日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
10 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 藤本 一雄, 翠川 三郎
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_1-2_11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    地震動強さ指標(PGA, PGV, PGA×PGV)から計測震度をより精度良く推定することを目的として、1995 年兵庫県南部地震以降に震度5 強以上を観測した国内の20 地震での記録を用いて、地震動強さ指標と計測震度の関係に対するマグニチュードの影響について検討した。さらに、高震度域での地震動強さ指標と計測震度の関係に対する回帰式として、1 次式と2 次式のどちらの適合度が高いかについて、AIC(赤池情報量規準)に基づいて検討した。これらの結果を踏まえて、各種の地震動強さ指標とマグニチュードを用いて計測震度を推定する関係式を提案した。
  • 翠川 三郎, 三浦 弘之
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_12-2_21
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    高層建築物の耐震設計の際、動的解析用地震動として広く用いられている1968年十勝沖地震の八戸港湾での強震記録を再数値化し、データ処理を行って、234秒間の数値化記録を得た。得られたデータについて検討し、1) 既存の数値化データのスペクトルと比較すると、周期5秒程度以下ではほぼ一致するものの、それ以上の周期では異なる場合があること、2)加速度の継続時間は1分強であるが、速度や変位の継続時間はそれより長いこと、3) 周期1秒付近と2.5秒付近のスペクトルのピーク周期帯に着目すると、記録開始から30~40秒の時間帯は実体S波、それ以降の40~60秒の時間帯は盆地生成表面波による可能性があること、を指摘した。
  • 能島 暢呂, 藤原 広行, 森川 信之, 石川 裕, 奥村 俊彦, 宮腰 淳一
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_22-2_40
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    地震調査研究推進本部により全国地震動予測地図が公表されている。地震ハザード情報の理解と活用を促進するには、地震リスク情報への変換が重要となる。本研究は、防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J-SHIS)による公開データに基づいて、全国の内陸地殻内地震(主要活断層帯154断層およびその他の活断層179断層に発生する固有地震)による地震リスクを簡易的に比較評価したものである。まず、距離減衰式に基づく地震動予測(簡易法)における予測式のばらつきを考慮した震度曝露人口の推計方法を提案し、各断層帯に適用して網羅的に震度曝露人口の推計結果を得た。計333断層の震度曝露人口と地震発生確率との関係を「P-PEX関係」として表し、これに基づいて地震リスクカーブを求めた。さらに、切迫度と影響度の重視度合いを連続的に考慮可能な一般化リスク指標を定義し、任意のリスク認知的傾向に対するリスクランキングを構成した。
  • 栗田 哲史, 高橋 聡, 安中 正
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_41-2_56
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、各種機関の地震観測網によって観測された記録を用いて、関東地方における揺れやすさの空間的分布特性について検討したものである。揺れやすさの空間的分布特性は、観測記録と経験的に得られる平均的な地震動強さとの差異として抽出した。ここで、地震動強さとしてはPGA、PGV、計測震度の3種類を対象としている。72地震の観測記録を用いて統計的処理により検討した結果、PGVと計測震度の空間的分布特性については、表層地盤の増幅特性の影響を強く反映していることが分かった。また、いずれの地震動強さ指標の空間的分布特性にも、表層地盤の増幅特性だけでなく、震源特性や伝播経路特性などが影響していることが明らかになった。
  • 小地域メッシュ統計を活用した2004 年新潟県中越地震時の交通分析
    梶谷 義雄
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_57-2_72
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,地震災害時における複数の社会基盤が同時に被災した状況を対象に,産業部門間の交通量や道路混雑への影響を評価するための分析アプローチについて基礎的な検討を行う。特に,各種社会基盤の局所的な被害影響を評価する方法として,小さな空間スケールで整備された経済統計(小地域統計データ)の利用に着目し,必要となるデータ処理手法を含めた分析手法を検討する。具体的には,企業の生産活動を対象に,電力,水道,ガスの供給停止の影響に関する調査結果と交通工学で用いられる経路選択モデルを活用した影響評価方法を検討し,2004年新潟県中越地震の社会基盤被害状況を対象としたケーススタディを通して分析手法の適用性や今後の課題について考察する。
  • 星 幸男, 久田 嘉章, 山下 哲郎, 鱒沢 曜, 島村 賢太
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_73-2_88
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    近年首都圏に建つ超高層建築では巨大地震に対する対策の重要性が指摘されている。巨大地震に対する被害想定や被害低減案を示すには、地震時における正確な振動性状の把握が不可欠である。本論文では新宿副都心に建つ最高高さ143mの超高層建築物である工学院大学新宿校舎を対象とした観測記録および立体フレームモデル解析結果の比較検討による振動性状の評価を示す。はじめに常時微動観測および人力加振観測より得られた固有周期およびモード形を表す変位振幅図を立体フレームモデル固有値解析結果と比較を行い両者が一致する事を確認した。続いて対象建築物の強震観測システムより得られた地震観測記録と立体フレームモデル応答解析結果との比較を行い両者が良い対応を示す事を確認した。解析に用いる減衰は人力加振観測より算出した減衰および超高層建築に一般的に用いられる、初期剛性比例減衰の2種類を用い比較検討を行った。これより初期剛性比例減衰では高次モードの減衰を過大に評価している事を確認した。さらに、モーダルアナリシスを用いた最大応答値の評価や、観測記録の振幅レベルによる固有周期の変化についても考察した。
  • 盛川 仁, 大堀 道広, 飯山 かほり
    2010 年 10 巻 2 号 p. 2_89-2_106
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    微動のアレー観測記録を用いた地盤構造の推定法にはこれまで,周波数-波数スペクトル法や空間自己相関法に基づいて位相速度を推定し,これを用いて逆解析によって構造を推定する,という方法が広く利用されてきた。これらの解析法を適用するにはできる限り正三角形に近い地震計配置のもとで,微動の多地点同時観測が必要となる。実際にこのような多地点での観測は,機材をはじめとして,人員,適当な観測場所の確保等,多くのリソースが必要となり容易に実行できない場合も少なくない。ところが,空間自己相関法の理論は,条件によっては2 地点のみの観測から位相速度を推定可能であることを示唆しており,これらの問題解決に有効であると考えられる。そこで,微動が「様々な方向からまんべんなく」伝播していれば,2 地点のみの同時観測から位相速度を推定することが可能であること,およびそのときの空間自己相関係数の確率論的性質を解析的に誘導した。また,実観測記録に基づいて,理論値と統計量の比較を行い,理論値と統計量の整合性が高い場合には,位相速度が適切に推定されることを示したが,それ以外の場合にも位相速度が適切に推定される場合があり,2 点同時観測に基づく位相速度の推定が可能な条件の設定には再考を要することが示唆された。
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