地震動に対する自動車の応答特性を把握し,震度推定への利用の可否について検討することを目的として,自動車の振動実験を行った.また,車上で計測された応答加速度から地上の計測震度を推定する方法についても検討を行った.その結果,地動に対する自動車の応答特性は2~3 Hzの固有振動数を持つ2次振動要素として近似できること,応答加速度から地上の計測震度を±0.5以内の範囲で推定可能であることが明らかになった.
2018年北海道胆振東部地震(M6.7)においてKiK-net追分(IBUH01)で震度7,K-NET追分(HKD127)で震度6強の非常に大きな震度が観測された.両地点で観測された大加速度記録に関して,定圧繰返し一面せん断試験,微視的研究,および弾塑性論に基づく考察を加えた.この結果,両観測地点では表層地盤のダイレイタンシーによる下向き上下動加速度(体積膨張)が発生し,発生した上下動と水平動が強く連成することを示した.
適切な地盤反力係数の設定されたWinklerばねモデルの解に,地盤反力に比例しない変位成分を付け加えると,地盤を弾性連続体と捉えその内部に杭が埋め込まれた力学モデルにおける解に一定条件下で整合する.本論文では,この条件を定式化するとともに,このような変位成分の導入が物理的にも自然であることを示す.また,この条件を満たす状況におけるこれらのモデルの整合性を数値的に確認する.
東日本大震災以降,これまで行われていた東海地震予知のような地震発生の「確定的な」予測は困難であるとの国の方針転換が行われ,東海地震情報の提供が中止された.その代わりに「不確実な」地震予測である「南海トラフ地震情報」が導入された.本論では,南海トラフ地震情報においては,災害予測情報を運用する上での根本的な「考え方の転換」が行われていることを,国の文書等を用いてつまびらかにする.それは「予測精度は低いが,防災対応の開始のトリガーとなる地震学的情報は出すこと」,しかし「防災対応の解除のトリガーとなる地震学的情報は出さないこと」を趣旨とするものである.こうした「考え方の転換」に照らして,現在進められている南海トラフ地震情報を用いた防災対応において不十分な点を整理するとともに,今後,取り組むべき課題について提示する.
日本地震工学会論文集 第20巻 第6号(Vol. 20,No. 6)掲載の「波の伝播を考慮した形状関数を用いた消波境界」(pp. 6_15-6_24)において,計算結果の誤り,ならびに,それに関連する図面および文章に誤りがあったとの申し出が著者からありました.図3および図5(a), (b)と本文の修正部分に関して,正誤表に示すとおり修正いたします.