日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
6 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 鹿嶋 俊英, 北川 良和
    2006 年 6 巻 2 号 p. 1-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    建築研究所は免震構造を採用した釧路合同庁舎を対象に, その竣工時から強震観測を実施している。2000年の観測開始以来5年間に, 2003年十勝沖地震を始めとして, 多くの貴重な強震記録を得ることができた。本論文は, 釧路合同庁舎で得られた強震記録の分析から, 免震建物の振動特性を検討している。
    十勝沖地震で得られた強震記録の分析からは, 表層地盤や免震層の非線形挙動が確認された。また, 多質点系せん断モデルを用いた非線形応答解析結果から, 合同庁舎に設置された免震装置は, 設計時に想定した免震性能を発揮したことが確認された。
    過去に得られた89地震の強震記録から推定した上部構造の振動特性からは, 最大振幅の増加に伴って固有振動数が低下する, 剛性の振幅依存性が確認された。また, 十勝沖地震の前後では固有振動数に違いが見られ, 大きな地震を経験することによる振動特性の変化が認められた。免震層を加えた2質点系のモデルを用いた剛性と減衰定数の推定結果は, 免震層の変位が2cmを超えるような大きな振幅の記録では, 理論的な等価剛性や等価減衰定数と良い対応を示した。通常, 耐震性の検討は大振幅時の挙動を対象として行われるため, 本論文で得られた結果は, 設計で想定している免震装置の挙動が妥当であることを裏付けるものである。ただし, 小振幅時の振動特性, 特に減衰については, 観測結果から大きな値が推定され, その要因について更に検討が必要である。
  • 中村 晋, 秋山 充良, 澤田 純男, 安中 正, 西岡 勉
    2006 年 6 巻 2 号 p. 17-34
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本論では, 道路橋を対象事例とし, 構造物の被災度と関連づけた損傷確率の実用的な評価手法の構築と, その適用事例について報告する.その際, 構造物の被災度に対応する損傷状態を定義し, 構造物, 地盤および地震動に関する種々の不確定性の情報収集と定量化を行った.さらに, 断層破壊過程の不確定性を考慮して算出した地震動と地震ハザードを組み合わせ, 生起確率付の地震波群として最大加速度毎に求めた参照地震動により作用地震動の評価を行った.その手法を用い, 道路橋示方書の改訂年度別に試設計されたRC橋梁の損傷状態に応じた被災度の損傷確率を算出した.一連の流れの実効性を確認し, 基準の改訂年代が新しくなるつれ, 被災度がB以上となる最大加速度毎のリスク特性が, 小さくなることを明らかにした.
  • 清田 隆, 東畑 郁生, Khalid Farooq, Obaid Hassan Qureshi
    2006 年 6 巻 2 号 p. 35-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    2005 年10月8日現地時間8: 28 にパキスタン・イスラム共和国 (以下パキスタン) 北部の山岳地でM7.6 の地震が発生した。東京大学土質地盤研究室と東京大学生産技術研究所古関研究室では、パキスタンのUniversity of Engineering and Technology, Lahoreと共に、甚大な被害をもたらした今回の地震の調査を実施するため、10 月25日~28 日、および11月19日~24 日にかけてスタッフを派遣した。主な調査地域は、イスラマバード、アボタバード、バラコット、ムザファラバードである。このうち、震源から約30 km以内に位置するバラコットおよびムザファラバード等の都市では、地震動により多くの家屋倒壊が認められ、一部地盤変位に伴う倒壊も認められた。また周辺山岳地では多くの地すべりが発生し、最大約15, 000, 000m3規模の巨大地すべりも確認された。2006年1月時点において犠牲者は7万5千人を超えている。本報告は、この地震による主な被害形態とその要因をまとめたものである。
feedback
Top