日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
7 巻, 2 号
特集号「震度計と強震計データの利活用」
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 藤原 広行, 功刀 卓, 安達 繁樹, 青井 真, 森川 信之
    2007 年 7 巻 2 号 p. 2-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    1995年兵庫県南部地震以後, 日本における地震観測網, 特に, 強震観測網は大きく変化し, 世界でも希な高精度・高密度強震観測網が構築されることとなった.K-NETは, その代表的なものの1つである.兵庫県南部地震からほぼ10年が経過し, 地震直後に整備された観測網の機器の更新が必要となってきている.この10年間における, データ通信, 計算機関連技術の発展は目覚ましく, 様々な新しい技術が利用可能になってきた.防災科学技術研究所では, 強震記録をオフラインで利用する従来のスタイルの強震動研究だけでなく, 地震直後の即時対応にも利用可能な強震動データリアルタイムシステムの構築を目指し, 新型K-NET システムを開発し, 新型K-NET 強震計の整備を実施した.
  • 神山 眞, 長内 優也, 松川 忠司
    2007 年 7 巻 2 号 p. 17-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    震度計の設置環境における計測震度の差異を地盤と建物内での変動に注目して、アレー観測記録を用いて定量的に考察したものである 。ここでは、過去15 年にわたり観測が実施されている東北工業大学6 号館の地震記録を用いて統計的な観点から自由地盤と建物1 階、4 階の計測震度の変動が分析される 。さらに、同じ設置条件による常時微動アレー観測を実施して地震動と常時微動における周波数特性の特徴などが比較される。計測震度の変動が回帰式として導かれるとともに、スペクトル解析によるスペクトル比が算定されて、計測震度変動の原因が周波数特性における観点から分析される。アレー観測によれば、建物1階では自由地盤に比較して、計測震度が統計的に約0.2 小さくなる。
  • 飛田 潤, 福和 伸夫, 小島 宏章, 浜田 栄太
    2007 年 7 巻 2 号 p. 37-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    地盤・建物系の詳細な振動観測を通じて明らかにすべき構造物の動的特性を整理し、150 以上の建物における常時微動、振動実験、強震観測の結果に基づいて、地盤と建物の動的相互作用特性などに影響を及ぼす要因を限られた観測を適切に組み合わせて系統的に明らかにする観測方法を提示する。これを本論では戦略的強震観測と呼ぶ。また、観測の計画・実施・分析・データ整理などに当たって必要となる諸点について検討を加え、特に中低層建物を対象として、建設中の建物の特性変化に着目した動的相互作用の検討や、地震計の設置条件による計測震度への影響などについて示している。また、観測に用いる機材やデータ公開に関する知見も示している。これら一連の成果により構造物の振動観測で留意すべき項目をまとめたものである。
  • 飯場 正紀, 阿部 秋男, 花井 勉, 皆川 隆之
    2007 年 7 巻 2 号 p. 57-67
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    建物の地震時挙動の解明に必要となる観測記録の蓄積を目指すために、低コスト地震計を製作し、その性能と適用性を検証した。振動台実験と地震動観測結果により、低コスト地震計の精度確認を行い、十分な精度の加速度記録が収録できることを明らかにした。さらに低コスト地震計を戸建て住宅に設置し、約3年間で得られた地震動観測結果を整理し、低コスト地震計の稼働性・有効性について検討した。
  • 神田 克久, 武村 雅之
    2007 年 7 巻 2 号 p. 68-79
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    最近、高密度の地点で多くの地震のデータが得られるようになった計測震度をデータベース化して、短周期地震動に関する距離減衰特性や地点による揺れやすさの分析を行った。関東平野では、揺れやすさの尺度である相対震度についてマグニチュード (M) 依存性がみられ、埼玉東部などの低地ではM が大きくなると相対震度が大きくなり、千葉県南部などの丘陵地では逆の傾向が見られた。得られた震度の距離減衰特性や相対震度を用いて、1923 年大正関東地震と1703 年元禄地震の震度インバージョン解析を行い、短周期地震波発生域を求めた。大正関東地震は三浦半島を挟んで2 箇所に短周期地震波発生域があり、その重心は別に求められているアスペリティ (すべりの大きな領域) の終端部にあたる。元禄地震の短周期地震波発生域は、神奈川県から房総半島南部までは大正関東地震に類似し、加えて房総半島南東沖に広がっていることが分かった。
  • 包 那仁満都拉, 川瀬 博
    2007 年 7 巻 2 号 p. 80-95
