好面から検討した。
    ・麹発酵液添加ドウは[ストレート法]よりも[中種法]で調製した方が,グルテンの伸展性が低下し,パンの膨化性が悪く,破断エネルギーが高値を示した。
    ・ヨーグルト発酵液添加ドウは[ストレート法]よりも[中種法]で調製した方がパンの比容積は上昇し,破断エネルギーは低値を示した。
    ・走査型電子顕微鏡観察よりパン内部の気泡状態は物性に影響を及ぼすことが明らかとなった。
    ・ドライイーストパンよりもこれら発酵液添加パンの抗酸化性は高く,官能評価でもレーズン,ヨーグルト発酵液添加パンの嗜好性は高かったことより,パンに食品素材由来の発酵液を添加することの有用性が認められた。
ノート
  • 綾部 園子, 阿部 芳子, 市川 朝子, 下村 道子
    2011 年44 巻2 号 p. 163-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    4種類の麺試料,『水麺』(小麦粉と塩水),『かん水麺』(小麦粉とかん水),『卵麺』(小麦粉と卵水)と『卵かん水麺』(小麦粉,卵水とかん水)の糊化特性を,β-アミラーゼ-プルラナーゼ法(BAP法)と全反射型赤外線吸収スベクトル分析法(FT-IR/ATR法)で測定した。FT-IRスベクトルの1,025 cm-1付近のピークの高さは,糊化小麦粉の比率が増すにつれて顕著に増加した。この波数の吸収度は,澱粉の糊化によって水和したOH基の増加を反映する。FT-IR法とBAP法の糊化度の間に高い相関関係があったが,BAP法による値はFT-IR法によりもわずかに高い値であった。これは,残留タンパク質の量と測定方法の違いによると考えられた。1日保存後では,FT-IR法とBAP法,破断応力,破断エネルギーと有意な相関関係があった。これは,麺の水分が内部に移行して,硬さが均一化していることが影響すると考えられた。
  • 大迫 早苗, 永島 伸浩, 石田 裕, 岡田 早苗
    2011 年44 巻2 号 p. 169-173
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    キヌア澱粉と対照としてコメおよびトウモロコシ澱粉を用いて,低濃度における澱粉糊の流動特性および静的粘弾性を検討した。3種の2,3,4%の澱粉糊の流動特性を20,30,40,50°Cで測定したところ,キヌア澱粉糊は濃度および温度依存性が他の澱粉糊より低かった。5°Cで測定した各10%澱粉ゲルのクリープ曲線は,すべて瞬間変形部をフック弾性体,遅延変形部は1組のフォークト粘弾性および定常変形部はニュートン粘性体の4要素型模型に対応させて解析したところ,キヌアは,遅延時間が短く,定常粘性率も比較的低いのが特徴であった。破断特性値では,キヌアが破断応力,破断エネルギーおよび初期弾性率が最も低かった。
資料
  • 露久保 美夏, 石井 克枝
    2011 年44 巻2 号 p. 174-179
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    サツマイモは昔から主食代替として,単品あるいは米と混炊してサツマイモ飯(以下,イモ飯)やサツマイモ粥(以下,イモ粥)として食されてきた。本研究ではイモ飯とイモ粥を食文化的視点から捉え,大正,昭和,平成の各年代における摂取状況を調査し,各年代や各地域の摂取状況の変容や特徴等について検討した。その結果,大正7年頃はイモ飯,イモ粥共に西日本での摂取が多く,昭和10年頃になると,イモ飯の摂取地域が大正期よりも北上して広がった一方,イモ粥の摂取地域は変わらず西日本に多いままであった。平成13年頃では,イモ飯が全国的に摂取されるようになったが,イモ粥は変わらず西日本での摂取に偏っていることがわかった。これらの理由として,イモ飯は,サツマイモの普及と利用の広まりと共にその摂取も広範囲に渡るようになったことが考えられた。その一方で,イモ粥は,粥食の習慣や人々が持つ粥に対する印象等が密接に関係していることが示唆された。
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