日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
9 巻 , 2 号
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巻頭言
論文
  • 鈴木 猛康, 天見 正和
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_1-2_16
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    重大な自然災害で災害対応活動を経験した地方自治体の職員を対象として,アンケートとヒアリングによる情報共有に焦点を絞った調査(災害対応実態調査)を実施した.この災害対応実態調査では,地方自治体職員が災害対応で実際に必要とした情報について,その項目,量,質,精度,経路,時間等を,入手や共有の可否を含めて抽出した.調査結果より,各情報項目を予め設定した分類項目で整理して共有情報データベースを作成し,このデータベースに基づいて災害時の情報の流れを情報フロー図として整理して,各情報項目のあるべき共有形態と共有による災害対応の円滑化について考察した.さらに情報フロー図を分析することによって,地方自治体を中心とした災害時情報処理のフロー図を作成した.本論文では,調査結果を情報フロー図,災害時情報処理フロー図としてまとめ,地方自治体の災害対応における情報共有の形態とそれを支援する情報共有システムについて考察している.
  • -周波数応答マグニチュード-
    山本 俊六, 堀内 茂木
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_17-2_30
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    緊急地震速報における、対象物の揺れや被害を高い精度で推定するための震源パラメータとして”周波数応答マグニチュード”の利用を提案した。このパラメータは、地震発生時に各観測点においてリアルタイムで計算されるP波の応答スペクトルと、あらかじめ定義された距離減衰式から直接求めることができる。周波数応答マグニチュードが緊急地震速報の情報として配信されれば、受信者はこのパラメータと前述の距離減衰式を使用して、主要動による対象物の応答を即時的に推定することができる。この手法によりHi-netで観測された12793波形を対象に、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0Hzの固有周波数を持つ減衰定数5%の加速度応答値の推定を行った。その結果、マグニチュードを用いた従来の手法による応答(常用対数値)の平均推定誤差に比べ、この手法による推定誤差は、全相データを用いた場合に14%~22%、P波を用いた場合に10%~18%減少することが示された。これは、周波数応答マグニチュードが、震源の持つ周波数特性を地震ごとに反映するためである。以上より緊急地震速報による精度の高い制御が求められる分野では、周波数応答マグニチュードの配信、利用が非常に有効である。
  • 久保 智弘, 久田 嘉章, 堀内 茂木, 山本 俊六
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_31-2_50
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
     本研究では、超高層ビルを対象に緊急地震速報を利用して長周期地震動を対象としたエレベータの地震時管制運転の手法について提案した.そして、東京新宿区に位置する超高層ビルをキャンパスとして利用している工学院大学新宿キャンパスを対象に提案する手法を適用して有効性の検証を行った.
     緊急地震速報を利用することを前提に、事前に長周期地震動の到達時間とマグニチュードと震源深さ、震央距離ごとの長周期地震動と建物応答を求めておき、エレベータの地震時管制運転を行う条件を整理し、緊急地震速報を受信した際に長周期地震動が到達する前に停止するためのフローを提案した.長周期地震動の到達時間に関しては、理論的方法によって求められた伝播速度を用いた.長周期地震動の大きさと建物応答については、グリーン関数法により長周期地震動を予測し、その結果から建物応答を求めた.停止条件については、既往の研究を参考に長周期地震動用の閾値を求めて、条件を整理した.
     本研究で提案する手法を超高層ビルをキャンパスとしている工学院大学に適用し、観測記録と比較を行った.その結果、到達時間については理論的方法と観測結果から求めた表面波速度がおおむね一致した.次に地震動と建物応答については、平行成層のグリーン関数法による評価は周期4秒から6秒以上においては関東平野における堆積層表面波の影響のため、過小評価となったが、周期2秒から4秒においておおむね一致した.次にエレベータの地震時管制運転への適用について、緊急地震速報から得られる震源情報が限られるため、安全側に評価できるように震源モデルに仮定条件を与えることで、エレベータを事前に停止できることを確認した.
  • 飛田 潤, 福和 伸夫, 倉田 和己
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_51-2_60
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    貴重な強震観測記録を有効に活用するために、多機関で個別に実施されている観測システムからデータを回収して一元化し、ウェブGIS とデータの分散相互運用技術を用いて地盤・建物・地域社会の多様な情報とリンクさせる一連のシステムについて述べる。またこれらを耐震設計、広域防災、地域防災・啓発、さらには理科・社会科教育などで活用する方策と、そのような利用者の力に基づく新たな強震観測・データ収集体制の構築に関しても論じる。これら一連の検討により、強震観測を実施して維持・管理する負担と、得られた強震記録を利用するメリットの双方を改善し、しかも多数の利用者がそれぞれの立場で観測とデータ利用の両面から貢献する体制を目指すことにより、限られた人手・機材・予算を生かした広域・高密度の強震観測体制が構築できることを論じる。
  • 下羅 弘樹, 松井 宏樹, 野田 五十樹
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_61-2_72
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    本稿では、災害時情報共有のために、防災に関わる情報システムを互いに有効に連携するためのアーキテクチャを提案する。提案するアーキテクチャでは、複数の情報システム間でのネットワーク構造、情報共有のためのプロトコルおよび災害情報のデータ構造の表現法を規定しており、既存システムを柔軟に接続する事ができる。
  • 寺木 彰浩, 阪田 知彦
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_73-2_87
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    本稿は減災情報を異なる主体で共有するための空間データとして「バックボーンデータ」を定義し,その整備の標準プロセスを提案するものである.減災情報は場所に関する記述が極めて多く,平時から空間データを準備する必要がある.しかし従来は体系だった検討なしに整備されることが多かった.本稿は自治体が整備主体となる場合を念頭に検討を行うものである.まず2章でバックボーンデータについて定義した.次いで3章でバックボーンデータの満たすべき要件について論じた.4章では整備の標準プロセスを検討し,活用上の留意点についてまとめた.
