関東地震の死者・行方不明者数は資料によって異なり, 総数14 万余名と言われることもあるがその根拠はよくわかっていない。また一般に, 人的被害の大半は東京市や横浜市などの大規模火災によるものとの認識がある。関東地震による住家被害については被害資料の再評価に基づく統一的なデータベースが作成されており, それによれば住家の全潰は歴代の地震災害の中でも最高位の数にのぼる。従って住家倒潰も火災と同様に関東地震における人的被害の大きな要因であったと考えた方が合理的であろう。本稿では住家被害数の再評価と同様に被害資料の相互比較によって死者数を整理した。用いた資料は震災予防調査会報告にある松澤のデータや内務省社会局が刊行した大正震災志に載せられたデータなどである。これらのデータを相互に比較し, 市区町村単位の死者数を評価した。次に住家の全潰率や焼失率と死者発生率の関係を検討し, 死者数を住家全潰, 火災, 流失・埋没などの被害要因別に分離した。その結果, 関東地震による死者・行方不明者は総数105385 名と評価された。そのうち火災による死者は91781 名と巨大であるが, 住家全潰も11086 名の死者を発生させている。また流失・埋没および工場等の被害に伴う死者もそれぞれ1 千名を超える。このように, 関東地震はあらゆる要因による人的被害が, 過去に起きた最大級の地震と同等もしくはそれ以上の規模で発生した地震であることがわかった。
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