本研究では,プレート間地震による津波を対象に,地震規模に係るスケーリング則及び地震発生頻度に係るGutenberg-Richter則の各モデルの不確かさを定量的に評価して確率モデルを設定するとともに,これらを取り入れた確率論的津波ハザード評価手法を提案した.さらに,不確かさ項目としてさらに津波波源の不均一すべり分布の配置パターンと津波伝播モデルを加味し,福島県沖をモデルサイトとして提案手法を適用し,解析結果に及ぼす影響を分析した.その結果,これら不確かさ項目の中では,地震規模に係るスケーリング則の不確かさの影響が最も大きく,その影響度を95%信頼度曲線と50%信頼度曲線の相対最大水位上昇量の比やJensen-Shannonダイバージェンスを用いて定量的に示すことができた.
強震動統一データベース試作版を用いて,機械学習により最大加速度と応答スペクトルの地震動評価モデルを構築した.構築したモデルにおける観測値に対する予測値の比の常用対数標準偏差は0.18~0.21で,既往の地震動予測式のばらつきよりも小さくなった.学習用データセットよりも時系列的に後に起きた地震を追加テストデータとしてモデルの汎化性を検証した結果,学習用データセットには含まれていない特徴をもつ地震において予測精度の低下が見られたが,既往の地震動予測式に基づく予測結果を特徴量に加えたモデルにより,教師データの偏りや不足を補い得る可能性を示した.
中低層鉄骨構造を対象に,エネルギーの釣合いに基づき地震後の簡易被災度判定法を提案し,その実用性の見通しを得た.前震,本震および余震を考慮した総エネルギー入力は,累積エネルギースペクトルを用いて算定した.設計用地震動を入力とした時刻歴応答解析の結果と本判定法の結果を比較した.階数,地震動の違いに大きな影響を受けず,両者は概ね整合した.熊本地震の観測波形を用いて,地震の発生順序および位相の違いによる適用性を検討した.本判定法は,地震の発生順序に従う被災度の進展を追跡できた.
南海トラフ巨大地震などに対し被害想定が行われているが,大多数は構造種別や建築年代しか考慮してされていない.一方,地震被害は接合金物の有無や偏心率が影響されることが指摘されている.そこで本研究では,時代,地域ごとに多種多様な木造住宅があることを意識した上で,工法,階数,重量,壁量,耐震要素,接合部,偏心率,水平構面といった耐震性能の因子によって木造住宅を分類し,その分類による標準的な荷重変形関係の算定例を示すとともに荷重変形関係の評価方法の提案および基礎データの提供を行う.