日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
20 巻 , 7 号
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論文
  • 道下 友哉, 宮坂 博信, 山岸 邦彰
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_1-7_18
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    本論では,試設計された基礎梁を有しない小規模建築物 (NFGB) に対して,上載質量と表層地盤のせん断波速度をパラメータとした地震応答解析を行い,基礎梁を有する建築物(FGB)との比較においてこれらのパラメータに対するNFGBの最大応答値の変化を把握した.せん断波速度は,杭と地盤の相互作用バネの剛性に関係するだけではなく,地震動の地盤増幅特性にも関係する.これらの関係がNFGBの応答に及ぼす影響を把握するため,表層地盤を剛と仮定して,表層地盤による増幅を除去した解析を行い,表層地盤の増幅率がNFGBに及ぼす影響を定量的に把握した.最後に,躯体と自由地盤,相互作用バネの非線形性がNFGBの応答低減に及ぼす影響を明らかにした.

  • ―石油精製施設を対象として―
    静間 俊郎, 高田 一, 松本 俊明, 中村 孝明
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_19-7_34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    石油精製施設の地震時緊急停止基準の評価では,停止の基準となる地震動,いわゆるトリガーレベルの評価のみならず,施設被害をより説明できる地震動指標は何か,広大な敷地のどの位置に地震計を設置すべきか,の2つの課題がある.本論は施設に来襲するであろう様々なタイプの地震波を設定し,回帰式を介して地震動指標と構造物の応答の関係を捉え,適切な地震動指標および地震計の最適な設置位置を評価する方法を提案する.提案手法の適用性の検討として,石油精製施設を仮想し,地震計で観測する地震動指標および地震計の設置位置を検討するとともに,緊急停止をする場合としない場合の損失額を比較することで施設の緊急停止基準を評価した.

  • 福永 健二, 清野 純史, 馬淵 亮太朗, 篠原 聖二, 井藤 貴文
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_35-7_45
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    強震時に高速道路上で車両衝突が発生する可能性を想定し,衝突実験をもとに車両対車両・車両対壁面の衝突モデルを作成して,車両が衝突・追突によりどのような挙動を示すのかについての解析を行った.その結果,対壁面衝突に関しては,高速走行時に想定される衝突角度において速度を保ったまま跳ね返り,他車線に進入する可能性があることが分かった.すなわち,構造物と衝突した後に他車に衝突するなど,多重衝突を誘発する危険性があることが確認された.また,地震動の影響とドライバの予測を考慮したハンドル操作モデルを作成し,地震時にハンドル操作が受ける影響について検討した.解析の結果,直進を保持するようにハンドル操作を行ったとしても進行直角方向に変位が生じることが分かった.

  • 久田 嘉章
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_46-7_68
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    小地震から大地震の波形合成を行う経験的・統計的グリーン関数法を用いて広帯域強震動計算を行う際,目標とする理論的なω-2モデルと比較すると,一般に大地震の震源スペクトルの振幅は中間周波数帯で大きな落ち込みが生じる場合がある.本論文は小地震として理論的なω-2モデルを用いる統計的グリーン関数法を用いて,振幅スペクトルの落ち込みを4つの要因に分類し,その原因と改善法を理論的に考察した.4つの要因は,(a) F関数(小地震から大地震の要素地震のmoment rate関数への変換関数)による中間周波数帯での振幅の落ち込み,(b) 低周波数と高周波数で異なる位相スペクトルを用いた波形を重ねることによる接続周波数帯での振幅の落ち込み,(c) 大地震の断層分割数(相似比Nの2乗個)の増大によりω-2モデルからω-3モデルに漸近することによる中間周波数帯での振幅の落ち込み,および,(d) 大地震の断層面上の要素地震を重ね合わせる際,低周波数でのNの2乗倍から,高周波数でのN倍の振幅に移行する遷移周波数帯での落ち込み,である.(a)と(c)は従来から知られている「中間周波数帯」での振幅の落ち込みであるのに対し,(b)と(c)は異なる視点から振幅の落ち込みを考察しており,本論文ではそれぞれ「接続周波数帯」と「遷移周波数帯」と呼ぶ.各要因の振幅落ち込みの原因と改善法に関して,まず(a)に関しては指数関数型のF関数を用いること,次に(b)に関しては振幅スペクトルの補正を行うこと,がそれぞれ有効であることを確認した.一方,(c)に関しては,既存の研究から相似比Nの増大により破壊伝播が滑らかになることで振幅が低減することが知られているが,振幅の落ち込みはNが小さくても発生し,それが要素地震の破壊開始時間間隔に相当する卓越周波数よりも低周波数で必ず落ち込みが生じることを示した.最後に,その原因として(d)では,低周波数での要素地震のコヒーレントな重ね合わせから,高周波数でのランダムな重ね合わせに至る遷移周波数帯で振幅がNの2乗倍からN倍に落ち込むことを理論的に明らかにし,振幅の落ち込みは要素地震の破壊開始時間の関数項に起因することを示した.最後に,振幅落ち込みの実用的な改善法として,理論的なω-2モデルによる振幅補正を行う手法を提案し,統計的グリーン関数法による強震動計算から,補正を行わない場合は中間周波数帯の振幅を著しく過小評価することを明らかにした.

