建築研究所は免震構造を採用した釧路合同庁舎を対象に, その竣工時から強震観測を実施している。2000年の観測開始以来5年間に, 2003年十勝沖地震を始めとして, 多くの貴重な強震記録を得ることができた。本論文は, 釧路合同庁舎で得られた強震記録の分析から, 免震建物の振動特性を検討している。
十勝沖地震で得られた強震記録の分析からは, 表層地盤や免震層の非線形挙動が確認された。また, 多質点系せん断モデルを用いた非線形応答解析結果から, 合同庁舎に設置された免震装置は, 設計時に想定した免震性能を発揮したことが確認された。
過去に得られた89地震の強震記録から推定した上部構造の振動特性からは, 最大振幅の増加に伴って固有振動数が低下する, 剛性の振幅依存性が確認された。また, 十勝沖地震の前後では固有振動数に違いが見られ, 大きな地震を経験することによる振動特性の変化が認められた。免震層を加えた2質点系のモデルを用いた剛性と減衰定数の推定結果は, 免震層の変位が2cmを超えるような大きな振幅の記録では, 理論的な等価剛性や等価減衰定数と良い対応を示した。通常, 耐震性の検討は大振幅時の挙動を対象として行われるため, 本論文で得られた結果は, 設計で想定している免震装置の挙動が妥当であることを裏付けるものである。ただし, 小振幅時の振動特性, 特に減衰については, 観測結果から大きな値が推定され, その要因について更に検討が必要である。
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