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本論文では、まずK-NET、KiK-net、JMA 震度計観測網の強震観測データを統計的に処理し、地震タイプと地域特性を考慮した加速度波形の統計的経時特性と統計的スペクトル特性を抽出した。次に作成した統計的グリーン関数を用いて想定南海地震の強震動予測を行ったところ、過去の地震や研究結果とほぼ一致する結果が得られた。最後に非線形応答解析モデルに想定南海地震の強震動を入力して建物群の被害予測を行ったところ、想定南海地震震源域から近い所や海岸地域と川沿いの沖積地盤地域などの比較的地盤が軟らかいところでは建物種別を問わず、大破以上の被害を受ける結果になった。建物構造種別でみると低層鉄骨造建物、木造建物、中低層RC 造建物の順に被害率が小さくなることが分かった。しかし、超高層建物の被害は震源域に近いところに限られており、大阪平野など超高層建物の現存するところでは大破及び塑性変形に入る建物はなかった。
  • 西川 隼人, 宮島 昌克, 堂下 翔平, 北浦 勝
    2007 年 7 巻 2 号 p. 96-109
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本論文では石川県の震度情報ネットワークなどの記録を用いて、観測点ごとの計測震度と最大加速度の地盤増幅度を評価した。各観測点の最大加速度と計測震度の地盤増幅度を比較したところ、両者に相関が見られた。また、最大加速度の地盤増幅度が小さい地点でも地盤の卓越周期が長い場合は震度増幅度が大きい傾向にあった。続いて、震度増幅度が最大加速度増幅度と地盤の卓越周期の関数として表わされると仮定し、回帰分析によって、それぞれの震度増幅度への影響度を調べた。その結果、最大加速度増幅度が地盤の卓越周期に比べて、震度増幅度との相関が高いことが明らかになった。
  • 片岡 俊一, 山本 博昭
    2007 年 7 巻 2 号 p. 110-129
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究では、青森県東方沖の地震を対象に、KiK-net の地中観測点の記録を回帰分析し、その値に対して、震度情報ネットワーク、K-NET、KiK-net の地表観測点の地震動指標 (最大加速度、計測震度) がどの程度増幅されているかを求めた。得られた結果に対する統計的評価を行い、さらに実測値との比較、1994 年三陸はるか沖地震の際のアンケート震度との比較を行った。これらを通して、本研究で得られた増幅度の妥当性を示した。
  • 有賀 義明
    2007 年 7 巻 2 号 p. 130-143
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    動的解析の結果は, ダム, 基礎地盤, 貯水池等のモデル化の方法, 設定する動的変形特性の値, 使用する解析プログラム等によって変化する.そのため, 信頼性の高い耐震性評価を実現するためには, 地震時の実際の現象に基づいて, 動的解析法の妥当性を検証することが必要不可欠である.既設ダムにおける地震観測によって加速度レベルが大きな地震動データを得ることができれば, 観測された地震動データを活用して実ダムの実地震時挙動の再現解析を行うことが可能になり, 動的解析法の妥当性を実証することができる.著者は, これまでに, ダムの耐震性評価法の精度・信頼性の向上を図るために, ダム-ジョイント-基礎地盤-貯水池連成系の三次元動的解析法を開発し, そして, 開発した三次元動的解析法の妥当性を検証するために既設ダムの実地震時挙動の再現解析を実施して来た.本論文では, 2004 年新潟県中越地震における田子倉ダムと1995 年兵庫県南部地震における池原ダムの実地震時挙動の三次元再現解析の事例を示すとともに, 地震観測記録の有効活用の視点から三次元再現解析の有用性について記述する.
  • 山本 明夫, 笹谷 努
    2007 年 7 巻 2 号 p. 144-159
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本論文は、KiK-net 鉛直アレー観測記録から地盤の非線形応答を評価したものである。取り上げたKiK-net 観測点は北海道十勝支庁豊頃町にあるTKCH07 で、通常のKiK-net 観測点とは異なり、表層30m程度までS 波速度200m/sec 以下の軟弱な地盤が分布している。ここでは2003 年十勝沖地震 (MJ=8.0) で地表最大加速度 (EW 成分) =403.9cm/sec2が観測されたほか、弱震動も多数観測されている。本論文では、ほぼ直下に発生した22地震を用いて、地表/地中のS波スペクトル比を算出し、それを用いて地中地震計以浅の地盤のS波速度構造およびQ 値を遺伝的アルゴリズム (GA) を用いて同定した。また、その同定モデルを用いて線形地震応答解析、等価線形地震応答解析および非線形地震応答解析を行い、その結果をもとに、観測記録と良い一致を示す改良型等価線形地震応答解析手法を提案する。
  • 強震計・震度計データを利用した波形再現と室内試験による確認
    福元 俊一, 海野 寿康, 仙頭 紀明, 渦岡 良介, 風間 基樹
    2007 年 7 巻 2 号 p. 160-179
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    三陸南地震 (2003) が発生した際, 旧築館町舘下地区において谷沿いに堆積していた火山灰質砂質土が崩壊し流動性土砂となって斜面下をすべり落ちた. この時, 築館周辺において地震動が記録されていなかったことから, 不飽和火山灰質砂質土の流動化による崩落メカニズムを震度や強震記録との関連性から議論することができなかった. そこで本研究では, K-NET 築館地点の余震記録と周辺の強震記録, 震度情報をもとに地すべり地点の波形の再現を行った. また, 火山灰質土の要素試験結果と地震応答解析から求められる累積損失エネルギーの比較を行い, 有効応力減少によって土塊が流動化し, 流動性の地すべりが発生するメカニズムを概ね推定することができ, 流動化が発生する大まかな強震動のレベルを把握することができた.
