日本調理科学会誌
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52 巻, 4 号
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総説
報文
  • 平島 円, 高橋 亮, 西成 勝好
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 2019/08/05
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

     15 wt%のコーンスターチゲル(澱粉乾燥重量で13.0 wt%)の力学特性に及ぼすショ糖添加効果について,DSC測定およびゲルの一軸圧縮測定により検討した。0~50 wt%のショ糖を,コーンスターチ分散液の加熱前または加熱中に添加した。ショ糖を澱粉に添加すると,澱粉の糊化温度は高温側へ移行し,糊化エンタルピーが高くなり,糊化は起こりにくくなった。しかし,ショ糖添加コーンスターチゲルは,コントロールと比べて破断するために大きな力を要し,また,大きな力をかけても壊れずに変形し,しなやかだった。この効果はショ糖を澱粉の加熱前に添加したほうが顕著だった。

     また,ショ糖を添加したコーンスターチゲルを保存すると,コントロールと比べて力学特性の保存に伴う変化量および変化速度が大きかった。しかし,20 wt%を超えるショ糖を加熱前に添加した場合には,保存に伴う力学特性の変化量が小さく,老化の進行度合がゆるやかだった。また,ショ糖を澱粉の加熱中に添加したほうが,保存に伴う変化量および変化速度は小さかった。

  • 郡山 貴子, 飯島 久美子, 香西 みどり
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 4 号 p. 240-248
    発行日: 2019/08/05
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

     ムクナ豆の硬さ,L-DOPA含量,および組織変化に及ぼす貯蔵の影響について検討した。ムクナ豆は貯蔵の影響を受けやすく,高温高湿(30℃/75% RH),常温(20℃/60% RH)および低温低湿(4℃/35% RH)において硬化した。最も変化が小さかったのは冷蔵保存(4℃/80% RH)した豆であった。L-DOPA含有量は高温高湿で貯蔵してもほとんと変化はみられなかったが,煮豆にすることで生豆に対して約1/3に減少した。ムクナ豆の硬化の機構はAISの分析によりペクチンと二価のカチオンによる架橋形成が関与するよりもペクチン以外の細胞壁構成成分と金属イオンとの相互作用が関与している可能性が大きいことがわかった。また,DSCやSEMの結果より,でんぷん周囲のタンパク質の変性により加熱中のでんぷんの膨潤糊化が妨げられることも要因の一つであることも示唆された。

ノート
  • 秋山 聡子, 池田 昌代, 鈴野 弘子
    原稿種別: ノート
    2019 年 52 巻 4 号 p. 249-257
    発行日: 2019/08/05
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

     我が国では,便秘や低栄養の症状をもつ高齢者が増加しており,食物繊維やたんぱく質を豊富に含むおからを摂取することで,それらの症状を緩和することが期待できる。本研究では,高齢者向けの食物繊維を豊富に含むたんぱく質食品の開発を図ることを目的として,おから粉末を0,5,8,10%(w/w)添加した魚肉ねり製品(つみれ)を調製し,品質評価を行った。栄養素量の算出と色相の測定から,おから粉末添加の増加に伴い,食物繊維量,b*値の増加が認められた。テクスチャー特性値は,おから8%とおから10%が介護食品の物性規格に該当した。色相とテクスチャー特性値から,おから粉末の添加割合は8%が妥当であること判断した。衛生試験から,安全が確保されていることを確認後,官能評価を行った。分析型では,テクスチャー特性値と同様,おから8%はおから0%に比べ,やわらかく,べたつきが強い結果となった。嗜好型では,おから8%の物性は好まれないと評価されたが,今回の官能評価のパネルは若年者であった。これらより,本研究で調製したおから粉末を8%添加したつみれは,高齢者が食物繊維を摂取できる食品である可能性が高いことが示唆された。

資料
  • 畦 五月
    原稿種別: 資料
    2019 年 52 巻 4 号 p. 258-269
    発行日: 2019/08/05
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

     古来より殊の外珍重されているマダイ(Pagrus major)の岡山県での近世以降の食習慣に着目した。タイと名がつく種類は多く,200種類を超えるといわれるが,体長が大きいマダイが特に貴重で格上とされた。岡山県の中世の記録にタイの記述がみられ,地元守護への上納品,神饌,交易品として重要な産品であった。

     岡山県の江戸時代の記録である『御後園諸事留帳』においてもタイは再々登場し,上層階級の饗宴や日常の食で,あるいはもてなしで,浜焼に調理され使用されていた。また,熨斗とともに正月などの祝儀に大きさを指定した生タイが献上されていた。このタイを重要視する食習慣は昭和中期まで正月,田植え,婚礼時などの行事でタイが膳に載り継承されてきた。現在もその食習慣は,正月や,儀礼食(お七夜,百日,長寿)において伝承されているが,変容しつつある現状である。

  • 山下 晋平
    原稿種別: 資料
    2019 年 52 巻 4 号 p. 270-275
    発行日: 2019/08/05
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

     乳幼児期などの早い段階からの郷土料理に触れる必要性があるといわれていることから,本研究では山口県の郷土料理を題材とした絵本教材を開発した。開発した絵本教材は,幼稚園教諭に評価・実施してもらうことで有用性を検討した。絵本教材は,題材の郷土料理を知らない幼稚園教諭からも読み聞かせてみたいという回答が多く得られ,対象年齢も年中及び年長と評価されたことから,就学前から郷土料理等の食文化について教育できる可能性が示唆された。また読み聞かせ時に,幼児から「おいしそう!」「すごい!」等の反応が得られたことから,郷土料理を題材にした絵本の開発は,幼児が郷土料理について見て学ぶ機会が増えるだけでなく,食事や料理に対して興味を持つことができると考えられた。

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