日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
15 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 能島 暢呂
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_1-1_17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    線形1自由度系の速度応答包絡線を用いて、所定の固有周期において速度閾値を超過する継続時間をスペクトル表現した「閾値超過継続時間スペクトル」を提案した。内陸型地震と海溝型地震の数値計算例を通じて、振幅特性・周期特性と関連付けられた継続時間の有効性を示した。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震における広域的評価を行い、閾値超過継続時間マップを作成した。また提案手法の拡張として、周期依存型の閾値設定により様々な事象の継続時間測定に応用できることを示した。閾値として避難行動限界曲線を採用した適用例を挙げ、行動難度継続時間のスペクトル表現と、その広域評価によるマップ表現の試算例を示した。
  • ―三陸沖アウターライズ地震における検討―
    高井 伸雄, 前田 宜浩, 重藤 迪子, 笹谷 努
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_18-1_37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本論文は、三陸沖で発生するアウターライズ地震による地震動特性を研究したものである。最初に、5つのアウターライズ地震(Mw 6.0-7.6)による擬似速度応答スペクトルに対して、火山フロントを境にした伝播経路特性を考慮した既往のスラブ内地震を対象とする距離減衰式による予測値と観測値との比較を行った。本研究のデータセットの距離範囲はこの距離減衰式の適用範囲外であるが、距離を外挿したこの距離減衰式はアウターライズ地震における観測値を定性的に説明している。しかし、依然として予測値と観測値は大きな残差を有しており、この残差にはサイトの地盤増幅特性、震源特性が含まれると考えられる。これは、用いた距離減衰式に限らず、一般的な既往の距離減衰式が、複数の地域で発生した多くの地震からの複数サイトの記録を用いた回帰分析によって作成されているためである。そこで、本研究では、三陸沖の特定の震源域を対象とした単一サイトにおける地震動予測式(SS-GMPE: Single-Site Ground Motion Prediction Equations)を提案した。ここで提案した三陸沖アウターライズ地震に対するSS-GMPEは、サイトごとに擬似速度応答スペクトルを予測するもので、Mwと震源距離をパラメターとした回帰分析によって構築した。構築した予測式には、伝播経路特性、サイト特性、震源特性が適切に取り込まれており、回帰に含まれない地震を対象とした検証の結果、残差の大幅な低減が確認できた。
  • その2 分離した特性に対する詳細分析
    仲野 健一, 川瀬 博, 松島 信一
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_38-1_59
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    スペクトルインバージョン手法に基づき加速度フーリエスペクトルから分離抽出された強震動特性の性質について詳細な検討を行った。伝播経路特性としてのQモデルについて既往の研究と比較し、減衰傾向の新たな知見が得られた。また、サイト増幅特性の方位依存性について検討したが、約2Hz以上の高周波域でNS/EW比が2倍 (あるいは0.5倍) 程度になる観測サイトがあることがわかった。分離した震源スペクトルからコーナー周波数fcを読み取り、Brune (1970)の応力降下量および短周期レベルAを計算した結果、川瀬・松尾 (2004)の先行研究との間に顕著な差はないこと、本震と余震の応力降下量には地震モーメント依存性がみられること、壇・他 (2001)の地殻内地震の短周期レベルとは回帰式にもばらつきに対するt検定にも有意な差があること、佐藤 (2003)の短周期レベルとは地殻内地震のばらつきに対するt検定を除いて有意な違いがないことがわかった。
  • ― 疑似点震源モデルの適用 ―
    若井 淳, 野津 厚
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_60-1_80
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本検討では、2011年東北地方太平洋沖地震の強震動を対象とした震源モデルの一つである疑似点震源モデルに基づいて、関東平野の強震観測地点における強震動シミュレーションを行い、フーリエスペクトル等の再現性を検証した。その結果、伝播経路における幾何減衰およびQ値の折れ曲がりを考慮しない場合は、多くの地点で合成フーリエスペクトルが過小評価となった。一方、遠方になり表面波が卓越するほど幾何減衰は1/rから1/√𝑟に近づくはずであること、Q値は低周波側で下限値を有すると考えられることを考慮し、幾何減衰とQ値の折れ曲がりを考慮した場合は、合成フーリエスペクトルの過小評価が改善され、観測フーリエスペクトルが良好に再現された。
  • 地元 孝輔, 佐口 浩一郎, 山中 浩明
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_81-1_100
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    立川断層および名栗断層から構成される立川断層帯の周辺地域において、表層地盤による地盤増幅特性を評価するために、多くの微動探査を実施し、レイリー波位相速度の逆解析によってS波速度構造を推定した。立川断層の北部にあたる東京都青梅市から埼玉県入間市や東京都西多摩郡瑞穂町では、断層の存在によると考えられる表層地盤のS波速度構造の空間的変化がみられた。この表層地盤の変化は地質学的特徴とも調和的である。また、立川断層北部のみならず断層帯周辺の表層S波速度構造の空間的変化は大きく、そのため強震動評価における地盤増幅特性も大きく変化することを示した。地下30mまでの平均S波速度(AVS 30)は全体的に北西部で大きく、南東側ほど小さくなる傾向がみられた。それによって、地盤増幅率は南東側で大きく、卓越周波数は北西側で高くなった。これらの結果と微地形区分による地盤増幅特性を比較すると、本研究で得たAVS30は微地形による推定値よりも大きく、地盤増幅率は小さかった。このことは、立川断層帯周辺におけるものであり、そのため表層地盤を考慮した広域の強震動評価を実施するにあたっては、対象とする地域において直接推定されたS波速度を調べたうえで詳細なモデル化を行うことが重要である。
  • 東北地方太平洋沖地震の被災地情報支援を事例として
    田口 仁, 李 泰榮, 臼田 裕一郎, 長坂 俊成
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_101-1_115
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    地理情報システム(GIS)は災害対応の際に有効なツールであるが、災害対応者自らがGIS を活用するために備えるべき要件について検討した研究はこれまで無かった。そこで本研究では、災害対応者が自らGISを利用して効果的に災害対応を行うために、1)地理情報の共有および流通のための標準インタフェース(Web Map Service)を有すること、2)Web-GIS を用いることの2つを満たすGISを提案した。2011年東北地方太平洋沖地震において、災害ボランティアセンターおよび地方自治体に対して、提案した要件を満たしたGIS(eコミマップ)による被災地支援を行った事例を示し、提案した2つの要件の有効性を確認した。
  • 佐藤 智美
    2015 年 15 巻 1 号 p. 1_116-1_135
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    首都圏で観測された相模トラフ沿いのフィリピン海プレートのスラブ内地震(Mw4.0~5.2) の強震記録を用いて、直達S波のみならず表面波と散乱波を経験的に考慮した統計的グリーン関数を作成した。後続部のフーリエ振幅は、S波部のフーリエ振幅に対する比の回帰式で表現されている。経時特性はS波部ではS波の散乱理論、後続部では実体波とRayleigh波を考慮した散乱理論を考慮してモデル化されている。作成した統計的グリーン関数は、直達S 波のみを考慮した従来の統計的グリーン関数より、観測波をよく再現することができた。
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