  • 境 有紀
    2007 年 7 巻 2 号 p. 180-189
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    1995年兵庫県南部地震以降, 強震観測網が整備され, 数多くの震度6 弱以上の高震度を記録した地震が発生した. その結果, 強震観測点周辺の建物被災度の調査を行うことにより, 地震動の性質と建物被害の関係を検討するために必要な強震記録およびその周辺の建物被害データを蓄積していくことが可能になった. ここでは, 強震観測網が整備されて以降, 蓄積された建物被害データおよび強震記録を用いて, 地震動の破壊力, 地震動の性質と建物被害の関係の検討を行い, 更に, 弾塑性地震応答解析を行って実際に被害との対応について考察した.
  • 川瀬 博
    2007 年 7 巻 2 号 p. 190-204
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    2005年3月20日福岡市北西の沖合約30kmを震源とする福岡県西方沖地震MJ7.0 が発生した。福岡市内では震度6弱と報告された割に被害は全体に軽微であったが、市内中心部において中破レベルの被害建物が集中して発生した。そこでまず福岡市内で得られた震度計のデータを中心に福岡市内の強震観測記録を分析し、その構造物破壊能を構造物群の非線形応答解析による被害率予測モデルを用いて評価した。また町丁目別基盤深さを反映した一次元モデルと工学的基盤波から再現した強震波形を用いて被害率分布を計算した。その結果警固断層の北東側の基盤が深くなっているところで被害率も大きくなること、しかしその被害率は観測された実被害率よりもかなり大きいことがわかった。
  • 高山 丈司, 松本 俊輔, 日下部 毅明
    2007 年 7 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    国土交通省では、昭和30年代後半より、橋梁、河川堤防、ダム等の公共土木施設に強震計を設置して強震観測を実施している。ここで得られた強震記録は、道路橋示方書をはじめとした各種設計基準に反映され、土木構造物の耐震設計技術の向上や地震防災技術の向上に大きく寄与してきている。
    本報告は、開北橋観測所において実施された強震計の更新と、その後観測された2005年宮城県沖地震の際の強震記録について報告するものである。
  • 菜花 健一, 細川 直行, 山内 亜希子
    2007 年 7 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本報告は2005年7月23日に発生した千葉県北西部地震における東京ガスでの観測記録と、これらを活用した対応結果をまとめたものである。首都圏を中心に設置した約3, 800箇所の地震計の観測情報をもとに、迅速に被害推定を行い被害がほとんどないことを即時に把握した。またマイコンメーターの通報予測を行い、体制の設置、要員確保に活用した。
  • 野津 厚, 長尾 毅, 山田 雅行
    2007 年 7 巻 2 号 p. 215-234
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究は、全国のK-NET、KiK-net等の強震記録に対してスペクトルインバージョンを適用し、強震観測地点におけるサイト増幅特性を求め、また、これを利用した強震動シミュレーションを実施し、その有用性を示したものである。スペクトルインバージョンに関しては、すでに類似の研究も行われているが、本研究では、後続位相を含む波形全体から計算されるフーリエスペクトルを解析の対象とすることにより、古和田他の方法による強震動評価に適したサイト増幅特性の算定を行っている。また、基準観測点の選定に関しても新たなクライテリアを設けている。解析の結果得られた震源スペクトルから地震モーメントを計算したところ、F-net のCMT 解と良く一致する結果となった。また、算定されたサイト増幅特性を利用し、既往の内陸活断層地震および海溝型地震を対象に、古和田他の方法による強震動シミュレーションを実施した結果、適切な震源モデルさえ与えられれば、0.2-1Hz の速度波形を適切に評価できる見通しが得られた。
  • 中村 豊
    2007 年 7 巻 2 号 p. 235-248
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    地震動指標として、最大加速度、最大速度、計測震度、SI値およびリアルタイム震度 (RI値) をとりあげ、比較検討した。最大加速度は監視する上限周波数の違いにより大きく異なるので、上限周波数を明確にして議論する必要がある。上限周波数を5Hz に制限した最大加速度5HzPGA は、計測震度との関係でみれば、被害との相関性が高いとされるSI 値と大きな違いはない。計測震度やSI 値は、地震動のパワーを基に定義されたRI 値とほぼ一対一に対応し、被害との相関性の高さを裏付けている。地震後にしか算定できない計測震度や比較的長周期の応答を算定しなければならないSI 値は、リアルタイム性に乏しく、警報には不向きである。これに対して、RIは、その最大値 (RI値) がほぼ計測震度に一致するのみならず、P 波に対して敏感に反応するのでもっとも迅速で的確な警報が実現できる。RIの被害との関連性は物理的に保証されており、今後、各方面で有効に利用されるものと期待される。
  • 工藤 一嘉, 成田 章, 本間 芳則
    2007 年 7 巻 2 号 p. 249-260
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    強震データベースの作成は, 多方面にわたり要請度の高い課題の一つである. 本報告は防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センターに実現した実大三次元震動破壊実験施設での利用を念頭においた加震のための強震データベースの設計概念と登載作業中を含めた試作の内容を記した. データベースの設計では, データ検索の容易さの実現を基本理念とした.
feedback
Top