  • 村崎 大輔, 藁科 光徳, 小池 英之, 荒川 淳平, 上田 真史, 竹内 郁雄
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_88-2_101
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    震災等の発災時には、負傷者や建物倒壊等の様々な災害情報が発生し、これらの情報を災害対応者が効率的に収集・整理して的確な意思決定を行うことが求められる。そして、意思決定を適切な現場人員へ迅速かつ容易に、かつ正確に通達しなければならない。筆者らは最新の情報技術を活用することで効果的な情報共有と意思決定を実現すべく、災害情報の可視化と意思伝達を行うシステムに求められるユーザインタフェースのガイドラインを策定した。このガイドラインに基づいた災害情報の可視化システムのプロトタイプを開発し、その有効性を実証実験を通して確認した。
  • 鄭 炳表, 座間 信作, 滝澤 修, 遠藤 真, 柴山 明寛
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_102-2_112
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    携帯電話を用いて、地震などの災害発生直後の輻輳が発生した場合においても災害情報収集が可能な災害情報収集システムを開発した。災害情報を収集する人は、事案、位置情報、写真などの災害情報を携帯電話のメモリに蓄積することができるのが最大の特徴である。また、本システムの実用化に向けて、香川県高松市において一般住民を対象とし、操作性などの検証実験を行った結果、被験者の大部分が本システムを操作し、情報を収集できることが確認された。
  • 柴山 明寛, 久田 嘉章, 村上 正浩, 座間 信作, 遠藤 真, 滝澤 修, 野田 五十樹, 関沢 愛, 末松 孝司, 大貝 彰
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_113-2_129
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,既往の研究で開発した被害情報収集システムと被害情報収集伝達システムの2つのシステムと従来からの紙による調査方法とを詳細に見直し,調査時の効率化を図るために既往の被害情報収集支援システムの改良を行った.調査時の効率化を図る方法として,アドホック通信を利用した調査員同士の連携機能,及び調査員の安全確保を目的とした火災延焼,交通状況のシミュレーション解析システムとの連携機能の2つの開発を行った.開発したシステムの有用性を確認するために,愛知県豊橋市において開発した機能の実証実験を実施し,その有用性を確認した.
  • 久田 嘉章, 村上 正浩, 座間 信作, 遠藤 真, 柴山 明寛, 市居 嗣之, 関澤 愛, 末松 孝司, 山田 武志, 野田 五十樹, 松 ...
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_130-2_147
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
     本研究では、震災直後を想定し、地域住民と自治体との協働による速やかな被害情報の収集・共有を可能とする体制作りを行い、「まちなか発災対応型訓練」(町内に被災状況を模擬的に構築して行なう発災対応型訓練)を活用した震災対応力の向上と同時に、住民・自治体間の情報共有を可能とする防災訓練を実施した。協力頂いたのは愛知県豊橋市であり、住民・市職員による協働体制を構築するために、地域点検マップを作成する防災ワークショップと防災訓練を行なう活動を2005~2006年に実施した。地域点検マップによって地域の地震防災上の現況を把握し、実状に即した発災対応型の防災訓練を企画した。さらに防災訓練では、まず住民による「まちなか発災対応型訓練」を行い、その後で校区の避難所を拠点として地域被災マップを作成し、市の災害対策本部へ速やかに伝送した。一方、対策本部では市全域の被災像を把握し、延焼・避難・交通シミュレーション結果などから住民へ避難勧告の発令など、重要な情報を市から住民に伝達する訓練を行った。さらに自治体担当者を主とする訓練参加者にアンケート及びヒアリング調査を実施し、協働体制および訓練の有効性と今後の課題を確認した。
  • 秦 康範, 鈴木 猛康, 下羅 弘樹, 目黒 公郎, 小玉 乃理子
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_148-2_159
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    災害時の救急・救援活動や復旧活動に際して自動車の利用は不可欠であり、道路情報は最も重要な情報の一つである。しかし、大きな災害に際しては、刻々と変化する広域の道路状況をリアルタイムに把握することは容易ではなく、適切な情報が提供されているとは言い難い状況である。本稿では、プローブカー情報の減災利用に関する取り組みの一環として、2007年7月新潟県中越沖地震における「通れた道路マップ」の試験提供の取り組みについて報告するとともに、抽出された課題を提示した。さらに、プローブカーによる道路被害把握の可能性についても実データに基づき検討し、プローブカー情報の減災利用の実現に向けた課題と展望について議論した。
  • 早山 徹, 鈴木 祐二, 朴 元浩, 林 晃
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_160-2_170