  • 佐藤 智美
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_69-7_85
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    佐藤(2020)では,大振幅強震記録の中には,上下成分の加速度波形を積分した速度波形が負の方向にステップ状になる,あるいは,負の方向に直線状のトレンドが載った後ほぼ一定となる値であるVnonが生じる記録があり,ダイレイタンシーの影響の可能性を指摘している.本研究では,多数の強震記録に基づき,Vnonが生じる場合,水平成分の速度波形は直線状の傾きをもっていることを示し,この傾きから地盤の傾斜の大きさと方向を推定した.傾斜の方向は震源近傍ではRadialに近く,傾斜角は断層モデルに基づき計算される地殻変動より格段に大きかった.また,Vnonが大きい記録には,過剰間隙水圧の上昇が指摘されている記録も複数あり,沈下に影響していると考えられる.したがって,表層地盤の非線形性に起因する傾斜を伴う沈下の影響が強震記録に含まれていると考えられる.

  • 石井 透
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_86-7_100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    大地震の震源近傍で最大級の強震動が連発することの効果は従来の耐震設計・諸検討で殆ど考慮されていない.本報では,2004年中越地震と余震群および2016年熊本地震の一連の地震活動による強震動観測記録を分析し,断層近傍では最大級の応答振幅をもたらす地震動に少なくとも二回は見舞われ得ること,余震活動が活発な場合には長周期構造物よりも短周期構造物の方が大きな応答振幅となる頻度(回数)が相対的に多いことを明らかにした.更に,序列化応答スペクトル比を活用し,設計・諸検討で最大級の地震動に対してどの程度の割合の地震動をどの程度の回数だけ設定すれば良いのかのモデルの提案を試みた.

  • 杉山 充樹, 吉岡 優樹, 平井 敬, 福和 伸夫
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_101-7_119
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    1995年の兵庫県南部地震以降,我が国の震度観測体制は飛躍的に整備された.本論では,日本の震度観測の開始から現在に至るまでの変遷をまとめた.気象庁地震カタログの震度データの分析により,震度観測点密度が高くなると,より震源に近い位置での強震観測記録が増え,観測最大震度が増大することを定量的に示した.また,全国を震度観測点を基準にボロノイ分割した領域ごとに,表層地盤増幅度や人口分布を考察することで,同程度の規模の地震でも,観測点密度が高く,軟弱な地盤が広がる人口集積地帯の直下で発生すると観測最大震度が大きくなることを示した.さらに,観測最大震度の年代差・地域差を定量的に示し,気象庁,K-NET,自治体それぞれの震度観測点配置の特徴を明らかにした.

  • -フィリピン海プレートの形状を考慮したブロックインバージョン解析-
    友澤 裕介, 加藤 研一, 塩田 哲生
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_120-7_132
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    伊予灘周辺のフィリピン海プレート内部で発生する地震は,距離減衰特性が一様でないことが指摘されている.要因の一つに大陸側のプレートとフィリピン海プレートの減衰性の違いや水平方向の減衰構造の不均質性が考えられる.本検討では,友澤ら (2019) の手法を深さ方向の不均質減衰構造を推定するように拡張したブロックインバージョン解析に基づき,観測記録から震源特性・不均質伝播経路特性・サイト増幅特性を分離した.その結果,フィリピン海プレートでは,四国地方の南西部とその他の領域に分離され,フィリピン海プレートの上面深度が深い領域でhigh-Qとなった.また,2001年芸予地震の短周期レベルは3.12×1019 N m/s2と推定された.さらに,プレートごとの水平方向の不均質性を考慮することで,残差の空間分布の偏りを改善できることを示した.

