本研究では地震動の距離減衰特性を検討する新しい手法を提案する.この方法では,検討領域において観測地震動を相対サイトファクターで除して求められる基盤地震動を詳しく観察する.その際に用いる相対サイトファクターは地震基盤の基準観測点に対するサイトファクターの倍率として,検討領域におけるすべての隣接観測点ペアについて2地点間の相対サイトファクターを同時に満足するように回帰分析で求める.この方法を太平洋プレートの沈み込み領域で発生した4つのプレート境界地震による東北~関東地方のK-NET, KiK-netの観測記録に適用した.この方法で得られた基盤地震動の距離減衰分布はいずれの地震でも観測地震動に比べてばらつきが小さい分布となった.また,基盤地震動と観測地震動についてそれぞれlog(震源距離)の多項式を用いた回帰分析を行い,得られた距離減衰モデルを比較して両者のばらつきの差が相対サイトファクターのばらつきに対応することを確認した.したがって,この方法で得られた基盤地震動のばらつきはサイト特性以外の震源特性か伝播経路特性あるいはその両方の要因によって解釈されなければならない.
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