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    近年地震を始め各種自然災害に関する研究が進み、とりわけ計測・観測技術や情報通信技術の進展に伴って、災害に関わる情報が比較的容易にしかも短時間の内に得られるようになってきている。しかし、それらの情報は、ごく一部の研究者や行政に関わる人達の間で活用されているだけで、一般市民がその情報を活用することはむしろ稀である。一方、防災の立場から見ると、防災力向上を行政によるインフラ整備等で完結することはきわめて難しいとされ、公助に加え、共助、自助による防災力を向上させることが、トータルの防災力向上には極めて重要と考えられるようになって来た。そのためには、防災に関わる情報を広く一般市民に提供することが重要であり、そのための様々な試みがなされている。本論文は、国の機関や地方公共団体などが持つ防災に関わる情報を極力一般住民に広く提供するためのシステムとして、様々な防災情報を収集し、それらを整理し、様々なルートを通じて配信する広域情報共有プラットフォームの概念について提案し、その具体的な実現手段として開発された「インフォマジック」について述べ、さらにそのシステムを活用した際の効果について考察したものである。
報告
  • 鈴木 猛康
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_171-2_184
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    情報の共有化を実現することにより我が国の災害対応力を向上させ、被害軽減すなわち減災を達成することを目指して、科学技術振興調整費の研究プロジェクト「危機管理対応情報共有技術による減災対策」を実施した。本研究プロジェクトは、平成16年度から平成18年度の3ヵ年に亘る13の機関による共同研究として実施したものである。災害対応の最前線である地方自治体に主眼を置き、地方自治体を中心とした防災関係機関間の情報共有を実現する枠組みとして、減災情報共有プラットフォームを開発するとともに、このプラットフォームを利活用できる各種情報システムを開発した。さらに、開発した各種情報システムを統合して減災情報共有プラットフォームのプロトタイプを構築し、これを実地方自治体へ試験適用する実証実験を実施して、研究成果の検証を行った。本論文は、上記研究プロジェクトを総括したものである。本報告では、まず減災情報共有プラットフォームを構成する情報コンテンツと情報システムの枠組みについて、具体的な研究成果を踏まえてまとめている。次に各種プラットフォーム利活用技術の開発について述べ、最後に実証実験の概要をまとめている。
  • 座間 信作, 遠藤 真, 高梨 健一, 新井場 公徳, 関沢 愛, 細川 直史, 鄭 炳表, 久田 嘉章, 村上 正浩
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_185-2_199
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    地震で被災した自治体へのヒアリング、アンケート、被害情報収集過程の分析に基づく効率的な被害情報の収集・伝達体制の空間的なフレームワーク、被害情報の共有とそれに基づく適切な応急対応のための意思決定支援、および住民の安全確保のための情報の提供に係る一つのあり方について提案した。それらの技術的な実現と愛知県豊橋市を対象とした有効性に関する実証実験を行った結果、収集における住民力,提案した情報収集・伝達に係わるフレームワーク、意思決定のための情報共有・処理、住民への防災情報のフィードバックなどの有用性が確認された。
  • 村上 正浩, 柴山 明寛, 久田 嘉章, 市居 嗣之, 座間 信作, 遠藤 真, 大貝 彰, 関澤 愛, 末松 孝司, 野田 五十樹
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_200-2_220
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
     本研究では、住民・自治体協働による防災活動を支援することを目的として、WebGISを利用した情報収集・共有システムを開発した.システムは、平常時には地域点検マップづくりや災害図上訓練に活用し、防災ワークショップを通じた住民・自治体の協働体制づくりを支援する.一方、震災直後には、輻輳にも強い非常時通信網を利用し、小学校区の避難所を拠点として住民・自治体の協働による速やかな状況把握と情報共有を支援する.システムの効果と課題を確認するため、愛知県豊橋市の住民・市職員の協力を得て、防災ワークショップと震災直後を想定した防災訓練で運用実験を行った.
  • -大学施設の防災力向上を目指すための基礎資料-
    酒句 教明, 田嶋 和樹, 安達 洋, 安達 俊夫, 木原 雅巳, 大東 宗幸
    2009 年 9 巻 2 号 p. 2_221-2_237
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/04/26
    ジャーナル フリー
    本報告は,大学施設の防災力向上を目的として,特に災害情報伝達関連を中心とした基礎資料を得るために調査した結果をまとめたものである。具体的な調査内容は,(1)事例調査の位置付けとして,実際に避難所となった小中学校における地震時災害情報の伝達状況,(2)防災に意欲的に取り組む大学,民間事業所,また筆者らが所属する大学施設が位置する行政が実施している防災活動の現状把握及び(3)大学生の防災に対する意識調査,である。これらの調査結果を通して,災害時に大学にとって必要な情報を適切な時に収集伝達することができる効果的な防災システムを構築するための参考資料と課題を提示した。
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