報告
  • ―東北~関東地方におけるM7クラスのプレート境界地震への適用―
    池浦 友則
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_133-7_157
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    本研究では地震動の距離減衰特性を検討する新しい手法を提案する.この方法では,検討領域において観測地震動を相対サイトファクターで除して求められる基盤地震動を詳しく観察する.その際に用いる相対サイトファクターは地震基盤の基準観測点に対するサイトファクターの倍率として,検討領域におけるすべての隣接観測点ペアについて2地点間の相対サイトファクターを同時に満足するように回帰分析で求める.この方法を太平洋プレートの沈み込み領域で発生した4つのプレート境界地震による東北~関東地方のK-NET, KiK-netの観測記録に適用した.この方法で得られた基盤地震動の距離減衰分布はいずれの地震でも観測地震動に比べてばらつきが小さい分布となった.また,基盤地震動と観測地震動についてそれぞれlog(震源距離)の多項式を用いた回帰分析を行い,得られた距離減衰モデルを比較して両者のばらつきの差が相対サイトファクターのばらつきに対応することを確認した.したがって,この方法で得られた基盤地震動のばらつきはサイト特性以外の震源特性か伝播経路特性あるいはその両方の要因によって解釈されなければならない.

  • 久保 智弘, 鈴木 亘, 大井 昌弘, 高橋 成実, 浅尾 一巳, 吉岡 薫
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_158-7_176
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    東日本大震災以降,津波防災において災害時の対応・対策の重要性がさらに増している.津波災害は低頻度災害であることから,事前の訓練は,重要な意味を持つ.そのため,住民を対象とした津波避難訓練や都道府県単位での図上訓練などが行われ,災害時における対応力の向上が継続的に実施されている.しかし,市町村の津波避難訓練では,防災担当者は訓練の準備や調整などの業務が中心となり,実働訓練を行う機会は少ない.また,実動訓練に比べて容易に実施できる図上訓練の重要性についても認識されているが,実際にはあまり行われていない.その理由として過去の津波災害対応の記録が少なくシナリオを作成する際に必要となる知識や情報が少ないことと,都道府県が実施しているような図上訓練を市町村がそのまま実施するのは規模や費用の面で難しいことが挙げられる.そこで本報では,千葉県をフィールドに市町の防災担当者が津波災害を対象とした図上訓練を行うため,ワークショップによる課題の把握を行い,シナリオ作りの要点と実施方法をまとめ,市町の防災担当者を対象として図上訓練を行った.さらに,鴨川市の災害対策本部訓練において図上訓練のシナリオを適用した.その後,実施方法や実施規模などの検討を行うとともに,図上訓練を通じて得られた新たな課題を把握した.

  • 内藤 昌平, 友澤 弘充, 森 悠史, 門馬 直一, 中村 洋光, 藤原 広行
    2020 年 20 巻 7 号 p. 7_177-7_216
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル 認証あり

    地震発生直後に被害状況を把握することにより災害対応を迅速化することを目的として,複数の地震における航空写真を用いて深層学習により木造建物の被災程度を自動判別するモデルを開発した.まず,兵庫県南部地震,東北地方太平洋沖地震,熊本地震前震・本震,北海道胆振東部地震の各地震直後に撮影された,撮影条件の異なる6種類の垂直航空写真を用いて,目視判読により建物の被災度を4段階に分類したデータを作成した.続いて,このデータを現地調査結果と比較した結果,被災度を3段階に設定した場合において各被災度の平均再現率が約74 %の精度を持つことを確認した.次に,各航空写真から建物1棟分の大きさに相当するパッチ画像を自動抽出し,目視判読に基づく被災度を付与した大規模な教師データを作成した.これらの教師データを用いて,畳み込みニューラルネットワークを適用することにより,従来よりも大量のデータを効率的に学習可能な建物被害判別モデルを構築した.さらに,このモデルによる判別結果を航空写真と重ね合わせ可能な画像として出力し,被害集中領域や3段階の被災度それぞれにおける被害棟数の推定が可能なプログラムを開発した.テストデータを用いて判別精度を検証した結果,従来モデルよりも高い判別性能を示したほか,学習データの選別や,撮影条件が異なるデータを同時に学習することによって判別性能が向上することを確認した.また,学習データとテストデータの組み合わせを空間領域で変化させた場合の被害判別精度を検証した結果,被災度3区分における平均再現率が約77%であり,教師データの空間分布は判別精度に影響しないことを確認した.さらに,6種類のテスト航空写真を用いて建物単位の被害判別をおこなった結果,被災度3区分における全体の平均再現率は約70%となり,地震動や建物構造の違いによる影響はあるものの,国内の木造建物については一定の汎化性能をもつことを確認した.

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